平成26年3月5日 水道事業・電気事業の経営計画について

松崎:    水道事業、電気事業の経営計画が示されているが、今回、報告のあった水道事業及び電気事業の経営計画については、平成26年度から適用される新たな地方公営企業会計制度に基づいた財政収支計画が示されている。

そこで、会計基準の見直しによる影響について、財政収支計画を中心に、何点か伺いたい。

 まず、平成26年度から適用する、新たな地方公営企業会計制度について、改正の経緯、見直しの概要についてお聞きします。

小嶋財務課長:    まず、改正の経緯ですが、国においては、企業会計基準の見直しの進展、いわゆる会計ビックバンといわれるものがある。あと地方独立行政法人の企業会計制度の導入及び地方公会計改革の推進、地域主権改革の推進、公営企業の抜本改革の推進の状況を踏まえ、民間の企業会計制度との整合性を図る観点から、地方公営企業会計制度を昭和41年以来、全面的に改正を行うこととした。

 見直しは大きく二つに分かれ、第一段階が平成23年度決算から適用される、資本制度の見直し、第二段階が今回の26年度当初予算から適用される地方公営企業会計基準の見直しの二つとなっている。

見直し項目は全部で11項目あり、代表的なもので貸借対照表への影響がある項目として、借入資本金いわゆる企業債が従来、資本に整理されていたものが負債に移行する。

 この結果、資本が減少し負債が増加するという状況となるものであることから、26年度の予定貸借対照表は、従来の25年度までの会計基準と比べた場合、財政状態が見かけ上悪化することとなる。

しかし、資金の移動がなく帳簿上の変更のため、資金不足額が発生しないことから、経営の健全化を示す指標である資金不足比率は、マイナスのままで、従来どおりの健全度を維持している。

 次に、損益に影響がある項目として、退職給与引当金の計上の義務化や資産を適正な金額にする減損損失等の処理を行うものである。

これにより損益が出る3会計、水道、電気、資金事業会計で欠損という状況となった。しかしながら、これについても、現金支出をともなわない費用であり、資金的には問題なく、実際の経営状況は悪化することはない。

なお、この欠損金は、26年度決算時点において、会計基準の見直しにより増加する利益剰余金等で消せることから、27年度移行への繰越欠損は発生しないこととなるため、将来の経営に大きな影響を与えるものではない。

松崎:    大変重要な答弁をいただいた。

 神奈川県企業庁の会計が今どんな状態にあるのか端的にあらわすのがこの財務諸表であり、会計の報告であると思う。

 見かけ上は従前より悪化したかに見えるけど、実際は悪化などしていませんという答弁であった。ということは会計の専門家でなくても、こうしたデータや公表される資料というものが、企業庁の今の財務内容を客観、公正、簡潔、中立、適正に表しているという暗黙の約束のもとで公表されていくデータである。それが、見かけ上は悪化したかに見えるけど、実際は悪化などしていませんとの注釈をどこかにつけないで、このままデータだけを表していくと、県民の方々は、何が正しい情報なのか、いったいこれが実態を表しているのかわからないという状況に陥るわけである。その点については、どのように考えているのかもう一度答弁願う。

小嶋財務課長:  

 見かけ上悪化するということだが、確かに財務諸表上は負債が増えたり、赤字になるという形で悪化する。

 これについては、全国の公営企業すべてが改正の影響を受け悪化する状況である。国の指導においても、しっかり県民の皆様に説明するようにとの指導があるので、企業庁としても広報誌やホームページ等で、見かけ上財政状況は悪化するが健全な経営ができることを周知していく。

松崎:    しっかり説明するということは当然である。企業庁自体としても誤解されて、何か大変な状況にあるかのごとく、いろんなところで議論が始まってしまうとある意味風評のような状況になるので、そこはお願いしたい。

 もうひとつは、時間軸で考えると見かけ上はと説明しているが、これが1年たち2年たつと、この書きぶりでこのまま行くわけであるから、見かけ上はといっていたのが、いつの間にか、会計がこうなっているじゃないかという、実態上すり替わるというか、そこのところはどうなるのか。

小嶋財務課長:  

 見かけ上は悪化するが、新たに資本のほうでは、資本金が一時的に減るが、一方会計制度の見直しで、今まで国等の補助金等で減価償却をしていた利益分が資本金に回るということになる。今後は見かけ上ではなく実際の貸借対照表上も、さすがに一度に千億単位で資本金は戻らないが、ある程度の額は資本金に戻るという形で見える。このため、それほど見かけ上悪化するようには見えなくなる。これについても県民の皆様に詳しく説明することとなる。

