2017年3月1日 県民・スポーツ常任委員会質問要旨

(質問要旨)

県庁の個人情報保護とビッグデータの活用について

松崎         私の方からは、二点質問させていただく。 一点目は、県庁の個人情報保護とビッグデータの活用についてである。今回、個人情報について、匿名性を適正に担保しつつ、利活用を促進する観点から、民間事業者が保有する大量の個人データを、個人を識別できないように加工して、個人情報の取り扱いよりも緩やかな規律の下で、自由な流通を促進するための制度として匿名加工情報が新設された。また、国の行政機関が保有する個人データに関しても、同様な仕組みとして行政機関非識別加工情報の制度が新設をされている。

 そのことを踏まえ、本県においても、県が保有するデータの活用を図るための制度の検討が始まると思うが、その点についてまず何点か伺う。

 県条例では、個人情報の取扱いによる個人の権利利益の侵害を防止することを、第一義的な目的にしていると思うがどうか。

情報公開広聴課長              

 まさに今の委員の発言のとおりである。県の条例では、個人情報を適正に取り扱うことにより、個人の権利利益の侵害の防止を図り、基本的人権の擁護と、それから公正で民主的な県政の推進、これに資するということを、そもそもの目的としている。

松崎        今回の法改正の目的を踏まえると、個人情報の有用性にも着目して、その利活用を促進していくということになってくるが、その点についてはどのように考えているのか。

情報公開広聴課長              

 今回の法改正で個人情報の有用性の観点がでてきたというところである。本県では、これまでも学校や自治会での緊急連絡網のような、使い道についてある意味有用性がある、そういった場合についても、法の定め以上に情報の提供や収集を控えてしまうような、いわゆる過剰反応、そうしたものが起きないように、周知、啓発を行ってきたところである。

 今回の法改正では、新産業の創出といったことが目的となっているので、これまでよりも幅広い観点から、個人情報の有用性というものにも配慮した取組が期待されているのではないかと考えているので、今後、県としてその辺の対応を検討する必要があると考えている。

松崎        民間事業者においては、これまで個人情報の加工の基準がなくて、対応が各々の事業者任せになっていたところで、その利活用が進まなかったと認識しているがどうか。

情報公開広聴課長              

 ご指摘のとおりである。これまで、法的に個人情報の匿名化についての基準が明確にあったわけではない。

 そのため、民間事業者の立場に立ってみれば、個人情報の定義がそもそも曖昧だということとあいまって、利活用自体を躊躇してしまう、いわゆる「利活用の壁」というものがあったと認識している。

松崎        新たな制度において、個人情報を加工する際の具体的な基準はどのように定められているのか。

情報公開広聴課長              

 今回の制度の中での、個人情報の加工基準については、国の個人情報保護委員会から考え方が示されている。その概要であるが、大きく五点ある。一点目としては、氏名、住所など、特定の個人が識別できるような記述については、その全部又は一部を削除すること。それから二点目としては、旅券番号や個人番号など、いわゆる個人識別符号、こちらについては、必ず削除すること。それから、会員番号など、他の情報と紐付けられてしまうもの、そういったものについては削除をするか、異なるものに置き換えること。さらに、突出して高齢な人の年齢など、特異な記述とか数字は、そういったものを削るか、数字を丸めて使うこと。さらに五点目として、そのほか、適切な措置を講ずること。こういった内容となっている。

松崎        特定個人を識別するもの、それから個人識別番号、また会員番号など、また特異な記述、その他についても、これを削除する、その五つで絞り込んでいくというが、基準と呼べるのかどうか、基準と呼ぶにはちょっと抽象的で、また一般的に過ぎるように思う。これを結局どのように取り扱うのかという具体の場面まで考えると、結局対応がばらばらになってしまうのではないかと思うがどうか。

情報公開広聴課長              

 今回の加工基準に基づいて加工されたデータについては、その基準どおりやれば特定の個人が識別できないようになる、あるいは個人情報に復元することができなくなる、そういった効果があることは間違いないところだが、委員の指摘のとおり、そこに至る加工の具体的な方法ということになると、やはりケースバイケースとならざるを得ないと考えている。

松崎       ケースバイケースという言葉があったが、そうするとやはり民間事業者の場合も含めて、個人情報を加工する場合には、より具体的な基準が必要だと思わないか。

情報公開広聴課長              

 委員お話のような考え方も一方ではあるかと思う。加工基準を補足するものとして、個人情報保護委員会からガイドラインや、あるいはQ&A、こういったものが現在出ているところである。ただそれらの内容を見ても、全ての個人情報やデータベースに適用できるような汎用性があったり、あるいは具体的なものがあったり、そういうわけではない。

