平成27年3月3日 環境農政常任委員会での質疑のまとめ
○ 沿岸水産資源再生技術開発事業について
松崎
昨年の9月と12月の常任委員会において、東京湾の環境と絡めて水産業の振興について質問をしてきた。今、東京湾では、過去に比べて水質等が改善されてきたとは言え、漁業者にとっては春から夏頃にかけて貧酸素水塊の発生が大きな課題となっている。
これまでの説明で、貧酸素水塊の発生を止める方法は簡単ではないことは理解した。
その中で、国をはじめ関係都県等とともに東京湾環境改善に向けたいろいろな取組がなされていることも承知しているが、漁業者とともに二枚貝などの貝類養殖で水質改善を図る取組を行っているとの説明を受けた。
今回、水産関係予算の中で二枚貝養殖事業に取り組む、沿岸水産資源再生技術開発事業が計上されているとのことだが、東京湾の水質改善との関連でいくつか伺いたい。
確認の意味でお聞きするが、東京湾の水質改善について、これまでどのように取り組んできたのか。
大気水質課長
東京湾の水質改善に関しては、東京湾総量削減計画を定め、計画的に取組みを行っています。
この計画についてですが、水質汚濁防止法に基づき、昭和55年3月策定の第1次計画から平成24年2月策定の第7次計画まで取り組んできています。
当初はCODのみを対象としていましたが、赤潮や貧酸素水塊といった富栄養化の問題に対応するため、平成14年7月策定の第5次計画から窒素、りんを追加しています。
この計画では、COD、窒素、りんの削減目標を定めており、具体的な対策としては、日平均50m3以上の排水を排出する事業場への総量規制基準の適用、下水道や合併浄化槽などの整備による生活排水対策などがあります。
また、水質汚濁防止法に基づく上乗せ条例により、東京湾(流入河川を含む)に、1日あたり平均50m3以上の排水を排出する工場・事業場を対象に、COD、窒素、りんに関して、全国一律排水基準よりも厳しい上乗せ基準を定めて対応してきています。
松崎 こうした取組みの結果、東京湾に流入する汚濁物質はどの程度削減されたのか。また、東京湾の水質はどの程度改善されたのか。
大気水質課長 まず、汚濁物質の削減の状況ですが、本県から東京湾に流入する汚濁負荷は年々減少しています。
CODに関しましては、第1次計画の基準年度である昭和54年度と比較すると、平成 24年度時点では約7割削減されています。
また、第5次計画から対象となった窒素、りんに関しては、第5次計画の基準年度である平成11年度と比較すると、平成24年度時点では、それぞれ約4割削減されています。
水質の改善状況についてですが、本県が常時監視を行っている水域でみますと、CODに関しては、最近10年は、11水域中7~9水域で達成している状況です。窒素に関しては、平成25年度は、4水域中3水域達成しています。りんに関しては、平成23年度から3年連続で、4水域すべてで達成しています。
しかし、COD、窒素、りんの濃度について経年的な推移をみますと、最近では、ほぼ横ばいの状況にあり、環境基準の安定的な達成には至っていません。
松崎 水質の状況については、改善が見られるものの最近は横ばいの状況とのことですが、それでは、工場・事業場の規制や家庭の生活排水対策のほか、東京湾の水質改善のためにどのような取組みを行っているのか。
大気水質課長 東京湾の水質改善のため、この総量削減計画の中でのほかの取り組みとして、具体的には、環境保全型農業の推進による、農地からの汚濁物質削減対策を行っています。また、畜産排水対策として、家畜排せつ物の適正管理や藻場等の造成・保全による水質改善に取り組んでいます。過去からの汚濁物質が堆積した底質汚泥の除去などにも併せて取り組んでいます。
さらに、九都県市が連携し、大学、企業、市民団体等に広く呼びかけ、毎年、東京湾環境一斉調査を行うことで、東京湾の水質改善への関心や意識の醸成を図っています。
松崎 このような状況のもと、来年度、東京湾を含めた沿岸域の水産資源再生に向けた取組みを行うとのことである。そこで、沿岸水産資源再生技術開発事業の内容を説明願いたい。
水産課長 近年、海の環境の変化などにより、沿岸の漁業が影響を受けているという実態があります。
例えば、三浦半島地域においては、ウニ類やアイゴなどの食害によって藻場が消失する磯焼けという現象が生じ、水産資源に影響が出ているところでございます。また、東京湾地域においては貧酸素水塊の発生により、漁業に影響が出ております。
そこで、本事業では東京湾から三浦半島地域における沿岸の水産資源の再生を目指して、藻場が消失してしまった磯焼けの実態調査や回復対策、沿岸への定着性の高い新たな栽培漁業対象種としてカサゴの開発、さらに、東京湾における二枚貝類の養殖技術の導入の3項目を実施することを考えています。
特に、3つ目の二枚貝類の養殖技術の導入でございますが、二枚貝類は、海水中の有機物やプランクトンを取り込むことから、水質を浄化する作用があると言われています