松崎:  

 そうすると、まさに切替を行っている、この3月の予算議会がもっとも乖離が激しい。

 実態と表向きデータで発表しなくてはならない新しい基準とが、大きく離れているが、ここは全力を挙げて企業庁の会計がいきなり悪化して、大変なことになってるんじゃないですよということを、正しく説明をしていただきたい。

 アカウンタビリティとか説明責任とかいうことは、もともと会計についてのことであるので、これは是非お願いをしたい。

 それからもう一点お伺いしたい。

 水道事業経営計画を報告して いただいているが、新会計制度を 適用した財政収支計画となっているが、前回、18年度の財政収支見通しと比べて、どのような点が 変わったのか、あらためて伺いたい。

小嶋財務課長:  

 前回の18年度の財政計画だが、この時点でも今と変わらず、料金収入が年々減少していた。支出面については、この時期は、阪神・淡路大震災や新潟県中越地震の発生などにより、災害対策の強化・充実が求められていた。このため、前回は「災害に強い水道づくり」や「安全でおいしい水づくり」等を目標に掲げて、経営改善の徹底をしてきたが、結果的にかなりの資金不足が見込まれていた。

なおかつ、繰越欠損という状況であったので、財政健全化のため、水道料金の改定をお願いしたというのが、前回の財政計画である。

 これに対して、今回の財政計画であるが、まず、新たな会計基準が適用となったことが大きな変更点である。これにより義務化された退職給与の引当て、減損会計というものがあるため、財政計画初年度に欠損金が発生したのがひとつの特徴である。

 この欠損金については、現金支出を伴わない費用による欠損金のため、資金残高に影響を及ぼすことない。

前回は運営資金についてもかなり苦しい状況までいったが、今回については財政計画最終年の30年度末においても約60億円という運営資金の確保ができるため、今回の計画では資金不足は生じないこととなっている。

  今回の財政計画においては確かに初年度は欠損となるが、繰越欠損にならない。また、資金的にも60億の必要な規模を確保できるので、料金改定をお願いすることはないことが主な特徴である。

松崎:  

 決算特別委員会の直近の5年間、ほぼ毎年、いろいろなやり取りをしている。

そのなかで、裏ではものすごく血のにじむような努力をしていただいたと、私なりに理解をしているつもりである。

 企業庁の職員の皆さん、第一線で働いている皆さんの御労苦があったということをあらためて申し上げる。

 新しい経営計画の中に、新会計制度について対応を図ることとしているが、具体的にはどのような取組みを行うのか伺いたい

小嶋財務課長:  

 今回の経営計画の取組では、まず会計上については新しい仕組み、例えば長期前受け金の収入や退職給与の引当てなど決まっているものは対応していく。また、企業会計制度が何故改正されたかについては、ひとつに経営実態が見えにくいところがあったが、これについては、貸借対照表や損益計算書が変更され、民間の企業会計基準に準拠した形になり民間企業と比較しやすくなる。

また、県民の皆様も見てすぐわかるような状況になるので、県民の皆様からさらなる効率的な経営を求められることになると考えている。

これを受けて具体的には、財務状況や資産状況をより分かりやすく記載する。過大な資産の再評価などにより、財政状況が明確化される。

また、県の取組みとして会計の見える化も引き続きやっていくことにより、今まで以上に県民の皆様に明確化、透明性の確保、説明責任を果たしていくとともにさらなる効率的な経営を目指していく。

松崎:    今、答弁の中で透明性の確保として経営の見える化を通じてさらに効率的な経営をということであるが、電気事業経営計画についても同じだということでいいか。

小嶋財務課長:    今、答弁の中で透明性の確保として経営の見える化を通じてさらに効率的な経営をということであるが、電気事業経営計画についても同じだということでいいか。

松崎:    この会計基準の見直しの背後には抜本改革というのが、実はあるのだという答弁があったが、企業庁について、抜本改革とはどういうものなのか。

 あるいは、抜本改革が今必要なのか、将来に向けていろいろな改革があると思うが、それについてどういう見通しを立てているのか。また、検討していることがあれば伺いたい。

小嶋財務課長:    会計制度については、抜本的な改革である。例えば今まで資本金扱いであった企業債が負債に回ることなどである。

企業庁の事業として抜本的な改革をするかということだが、水道の経営計画に記載があるが、これからの「料金体系のあり方」を見直すという水道事業の抜本的な改革をせざるをえない。