 委員会が示す加工基準は、あくまでも最低限の加工方法を示したものに過ぎないというところであり、データそれぞれの特性や、あるいはビジネスの態様、そうしたものを踏まえた具体的な加工方法については、業界団体などの自主的なルールにおいて、適切に定められることを期待する、こうした考え方が制度設計の基本となっているところである。

松崎        つまり、具体の場面に入っていけば行くほど、本当に担保されるのかどうか、加工基準について、なかなかまだあやふやな点が残っていると当局から答弁があったと受け止めた、したがって、今後、非常にセンシティブな内容に触れていく場面なので、個人情報の保護について万全を期するように県としても採れる手は採ってもらいたいということを要望しつつ、さらに質問を続ける。

 今後、県でもこの制度の導入を検討するとのことだが、県においても様々な個人情報を保有していることは言うまでもない。中でも、地方独立行政法人病院機構の各病院が保有する患者の個人情報は、民間での活用のニーズが高いものと思われる。このような医療データについても、今回の新たな制度での活用が想定されるものなのか。

情報公開広聴課長              

 医療情報については、今回の法改正に先立って決定された、国のパーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱というものがあり、その中では一層の利活用が期待される情報として医療情報は例示として挙がっている。そういった意味では利活用のニーズは高いと考えられていると思われる。

 ただ一方で、委員の話のあった医療情報の利活用については、現在、国において、特別法がつくられるという動きがある。具体的な制度の概要であるが、まず認定を受けた民間の機関が、各医療機関から医療情報をまずは受け取る。その後にその認定を受けた民間の機関が、蓄積した情報を匿名加工したうえで、医療行政や、研究機関あるいは製薬企業、こういったところの利用のために提供する、こういった内容になっているようである。新聞報道などによると、この特別法について、今国会にも法案が提出されるとの報道がされているところである。

松崎        同じ匿名加工をした情報を提供する仕組みであるのに、なぜ医療情報については特別法が必要になるのか、どういう位置付けになっているのか。

情報公開広聴課長              

 特別法が必要となる理由であるが、まず、適用法令の関係がある。民間病院の個人情報については個人情報保護法が適用になる。一方で、公立の病院はどうかと申し上げると、これは各自治体の条例が適用になるというところで、それぞれ病院の設置根拠によって個人情報の分野では適用される法令がばらばらになるといったところが、医療情報の収集にあたって一つのハードルとなっているところがある。

 それから、医療情報は、今回の制度改正の中での位置づけでは、要配慮個人情報、この中の「病歴」に当たるということもあり、今後情報提供に当たっては、原則的に本人の同意が必要となるというものである。ただ現実問題として情報を提供するたびに本人から同意をいただくことは、実際の場面ではなかなか困難なところである。そうしたことから、今回、民間、国・地方共通に適用される特別法をつくるという動きになったようである。

松崎        今、紹介のあったとおり、法律と条例で適用法令がばらばらになる、病歴というような非常にセンシティブな本人の同意が本当は必要なものについて、実際は困難であるのでそこをどうするのか、解決していくのか、二つの課題がある。やはり医療情報というところにおいて細かく入っていけばいくほど、先ほどの基準の抽象性も含めてやはり慎重な対応が必要であると、答弁からもうかがうことができる。 さらに伺うが、県ではこの制度の対象となる個人情報は、そのほかにはどのようなものが考えられるのか。

情報公開広聴課長              

 医療情報以外の具体例であるが、一般的に言われているものとしては、鉄道事業あるいはバス事業、そういったもので、いわゆる交通事業で収集した人の移動に関する情報、一般的にはパーソントリップ情報といったところだが、そういったことが、商業であるとか観光分野において、利活用のニーズがあるのではないかと言われているところである。ただ、私どものところで、鉄道事業などこういったものがあるわけではない。 そもそもこの制度の対象となる情報については、1,000件以上のデータがあること等、いくつかの要件がある。そういった要件に該当するものが本県の中でどれくらい該当するのか、あるいはそもそも利活用のニーズがどのくらいあるのかについては、まだ現時点では把握していない状況である。

松崎        対象とかニーズについて把握していないということは、逆に言うと、どういうふうな体制で、どういうふうな考え方で、新しい動きに対する県としての方針というか取組をするのかということもこれからということになると思うが、その体制で利活用の推進の方へ舵を切るのはいささか不安な思いもある。

