2019年10月1日(火) 

総務政策常任委員会(立憲民主党・民権クラブ 松崎 淳委員)

 基地問題について伺う。先般、議会局を通じて、沖縄県が実施した他国地位協定に関する調査報告書が配布された。これは、沖縄県が、職員を欧州4カ国に派遣するなど、2年間にわたる調査の結果をまとめたものである。報告書では欧州諸国が米国と締結している地位協定と、日米地位協定との間に様々な違いがあることが指摘されている。本県で基地対策行政を進めるうえで参考にすべき点が多いものと考えている。

そこで、ヨーロッパ諸国と比較した日米地位協定の課題について、また、昨年進展のあった横浜市内の米軍基地を巡る動向について、最新の状況も含め何点か伺いたい。

 まず沖縄県の調査によると、ヨーロッパ諸国がアメリカと締結している地位協定は、これは日米地位協定と異なって、国内法の適用を原則としているということである。この点について、神奈川県または渉外知事会では、日米地位協定の見直しを国に求めているのか。

基地対策課長

 渉外知事会では、日米地位協定について要望を行っているところである。

今年度実施した、渉外知事会の基地対策に関する要望書では、昨年度、色々と特別要望を行ったことから、その内容を盛り込んで、これまでの、基地使用の可視化や、国内法適用の拡充などからなる6本の柱、15項目の要望から、7本の柱、19項目の要望に拡充して、日米地位協定改定に向けた取組の強化を図ったところである。

 拡充を図った内容としては、航空法令など、米軍の活動に国内法を適用すること、そして、基地内の活動について、安全管理に万全を期すこと、そして、基地の外における米軍の演習・訓練は必要最小限にすること、そして、米軍人等に対し教育・研修を徹底するなど、事件・事故を防止するための取組に努めること、といった4項目について、新たに要望したところである。

松崎委員

昨年12月の常任委員会で確認したところであるが、日米地位協定では米軍が基地の使用を終わった場合、終了した場合には、速やかに日本側に基地を返還しなくてはならない、そういう規定が置かれている。この点について、沖縄県の調査対象となったヨーロッパ諸国ではどうなっているのか、もし分かればお答えいただきたい。

基地対策部長

 まず、沖縄県の調査に関してお答えすると、沖縄県の調査では、お尋ねのあった基地の返還については調査対象としていない。

 では実際どうなっているのかということであるが、調査対象となった4カ国はNATO、北大西洋条約機構の加盟国であって、NATO軍の統一の地位協定に加盟している。ただし、NATO軍の地位協定においては、基地の使用・返還についての条文は存在しない。そのため各国が米国などの派遣国と、個別の取決めを結んで、例えば、補足協定や、基地の使用協定といった形で、基地の使用や返還などについて取決めを行っていると考えられる。ただし、イギリスとベルギーについては、明文の統一的な補足協定は締結していない。イタリアは、基地ごとの使用協定を締結しているが、非公開ということで、実態がよくわからないというところがある。

 唯一、明文で統一的な補足協定を結んでいるのはドイツであって、これはボン補足協定であるが、この補足協定の中で、日米地位協定の第2条と同じく、米軍が基地の使用を終了した場合には、速やかにドイツの当局に返還するという旨の規定が置かれている。

松崎委員

 今の答弁ではドイツでは日米地位協定と同じ趣旨の規定が置かれている、ということであった。そうすると基地の使用が終了した場合には、速やかに返還するというのは、アメリカが締結している地位協定において標準であるとみなして良いのか、この点について県の見解をお尋ねする。

基地対策部長

 お答えするにあたって、米国がどのくらいの数の地位協定を締結しているのか、ということを参考に申し上げると、平成27年に米国務省が地位協定に関する報告書を公表していて、その時点で、米国は世界のおよそ100カ国と地位協定または、それに類する協定を締結しているとのことである。ただし、この100カ国の中には、在日米軍とは異なり、基地の一時的な使用、例えば訓練などに伴い一時的に使用するという協定も含まれているので、そうした場合には、基地を提供するとか返還をするという規定は含まれないと思われる。

一方で、先ほどお答えしたボン補足協定や、あるいは沖縄県の調査の対象ではないけれども、お隣の韓国が締結している在韓米軍地位協定においては、いずれも日米地位協定第2条に相当する規定が置かれている。このことから、日米地位協定第2条が規定する、基地の使用終了後に速やかに返還するという規定は、米国が締結している地位協定における一つのスタンダードなのかなと考えている。

松崎委員

 今の答弁は重要な答弁であると思う。基地の使用が終了した場合に、米軍・米国は速やかに返還する、このことは地位協定における一つのスタンダードである。重要な認識だと思う。アメリカ軍の使用が終了したと思われる基地については、このルールに則って、整理・縮小・返還、これをしっかりと働きかけていく必要があると思う。そこで、お尋ねするが、昨年11月に、日米合同委員会で、県内基地の整理に向け新たな合意が行われたが、その中で、池子住宅地区の横浜市域では、住宅の建設計画の中止が合意された。

