平成27年3月3日 環境農政常任委員会での質疑のまとめ

○ PM2.5対策(ガソリンベーパー等)について

松崎      

 2月5日に開催された中央環境審議会の微小粒子状物質等専門委員会において、PM2.5の排出抑制策の「中間取りまとめ案」がいよいよ公表されました。

この中でガソリンベーパー対策が取り上げられており、報道でも大きく報じられました。

また、先の本会議で我が会派が行った「国に対する姿勢」の代表質問で、知事から、国に政策提案を行い一定の進展があったものとして、知事自らが先頭に立って問題提起をし、発信をしてきた、「ガソリンベーパー対策」が挙げられました。

そこで、前回の常任委員会以降、PM2.5対策の取組の捗り具合について、ガソリンベーパー対策を含め、何点か伺いたい。

まず初めに、PM2.5の濃度は、春先から夏場にかけて濃度が高くなるとのことだが、これから春に向かうに当り、昨年や一昨年の春先から夏場はどのような状況だったのか、確認の意味で伺います。

小林大気水質課長              

 昨年は、1月から7月にかけて、PM2.5の濃度は緩やかに上昇しました。ただ、8月は冷夏ということもあり、PM2.5の濃度は一転して低下しました。

一昨年は、3月にPM2.5の濃度が高くなりましたが、4月、5月は全国的に気温が下がったこともあり、PM2.5の濃度は一旦低下しました。その後、7月の梅雨明け以降、8月の猛暑日を中心にPM2.5の濃度が高くなりました。

年度による違いもありますが、春先から夏場にかけて濃度が高くなる傾向にあります。

松崎        それでは、県内では、春先から夏場において、どのような日にPM2.5の濃度が高くなるのか。

小林大気水質課長                本県において、春先から夏場においてPM2.5が広い範囲で連続して高い濃度になった日は、一昨年の例で言いますと、7月の梅雨明け後、太平洋高気圧に覆われた時や、8月のお盆の猛暑の時期も連続いたしました。また、昨年5月末から6月上旬にかけまして、初夏の陽気となった時期も連続しております。また、7月下旬の梅雨明け後の時期にもありました。

いずれも、高気圧に覆われまして、風が弱く、日中、日射があって高温の状況が続き、光化学スモッグ注意報が出た時期と重なります。

松崎         先日、地元に行きましたら、桜が一本だけ咲いていまして、ぽかぽか陽気で気温がかなり上がった日でしたが、今のお答えを聞いていると、そういった日なのかな、と漠然と思います。

PM2.5の濃度が高くなる原因として、先日も「笑点」という番組で、ある落語家が、中国からいろいろな空気がやってきて、PM2.5が問題だよね、と言っておりましたが、この委員会で議論していると、全然違う認識だな、と驚いたのですが、PM2.5の濃度が高くなる原因として中国大陸からの越境汚染が報じられているが、本県の場合はどの程度影響があるのか、他に原因があるとすれば何なのか、このところをはっきりお聞きしたいのですが、どうでしょうか。

小林大気水質課長                2月に公表された中央環境審議会微小粒子状物質等専門委員会の中間取りまとめ案にも越境汚染の問題が記載されておりますが、年平均濃度についてみると、越境汚染の寄与割合は、西日本で大きく、九州では約7割、関東では約4割と記載されています。

一方、国内発生源の寄与率は、九州では約2割、関東では約5割と書かれております。

また、高濃度日に着目いたしますと、九州地方では大陸からの越境が支配的であるケースが多いが、首都圏などでは国内の影響が支配的な日があるとしています。

これまでの本県の測定データから、PM2.5が広い範囲で高い濃度になっている日をみると、まだまだ生成機構は十分解明できていませんが、高気圧に覆われて、風が弱く、大気汚染物質が滞留しやすい日が大部分であることから、近傍の工場・事業場のばい煙や自動車の排出ガスなどの影響を強く受けているのではないかと考えています。

松崎        明確なお答えがあったと受け止めました。工場等、あるいは自動車等ということでございます。

PM2.5の低減には、地域に由来する原因物質の削減に取り組んでいく必要がある、と今の答弁からわかりました。特に、夏場の揮発性有機化合物、いわゆるVOCの排出抑制対策が重要であります。

当委員会の報告資料でも、本年1月にVOC排出抑制対策として、事業者向けの講演会を開催したとあるが、どのような狙いと内容だったのか。

小林大気水質課長                まず、狙いでございますが、講演会は、PM2.5と光化学オキシダントの発生原因のひとつとされるVOCをテーマとして、事業者の低減に向けた取組を促進することを目的に、県、横浜市及び川崎市で組織する、県公害防止推進協議会の主催で開催しました。