 更に伺うが、マイME-BYOカルテという本県が推進している施策、概念があるが、そこに集まるデータというのは、一般世間でいうところの「おくすり手帳」であったりするわけだが、県が保有する大量のデータが、知らないうちに「匿名加工情報」になって提供されるということになるとしたら、県民の皆さんは不安に感じるのではないかと思うのだが、県としてどう思うのか。

情報公開広聴課長              

 あくまでも私ども個人情報保護条例を所管する立場からの考えということで話をさせていただく。この新しい制度についても、やはり個人情報を適正に取り扱うことにより、個人の権利利益の侵害の防止を図る、この考え方が基本にある。その上での有用性だと考えている。

 この制度に関しては、今後県としても検討を進めていく予定だが、個人情報の安全管理や、あるいは匿名加工の適切な実施、これらについて、常に今の話のような基本的な考え方に立って、そういった意識をしながら進めてまいりたいと考えている。

松崎        今、答弁があったが、あくまで県としては個人情報保護をしっかりやるという大前提の上での適正な利活用を、ということになるが、やはりそこのところの基本をしっかり押さえて臨んでいただきたいと思う。マイME-BYOカルテを利活用、推進するというときに県民の皆様は、まさかそこに集まった自分のデータが知らないうちに加工されて、そういうふうにどんどん使われていくとは夢にも思っていないわけであって、そのことはおくすり手帳の普及においても同様かと思われる。したがって、県民の方がいささかの疑問を抱かれるということはあってはならないことであるので、やはり個人情報保護をしっかりやった上で、適正な利活用をどう考えるかであると思う。

 さらに質問を続ける。マイME-BYOカルテ以外で県自らが保有するデータを匿名加工して利用することはないのか。これを推進していこうという法律や体制のもとで国から来ているわけだが、県として積極的にデータを匿名加工して民間事業者に提供していくつもりはないのか。

情報公開広聴課長              

 今回の行政機関非識別加工情報の制度の考え方であるが、民間のニーズを把握しないままに勝手に作成してしまうと、結局民間のニーズと合致しないで、利用されないおそれがあることから、まずはそうした意味では民間事業者からの提案を募集する方式をとろうということで、そういった形が今回制度設計のなかで採用されたところである。

 したがって、あくまで民間の提案が前提であるので、県が自らデータを匿名加工して利用したり、あるいは積極的にデータを匿名加工して民間事業者に配っていく、そういったことは、この制度の中では想定されていないものである。

松崎        確認だが、「想定されていない」という言葉があったが「想定していない」のか。

情報公開広聴課長              

 制度上も想定しておらず、その考え方のもとでは私どももそういった対応はとらないということである。

松崎        個人情報の保護に当たっては、自分の情報が無限定に収集・利用・提供されることを防止する、また他人によって収集・管理・利用・提供されている自己の情報について開示・訂正・抹消を求めることができる「自己情報コントロール権」が担保されていることが重要と思うが、県としてどう考えているのか。

情報公開広聴課長              

 ご指摘のとおりである。これまで、法的に個人情報の匿名化についての基準が明確にあったわけではない。

 そのため、民間事業者の立場に立ってみれば、個人情報の定義がそもそも曖昧だということとあいまって、利活用自体を躊躇してしまう、いわゆる「利活用の壁」というものがあったと認識している。

松崎        新たな制度において、個人情報を加工する際の具体的な基準はどのように定められているのか。

情報公開広聴課長              

 ご指摘のとおりである。県の条例においても、「自己情報コントロール権」という言葉そのものを定義しているわけではないが、実際に県が保有する情報について、自己情報の開示や、訂正、あるいは利用停止、こういった具体的な権利の規定をしており、自己情報に対するコントロールの仕組み、それは設けているところである。

松崎        法律学の世界でもそれから実務においても、それはいわば前提というか、当然のこととして言われる自己情報コントロール権だが、それでは行政機関非識別加工情報の制度や、今答弁にもあったが現在検討されている医療情報の利活用のための制度においては、この今取り上げている「自己情報コントロール権」はどのようになるのか。

情報公開広聴課長              

 まず行政機関非識別加工情報の制度の方であるが、匿名加工される前の「個人情報」については、当然のことながら、開示請求等の仕組みが制度化されているが、「匿名化」されることを拒む権利や、あるいは匿名加工された情報を第三者にいかないようにしてくれといった請求する権利、こうしたものは特段の規定はない。

