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2018年12月12日

(質問要旨) 本県の財政状況について

(松崎)

  これまで私は、中期的な財政計画や、県債管理目標の必要性を訴えるなど、財政問題について数々の提言を行ってきた。それを受け、中期財政見通しの策定が進み、県債管理目標の改定が行われ、県債残高も減少に向かうなど、財政健全化の取組みは一定の進展があったと認識している。

  一方、本県の平成31年度当初予算編成に向けては、約600億円の財源不足が見込まれており、財政運営の厳しさは変わっていない。

  本年6月の代表質問でも、中期財政見通しの見直しや、財政健全化の取組み方向について質問したところであるが、ここで改めて本県の財政状況を確認したい。

  はじめに、中期財政見通しにおける推計と、予算編成通知で明らかにされた平成31年度の財政状況の違いについて確認したい。

   まず、確認の意味で伺うが、財源不足についてはどうなっているか。

(財政課副課長)

  「中期財政見通し」の策定時点における平成31年度の推計値と、実際の平成31年度当初予算編成に向けた依命通知での財源不足とを比較すると、中期財政見通しでは 950億円となっていた財源不足額が、今回の依命通知では 600億円となり、350億円の改善が図られている。

(松崎)

  350億円の差が生じた要因は、どのように考えているか。

(財政課副課長)

  「中期財政見通し」との差の要因について、まず、歳入面では、県税収入が、企業収益の増等により、税交付金等を差し引いた実質ベースで、約430億円の増。

  一方、地方交付税と臨時財政対策債の総額は、県税収入の増などに伴い、約190億円の減。  また、歳出面では、公債費が約140億円の減など。

  これらの増減を合わせると、「中期財政見通し」における財源不足額の950億円と比べ、350億円、財源不足が縮小している。

(松崎)

  中期財政見通し策定当時と比較して、公債費が140億円減少しているという話があったが、その要因はなにか。

(資金・公営事業組合担当課長)

  大きな要素としては、現在、日銀の金融緩和の影響により歴史的な低金利環境が継続しており、中期財政見通し策定時の平成28年以降、低利で県債の発行が続いていることによる利子の減が要因としてあげられる。  また、平成26年度から県債残高が減少に転じており、こうした県債残高の減少も公債費減少の要因の一つとしてあげられる。

(松崎)

  私が訴えてきた県債残高の抑制や昨今の経済情勢を反映した利率の変動もあり、財政状況の改善に寄与しているのは喜ばしい。

 その県債現在高について伺うが、まず確認の意味で、ここ数年の現在高の推移を確認しておきたい。また、そのうち臨時財政対策債の現在高はどれくらいか。

(資金・公営事業組合担当課長)

  新たな県債管理目標を設定した平成27年度末以降の県債現在高は次のとおり。  (平成26年度末をピークに残高は減少)   

平成27年度 3兆6,011億円   

平成28年度 3兆5,677億円   

平成29年度 3兆5,061億円

  このうち、臨時財政対策債の現在高は次のとおり。  (残高は年々増加している)   

平成27年度 1兆8,155億円   

平成28年度 1兆8,477億円   

平成29年度 1兆8,617億円

(松崎)  臨時財政対策債は残高の半分以上を占める状況であり、速やかに本来の地方交付税に戻すべきである。臨時財政対策債をめぐる最近の国の状況はどうか。

(財政課副課長)

 今年の6月に国が公表した、「経済財政運営と改革の基本方針2018」、いわゆる「骨太の方針」において、臨時財政対策債等の発行額の圧縮、さらには、臨時財政対策債等の債務の償還に取り組み、国と地方を合わせたプライマリーバランスの黒字化につなげるとの方針が示された。

  今回、初めて臨時財政対策債の発行額の圧縮が明記されたが、これは、臨時財政対策債の廃止に向けた、これまでの本県や地方団体の粘り強い要望活動が一定の成果を挙げたものと受け止めている。

(松崎)

  国が地方財政制度の見直しを進めるのであれば、昔から言われている国税と地方税の問題、すなわち仕事量は地方が6割なのに、地方税は4割という問題も見直していくべきではないか。

(財政課副課長)

  現行の地方税財政制度では、地方と国の税源配分が4対6であるのに対し、歳出規模は6対4と逆転しており、地方は仕事量に見合った税源を確保できていない、という根本的な問題がある。

  問題の解決にあたっては、消費税と地方消費税の配分の見直しや、所得税から住民税への一層の税源移譲など、多岐にわたる税制の見直しが必要となるが、今後も他の地方団体と足並みを合わせ、国に改善を要望していく。

(松崎)

  次に、これも私が提案した、公債費減少の要因の一つである、市場公募債の定時償還方式の導入について伺いたい。  定時償還方式とは、家計に例えれば、住宅ローンのように、元金の返済を少しずつ進めるやり方のことである。本県でも、昨年の11月9日に初めて20年債を200億円で発売したところ、即日完売するなど、投資家にも好評である。