 次に内容ですが、中央環境審議会の自動車排出ガス専門委員会の委員で、本県の自動車NOx・PM総量削減計画策定協議会専門委員会の委員長である、慶応大学の飯田訓正教授に、「自動車と環境問題」と題して、最新規制適合車や低公害車の普及の重要性などについてご講演いただきました。

また、関東経済産業局から職員を招きまして、「有機溶剤を適切に管理していますか」という題目で、VOC排出抑制の意義とメリットについて講演いただきました。

さらに最後に、日産自動車から、実際のVOC削減の具体的な取組事例を紹介いただいたところでございます。

松崎        この講演会に、どのような事業者に参加を呼びかけ、どのくらいの事業者が実際に参加したのか。また、事業者からの反応はどうだったのか。

小林大気水質課長                講演会の開催の呼びかけですが、県内のVOCを排出する事業者に案内を送るとともに、神奈川県環境保全協議会などの関係団体を通じて、会員に参加を呼びかけました。

 参加状況ですが、112事業所から130人が出席しました。

事業所の反応ですが、アンケート結果を集計したところでは、製造事業所の参加が多かったことから、講演していただいた日産自動車のVOC削減の取組がわかりやすかった、今回の講習会の内容を仕事に活かしたい、さらには、VOC削減の取組事例をもっと紹介してほしい、といった具体的な事例に関する意見や要望が多かった、ということでございます。

 一方、自動車に起因する環境問題についても、大変勉強になった、今後もこのような機会があることを希望する、といった意見がありました。

松崎         今の答弁を聞いておりまして、私もちょっと驚いているのですが、コストがかかって大変だ、という意識でおられるのかと思っていましたら、そうではなくて、事業者の方々は、もっと関心を持って情報が知りたくてお越しになった、という点と、何より前向きに取り組んでいきたい、取り組んでいこう、という差し迫った感じも含めて、前向きな姿勢で臨まれているのだな、ということが今のお答えからかなり伺えるのですが、当局としてもその認識は間違いないでしょうか。

小林大気水質課長                委員おっしゃるとおり、VOCの削減というのは単に公害問題への対応というだけでなく、事業者にとってもコストダウンなどメリットがあるので、そういった観点があるという認識であります。

松崎         よくわかりました。次に、先月の中央環境審議会微小粒子状物質等専門委員会、環境省の審議会ですが、「中間取りまとめ案」が公表されています。この中で、ガソリンベーパー対策を含めたPM2.5の排出抑制策が示されておりますが、具体的にどのような内容なのでしょうか。

小林大気水質課長                この中間取りまとめ案に盛り込まれた内容ですが、工場・事業場の発生源から排出される「ばいじん」や窒素酸化物(NOx)については、追加的な排出抑制策の可能性を検討すべき、というのが一つあります。

また、揮発性有機化合物(VOC)については、主にガソリンベーパー対策が取り上げられ、給油時について、燃料供給施設側での対策と自動車構造側での対策があるが、適切な対策の導入を早急に検討すべき、というのが一つと、また、駐車時・走行時についても、排出実態等を踏まえつつ、対策の強化について速やかに検討すべき、と明記されました。

松崎        速やかに検討すべきとされている、ということで伺いますが、それでは国における今後の検討スケジュールはどうなっているのか。

小林大気水質課長                今回示された中間取りまとめは、まだ、案の段階であり、現在パブリックコメントが行われております。次回、3月下旬の専門委員会で、案がとれる見込みです。

その後の検討スケジュールですが、2月5日の専門委員会に提出された資料によりますと、ガソリンベーパー対策に関して、平成27年度に排出抑制対策の検討を行う、平成28年度に対策の具体化、必要なものは審議会等で議論のうえ、制度化、というスケジュールの想定が示されました。

松崎       それはある種の工程表と受け止めてよいのでしょうか。この中間取りまとめ案の具体的なタイムスケジュールについて、県として、どのように受け止めているのか。

小林大気水質課長                国の方に確認しているところではありますが、これは審議会の中間取りまとめ案、の段階でありますので、あくまでも想定である、という認識でございます。

松崎       想定も具体化して、きちんと進めていかなければならないと私は思いますが、県としてはどう考えますか。

小林大気水質課長                ガソリンベーパー対策については、新たな対策として県が取り組んでいますけれども、ここまできた、ということで、国民にこういった問題がある、ということを広く知らしめながら、国に強く働きかけることによって、具体化していきたいと強く思っております。

松崎       PM2.5の測定結果を県のホームページで公開しておりますが、アクセス数は、平成25年2月の公開以降、延べで1千万件を突破したということでございます。今年度、単体でみても6百万件を超えており、年を追うごとに、ほぼ倍、倍という勢いで、県民の方々の関心は高まっております。

