平成26年9月30日 環境農政常任委員会での質疑のまとめ

○ 横浜地先の漁業について

松崎      

 東京湾で漁獲される魚介類は昔から、江戸前の魚と言われ多くの人に親しみ食されてきた。そのような中、高度成長時代は埋め立てや工場排水等により、海の環境が悪化し、漁業も大きな影響を受けてきた。

 近年、環境に対する国民の関心や排水浄化能力の向上など以前に比べ環境も改善されていると感じる。私の地元である横浜市金沢区では横浜市漁業協同組合に所属する漁業者が日々操業して、県民に水産物を供給しているところです。

 全般的に漁業を取り巻く環境が厳しい中で横浜地先の漁業の状況について何点か伺いたい。

 まず、東京湾では昔から漁業が行われていたと思うが、現在、神奈川の漁業者が東京湾で行っている主な漁業や水揚げされる水産物はどのようなものがあるのか伺いたい 。

回答        お答えいたします。

 東京湾で行われている漁業は、海底を網で曳いて魚を獲る小型機船底びき網漁業がございまして、これが一番の主力でございます。筒の中に餌を入れてあなごを獲るあなご筒漁業がございます。魚の通り道に網を仕掛ける刺網漁業、そのほか、まき網漁業、一本釣漁業などがございます。

 また、冬から春にかけては、ノリ、ワカメ、コンブの海藻養殖が行われています。

  水揚げされる代表的な水産物では、シャコ、アナゴ、マコガレイ、タチウオ、ヒラメそして、スズキなどがあります。

松崎        その中で特に横浜地先のブランドとして扱われている水産物にはどのようなものがあり、その最近の水揚げ状況はどのようなものかあくまで確認ですが伺いたい。

回答        お答えいたします。

 横浜地先でブランド化された水産物としては、小柴(こしば)のシャコとアナゴがございます。

 シャコは水揚げと同時にすぐに茹(ゆ)で揚げられ、むきシャコとして、主に築地に出荷され、仲買業者などから高い評価を受けています。

  アナゴは、出荷までにエサをはかせるので、臭み(くさみ)がなく、また、筒(つつ)で漁獲され魚体には傷(いた)みが少ないことから高い評価を得ています。

  水揚げ量ですが、シャコは、平成元年に1,080トンの漁獲がありましたが、平成17年には57トンまで減少し、現在は、禁漁と試験操業を繰り返しながら、資源回復を待っています。

 アナゴは、平成4年に約1,000トンを漁獲するまで増えましたが、その後、減少し、近年は200トン前後を推移しています。

松崎        ここ数年東京湾での水揚げがあまり思わしくないとのことであるが、その原因が何かわかっていれば、教えてほしい。

回答        お答えいたします。

  水揚げの減少については、県の水産技術センターが調査を行っておりますが、これだと言ったはっきりした原因は分かっておりません。

  現在、考えられている要因としましては、海底に生息している餌生物が減少しているのではないかということ、魚の獲りすぎ、海底の酸素が少なくなる貧酸素水塊などの漁場の環境を大きく変えているのではないか、複雑な要因がからんでいるのではないかと考えられています。

  また、海水温の上昇などに見られる地球温暖化も影響しているのではないかというご意見もございます。

松崎        温暖化によって海水温が上昇しているとも言われているし、先般当委員会でも県内調査を行った際には貧酸素水塊が底びき網を行う場所にあるという問題について米山水産技術センター所長も言っていた。そういった温暖化や貧酸素水塊についてどういう影響や問題があると考えているのか伺いたい。

回答        お答えいたします。

 海水温の上昇というものが、いろいろな漁場に与える影響がひとつ考えられているわけでございますけれども、例えばノリ養殖業ですと、水温ある程度低い状況でないと基本的にはノリが生長しません。そういう意味では漁期が変わってきているところがあります。

  また、水温上昇とともに海底で富栄養化されたものが、プランクトンなどの死骸などが蓄積いたしますと酸化還元現象が起こりますので、酸素が足りなくなります。そういう状況によりまして、海底で無酸素水塊ができます。それによって海底に生息する生物が逃げ惑う或いは死滅するという影響が出てきます。

 このようなことが今影響として考えられています。

松崎        さきほど言いました無酸素の塊が小さいものではなくて超巨大なものであり、生き物が何とか生きている状況で、海底自体がもたないということなのかと思う。対策をとると言ってもこれも結局は環境問題につながっていくが、簡単にひとつの自治体で対策がとれるというものでもない。対策はどれくらいのスケールで行わないといけないのか伺いたい。

回答        お答えいたします。

 主な原因と考えられているのは、海底の砂を取った後の砂堀の跡地が千葉県、東京都の地先に点在しています。ここが基本的な大きな原因となっていまして、そこでは水の対流がほとんど起こらないことから無酸素水がそこから発生して、夏場に広がっていきます。

 主な対策として今、考えられているのは掘った後の窪地を埋めるというのが一番適切な方法なのですが、掘った量について例えますと宮ケ瀬湖の約半分を埋めるくらいの土砂が必要であるというふうに言われております。ですから事業費その他作業を考えますと一長一短ではいかないということになります。

  現在、国、国立環境研究所等、千葉県、東京都、本県も含めて研究機関などで協議しながらどういう方法ができるのか含めて協議をし続けているところでございます。

松崎        協議していただくことは結構だが、協議している間に漁業者は続けられなくなって後継者もいなくなって漁業が消滅してしまう感じになってしまう。必要な予算はどれくらいで現実にさける予算の配分はどれくらいで、何年くらいかけてどういう形でやるのか具体的な対策というか計画をたてた対策をどうするのか実践的な協議を精力的に進めていただきたいと思うがどうか。