  まず、市場公募債への定時償還方式導入のメリットを確認したい。

(資金・公営事業組合担当課長)

  満期一括償還方式は、満期が到来するまでは利子のみを返済し、元金を返済しない方式である。投資家の需要は高いものの、満期までの間は元金が減少せず、借入額全額に対する利子を払い続ける必要がある。

  一方、毎年一定割合を定期的に返済する定時償還方式は、返済するたびに元金が減少し、それに伴い利子も減少していくため、満期一括償還方式に比べ、利子負担が小さくなるというメリットがある。

(松崎)

  では、(20年債ということで)20年間総体として利子低減効果はどれくらいと見込んでいるか。

(資金・公営事業組合担当課長)

  29年度発行の定時償還債について、同時期に同年限の満期一括償還方式の市場公募債を発行したと仮定した場合に比べ、20年間の利子総額では、約16億円少なくなる。

(松崎)

  場公募債の定時償還が公債費の減少に寄与するのであれば、その範囲を拡大すべきではないか。

(資金・公営事業組合担当課長)

  投資家の視点では、満期一括償還方式の市場公募債を購入した場合、毎年同額の利子が支払われ、満期になると元金が全額戻る仕組みのため、(単純で)管理がしやすい利点がある。

  しかし、定時償還方式の場合、毎年元金が少しずつ戻る他、毎年減っていく元金に応じ、利子も毎年減っていくことから、管理が煩雑で、これに対応できる投資家は限定的となっている。

  そのため、市場では未だ満期一括償還方式での発行が主流となっている状況である。

  本県でも、定時償還方式の県債を大量に発行し過ぎてしまうと、それを購入できる投資家が見つからず、金利の上乗せを求められたり、また、発行額を消化しきれないことも考えられる。

  したがって、定時償還方式の市場公募債の発行規模については、経済環境や金利の動向、投資家の需要動向など市場環境全般をも見極めながら、発行額や発行回数を検討していきたい。

(松崎)

  県債残高をしっかり管理していくことが将来の公債費の減額につながるものであるが、今後の公債費をどのように見込んでいるか。

(資金・公営事業組合担当課長)

  平成20年度に発生した、リーマンショックに端を発する景気低迷に伴い、平成21年度以降に大量発行を余儀なくされた臨時財政対策債の償還が本格化し、年々償還額が増えていることから、しばらくの間公債費は増加する見込み。

  今後の県債発行額や、金利の動向により左右されるため、具体的な予測は難しいが、平成28年3月に取りまとめた中期財政見通しをベースとし、仮にこの中期財政見通しで示した期間の後(33年度以降)も同額の県債を発行し続けると仮定した場合、公債費は平成30年代半ばまで増加し、ピーク時には3千数百億円程度と見込まれる。

(松崎)

  財政健全化の視点からは、「平成35年度までに県債全体の残高を2兆円台に減少」という、県債管理目標の達成は特に重要である。

 目標達成に向けて、当面の見通しはどうか。

(資金・公営事業組合担当課長)

  平成28年3月に策定した新たな県債管理目標は、27年度末の県債残高 約3兆6,000億円(3兆6,011億円)を8年間で 6,000億円以上減らそうという非常に高い目標。

  中期財政見通しをベースとして、中期財政見通し後の33年度以降も同様に県債を発行し続けると仮定した場合、目標達成は困難。

 目標達成のためには、そこからさらに毎年150~160億円程度の発行抑制が必要。

  ここ2年の当初予算編成では、2年連続で減収補塡債を発行せざるを得ない状況となっており、平成30年度末時点での状況は、目標達成の抑制と比べ、400億円強、抑制のペースが遅れている計算。

(松崎)

  県債管理目標の達成に向けて、発行抑制のペースが400億円以上も遅れているとの答弁だが、目標達成が遅れるほど、公債費負担は県財政を圧迫し続けることになり、健全財政の観点からは大問題である。

  目標達成に向けて、どのように取り組んでいくのか。

(財政部長)

  本来、国から地方交付税で措置されるべき財源が、臨時財政対策債とされてしまい、県債発行の増加を余儀なくされ続けてきた経過がある。

  現在、本県が発行している県債の約7割は臨時財政対策債であり、この部分を抑制しない限り、県債管理目標の達成は困難。

  先ほど財政課副課長が答弁したとおり、今年度の「骨太の方針」では初めて臨時財政対策債の圧縮に言及されたが、今後も引き続き、臨時財政対策債の廃止に向けて、粘り強く要望を続けていく。

(松崎)

  県債管理目標の進捗状況について、現時点で約400億円強の規模で抑制のペースが遅れているとのことである。本県は多額の臨時財政対策債を発行しているほか、ここ2年は減収補てん債も発行しているなど、このままでは目標達成は容易ではない。  県債管理目標の達成は、今後の財政運営において、公債費の縮減を図っていくうえでも大変重要なことである。ぜひ、その達成に向けて努力を重ねていただきたく、強く要望する。