 どのようにやっていくかは、今後の検討課題になるが、そのような大きな検討を始めることがひとつの方向性だと思っている。

松崎:    今後、時代の変化とともに、いろいろな形で改革を考えていかなければいけないということは、総論としてはわかる。ただ、県民の皆様に安定して供給しなければいけない水や電気というものについて責任を負うのが日々の業務の特性である。 そうしたものを抜きで抽象的に改革だけを声高に叫ばれてもそれは現実を見ない議論というふうに私は受け止めている。

 そういった意味では地に足をつけて、一つ一つ理詰めで説明がつくということが大切だと思う。 そういった意味での会計基準の見直しなのかなと思う。いろいろな改革に柔軟に対応できるということが会計基準の見直しのひとつのファクターなのかなと思うが、今回の会計制度の見直しを踏まえて、今後の水道、電気両事業の運営について、どのように考えているのか企業局長に伺いたい。

北村企業局長:    水道、電気の今後の運営についてであるが、水道については、料金収入自体が低減傾向が続いており、なかなか下げ止まらない状況である。

電気についても、電力システム改革の動向がこれからはっきりしてくる。

なかなか料金収入が下げ止まらない中で、これから耐震化や老朽管の更新に対応していかなければならないなど、今後も経営改革に取組む努力が必要になってくる時代を迎えている。

  我々としても5年間の経営計画を作ったが、基本的にはその中では料金収入をしっかり見通すということが必要であり、その中で優先順位をつけて計画的に事業をしっかり計画に位置づけて実行していく。

また、その中で経営改善等の努力もこれから事業を進めていきながら続けていくという、この三つを一緒になってやっていくということが必要であり、そうしたものを今回の経営計画で表すことにしている。26年度以降については、計画に基づいてしっかりと対応していくこととしている。

松崎:  

 直近の5年間の決算特別委員会でもそういった厳しい中をどうやって、あるいは先の見通しがつかない中でこれから先の5年間見通さなければならないと考えると、決算審査について5年前を思い出すとおかれている状況の激変ぶりは想像することも難しいと受け止めている。

 そうは言っても、先ほど申したとおり、水道とか電気とか、今すぐ欠けたらそこですぐトラブルになるものを常に安定的に供給するということが責務であることを基本においてしっかりと対応してもらいたい。

 また、会計制度が見直されたということを契機に、取組みを柔軟にしてもらいたい。

 また見通しを盛り込む形で計画を策定したとのことである。

 今後、計画に基づいて着実に事業を進めてもらいたい。

 東日本大震災の影響や新たなエネルギー政策の検討、そして施設・設備の老朽化など、電気事業にとって経営環境が大きく変化している中で、平成26年度から5年間の経営計画が示され、「再生可能エネルギー導入の推進」を「貢献」に位置付けている。

 一方、県では、かながわスマートエネルギー構想を推進するため、条例を制定し、「かながわスマートエネルギー計画」の策定も進められている。

そこで、経営計画における電気事業の取組と、かながわスマートエネルギー構想との関連について、何点か伺いたい。

 電気事業の経営計画における「再生可能エネルギー導入の推進」の取組について、確認したい 。

加藤発電課長:    現在、「かながわスマートエネルギー計画」の策定が進んでいるが、電気事業で取り組む太陽光発電や小水力発電の導入、また企業庁の支援を通じた市町村での導入促進、そして普及啓発の取組は、計画の中では「再生可能エネルギー等の導入加速化」という基本施策に位置付けられるものと考えている。 

 また、計画の中では、再生可能エネルギー等の発電量などの数値目標も設定されるので、電気事業としても、自らの導入についても、着実に推進していきたい。

そして、計画を推進するためには、電気事業だけでなく、県庁内や市町村等とも連携を図っていきたいと考えている。

松崎:    企業庁が今後、ダム施設を維持管理するものの中で、高額な費用が必要と考えられる代表的なものについて、何点か伺いたい。

 まず、ダムの改修には、どの程度の費用がかかるのか。

酒井利水課長:    ダム本体は、コンクリートや岩石を盛り立てて建設されていることから、適切な維持管理を行うことにより、半永久的に機能維持が可能であるため、大改修を行う必要はないと考えている。

