2020年6月25日 総務政策常任委員会 立民 松崎委員

(松崎委員)

在日米軍基地における新型コロナ感染症対策について伺います。渉外知事会において、情報の公表等を求める緊急要請を実施したとのことですが、基地の中での問題ということもあり、ベールに包まれているという感じが否めません。現状で判明している情報について、また、以前より当委員会において取り扱ってきた日米地位協定の課題も含めて、何点かお聞きしてまいります。
海外の報道によると、横須賀基地でかなりの数の感染者が出たとのことですが、県には、それを裏付けるような情報は来ていますか。

(基地対策課長)

外務省などからの情報により、3月までに、横須賀基地所属の6名の米軍人の感染を把握しております。
しかし、米側は、本年3月30 日に、米軍関係者の感染に関する情報について、基地ごとなどの個別事例の公表は、安全保障上、軍の運用に影響を与える恐れがあることから、行わない方針とし、国も、こうした方針を尊重するとしました。在日米軍基地に関わる新型コロナウイルス感染症対策につきましては、平成25 年の日米合同委員会合意に基づき、米軍と地元の保健所との情報共有が行われておりますが、米軍と保健所との情報は限定されたものとなっており、それ以上の感染者の情報は公表されておりません。
4月には、空母ロナルド・レーガンの乗組員に、十数人の感染者が発生したとの報道がございましたが、事実関係について国に確認したものの、回答は得られませんでした。

(松崎委員)

洋上を航行中の空母セオドア・ルーズベルトで多くの感染者が出たことも報じられておりますが、米軍全体の感染状況はどうなっていますか。

(基地対策課長)

米軍は、基地ごとの感染者数の公表はしておりませんが、米軍全体の数は、アメリカ国防省のホームページで公表しております。
それによりますと、米軍人、軍属、家族、契約業者など、米軍全体で6月22 日現在、21,991 人が発症したとのことです。
このうち、これまでに、7,882 人が回復し、死亡者は36 人となっております。

(松崎委員)

アメリカ軍は、世界全体に展開していますので、世界全体では少なくない数の感染者が出ていると感じます。それに対して、アメリカ軍は、どのような対策を取っていますか。

(基地対策課長)

米軍の対策ですけれども、海外の基地から在日米軍基地への入国に際して、入国後14 日間の移動制限措置の実施など検疫が厳格に実施されていること、感染者に対しては、隔離措置など日本で行われている措置と整合する措置をとられていると、国から説明を受けております。
また、在日米軍では、感染防止ための行動制限等の措置を発表しておりまして、それによりますと、日本が発出した緊急事態宣言よりも前の3月下旬には、不要不急の外出制限や、バー等への立ち入り禁止がすでに課されておりまして、以降も、措置内容を一部見直しながら継続されております。
米軍においても、感染拡大防止のための対策にしっかり取り組んでいると考えております。

(松崎委員)

一定の行動制限等は我が国より早かったということは注目し、かつ記憶にとどめる必要があると思います。そうした中、渉外知事会の緊急要請の項目の一つとして、在日米軍における感染防止対策の強化を求めていますが、この知事会の要請はどういう考え方に基づくものですか。

(基地対策課長)

現行の感染症対策に関する日米合意では、基地の中の対策については米側で行い、基地の外での対策は日本で行う、そのために必要な情報交換を行うという枠組みになっております。
米軍が公表している情報により、行動制限など厳しい措置がとられていることは理解しておりますが、米側の措置を全てについて承知しているわけではなく、また、新型コロナウイルス感染症につきましては、今だ不明な点も多くあります。今回の緊急要請は、今後の状況に合わせて、常に最善の措置をとっていただきたいという趣旨で、感染防止対策の「強化」を求めたものでございます。

(松崎委員)

そういった観点から要請することは非常に重要だと思います。その要請に対して回答が来たようですが、緊急要請に対する国からの回答を県としてどのように受け止めていますか。

(基地対策課長)

渉外知事会の緊急要請に対しまして、国からの回答ですけれども、在日米軍は日本側の措置に先駆けて厳格な措置を実施している、との安心につながる情報もいただきましたが、基地周辺住民の方々の安心のために必要な情報の公表を求めていることに対しましては、国からの回答は、 在日米軍関係者の感染に関する個別事案の詳細を公表することは、我が国の安全保障や米軍の運用にも影響を与えるおそれがあるとの回答でありまして、ただちに現状の改善につながるような回答は得られなかったと受け止めております。

