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平成30年 予算委員会質疑要旨(3月15日(木))

【人生100歳時代の取組と出産支援について】

松崎        実際に来年度の取組の中に、子ども、それから現役世代、そして高齢者における取組があるところだけれども、重点的な取り組みとしての「人生100歳時代の取組」の中には、人生のスタートラインである、肝心かなめの「出産に対する支援」が見当たらないわけであるが、産科医療の体制整備を所管する保健福祉局としては、どう考えているか。

足立原医療課長    この出産に対する支援は、大変重要であると考えております。県民のみなさまが安心して出産できる環境、これを目指しまして、様々な取組を行っているところです。

松崎        重要だという答弁は得たわけだが、従来の施策体系に入っているということを恐らく意味されていると思うが、人生100歳時代と銘打って進めていこうという時に分野横断的な取り組み、クロスファンクション含めてあるかと思うわけで、そうすると、あえて特定の年代を除外しているとまでは言わないが、そういう必要はないと、やはりこれは人生100歳時代、知事のおっしゃるとおり、生まれてから、もっと言えば、生まれる前から、ひとつらなりの取組みとしてやっていただきたいと提言として述べておく。

 さて、神奈川県内の産科医師の数について、直近4か年の推移を伺いたい。

足立原医療課長    産科の医師数でございますが、厚生労働省が「医師・歯科医師・薬剤師調査」という調査を実施しています。この調査は2か年ごとに実施しておりますので、直近4年間の調査結果の推移でお答えいたしますと、県内の産科医師数は、古いほうから、平成24年が722人、平成26年が744人、平成28年が772人となっており、平成24年から28年の4年間で50名の増加となっています。

松崎        50名の増加とのことです。もう1点聞きます。県が医師確保対策として行っている事業に修学資金貸付事業があるが、貸付を受けた医師の県内定着率を伺いたい。

足立原医療課長    今、委員がおっしゃいました、医師修学資金の貸付事業、この事業は平成21年度から実施していまして、これまでに合計127人に対して貸付けを行って、すでに23人が卒業しています。

 この卒業した23人のうち、平成29年4月現在で県内医療機関に勤務している者、これが21人おりまして、県内医療機関への定着率は約91%となっております。

松崎        私が大変気になり、今日聞きたいことは実は、地域的な偏りです。分娩数も下がってきており、また直ちに産科医師数が不足しているとは言えないかもしれないが、私が危惧するのは、その地域的な偏りである。例えば07年から分娩取り扱いを中止している三浦市立病院、また助産院が1箇所ということで産急車の導入している湯河原町、また私の地元の横浜市金沢区においても実際に分娩できる施設が3箇所にまで減少し、分娩ひっ迫地域が生じているように思うが、当局の見解を伺いたい。

足立原医療課長    分娩を取り扱う医療機関ですが、二次医療圏別で見ますと、最も多い横浜地域が53施設、最も少ない県西地域ですが4施設でして、もちろん人口の分布の違いもございます。また横浜市域は、今、委員おっしゃったとおり区ごとのばらつきもありますが、地域的な偏在はあると認識しています。

 また、市町村別で見ますと、分娩ができる施設がない市町村が10市町村ございまして、そうした市町村に住まれる方々からすれば、近くに分娩施設がないという感覚を持たれるのではないかと認識しているところです。

松崎      

 大変深刻な事態であると私は受け止めている。 ○ そこで伺うが、先ほど答弁があった修学資金貸付、90%の定着率ということで、そういったものを通じて、つまり県の施策によって、分娩ひっ迫地域に医師を確保しおおせるということはできないのか。

足立原医療課長    今ご質問がございました、修学資金を貸与して医師になった医師ですが、この医師の専攻、例えば産科を専門にしたい、その専攻を決めるのは、卒業して2年の初期の臨床研修を終える時点で、本人の希望を踏まえ、県知事が決定するという流れとなっておりますけれども、この段階から産科医になりたいといった人は産科医としての専門知識とか技能を身に付けていくことになります。

 修学資金を貸与している医師ですが、まだ若いといいますか、この臨床研修を終えて間もない時期ですので、十分なチームがいるところに追加することはできるかもしれませんが、分娩を休止しているなど、今指導医がいない。こういうところに経験が浅い医師だけを産科医師として派遣することは、今現在ではちょっと難しい状況にあると認識しております。

