平成30年3月5日 環境農政常任委員会での質疑のまとめ

○ 東京湾の貧酸素水塊対策について

松崎      

 東京湾では、シャコやマコガレイなどの水産資源が大きく減少しておりまして、江戸前ブランドの存続が危機的状況にございます。本会議での提案説明の中で、黒岩知事より、江戸前のシャコを復活させるために東京湾の貧酸素水塊対策に取り組むという力強い表明がございました。地元金沢区だけではなくて、東京湾全体の課題として私もこれまで本会議や常任委員会で貧酸素水塊対策につきまして、再三質問して参りました。今回の知事の力強い表明を受けまして、何点か新たな取り組みに絞って伺っていきたいと考えております。

  まず、確認の意味でシャコやマコガレイなど、東京湾の水産資源の推移についてお聞かせいただきたいと思います。

水産課長              

 東京湾の基幹漁業でございます小型機船底びき網漁業やアナゴ筒漁業の主な対象であるシャコ、マコガレイ、マアナゴの資源状況について説明させていただきます。

  まず、シャコについてでございますが、平成元年当時は約1,000トンの漁獲量がございましたが、その後貧酸素水塊の影響と考えられるシャコ資源の減少が続きまして、平成17年には漁獲量が激減して以降は資源の回復が見られないことから、昨年、一昨年は操業を自粛し漁獲がほとんどない状況となっております。

  次にマコガレイでございますが、昭和50年代には、マコガレイを主体にカレイ類の漁獲量が500トン前後で推移しておりましたが、平成元年以降の10年間は、ほぼ半分の250トン前後となり、近年は100トンを下回る状況にあります。

  最後に、マアナゴを主体とするアナゴ類の漁獲量につきましては、平成4年の約980トンをピークに減少傾向となり、ここ数年は160トン前後で推移しております。

   いずれの資源につきましても、最近の状況は低位・横ばいといった状況となっております。。

松崎         大変深刻な状況と受け止めました。実際地元の方々のお話を聞いても、やはり今の答弁と同じように厳しい状況であるというお話がどなたからもあるわけでございますが、東京湾の漁業の最盛期と今の漁船や漁業者の数はどういう状況でしょうか。

水産課長                 東京湾の漁獲量が3,000トンを超えていた昭和63年度の漁獲統計調査によりますと、横須賀の観音崎以北の漁業就業者は571名となっておりました。しかし、最近の調査である平成25年度は425名で、26%の減少となっております。

  また、知事の許可を受けて行う小型機船底びき網漁業の許可の漁船数でございますが、昭和62年9月時点では106隻、最近の平成29年9月では89隻と、16%の減少となっております。

松崎         水産資源の回復に向けて、東京湾について、これまでどういう取組を行ってきましたか。

水産課長                東京湾の小型機船底びき網やアナゴ筒の漁業者は、同じ海域で操業する千葉県や東京都の漁業者と連携して、休漁日や禁漁区の設定、それから漁具の規制などによる資源管理に取り組んできました。

  シャコにつきましては、平成17年に漁獲量が激減したことから、平成18年から約3年間、全面的なシャコの禁漁に取り組みました。操業再開後の平成21年からは、資源状況に合わせて、操業できる時期や1日の漁獲量に上限を設けるなど制限を設定して操業している状況でございます。

  また、ナマコにつきましても、1日の漁獲量に上限を設けたり、マコガレイでは出荷できる体長に制限を設けるなど、資源の適切な利用を図る取組を行っております。

松崎        その厳しい状況の中、今回新たな取組が提案されておるわけでありますが、資料によりますと海底の山状地形がポイントのようであります。これを具体的にどういう調査を行うのか説明してください。

水産課長                貧酸素水塊は、海底付近に発生し、海の底に溜まります。従いまして、海底に溜まった貧酸素水塊よりも高い場所にあれば、その高い場所に生息する魚などは貧酸素水塊の影響を回避できると考えます。

  そこで、山状の地形がある横浜市磯子区地先の杉田湾で、貧酸素水塊が発生する時期とそうでない時期に、海底に生息する底生生物の分布状況を調査し、地形と底生生物の生き残りの状況の関係を検討します。

  具体的には、山状の地形と周辺の平らな場所や窪地などで季節ごとに底生生物を採集し、底生生物の分布状況や季節変化を調査します。同時に海底付近の酸素の量を測定し、貧酸素水塊の影響と底生生物の生息状況の関係を明らかにして参ります。

松崎        磯子の地先で海底地形による生物への影響についての調査が、どういうふうにシャコなどの資源の回復につながるのかそこのところを説明してほしい。

水産課長                 シャコの産卵は春から夏にかけて行われます。近年のシャコ資源を支えていると考えられるのは、夏に生まれたシャコでございますが、このシャコが幼生の時期にプランクトンとして東京湾を浮遊した後、秋になりますと海底生活に移行いたします。

  海底生活に移行する場所としては、毎年貧酸素水塊が発生している千葉県沖など東京湾の奥から川崎沖にかけての海域が中心となりますが、夏を中心に発生する貧酸素水塊は、近年解消時期が遅れる傾向が見られます。秋にシャコの幼生が海底に降りる時期でも貧酸素水塊が存在し、生息できる場所が少なくなっているのが事実でございます。