新たな住宅は作らないとなった以上、日米地位協定第2条に掲げる、返還すべき施設に該当すると思う。池子住宅地区の横浜市域の動向について、最新の状況を含め、確認のため伺う。

基地対策課長

昨年11月の合意では、池子住宅地区の横浜市域について、住宅建設の取り止めは決定されたが、返還については触れられていなかった。

その後に開かれた金沢区米軍施設建設・返還跡地利用対策協議会でも、防衛省からは、横浜市域の今後の使われ方や、返還の見通しは示されなかった。

そのため、金沢区の協議会では今年度に入り、横浜市に対して、住宅建設が再度計画されることがないようにすることと、住宅建設の中止を踏まえ、横浜市域全体の返還を国に働きかけるよう要請を行った。

こうした協議会の要請を十分に反映できるよう、横浜市は市としての要請事項をとりまとめ、8月に防衛省に対して要請を行ったところである。

要請では、池子住宅地区の横浜市域において住宅等の建設が、再び計画されることがないよう強く求めるとともに、既に返還方針が合意されている、住宅地区内にある、いわゆる「飛び地」、そちらの早期返還と、横浜市域の全体の返還実現についても、日米間で協議を進めることを求めた。

松崎委員

 知事は、本年3月の予算委員会において、池子住宅地区の横浜市域の返還について、横浜市の意向を確認しつつ早期の返還を働きかけていくと答弁されていた。

 今、横浜市の意向は、地元の要望を踏まえ、飛び地だけでなく、市域全体の返還に向けて取り組んでいくという方向に、大きく舵を切ったわけである。

こうした横浜市の意向も踏まえ、今後、池子住宅地区の横浜市域の返還に向けて、強力に国に働きかけを行うべきと考えるが、今後の取組について伺いたい。

基地対策課長

これまで、県は、横浜市をはじめ基地に関係する9市とで構成する神奈川県基地関係県市連絡協議会を通じて、遊休化した基地等については、早期返還を重点的に求めてきた。

 併せて、返還にあたっての事前情報の提供についても求めてきた。

しかしながら、これまで、住宅建設の取り止めが決定した、池子住宅地区の横浜市域の今後の使われ方や、返還の見通しは示されてこなかった。

 そのため、まずは、横浜市域の今後の動向について、国に早期に情報提供を行うよう働きかけていく。

 そして、基地返還の取組においては、地元市の意向を踏まえつつ返還を求めていくことが大変重要である。

今後は、池子住宅地区の横浜市域については、飛び地も含めて、市域の全体について、横浜市の意向を十分尊重しながら、国に対し、返還に向けた取組を進めていく。

松崎委員

 今、横浜市の意向を踏まえて返還に向けた取組を進めていくというお答えがあったが、横浜市域には約1ヘクタールの飛び地、そして本体部分がある。それぞれ返還に向けて課題がある。課題をどのように認識し、返還に向けてどのように取り組んでいくのか、もう少し具体的にお答え願いたい。

基地対策部長

 池子住宅地区の横浜市域については、これまで様々な経緯があり、その経緯を踏まえた、きめ細かい対応をしていくことが重要であると認識している。

まず、1ヘクタールの飛び地については、平成16年の日米合意において、返還の方針が基本的に合意されたところである。昨年11月の日米合意においては、1ヘクタールの飛び地の扱いについては、合意の文書からは落ちてしまっている、記載されなかった訳であるが、私どもとしては、この1ヘクタールの飛び地については、当初の平成16年の合意が反故になったものとは思っていない。従って、一日も早い返還に向けて強力に働きかけていく。

それから、横浜市域の本体部分であるが、この度、地元並びに横浜市から、返還をして欲しいという意向が示されたことは、県としても重く受け止めるべきことと認識している。返還に向けて横浜市と連携して取り組んでいくが、中期的な課題として、返還が将来実現した場合、跡地をどのように利用して行くのか、こうしたことを具体的に示しながら、国や米側の理解を得ていく、こうした取組が必要になってくると思う。

今のところ国や米側からは、横浜市域をどのように認識しているのか示されていない。こうしたことについて、しっかりと情報提供を頂いて、地元及び横浜市の意向とすり合わせをしていく、こうしたことが、広域自治体である県の重要な役割であると認識している。従って、国や米側に、池子住宅地区の横浜市域についての認識をしっかりと求めながら、横浜市と連携して、将来の返還に向けて、緊密に連携しながら取り組んでいく。

松崎委員

 最後に要望であるが、本日、沖縄県の欧州地位協定調査に関連して、日米地位協定の課題について、またさらに、本県の基地返還に向けた取組について、伺ったところである。住宅建設の中止が決定された、池子住宅地区の横浜市域、つまり金沢区であるが、横浜市が市域全体の返還を国に求めたことは、大変大きな動きである。県としても市の意向を受け止めて、返還に向けて連携して取組を進めていくという方針を確認した。  長年にわたり基地負担を担ってきた、地元の皆様のためにも、神奈川県と横浜市が連携して早期の返還に向けて、しっかりと取り組むことを要望して質問を終える。