(松崎委員)

今答弁にもありましたが、私も今回の国からの回答は、決して要請に応えたものではないと受け止めております。そこで、今後、県としてはどのように対応していくつもりですか。

(基地対策課長)

渉外知事会で緊急要請を行いました、米軍基地における感染者情報の適切な公表につきましては、引き続き国に働きかけてまいりたいと思います。
また、これまでも渉外知事会では、基地周辺に配慮し、基地の実情を見えるようにすることが重要であると訴えてきたところでありまして、引き続き、ねばり強く働きかけてまいります。

(松崎委員)

引き続きねばり強く働きかけるということは渉外知事会としての要請だったわけですから、関係する10 を超える他県の御意向も伺いながら、なるべく足並みをそろえ、しっかり共同歩調を取りながら、まとまって声を上げていただくくよう強く要請したいと思います。
また、日米地位協定上の課題としてこれを見た場合、今の地位協定には、検疫また保健衛生に係る規定がございません。渉外知事会におきまして、日本法令の適用を求めているのは当然と思います。どういう法令を、どのような考えに基づいて適用を求めているのか、そこのところを掘り下げてお答えいただきたいと思います。

(基地対策課長)

渉外知事会ではこれまでも、基地周辺住民の方々の不安を払拭するため、検疫や保健衛生について、日本国内法令を適用するよう訴えてまいりました。 これは、 感染症対策など基地周辺住民の安全に関わる分野であり、かつ、感染症については状況の変化にあわせて最善の措置をとることが求められるものでございます。こうしたものにつきましては、日本が行う措置と整合する措置を米軍にもとっていただくことが必要でありまして、また、検疫等につきましては検査の透明性なども確保していく必要があると考えております。こうした考えに基づくものでございます。

(松崎委員)

当然、我が国のとる措置が、米側からみても水準の高いものであり、的確であることが前提かと思います。今回の第一波コロナウイルス対策において、アメリカ軍の方が行動制限等が早かったということはわが国も踏まえるべきでありますし、多くの事柄が知事の権限とされたことからすると、わが県のとった措置が当時のアメリカ軍のとった措置と比べてスピーディーだったか、あるいは的確だったか、県という立場を離れて客観的に見比べる、わが県がとりうる措置がもっとスピーディーにできた部分があったのであれば、そのことは大いに参考として、腹の中にでもいいからきちんと落とした上で米側に臨む必要があると思っていますから一言申し上げておきます。
それと、6 月23 日の毎日新聞の報道によれば、日米地位協定について全国の知事にアンケート調査を行ったら、39 人もの知事が見直しが必要だと回答したと書かれております。地位協定改定の必要性が全国自治体の共通認識になりつつあることを示しています。一方で今回の新型コロナウイルス感染症を通じて明らかになったような個別の課題もあります。個別の課題については自治体によって温度差があることも想定されます。このような状況を踏まえまして、日米地位協定の改定にどのように取り組んでいくのか、お答えください。

(基地対策部長)

委員御指摘のとおり、日米地位協定の改定の必要性について、全国の都道府県に理解が広まってきた、とアンケート結果を見て実感した次第でございます。
背景としましては、私ども渉外知事会が長年にわたり日米地位協定の改定の必要性を訴えてきたこと、さらに、もう一つは、平成30 年に全国知事会におきまして、「米軍基地負担軽減に関する提言」を決議いたしまして、その中に日米地位協定の改定の必要性が盛り込まれたことも大きかったと認識しております。
一方で、現実の基地の問題に際して各自治体、地域の取組みに対しまして、認識といいますか、色合いが違ってくるということは現実には起こりうるのかなと考えております。具体的には、今直面しております新型コロナウイルス感染症に対する米軍基地をめぐる問題につきましては、現実に基地が所在し、米軍の方が多く勤務し、病院もあり、さらに米軍の感染者も発生した本県と他の県では、やはり少し認識が違ったのかなということを、実際に渉外知事会の緊急要請を取りまとめました私どもが実感しているところでございます。
今後は、本県といたしまして、今回の新型コロナウイルス感染症対策で生じた問題を踏まえまして、渉外知事会の構成都道府県さらに全国知事会とも連携し、本県がリードする形で日米地位協定の改定に向けた取組みを進めてまいりたいと考えております。