  従いまして、幼生が降りる場所に山状の地形があれば、シャコの幼生が安全に海底生活に移行できるようになると考えております。

  今回の調査により、貧酸素水塊の影響がある磯子地先という実際の海域で、山状の部分が周辺よりも底生生物の生き残りに有利であることが明らかとなれば、山状の地形を人の手で造成することによりシャコなどの資源の回復につながると考えております。

松崎         調査結果を受けて実際に貧酸素水塊対策を実施して行く流れだと思いますが、これをどういうふうに進めていくのでしょうか。

水産課長                対策を実施するためには、調査結果をもとに、シミュレーション等を用いて山状の地形の造成効果を検討し、造成する実際の海域や規模を含めた具体的な対策案を作成する必要があります。海域の選定や資源の回復効果の検討にあたりましては、貧酸素水塊やマコガレイについての知見が豊富な千葉県と協力して実施して参ります。

  また、山状の地形の造成には大規模な土木工事が必要であることから、千葉県と連携し、科学的な裏付けのある具体的な提案により、対策の実施を国へ働き掛けてまいりたいと考えております。

松崎         実際に山状の地形を造成するとなると、どれくらいの土砂が必要なのでしょうか。また、その土砂はどうやって確保するのでしょうか。

水産課長                水産資源を復活させるのに必要な土砂の量につきましては、今回の調査研究でシミュレーションを行い、効果的な海域、生息する生物量などから推定していく計画でございます。

  これまでに行われた貧酸素水塊の発生を抑制する方法として、発生源であるヘドロのたまった海底にきれいな砂を被せる覆砂という方法がございます。

  しかし、東京湾では、覆砂の場合ですと18,500ヘクタール、一辺がおよそ14㎞の正方形の面積の漁場環境を改善する必要があると試算されております。これは、1mの厚さで覆砂したと仮定した場合、東京ドーム約150個分に相当する莫大な土砂が必要となります。

  過去に東京湾で行われた覆砂事業のうち、規模の大きなものとしては、千葉県浦安市沖で、国土交通省が平成17年から平成18年に行われた事業がありますが、この時の造成面積は45ヘクタールで、試算された東京湾の改善が必要な面積のわずか0.2%ほどしかなく、漁場環境の改善が必要な海域をすべて覆砂で行うのは非現実的と考えられます。

  そこで、今回取り組む山状地形を造成するという取組は、実効性が高く、また現実性の高い提案ができるものと考えております。

  造成にあたっては、東京湾で浚渫等により発生する良質の土砂を用いることが理想的ですが、湾内の浚渫でこのような規模の土砂を確保することは難しいと考えられます。従いまして、陸上の工事で発生する残土などの活用も必要になってくるのではないかと考えております。

松崎      

  陸上の工事で大量の土砂が出ると言ったら、誰が聞いてもこれから先出そうなものと言えば、例えばリニアの地下鉄工事とかそういった巨大公共事業、国家的公共事業に限られると思うんですけれども、そういうものを具体的に土砂として手当てしていくという考えでよろしいですか。

水産課長                その工事で発生する土砂が、漁場造成、山状地形の造成に適しているということが前提となりますが、そういったものの活用も含めて、国土交通省等に働き掛けていくことになるかと考えております。

松崎         今、国への働きかけというお話がありましたが、国と共同してやらないとこの事業は、実際、実施が難しいと思われますが、国といろんな意味で、例えば研究機関も含めて連携をしていくというのは、どんな考えでおられますか。

水産課長                研究機関の連携を図る最適な取組といたしましては、「東京湾研究会」の活用を想定しております。 「東京湾研究会」は、国の研究機関である水産研究・教育機構の中央水産研究所が横浜にございますが、そこが事務局となり、本県のほか千葉県と東京都の水産研究機関が参加し、東京湾の水産資源や漁場環境の回復等に係る研究情報の交換や、共同研究に向けた論議を行っているところでございます。

  また、最近、国の水産研究・教育機構や千葉県などと東京湾のマコガレイに関する共同研究や、国立研究開発法人「国立環境研究所」と東京湾のシャコに関する共同研究に取り組んでいるところでございます。 今後、具体的な対策案の検討にあたりまして、この「東京湾研究会」や共同研究の成果を積極的に活用して参りたいと考えております。

松崎         環境研究所はわが会派、環境農政のチームでお訪ねして、温暖化対策等についても知見を伺ったところですし、中央水産研究所につきましては、私の地元である金沢区にございまして、地元の状況についてもよくご存じかと思われますので、ぜひ連携を深めていっていただきたいと思います。

  もうひとつ伺いますが、江戸前ブランドである「小柴のシャコ」の復活を目指すとはっきりおっしゃっているわけですが、いつ頃までにどれくらいの漁獲量、漁獲高を目指されるのか、お聞きします。

水産課長                 「小柴のシャコ」の復活につきましては、激減する直前のシャコの年間の平均水揚量の約300トン、漁獲高では約3億円まで回復させたいと考えております。

  なお、時期につきましては、この事業で水産資源を復活させるために必要な山状の地形の規模や、効率的な設置海域を推定して参りますので、その結果をもとに、目標を設定したいと思います。

松崎         再度聞きます。漁獲高は3億円ですね。漁獲量は。

水産課長                 漁獲量は300トンでございます。

松崎       (要望) ぜひ一刻も早く結果を出していただきたいということを要望させていただきたいと思います。それと同時にそのためには国、それから沿岸自治体との積極的な協力というものが必要かと思いますので、その連携の強化もよろしくお願いします。