。
松崎 その中で、平成27年度から県が本格的に二枚貝類の養殖について検討するということだが、その具体的内容について伺いたい。
水産課長 現在、東京湾においては、横浜地先でホタテガイ、横須賀地先でカキやアサリやハマグリの養殖が行われていますが、まだ規模が小さく、養殖に取り組んでいる漁業者の数は少数です。
そこで、先行しているカキ養殖については、ある程度ノウハウができておりますので、まだ貝類養殖に取り組んでいない漁業者に対し、技術指導を行い、養殖業数と生産量を増やしてまいります。
さらに今回、他県で養殖実績があり、成長も早く、冬から春の短期間で漁獲の見込めるトリガイ養殖を新たに技術導入して、漁業者に指導していく予定です。
しかしながら、二枚貝類はまれに毒をもつことがあります。その原因は餌となる毒性プランクトンによるものと考えられておりますので、県では、同時に養殖するその海域において、プランクトン採集によるモニタリングも実施してまいります
1.2%というのは事業場数ですから、1つの事業場で何器もある場合もありますし、1個しかない場合もあります。
松崎 さらに聞くが、漁業の担い手の確保についても大きな課題と考える。現状で毎年何名位の新規就業者がいるのか、また、本来はどの位の新規就業が望まれるのか、分かれば伺いたい。
水産課長 新規就業者でございますが、直近5年間、平成21から25年度で見ますと、本県では、毎年30から37人、平均33人が新規に就業しています。
平成25年の漁業センサスによると、本県の漁業就業者数は2,273人で、このうち4割近い877名が65歳以上と高齢化が進んでいます。
どの位の新規就業者が望まれるかですが、仮に80歳で漁業者が引退すると仮定すると、900名弱の方が引退することになりますので、15年後も現在の漁業者数を維持するためには、60人程度の新規の加入が必要と考えられます。
松崎 東京湾の環境と漁業振興、そして担い手の確保が合わせて解決できればこの上ないことだが、今後の見通しはどのようなものか。
水・緑部長 漁業は海や川の自然の恵みを利用し、またそれに支えられている産業です。従いまして、東京湾の環境問題がまずは基本になるということは、とても大切な御指摘だと思っています。また、そういったことを踏まえた上で、漁業が盛んになることで、将来的な展望とか明るさみたいなものにつながるわけでございます。担い手となる若者たちが、漁業が職業として明るい展望をもっているものだという認識にもつながると考えています。環境から担い手、若者たちの夢みたいなものまでが、繋がっているものなのだという意識を持ちながら、事業に取り組んでいきたいと考えています。
東京湾の現状としては、水質は以前とくらべ改善しているという答弁が先ほどありました。しかしながら、貧酸素水塊の問題など、まだまだ課題があるとのことでございます。先ほど答弁の中で、東京湾の一斉調査といったものもありましたけれども、水産業の面でも12月の当委員会で簡単に触れましたが、東京湾の関係都県などの研究機関で、東京湾研究会を組織し、横断的な意見交換や課題の共有といった取組みをしています。この3月には貧酸素水塊をテーマとしたシンポジウムを行う予定でございます。
このように、東京湾の環境と水産振興については、関係者の認識といたしましても、直結している課題があり、相互に意見交換しながら取り組んでいくことが必要だと考えており、認識も共有化されていると受け止めています。また、そうした取組みが、担い手の希望や将来展望に繋がるようなかたちで、水産振興に取り組んで行きたいと考えているところでございます。
松崎 (要望)
産業の振興という面で、それらが大切だということは言うまでもありませんが、およそ3000万人くらいの方々の人にとって、まさに恵みの海であり生活の糧を得る場所であって、長らく東京湾沿岸で生活してきている多くの方々にとって、四季折々の例えばお祭りですとか、あるいは暮らしの中の様々な季節ごとの行事ですとかは、全て海と何らかの関連をもっておりなされていると、私自身金沢区で生活していて思います。
恵みの海で生活の糧を得るこの場所を元どおりにしたい、そこに取れた自然からの恵みに感謝しながら生きていくという、古来の日本人としてのアイデンティティを取り戻したいと強く願っています。
東京都だから、千葉県だからといった都県境はないに等しいわけで、ぜひとも東京湾というものを、養殖業の定着や貧酸素水塊の対策など様々な課題があるわけですが、トータルでどうやって解決していくのか、県域の枠を超えて、9都県市などを含めて、さらに国を巻き込んで解決を図っていく、そういった場面をぜひとも積極的に作り出していただきたいと思います。
当局にただ要望するだけでなく、ここにプラス一人の住民・市民として、一緒に解決を図っていきたいと強く願っています。
この質問は 来年度も再来年度も続けて行いたいと思います。