令和2年6月25 日(木) 立憲民主党・民権クラブ 松崎 淳議員

総務政策常任委員会 質疑記録

松崎議員

先日の代表質問におけるわが会派の中村議員の「行政手続のオンライン化の推進について」の質問において、知事から、「できるだけ早い時期に、全ての行政手続がオンライン化できるよう、全力で対応していく」と答弁があった。そこで県として認識している、行政手続のオンライン化の課題について何点か伺う。
まず、オンライン化の状況について伺う。新型コロナウイルスに関する給付金については、アメリカや欧州では、短期間で直接国民の銀行口座に振り込んだり、中小企業向け融資を素早く実行したりとスピード感が目立った。一方、日本の一律10万円の特別定額給付金のオンライン申請については混乱が起きた。報道によれば、自治体によっては申請データを印刷し、職員が目視で確認する作業が必要となったとのことで、今月17日時点で全国84自治体がオンライン申請の受付を停止している。5月末に停止した高松市の担当者は、申請全体の2割は、電話などで確認する必要があったと述べている。
今回の特別定額給付金のオンライン申請のシステムは、国で構築し市町村で運用しているわけだが、県においてもインターネットから県民や事業者が申請または手続きを行うことができる電子申請システムを、平成17年度から県内の市町村と共同で運営している。
そこでお聞きしたいが、県では、昨年7月「かながわICT・データ利活用推進計画」を策定し、ICTの取組を推進しているが、行政手続のオンライン化は、計画の中ではどのような位置づけとなっているのか。

ICT・データ戦略課長

昨年7月に策定いたしました「かながわICT・データ利活用推進計画」は、基本方針として2つの柱を掲げております。ひとつ目の柱は、県民の安全安心や利便性の向上を図ることを目的とする「くらしの情報化」で、健康・医療・介護、観光など様々な分野において、ICTやデータの利活用を進め、多様な県民ニーズに対応した行政サービスの実現することとしています。
ふたつ目の柱は、行政内部の業務全般の効率化を図ることを目的とする「行政の情報化」で、RPAやAIなどの新たなICTを積極的に利活用して効率化を図るとともに、ICT環境の最適化や、データ利活用を支える環境の整備を推進することとしています。
「行政手続のオンライン化」については、「くらしの情報化」の今後取り組むべき施策として位置付けております。

松崎議員

計画に位置付けて進めているということである。県の行政手続でも、法務局に行かなければいけない登記の関係、例えば土地の登記、会社の登記の証明書が必要となったり、あるいは車検関係、車庫証明や納税証明書が必要であるなど、これらはどれも国がらみで証明書の添付を義務付けているものであり、こういったものが結構多いのではないかと思う。これらが絡んでいることによって、全体を通してオンラインで済ませることができないとなってしまうのであれば、オンライン化を進めるといっても絵に描いた餅で終わるのではないかと危惧している。
国の地方制度調査会で、今月の17日に、2040年ごろから逆算して顕在化する諸課題に対応するため、必要な地方行政体制の在り方についてまとめているが、その答申の中でも、地方自治体のデジタル化が柱の一つとされて、地方公共団体共通のシステム構築が必要と提言されている。オンライン化を推進するためには、県独自のものではなく、他の自治体との共通のものをいかに進めていくがカギになると考えている。
特にわが国では、マイナンバー制度を構築しているので、マイナンバーいかに活用するかがポイントだと考えるが、今回の特別定額給付金の混乱を見てもわかるように決してうまくいっているとは思えない。
また、中央省庁全体で行政手続は55,000以上あるが、日本総合研究所が政府の公表データから行政のデジタル化を分析したところ、役所に出向かずオンラインで完結できる手続きのみで完結する手続きはその中の4,000件くらいしかなく7.5%だったとのことだ。
そこで伺うが、現状の県の行政手続で、電子申請システムを活用している手続きは何件あるのか。また、その母数、つまり、県においても様々な行政手続があると思うが、県全体としてどれくらいの行政手続があるのか。

情報システム課長

電子申請システムを利用できる県の申請・届出手続数は、令和元年度末で職員採用試験申込など、100手続きです。
県全体の行政手続の件数ですが、以前実施した調査結果から、7,000程度あるものと承知しています。
また、行政手続ではありませんが、県立高校の学校説明会など、県が主催する講座・イベント等の申込みができる電子申請手続が、令和元年度末で1,216手続きありました。