回答        お答えいたします。

 東京湾の資源が貧酸素水塊によって非常に厳しい状況であることは十分に承知してございます。これは東京都、千葉県も同じように変わりありません。

 いろいろなチャンネルを使いまして、国に対して主導権をにぎってやっていただくように働きかけてございますので、その点を十分に認識しながら一都二県、国に対して、いろいろなチャンネルを使って今後とも働きかけてまいります。

松崎        新たな水揚げ対象物としてナマコを考えているようだが、これからは、限りある資源を有効に利用することも必要であると思う。この点について県は何か指導しているのか伺いたい。

回答        お答えいたします。

 ナマコは最近漁獲対象としてクローズアップされてきた対象物でございます。基本的には中国への輸出の対象物として小型底びき網漁具によって獲っているわけでございますが、あまり移動しない水産動物であることから、漁獲効率の高い小型底びき網漁業では、獲りすぎてしまう可能性があります。

 平成23年からナマコの資源調査を県で実施しておりまして、現時点ではナマコの生息区域、推定での資源量、だいたい70%くらいを漁獲しているのではないかという推定もしております。

  そこで、ナマコを獲り過ぎないようにするために、例えば、1日1隻当たりの漁獲量を60キロまでとするなど、地区ごとに漁獲の上限を定め、資源を管理しながら漁業をおこなうよう指導しています。

松崎        もう一つの新たな取り組みとして、ホタテ貝類の養殖の試験を始めたということであるが、この事業の効果の見込みはどうか伺いたい。

回答        お答えいたします。

 平成25年から青森県からホタテの稚貝を購入しまして、11月から5月までの約半年間、試験的に養殖を始めています。サイズ的には6~8センチくらいの稚貝を半年間で11センチほどに育てるわけですが、貝柱の成長が非常によいということと歩留まりが9割以上と現時点では好成績を上げています。

 平成25年の養殖試験開始当初は、500個を試験的に養殖しましたが、平成26年は2,000個を目標に養殖を実施する予定と聞いております。基本的にはまだ試験的でございますので、海の状況等をよく見ながらまた水産技術センターも相談にのりながら事業がうまく発展できるように支援をしてまいりたいと考えています。

松崎        有望というふうに当局は見ているのか。

回答        お答えいたします。

 2年目ということでございますので、あと1、2年くらい様子を見させていただいてからその時点で事業化の判断はさせていただきたいと考えています。

松崎        漁業も6次産業化が言われるように経営改善の取り組みが行われているが、漁業協同組合としての取り組みあるいはそれに対する支援ということにたいしてどい形で取り組まれていくのか伺いたい。

回答        お答えいたします。

 現在、6次産業化については神奈川の漁業の中では過去から例えばしらす(湘南しらす)というようなブランド名で獲ったものを自分で加工して売るというひとつスタイルでやっていますが、最近では県内のいくつかの漁協は地元で獲れた魚を調理して加工して県民

に提供するという取組が始められています。

 具体的な例としては、最近では、平成22年からの大磯町漁協の港内の食堂「めしや」や、平成23年からの湯河原町の福浦漁協の「港食堂」、さらに、平成25年には平塚市漁協の「平塚漁港の食堂」などがあります。

 横浜市漁協では、平成23年から「小柴のどんぶりや」という食堂事業を漁港内で始めています。

 基本的に地元で獲れた魚を県民に供給するというひとつの新しいスタイルが出来つつあるということで県としてもできるだけ安定的な水産物を供給してそれをいかに県民に広

く供給できるかという視点に立って水産技術センターを始め水産課を含めて支援を行い

たいと考えています 。

松崎        我々県民も身近にある江戸前の魚あるいは食文化、生態系としての海を今後とも持続的に大切にしていきたいと思いますし、そこで生業をたてそこで潤している多くの県民がいることを考えていかないといけないと思う。そこで東京湾の漁業の県の今後の取り組みについて伺いたい。

回答        お答えいたします。

 東京湾の主要な魚種であるシャコやアナゴなどを江戸前の魚として、ブランド力を維持するためには資源を維持し、管理していくことが必要であると考えています。

 現在、横浜市漁協では休漁日や漁具の制限を定めた資源管理計画を作り、実施しております。例えば、シャコについては、小型底びき網の魚を獲る網の目を拡大し、小型のシャコを漁獲しない努力をしているほか、アナゴについては漁獲する筒の水抜き穴を13ミリメートル以上に拡大し、小さな魚を逃がす工夫をしております。

 県といたしましては、漁業者自らが資源管理を推進しやすいように、シャコの資源量の

推定調査やアナゴ稚魚の資源状況の調査を実施するとともに、漁業者のニーズ対応した資源状況の情報を提供しながら、東京湾の資源管理型漁業の推進に努めてまいりたいと考えております。

松崎        (要望)横浜市内の漁業者は、江戸前の魚を県民へ供給していく役割を果たしている。魚介類の資源の減少や海の環境の変化などが原因で、魚を十分に水揚げできない中で、漁業者は資源管理、直販など工夫してきている。県もさまざまな指導により漁業者を支援してきているが、今後も引き続き県民に江戸前の魚を供給できるように指導をお願いしたい。