2019年5月17日

質問要旨「財政問題について」

これまで、私は財政問題を継続的に取り上げ、県当局とも繰り返し議論してきた。

 例えば、平成19年当時、プライマリーバランスの赤字は将来世代への負担の先送りであることを指摘し、以降、その黒字化の重要性を訴え続けてきた。途中、リーマンショックによる逆風もあったが、私はこの問題を提言し続け、平成25年度には、平成30年度までのプライマリーバランスの黒字化達成と、平成35年度までの県債残高の減少という、当初の県債管理目標が設定された。

 この当初の目標の設定後も、私は引き続き前倒し達成の必要性を提言し、その結果、平成26年度にはプライマリーバランスの黒字化、平成27年度には県債残高の減少と、いずれも前倒しで目標が達成された。

 その後も、更に積極的な県債管理の目標を検討すべきとの提言もさせていただき、「令和5年度までに県債残高を2兆円台圧縮する」という、現在の県債管理目標が設定されたところである。

 この現在の県債管理目標についても、昨年12月の議会で約400億円の発行抑制ペースの遅れを明らかにし、3月の予算委員会ではそれが約50億円に縮減したことを確認させていただいた。

 また、将来的な財政見通しについては、平成26年当時、策定されていない状況だった。当時は緊急財政対策が一段落した状況だったが、私は中期的な財政見通しや健全化方策を策定すべきことを提言、当時の財政部長から前向きな答弁をいただき、平成28年度の中期財政見通しの策定につながっている。

 この中期財政見通しについては、策定当時からの状況の変化が大きいことから、3月の予算委員会でもその見直しの必要性を取り上げ、知事からは「今年度中に推計し直す」との答弁をいただいている。

 以上のような、これまでの私と財政当局との議論が、今回の第2期行政改革大綱において「財政改革」として取り上げられていることについては、一定の評価をしているところである。

 そこで、この財政改革について、何点か伺いたい。

1 米中経済摩擦が解決しない中、政府の景気判断も悪化しているとの報道がある。 そうした背景のもとで中期財政見通しを改定するのは大変だが、今年度中に改定する方針は変わらないか。         

(財政課長)

○ 財政運営の方向性をしっかりと見定め、持続可能なものとしていくためには、「中期財政見通し」について、環境の変化を踏まえた推計を行っていくことが大変重要と考えている。

○ 現行の「中期財政見通し」は、平成28年3月に策定したものだが、財源不足額は策定当時の推計を下回って推移するなど、県財政を取り巻く環境は大きく変化している。

○ また、「幼児教育の無償化」や「地方法人課税における偏在是正措置」など、県財政に大きな影響を及ぼす国の制度改正の内容が明らかになり、今年の10月には消費税の引上げも実施される予定。

○ こうしたことから、3月の予算委員会で知事が答弁したとおり、推計期間の最終年度である令和2年度を待たず、今年度中に改定する方針に変わりはない。

2 中期財政見通しの策定に当たっては、歳入の6割以上を占める県税収入の見積もりが重要な要素になる。税収は、経済状況の影響を受けやすいため、見積もるのは大変だと思うが、いつ頃になれば、精度の高い税収見積もりが出来るのか。

(税制企画課長)

○ 中期財政見通しの策定に当たっては、発射台となる令和2年度の税収を的確に見込むことが必要。そのため、まず、今年度(令和元年度)の主要税目の税収動向を出来るだけ正確に把握し、それを踏まえて

令和2年度の税収を見込むこととなる。

○ 具体には、

・ 個人県民税では、均等割・所得割の定期課税の状況や、配当割・株式等譲渡所得割の申告実績、

・ 法人二税では、3月期決算法人の申告実績、

・ 地方消費税では、国から県への払込実績、

・ 自動車税では、定期課税の状況

などを把握し、それらを踏まえることとなる。

○ こうしたことから、今年度を通じて精度の高い税収見積もりが出来るのは、それらの要素の大部分が判明する、(今年度最終予算・来年度当初予算の算定作業になる、)年明けの令和2年1月頃になる