松崎議員

今まで答弁のあったオンライン化の状況を聞くと、まだまだこれから力を入れないといけないと感じるが、コロナウイルス感染症対策に県庁職員が全力で対応していることは当然理解しているが、この電子申請は、逆に言えば感染防止の観点からも早めなければいけない。
システムの運用を考えると、問題点は3点ある。一つ目は窓口自体が混雑し、システム自体に遅延が生じること、二つ目としては申請内容に不備があり重複申請も多数ある、三つ目として住民基本台帳の情報との照合を手作業で行うことになり、膨大な労力がかかりそのために処理が追い付かない。
例えば特別定額給付金のオンライン申請を行うために、マイナンバーカードのパスワードが必要であり、その問合せあるいはロックの解除のため窓口が混雑するというオンライン化とは真逆の事態が発生したこともその一例である。これでは保険証、免許証、通帳のコピーを書面により返信したほうが簡単で安心で、またスピーディーであるという気持ちもわかるし、これを繰り返す限り、オンライン化はなかなか進まない、定着しない。
今紹介したように、他国ではうまくいっている国もあるが、なぜオンライン化が進んでいないのか、問題はどこにあると、県としてどう認識しているのか。

情報システム課長

オンライン化が進まない原因を把握するために、電子申請システム上で、紙の様式をダウンロードできる機能を利用している申請・届出について調査を行いました。その結果、オンライン化できない理由として、多かったものは、申請・届出に際して、別の書類の原本確認や自署・押印が必要である、あるいは収入印紙の貼付や多くの添付書類を要するなど、法令等による制約があることです。
また、申請・届出にあたって添付書類が多く、どうしてもその確認に人手を要したり、添付書類に不備がある場合にはさらにその確認・対応も必要となり、結果として処理が遅延してしまう問題もあります。
このように、紙で行ってきた申請・届出の手続きを、そのまま同じ形式、方法でパソコンやスマートフォンでできるようにしても、申請者にとっても、職員にとっても、十分にメリットを享受できないことが、オンライン化が進まない最大の原因であり、オンライン化の推進には、行政手続きの抜本的な見直しが必要だと認識しています。

松崎議員

今の答弁非常に実感を持って聞いた。例えば、区役所に行って住民票の写しを取ろうとすると、300円の収入印紙を自動販売機で買って現物を貼らなければならない。それがオンライン手続の中に絡んでいたら、その部分を区役所に行って収入印紙を買う、現物をもってどこかに行くというのは、オンライン化ではなくなる。また、マンションを買うなどといった場合は、郵便局で定額小為替などを買わなければいけない。そういった国の手続がかまされていることにより、県や市が考えるオンライン化が進まないので、この部分を何となしなくてはならない。県では是正すべき点をどのように考えているのか。例えば、新型コロナウイルス感染症拡大防止協力金があるが、これは、休業されている中小企業、個人事業者などに協力金を交付するものだが、この協力金の第一弾の遅れは深刻である。申請書類の9割に不備があり、電話で確認しなければならないなどの手間がかかったという人的要因であり、オンライン申請も同様に9割が添付ファイルの中身の不備があり、電話確認の手間がかかったとのことである。第二弾は比較的順調と聞いているが、第一弾であらわれたこの点についてはじっくりと見ておく必要があり、早急に改善しなくてはならない。
是正すべき点というのは、県の場合は明らかではないかと思うが、感染防止にもオンライン化は必須であるということであれば、早急な対応を求めたいが、県の行政手続のオンライン化は何を目指し、何を対象として、いつまでに、どのような形で行うのか。

ICT・データ戦略課長

オンライン化の推進に当たりましては、県民等の利便性の向上や、県の業務の効率化を目指すとともに、新型コロナウイルス感染症防止の観点から、対面での業務を前提としない、「新たな生活様式」に基づく働き方の定着を目指していく必要があります。
そこで、まずは、申請や届出を必要とする新規の業務については、原則としてすべてオンライン化を導入してまいります。
また、既存の手続きについても、まず今年度中は、電子申請上で、紙の様式をダウンロードできるようにしている約1,200の申請手続につきまして、法令等に制約がなく、県独自で見直しができるものについて、処理件数の多いものから、全力でオンライン化を進めてまいりたいと思っております。

松崎議員

全力で取り組むということであった。今の答弁は、向こう一年間というよりも早く、今年度末を区切りとして、1,200の手続きを対象にオンライン化に全力で取り組むことと受け止めた。
次に、オンライン化が進むと、当然にして窓口業務が減少し、県職員の感染防止にもつながり、また申請書が電子化されれば、今までテレワークができなかった許認可のような業務もテレワークでできるようになる。県民の利便性が向上する、簡素化するだけでなく、県職員にとっても、新型コロナウイルス感染防止やテレワークの推進などメリットがあると考えるが、どのように考えているか。