松崎        出生数1万対分娩取扱医療機関の数を調べてみたが、23年度では本県は14.6施設で全国最低である。また、分娩取扱機関は、平成20年度、本県は164機関から、平成29年度には147機関となっており、わずか9年間に17箇所減少している。つまり、ここからいえることは、身近な分娩取扱機関で分娩ができるように、機関数を増やさなければいけないのではないかということあり、この点について見解を求める。

足立原医療課長    県民の皆様にとって、自宅に近い身近なところに分娩取扱機関があった方が、より望ましいことであるとは考えています。

 しかしながら、全国的に産科の医師が不足していること、それから出産年齢が高齢していることに伴い、ハイリスク分娩が増加していること、それに対応できる人員体制が必要であることから、ひとつの出産、ひとつの分娩に関わる医師あるは看護師の数は増加している状況にあります。

 こうしたことから、分娩を扱う施設は拠点化ですとか集約化する方向にあり、例えば、増やしたいというということでありますけれども、例えば産科医師が1、2名といった小規模な分娩施設を増やしていくこと、はちょっと難しい状況にあると理解しています。

松崎        そうはいっても、やはり分娩取扱機関が減ってくるのは、県民にとって大変心細いと思う。取り扱いをやめてしまう理由として、医師が確保できないというのが大きな理由であろうから、やはり、医師の数を確保しないとこの問題の根本的な解決にはつながらないと思う。

 ではお聞きするが、産科の医師が増えない理由を端的に、県当局はどのように考えているか。

足立原医療課長    産科医師がなかなか増えない理由ですけれども、まず出生数が減少し少子化が進む中で、一時期、医師を目指す学生等に、産科医は将来的に余ってしまうのではないか、こういった危惧あり、一時的に産科の志望する医師が減ってしまったという状況がありました。それから一般的に当直が多いなど、勤務環境が苛酷であると言われております。

 また、出産時の死亡ですとか傷害などに関して、訴訟になるケースが他の診療科に比べて多い、あるいは、女性医師の割合が他の診療科と比べて高いことから、自らの出産等や結婚に伴い休職や離職するケースがあります。こういったところが主な理由となっていると承知しています。

松崎        訴訟に巻き込まれるリスクが高いと従前から言われていたが、この問題意識から産科医療補償制度が創設をされた経緯がある。

 無過失補償を認めたということで、非常に画期的なものだと当時受け止められたが、こういう制度がありながら産科医師の確保について課題もあるといわれるというのはどのような課題認識であるか。

足立原医療課長    今、委員ご質問にございました産科医療補償制度ですが、公益財団法人日本医療機能評価機構が、平成21年度から実施している事業です。

 こういった事業がございまして、無過失保障、過失があろうがなかろうと保証するというところは画期的な事業、保障制度であると思いますが、課題として、例えば、脳性麻痺に限って補償対象になっている、あるいは在胎週数が28週以上のものが対象となっているように対象が限られているところが課題として指摘されているところ、それから加入者が医師ではなくて医療機関であることがもう一つの課題であり、最後に補償は行うが訴訟の減少に直接つながるわけではないという見解が示されている。こういったところが制度の課題として指摘されているところです。

松崎        今、参加医療保障制度の答弁だったわけだが、もう一つあり、過酷な労働条件点である。これについては、処遇を改善するのが一番効果的であると思うが、ただ一点気にかかる動きがあり、それは、専門医養成にかかる研修が基幹病院に限定されている。処遇改善を含め、基幹病院への産科医師の集約化の方向へ誘導されているように感じる。基幹病院に所属しないと専門医を取得しにくいという現状の中、この制度は県内分娩ひっ迫地域を益々増やしてしまう気がしてならない。当局の見解は。

足立原医療課長    新たな専門医制度ですが、この4月から始まります。県といたしましては、これにより医療の質の一層の向上が図られるという面では期待しているところですが、一方で、都市部の大きな病院に専門医を取得したい医師が集中して、中小の病院や診療所に医師が来なくなってしまうのではないか、これは産科に限りませんが、こういった懸念の声を聞いているところです。