ということは、とりもなおさず、県民の皆様にとって健康影響が懸念される大きな要素がPM2.5であると思うのですが、これまでは県としての行動指針、あるいは行動の対応をお聞きしてきましたが、県民の皆様のホームページのアクセス数の激増ぶりを考えると、やはりご心配、懸念されていることに対して適切に体を真正面から向けて、向き合った形でご相談にのる、あるいは相談窓口を設置する、といった対応も必要になってくると思うが、どうされているのか。

小林大気水質課長                PM2.5については、情報提供や原因物質の低減対策など総合的な対策を執る必要があることから、庁内の関係部局と連携した対応を行っています。

このなかで、健康相談に関しては、保健福祉局の衛生研究所や保健福祉事務所が窓口となっております。また、一般的な問い合わせは当課が受けております。

松崎       県単体ではなく、市町村とも連携しているのでしょうか。

小林大気水質課長              保健所設置市でありますと、県の衛生研究所や保健福祉事務所は所管外でありますので、大気汚染防止法の政令市と調整いたしまして、同様に各政令市においても相談窓口を設置し、ホームページに相談窓口について案内をしているところです。

松崎       是非よろしくご対応願いたいと思います。県民の方々にとって、PM2.5だけを取り出して相談するというのは余り考えにくいのですが、全般的な自分の呼吸器ですとか、疾患とか、花粉症との関係ですとか、様々なところにそういったファクターはあるのではないか、とご心配の方は多いのだろうと思います。そうでなければこんなにアクセス数が激増するというのは、900万人の県で一年間に600万件を超えるアクセスがあるというのは、かなり深刻な状況だと思いますので、相談等に対してはできるだけきめ細かく対応していただきたいと思います。

最後に、ガソリンベーパー対策を含めたPM2.5の問題に関して、県民の安心・安全を確保するため、環境農政局長に、県として、今後どのように取り組んでいくのか、決意を含めてお伺いします。

金子環境農政局長                PM2.5の問題については、委員のお話にもありましたとおり、県民の方々の不安があると思いますので、これまでもなるべく正確な情報を、なるべく早くご提供する、ということで、今までも委員会の方にご報告させていただいたとおり、測定局をどんどん増やしているとか、政令市と一緒に増やしております。

また、その結果を1時間ごとに県のホームページで公表するということやっておりますし、高濃度の予報も当初は1日1回の体制でしたが、1日2回の体制に増やしております。こういったことにつきましては、これからも引き続きしっかりと行ってまいります。

また、そもそも発生源対策が非常に重要ですので、旧式ディーゼル自動車について、県内は条例に基づいて運行を禁止しておりますけれども、他県からの流入ということもありますので、その監視も強化しております。

委員からお話のありました工場・事業場のVOCについても、隣県との協調した取組もできるようになってまいりましたので、力を入れていきたいと思っております。

ガソリンベーパー対策でございますけれども、委員からのお話にもありましたが、中央環境審議会の専門委員会、これは大気水質課の職員も傍聴しておりまして、夜の時間帯の委員会でございましたが、翌日の午前中には知事にその結果をご報告いたしましたところ、知事も「それはよかった」とおっしゃっておりまして、黒岩知事が力を入れて九都県市などで取り組んだ結果、こうしたことに繋がったと受け止めております。

これからもさらに国を動かしていくためには、国民の方、県民の方の理解がもっと広がっていかないと、このガソリンベーパー問題は、まだそれほど知られているとは言い切れませんので、その辺の理解をもっと広めていく対策を取っていく必要がある、と思っております。

特にORVR車というのは、ガソリンを給油していくときだけでなくて、車が走っているときも、駐車しているときにもガソリンベーパーを吸着する、という仕組みですので、是非こちらの方が制度化されるように、さらに国への働きかけを強めてまいりたいと考えております。

松崎       (要望)

 黒岩知事に率先して動いていただきたい、と要望させていただいた、当委員会での我が会派の思いや議論を踏まえて、黒岩知事自身が率先して行動され、九都県市首脳会議、あるいはまた関東地方知事会議等々の場で問題を提起され、その行動が全ての首長の合意の基に行われ、国での議論が高まってきています。

また、県民の方々の健康への懸念に対して、県としてどう応えるか、という点でも、一つの姿、一つの当局としての姿勢というのが明確に打ち出されていると思います。

確かに、その点からすると、PM2.5の監視体制や高濃度予報の体制は、局長からお話のあったとおり整備されてきているが、県が進める「健康寿命日本一」や「いのちを輝かせる」といった取組にも深く関わっている事柄ではないかと思います。

そこで、何よりPM2.5の低減に向けた取組が重要ですから、特に、ガソリンベーパー対策については、米国では全ての車に義務づけられ、義務づけられた車しか走行ができない、という状況になっている中で、我が国においても東京オリンピックを目の前にして、早急に解決すべき課題であると考えております。

国の動きも出てきた、ということで、これからの予定もある程度はっきりしてきたことから、九都県市との連携強化も含めて、制度化に向けてしっかり取組みを進めていただきたい。