(松崎委員)

終戦以来、長年、日米地位協定については改定を求めていかなければいけないという世論、また、自治体の動き、住民の声がずっとあるわけです。このことが改定されないことにより巻き起こされてきた様々な課題、あるいは日本国民が被ってきた様々な痛みを率直に直視することが必要であります。あるがゆえに、身をもって経験している今まさに課題が横たわっている本県の実情をしっかりと全国の皆様に共有していただいて、また逆に、全国の皆様がどのような課題認識を持っておられるのかしっかりと積極的に前へ出て共有させていただきながら、日米地位協定の改定に向けて取り組んでいっていただきたいということを強く要望させていただきたきます。
今日の質疑を通じまして、さらに多くの課題が明らかになったと思っておりますが、今後どのように取り組んでいくのか決意も含めてお伺いしたいと思います。

(基地対策部長)

今回、基地における新型コロナウイルス感染症への対応を通じまして、おっしゃるとおり、様々な課題が明らかになったと私どもも感じております。この問題の本質といいますのは、日米の関係機関が緊密に連携して、基地周辺住民の方々の安全と安心をしっかりと守っていくことにあると思います。日米合意によって、当面必要となる情報交換は、衛生当局間でできていると認識しておりますが、本来どこまで情報のやり取りをするのか、そして、住民の方々の安心のためにどこまで情報を公表すべきなのか、事前の想定が甘かった面があるのではないかと感じております。
情報の公開や公表につきましては、関係機関が連携していく上での重要な基盤でありますので、今後、国や米側とそのあり方について、しっかりと対話をしていきたいと考えております。引き続き、新型コロナウイルス対策は国の内外において続いてまいりますので、課題の検証をしっかり行いつつ、情報公表の問題については働きかけてまいります。
また、日米地位協定改定の課題についても改めて明らかになりました。現行の地位協定のもとでは、基地の運用については米側の裁量が大きく、情報の公表は義務付けられておりません。
さらに、日米地位協定には、検疫や保健衛生に関する規定がないという問題もあります。基地周辺住民の方々の安全に関わる分野について、日米地位協定を改定し、国内法令を適用するよう、改めて国に求めてまいります。新型コロナウイルス対策を通じて明らかになった様々な課題について、基地周辺住民の安全・安心を守るという基本に常に立ち返りながら、粘り強く取り組んでまいります。

(要望)

事前の想定が甘かった、だから対話が必要だというお答えでありました。そういう考え方、組み立て方は理解するわけですが、一方で、何が甘かったのか、対話をどうやって進めていくのか、相手側と一緒になってまず議論の土台を作って、では、本県の県民が安心していただけるゴールをどうやって設定するのかということを具体的に落とし込んでいって相手に臨まなければいけない。もちろん外務省や防衛省にもお話をし、よく協力もいただきながら望んでいかなければなりません。
ダメだダメだとばかり言っていて建設的な議論が始められるのか私は危惧するわけであります。テーブルについて相手の事情もまず聞きながら、日本として譲れない線はここなんだということもしっかり持って、しかも、アメリカ軍の行動制限はわが国よりも早かった、そして今から考えると的確であったという面があります。それを素直に評価しながら、わが県としては何を求めていくのか、わが県のコロナ対策がどうあるべきか、第一波のときどうやればもっとよかったのかという観点から見直すということも同時に進めていくことが、対米軍という観点でも重要となってくると思います。
緊急事態宣言が解除されたわけですが、コロナに関しては、医療従事者の方々の御奮闘も続いているわけであって、また、県民事業者の多大な御協力がなかったら、緊急事態解除も厳しかったのではないかと思います。
一方で、世界全体をみれば、感染拡大が今も続いているわけです。いつ第二波が来るか心配する声を多数聞きますが、見方によってはまだ第一波が残っているという解釈もできるわけであって、感染拡大がいつ再発するのか一層予断を許さないわけであります。したがって、感染防止に引き続き取り組み、警戒を解かない必要があります。そこのところをよく見ますと、保健健衛生、また検疫について日本の法令の適用を求めつつ、わが国わが県における対策についても対策を見直し、充実をするという観点が必要であります。
日米地位協定の改定に向けて、県は県民の願いに寄り添って、一層力を入れて取り組んでいただきたい、求め続けていきたいと我々は考えておりますので、どうぞよろしくお願いします。