 ただし、ダム本体の付帯設備であるゲートなどの機械設備や電気設備については、定期的に更新をしていく必要があるため、点検を行い、必要な時期に更新を行ってい。

松崎:  高額な費用がかかるものはないということか。

酒井利水課長:  ゲートを全面的に更新する場合には、かなりの費用が必要となるが、適切に維持管理しており、現時点では、全面的な更新の計画はないが、電気事業経営計画の中で、建設から70年程度が経過する相模ダムにおいては、これまで行ってきた点検結果を考慮しながら、ゲート改修について検討していくこととしている。

松崎:    堆砂対策については、どの程度の費用がかかるのか。

酒井利水課長:    相模ダムについては、大規模建設改良事業として、平成5年度から平成31年度までの27年間にわたる計画を策定し、水道事業者などからの負担でしゅんせつを実施している。

 三保ダムについては、堆砂が進行しているが、県、企業団、東京発電(株)との協議の上、計画を策定し、堆砂対策を進めてまいりたいと考えている。

また、新たな取組として、近年堆砂が進行している相模川支川道志川に位置している道志ダムについて、平成26年度より上流域の災害防止の観点から、しゅんせつを進めてまいりたいと考えている。

 この堆砂除去に伴う土砂の処分には、費用がかかると考えている

松崎:    費用はどの程度かかるのか。

酒井利水課長:    堆砂対策の中で、費用負担が大きいものとしては、平成26年度予算案における大規模建設改良事業で、年間15万m3のしゅんせつを行う予定であり、約14億円を計上している。

松崎:    電気事業は独立採算で行っている事業か。

加藤発電課長:    電気事業は、独立採算で実施している。

松崎:    かながわスマートエネルギー構想を企業庁としてやっていくと旗を掲げていることと、地方公営企業としての電気事業が成立つこと、継続性が確保できることがこれからも両立していけるか、そろそろ考えることが必要かと思う。

 現在、どのような見通しを持っているのか伺いたい。

加藤発電課長:    電気事業経営計画において、今後実施しなければいけない発電設備やダムの老朽化対策や堆砂対策など、計画期間内だけでなく、計画期間後にもそれなりの大きな費用が掛かるものと考える。それに向けては、きちんと資金を確保して行くことが必要と考える。この経営経計画の5年間については、それほどの莫大な金額が掛かる事業も無く、これまで蓄えた資金の中で実施していける事業を着実に推進して行く。

 その後の計画外に想定される大規模なダムの改修などについては、しっかりと資金を確保していくことが出来ると考える。

松崎:    資金を確保していかないといけないのか。

電気事業の場合は、まず、電気をきちんと供給することが責務としてあるから、供給に支障が出たり、将来の見通しが不安になったりしては困る。

 しかし、再生可能エネルギー導入も大いにやるべきと思うが、企業庁としての経営に不安が出ることや影がさすようでは困る。ぎりぎりな状態でスマートエネルギーを行って行くことはいかがなものかと思う。

 やはり、とっさの事態に対応するためには、ある程度の余裕が必要である。しっかり肝に銘じていると思うが、よく検討し、それぞれが、余裕を持って行って欲しい。

加藤発電課長:    再生可能エネルギーの推進の取組については、昨年度開始された「固定価格買取制度」によって、今後も導入を図っていく計画としている。

  なお、地方公営企業が固定価格買取制度による売電事業を行うにあたっては、「附帯事業として取り扱うこと」と総務省から通達がある。

また「附帯事業は、本来の事業の健全な経営に資するために行われるものであるから、本来の事業に支障を生ずるものであってはならないことはもとより、十分な採算性を有することが必要である」このことから、採算性については、買取期間内において、想定供給電力量に買取価格を乗じて得た収入総額と、建設費などの初期投資や維持管理に要する支出総額を算定し、収支として成り立つのか、比較検討した上で、事業着手の判断を行っており、例えば、9月補正予算で承認いただいた、 谷ケ原配水太陽光についても、十分な採算性を確保している。

今後も、早戸川の小水力計画も、固定価格買取制度を利用しながら、十分な採算性を見込んで事業を推進していきたい。

松崎:    東日本大震災を受け、水力発電や太陽光発電は、安全でクリーンな純国産の再生可能エネルギーとして、さらに期待が高まっている。再生可能エネルギーの導入推進については、電気事業として取り組むにあたり、採算性を十分に確認するとともに、かながわスマートエネルギー計画との整合性も図りながら、着実に進めてほしい。

  今後とも、県営電気事業の役割である、「電力と水道用原水の安定供給」に支障が出ないよう施設・設備の維持を行うとともに、再生可能エネルギー導入の推進も含め、事業に必要な収入を確保し、健全な経営を行っていくことを要望する。