3 自分は2008年、平成20年当時のリーマンショックを経験しているが、あの時は税収がどんどん下がっていった。特に翌年度、平成21年度の税収見通しは、大幅な減収になっていたと記憶している。そこで確認だが、当時の税収減は、具体的にどの程度だったのか。

(税制企画課長)

○ 平成20年9月に始まったリーマンショックによる、世界規模での景気の悪化を受けた県税の減収影響は、20年度の段階ではまだ本格化していなかったが、法人二税で約190億円の減収、県税及び地方譲与税等の計では約290億円の減収となった。

○ 21年度には、21年3月期の全国の上場企業の企業収益が▲63.9%となり、法人二税への減収影響が特に大きく現れた。

○ 21年から、法人事業税の一部を国税化し、譲与税として地方に再配分する税制改正(地方法人特別税・特別譲与税の創設、20年10月1日以降開始事業年度から適用)も行われたため、法人事業税と地方法人特別譲与税を合わせた額での比較となるが、

○ 本県の21年度の法人二税の税収は、前年度に比べて、約1,300億円の減収になった。

4 大規模な税収減を埋めるのは大変なことである。 確認だが、当時はその税収減をどのようにして埋めたのか。

(財政課長)

○ 平成21年度の県税及び地方譲与税の総額は、前年度から約1,670億円の減収となっている。

○ 平成21年度の当初予算編成では、地方交付税及び臨時財政対策債の総額で約1,070億円の増などを見込み、一旦は財源不足を解消したものの、21年度に入ってからも税収の減収幅が拡大し、21年度の当初予算と決算の比較では、その差額である約600億円の減収となった。

○ 21年度中の減収分(約△600億円)については、

・ 歳出面では、

○ 節減・抑制による歳出の減 △36億円

・ 歳入面では、

○ 減収補塡債(特例分)の発行 +709億円

などにより補った。

5 翌年度の税収減の見込みについては、地方交付税や臨時財政対策債を国から確保することが可能だが、当年度中の財源不足については、そうした対応ができない。当年度中の財源不足対策として、先ほど減収補塡債の発行という話が出たが、今後、同様の税収減が生じた場合、どのように対応するのか。 

(財政課長)

〇 当年度中の税収減等に伴う財源不足への対応については、

・ 歳出面では、

○ 年度途中の執行抑制、

・ 歳入面では、

○ 減収補塡債の発行

○ 財政調整基金の取崩し

などによる収入確保が考えられる。

6 当年度中の財源不足対策として、減収補塡債の発行や財政調整基金の取り崩しなど、色々な方法がある中で、県としては、どれを優先していくのか。

(財政課長)

○ 財源不足に対する具体的な対応については、財源不足の規模や財政調整基金の残高など、その時々の財政状況に応じて検討することになるので、優先度については、一概には申し上げられないが、現実には、様々な手法を組み合わせて対応することになると想定している。

○ 都道府県は、(普通会計上の実質)赤字額が標準財政規模の5%を超えると財政再生団体となることから、本県ではこれと同程度の額、平成30年度では約640億円となるが、これを当面の目安として、財政調整基金の着実な積み立てに努めてきたところ。

○ 財政調整基金については、使い切ってしまうとそれ以上何もできなくなることに加え、積み立て直すには多くの時間がかかる。

〇 30年度末時点における残高見込みは約590億円であり、先ほどの目安の額を下回っていることから、その取崩しには慎重な判断が必要であり、減収補塡債など、その他の手法を主として活用しながら、補助的に基金を使う、というのが基本となると考える。

7 税収減を埋めるために減収補塡債などを発行すると、その分、県債管理目標の達成も難しくなっていく。 県は、そうした場合でも県債管理目標を堅持していくつもりなのか。                     

(資金・公営事業組合担当課長)