行政管理課長

委員ご指摘のとおり、行政手続のオンライン化が進むと、県職員にもメリットがあります。
県が提供する行政サービスの手続きがオンライン化されることで、県民が窓口に行く必要が少なくなりますので、窓口業務が減少し、県民のみなさまとの対面業務が減ります。
また、窓口対応や紙による書類の審査業務が減りますと、こうした業務に従事するために、やむを得ず出勤をしていた職員もテレワークをすることが可能となり、通勤する職員が減ることになります。
こうしたことは、人と人との接触を最小限にする必要がある、新型コロナウイルスの感染防止につながるものと考えております。
その他、例えば紙で受け付けた申請書類等を職員が手作業で行っているデータ入力のような作業が減ったり、あるいはこうした作業に対してRPAを導入しやすくなるなど、業務の効率化につながるものと認識しています。

松崎議員

感染防止や業務の効率化につながるといったメリットもあるということである。なお一層、オンライン化を進める必要がある。
行政手続きは本来、簡素で公平でスピーディーであることが重要であると考えており、委員会の質疑等でも取り上げているが、基本的な観点というのはこの質疑で共有できたと思う。もちろん課題もいろいろとあると思うが、住民の立場に立った制度を構築していただきたい。オンライン化を中心とした、より良い手続きへ改革を進めてほしいところである。
最後に、総括として総務局長の見解を伺いたい。

総務局長

これまで答弁させていただいたが、オンライン化に向けては、新たな申請については原則オンライン化を進めることでやっております。もちろん感染防止の観点から、職員がテレワークするということもオンライン化に向けた大きなメリットです。
色々と工夫しておりますが、何故進まないのかと考えてみると、日本の風習としての押印があります。押印はニアイコールで本人が申請したという、そういう性質を持っています。民事訴訟などで一定の効力があるので、ある意味効果的・効率的な押印でありますが、これがオンライン化になりますと大きな障害になっております。
これは一例ですが、今後はこうした課題については、電子署名や電子認証サービスなどを取り入れながら、オンライン化がつまずかないよう、どんどん前に進めてやっていきたいと考えております。
「withコロナ」という新たな時代を見据えて、こうした問題様々ありますけれど、一つ一つ解決しながら、すべての行政手続がオンライン化できますように取り組んでまいります。

松崎議員

今回の質疑では、先ず今年度中は1,200ある手続きについて、全力でオンライン化に取り組んでいくという具体的な答弁を得たので、前進につながっていければと思っている。
現在、県民のくらしにおいてスマートフォンが非常に普及していて、それを使って何かできるのかと思った方もいるだろう。しかし、パソコンと違い、様式をダウンロードし、ワードやエクセルに入力しなければならないとなると、スマートフォンは一気に使いづらくなる。どうしてもそうなるとパソコンに向かわなければならないが、パソコンで何かを打ち込んでやりとりするという時代から少し進んだ形が、今のスマートフォンや携帯電話を使ったやりとりの時代なのかと感じる。
そうなるとオンライン化を進めていくには、総務局長からハンコの文化、官庁文化、このところを打破しなければ進めないとの指摘があり、同感するところだが、一方でスマートフォンでも簡単にひな形に打ち込みさえすれば完結していくことができるような簡素なシステム、これも念頭に置いて進めていくことが必要であると痛感している。
もう一つは、全ての人がパソコンやスマートフォンに精通しているわけではない。一気にオンライン化してしまうと、デジタルデバイド、情報格差を受けている側からすれば、役所に来ることもできず、役所の支援も対面ではなかなか受けづらくなり、そして今までと違ったスピードで進んでいくデジタル化に、どんどん振り落とされていく県民が多数出てくるという観点もみておかなければならない。その配慮が絶対必要であると、これは強く指摘しておく。
質疑でも触れたが、オンライン化の推進は県民の利便性向上だけでなく、県職員側にも感染症防止、業務の効率化などメリットがある。やはりここは、課題の整理、それから共有を急いでいただき、全庁を挙げて、まず今年度中に1,200の手続きのオンライン化に全力で取り組んでいただきたい。そして早期に、簡素で公平、かつスピーディーな県政を実現し、それを県民が実感できるように取り組んでいただくよう要望する。