 それから、先ほど申し上げた医療に関する新しい制度であるが、これはまだ立案段階で私どもも詳細を把握できていないが、医療機関から匿名加工をする民間の組織に情報提供することについて、本人がその提供を拒否することができる、その仕組みはどうもありそうだが、匿名化された後については、特段の仕組みはない状況である。

松崎        今の答弁を伺っていると、ひとつは行政機関非識別加工情報の場合には特段の規定のない部分がある。それから医療情報の利活用の方は、どうやら国においては一人一人のところは検討があるが、しかし匿名化後の扱いについては確たるものが担保されていないかもしれないということである。そういった点についてやはり国に対して県として意見を言っていく、それは住民の側というよりは県として意見をはっきり言うということも必要かと思われる。それについてしっかりと対応していただきたい。

 引き続き質問する。匿名加工された情報だから安心だということには私はならないと思う。現実には、個人情報の流出事故も後を絶たないというのが、誰もが知っている状況である。そこで、県としてやはり個人情報の適正な管理に取り組むべきと思うが、どのように考えているのか。

情報公開広聴課長              

 委員のお話のとおり、個人情報の安全管理、適正管理、こちらについては、権利利益の侵害の防止という意味で、大変重要だと考えている。

 本県では、毎年度、新規採用職員や、あるいは各課の実務担当者向けに、個人情報保護に関する研修も実施しており、また庁内では「ヒヤリハット事例集」、こういったものもイントラに掲載しているというところもある。また希望する所属に対しては、私どもの課の職員が伺って研修をおこなうと、そういった取組を行っており、さまざまな取組を通じて事故防止に関する意識啓発を行っているところである。

松崎        先ほどから伺ってきたが、答弁の中に、行政機関非識別加工情報の方は、あくまで民間事業者からの提案に応じて提供するということであった。匿名加工されているとはいえ、述べてきたとおり元々は個人情報であり、そこは慎重に判断する必要があると思うが、提案内容に対する審査は行わないのか。

情報公開広聴課長              

 提案内容に関する審査の関係だが、民間からの提案について、提案を受けた行政機関側では審査を行うことになる。

 具体的には、提案者が法で定める欠格事由に該当しないか、利用したいという事業がそもそも「新産業の創出等」に資するものなのかどうか、あるいは事業者における安全管理措置が適切であるかどうか、そういった観点で審査する仕組みとなっている。

松崎        審査はしっかりと行っていただきたいし、やはり慎重な判断というものを求めていきたい。今、国において地方公共団体における制度導入のための検討が進められているとのことだが、どのような検討が行われているのか。また、今後、県ではどのように取り組んでいくのか改めて伺う。

くらし県民部長  

 国の検討会では、先例となる総務省統計局の匿名データの作成や提供方法の確認などが行われている。

 専門家からは、匿名加工の技術的な難しさを指摘する意見や、単体の情報では匿名性が確保されていても、いくつかの情報が組み合わさった段階ではそれが見えてしまう可能性があるといった懸念や、加工方法はケースバイケースにならざるを得ない、といった意見が出ている。また、地方自治体から参加している委員からは、利活用する事業者のニーズがよくわからないといった意見や、制度導入の結論は短期間では難しい、といった意見も出されている。

 今回の法改正は、パーソナルデータの利活用が新たな産業の創出に資するといった観点から行われているところだが、地方公共団体における制度導入のための検討会の報告書が、今年度末に提出される予定となっている。本県としては、その検討結果を踏まえ、また、国における制度の運用状況なども確認し、更には本日委員から意見のあった個人情報の保護を図った上での利活用という視点を十分踏まえ、検討してまいりたい。

松崎        神奈川県の、例えば自動車税を納税されている方のデータ、今日話の中には出てこなかったが、各種のデータをそれこそ抱えて持っているが、本人の承諾もなくどんどん活用してもらうためにデータを持っているのではなく、しっかりと守るという前提があるから県民は信頼して県に情報を預けるということである。あたかも自己の所有物のようにしてどんどん利活用していこうということは、少し趣が異なるものと考える。

 要望するが、個人情報を守るという本来の立場はあるわけで、個人情報の保護と利活用とを一つの天秤で、そのどちらが重いかという秤にかけるのではなくて、あくまで保護を優先した上で、その利活用を認めていくべきと考える。

 行政機関非識別加工情報については、現状、加工基準についても質疑の中で明らかになったように不十分な状況にあり、解決すべき課題は多い。本県における制度の導入については、拙速に事を進めるのではなく、今、申し上げた基本的な考え方を踏まえた上で、十分検討を加えていただくようお願いする。