○ 減収補てん債などの発行は、その分県債残高が増えることになるので、委員ご指摘のとおり、県債管理目標の達成に向けては、マイナス要因になる。

〇 しかし、県債発行によって生じる義務的経費である将来の公債費負担を減少させるためには、必要不可欠の取組みである。

〇 後年度の健全な財政基盤を構築し、将来にわたり必要な県民サービスを維持するためにも、県債管理目標は堅持していく所存。

8 県債管理目標を堅持するのは良いが、景気の後退局面では適切な経済刺激策が必要で、行政による資金投入も必要になる。景気刺激につながる有効な施策には、県債を発行してでも手を打っていくべきである。 一方で、景気刺激策などは規模が大きくなりがちであり、その施策の見極めには、EBPMの役割がこれまで以上に重要になると思うが、財政当局の見解を伺いたい。        

(財政課長)

○ 本県では、これまでも「経済のエンジンを回す取組」を進め、税収基盤の強化を図ってきたが、特に景気後退局面では、適切な景気刺激対策を行っていく必要があると認識している。

○ 厳しい財政状況の中、こうした対策を行うためには、より効果的な事業に、限られた資源を重点的に配分する必要があり、EBPMは、そうした施策の絞り込みにも有効だと考えている。

○ 今年度の当初予算編成でも、(維持運営費などを除く)原則としてすべての事業で、EBPMの考え方に基づき、検証可能な成果目標を設定した。

○ 個別の事業ごとに、事業と成果との因果関係を明確にした数値目標を設定することで、従来の手法と比べて、より具体的に成果が検証できるようになったと考えており、委員ご指摘のとおり、EBPMの役割はこれまで以上に重要になると認識している。

9 一方で、EBPMには馴染まない性質の事業もあると思う。福祉関係の事業や、教育施設の耐震化などは、EBPMの議論以前に、行政としてやらなければいけないこともあると思う。 県は、予算編成において、今後EBPMをどのようにして活用していくのか、最後にその考え方を確認したい。  

(財政課長)

○ 今年度の当初予算編成では、原則としてすべての事業で、EBPMの考え方に基づき、検証可能なアウトカムを設定した。

〇 ただし、課の運営費や施設の維持運営費など、明らかにEBPMの考え方に馴染まない事業については、アウトカムの設定は不要とし、介護・医療・児童関係費や、教育施設の耐震化などについても、EBPMの考え方は取り入れられていない。

○ 庁内からは、EBPMの考え方を取り入れる事業を明確化するべきとの意見も出されており、働き方改革の観点からも、令和2年度当初予算編成に向けては、EBPMによる検証が必要な事業とそうでない事業を見極めた上で、その活用を検討していきたいと考えている。

○ EBPMの活用は、今年度の当初予算編成がはじめてのことであり、試行錯誤の部分もあったが、まずは第一段階として、翌年度以降の成果検証に活用可能なアウトカムを設定することができた。

○ (先ほど答弁したとおり)EBPMの役割はこれまで以上に重要になると考えているので、EBPMの活用を図る事業については、今後、今年度設定した成果目標を徹底的に検証し、より成果に着目した「スクラップ・アンド・ビルド」を行うことにより、さらなる活用を図っていきたい。

(要望)

先日の内閣府の発表によると、3月の景気動向指数は、基調判断が「悪化」に引き下げられた。また、現在の米中貿易摩擦を背景に、海外経済は停滞が懸念されており、税収動向は一層注視していく必要がある。

これまでとは状況が変わりつつある今こそ、中期財政見通しを改定する意義は大きいと思うので、予定通り今年度中の改定をお願いしたい。

また、これから景気後退が進んだ場合、何らかの財政出動の場面も出てくると思うが、どうしても大盤振る舞いになりがちである。今回の議論でも明らかになったように、新たな財政支出を行う場合は、その必要性を十分に見極め、メリハリをつけて対応すべきである。その際、EBPMは重要な鍵になる。

EBPMを始めとした客観的な指標を適切に使わないと、県債管理目標も疎かになり、それは将来世代の大きな負担につながっていく。県ではEBPMをしっかりと根付かせ、引き続き健全な財政運営を続けてほしい。