 県では新たな専門医制度への対応について、県内の医療関係団体と連携して検討を行い、これまでも制度の運営主体である日本専門医機構に対し、地域医療に十分に配慮するよう意見を申し入れてきました。

 今後、4月以降の制度の動向を注視しつつ、引き続き県内病院や医療関係団体と連携し、必要に応じて日本専門医機構や厚生労働省に対して意見を伝えていきたいと考えています。

松崎        では伺うが、県内分娩ひっ迫地域をどう解消していくのか、この点何か決め手はないのか。また、分娩ひっ迫地域の実態調査の実施も求めたいのであるが、具体的な解消策を保健福祉局長に聞きたい。

武井保健福祉局長                全国的に産科の医師が不足している状況ですが、こうした中にあって、分娩ひっ迫地域の抜本的な解消は、非常に難しい課題であると認識しております。

 分娩環境の確保に向けて、まずは県内の医療機関で勤務する産科の医師を確保・育成していくことが基本であると考えています。

 そうした観点から県では、委員からのご質問もございましたが、県内の4医科大学に地域枠を設定いたしまして、入学定員を増やすとともに卒業後の一定期間、県内の医療機関に勤務することを要件に、修学資金の貸付けを行っているところです。

 この制度は平成21年度から実施しているところですが、これまでのところ、産科を希望する6名を含む21名の医師が県内の医療機関で実際に勤務をしているところであり、引き続きこの制度を活用し、県内で勤務する産科医師を確保し、医療人材の底上げを図ってまいりたいと考えています。

 また、委員からは分娩ひっぱく地域の実態調査についてもご指摘を頂きました。現在、県では分娩取扱施を対象とした、産科医療及び分娩に関する調査を実施しており、今後この調査の方法を工夫して、分娩施設がない市町村へヒアリングを実施するなどの方法により、実態調査を実施する方向で検討していきたいと考えております。

松崎      

 ちなみに、市町村の事業ではあると思うが、母子健康包括支援センターについても、横浜市などでは手薄だ、という声を聞いている。日本における母子健康包括支援センター1か所当たりの人口の平均はどれくらいなのか、また、本県場合はどうか伺いたい。

鈴木健康増進課長                平成29年7月1日現在、全国で1,106あるセンターの1か所あたりの平均人口は約11万4千人です。同じく81ある県内センターの1箇所あたりの人口は約11万3千人です。

松崎      

 母子健康包括支援センター1箇所あたりの人口はかなり多いと受け止める。そして、指摘したとおり、大都市部では母子保健が手薄になりがちとの危惧を覚える。

 そこで伺うが、分娩、そして産前産後のフォローを考えていかなければ、安心して子どもが産める環境とは言えないと思う。子育てが着目される今、産前産後のことも含めて、これから取り組んでいただきたいが、人生100歳時代のスタートであるこれらについて、今後どのように取り組んでいくのか、知事に伺いたい。

黒岩知事                人生100歳時代の取組みをすすめる上で、そのスタートである分娩環境の確保、産前・産後の助産婦への支援は大変重要であると考えています。こういった問題を論ずる時によく、アクセス、クオリティ、コストはどうなのか、こういった考え方をします。どれだけ近いか、そして質はどうなのか、コストはどうなのか、全部を求めることはなかなか難しく、どれを優先するかですが、私は、産科については、クオリティが非常に大事だなと実は思っております。

 個人的な体験で、実は私には1歳半の孫がいますが、生まれるときにわずか千グラムで生まれてきました。そのときに早くそれがわかったので、ずっと医師が集まっているところにいまして、そして無事に出産できて、とっても元気にしています。クオリティはすごく大事で、そのためにはハイリスク分娩に対応できるような産科医師を集約した拠点づくりが非常に大事なことだと改めて痛感した次第であります。

 その上に、子育て世代包括支援センター、こういったものをしっかり充実させながら皆様の満足感を得られるように、しっかりとこれからも努力していきたい、とそういうよう考えております。答弁は以上です。

松崎      

 分娩ひっ迫地域の解消と母子保健を包括的に支える仕組みに確実に取り組んでもらい、人生100歳時代の幕開けを輝かしい門出とするよう要望して、私からの質問を終わります。