総務政策常任委員会(立憲民主党・民権クラブ 松崎委員)2021.10.1(金)

(松崎委員)

 これまでも、私は、県民の皆様、また事業者の皆様のいのちや暮らしをしっかりとお守りするということの大切さ、そしてまた、特に県内経済を活性化させ、県民の皆様の生活を充実させていくことが重要であるので、そのために、県として必要な施策を適時適切に行うよう、繰り返し、当局に対して申し上げてまいりました。そして、必要な施策を実施するためには、何といいましても、土台となるべき本県財政がしっかりしたものでなくてはなりませんから、そういった認識の下で、中長期的な視点を持ち、バランスの取れた持続可能な財政運営の必要性や、エビデンスに基づいた財政運営の重要性につきまして、当常任委員会で繰り返し議論をしてまいりました。

 本日も、そういった問題意識に基づきまして、先日示された令和4年度当初予算の編成方針に関連いたしまして、何点か伺ってまいります。

 さて、今回の予算編成方針では、4年度は現時点で850億円の財源不足が見込まれるとのことであります。3年度の財源不足1,100億円の見込みに比べますれば、減少はしておるわけですけれども、未だ多額の財源不足を抱えておりまして、本県財政は危機的な状況に変わりはありません。

そこで、歳入、歳出の両面から順次質問をしてまいります。

まず、歳入面からでありますが、本県の財政運営を考えるにあたりまして、歳入の太宗を占めます県税収入、これを正確にどう見込むのかは、非常に重要な要素であります。

 7月の委員会の質疑におきましては、エビデンスに基づいた見込みを立てることの重要性につきまして、やり取りをいたしました。

 特に、法人二税については、産業構造の地域ごとの特色が顕著に表れる税目でありますので、正確に見込むためにも、地域性のあるデータに基づいてしっかり見込むことが重要と考えております。

そこで、令和3年度、4年度の法人二税は、増収が見込まれているようでありますが、どのようなデータに基づいて見込んだのか、詳しく伺います。

(税制企画課長)

法人県民税と法人事業税の法人二税でございますけれども、その9割以上を法人事業税が占めているため、法人事業税の見積もり方法についてご説明申し上げます。

本県には、法人事業税の申告法人が約20万社ありますが、このうち、資本金が1億円を超える大法人は約4,500社ありまして、法人事業税全体に占める税収のウエイトは、約6割となっているため、大法人分をどのように見積もるかが重要となります。

具体的な方法としましては、大法人4,500社を税収規模の大きい約1,000社と、その他の約3,500社に分けた上で、税収規模の大きい約1,000社につきましては、各企業が公表している収益の見通しや、会社四季報、新聞報道などの情報を活用して、1社1社個別に税収を見積もっております。他の約3,500社につきましては、業種別に分類をして、全国の上場企業の業種別収益見通しを参考に税収を見積もっております。

大法人以外の法人については、大法人の見通しや、日本銀行が公表している企業短期経済観測調査結果、いわゆる日銀短観の他、直近までの税収実績などを踏まえて、一括して伸びを見込んでおります。

この結果、3年度の法人二税につきましては、現時点では、当初予算額に対して240億円程度の増収を見込んでおります。

また、4年度の法人二税につきましては、3年度の今回見込額を発射台として、3年度と同様のデータ、方法により、税収見込みを行っております。

この結果、現時点では、3年度の今回見込額から更に100億円を超える増収を見込んでおります。

(松崎委員)

法人二税につきまして、きめ細かくデータを集めて推計しているというご報告でありました。

そこで、実際の今の場面でいきますと、3年3月期の上場企業の経常利益は、当初予算を編成していた頃には、コロナの影響を、年度を通じて受けるという想定のもとに、大幅な減益予想だったわけでありますが、実績は、増益決算ということであります。これは、下半期を中心に、製造業では、米中経済の回復を背景といたしました自動車や半導体需要が伸びた電気機器、また非製造業でも、巣ごもり需要を受けたゲーム、宅配、家電販売といった商業などが増益となるなど、企業収益が急回復したことによるものであります。本県の法人二税は、3年度、4年度とも増収を見込んでいるとのご答弁がありましたが、本県でも、こうした影響を受けているものと思います。

今後、データの裏付けに基づいた推計どおり県税収入が増収となること、さらに2022年3月期には企業収益はさらに大幅な増益との見通し、これは8月20日、日経集計では、製造業が+18.7%、非製造業が+9.2%ということで、全産業+15.0%というものもございますので、今後、最新のデータに置き換わって、現時点の税収の見込みから更なる増収となることを、県税収入については、期待したいと思っております。

次に、歳入で大きな割合を占める、地方交付税と、それから臨時財政対策債について伺ってまいります。

 すでに、令和3年度の普通交付税と臨時財政対策債については、本県への交付額等が確定しておりまして、8月3日に記者発表もされています。

 それによると、普通交付税1,262億円、臨時財政対策債2,459億円で、合わせて3,722億円となっております。

今回の普通交付税と臨時財政対策債の額が当初予算額3,390億円と比べて、300億円以上の大幅な増額となっているわけですけれども、そもそも当初予算における計上額が適正だったのかと、こういう疑問が湧いてくるわけですが、これほどまでに増額となったのはなぜなのか、伺います。                          

(財政課長)

普通交付税と臨時財政対策債を合わせた実質的な交付税の額ですが、令和3年度当初予算比で332億円の増額となりました。その内訳は、交付税が12億円の増、臨時財政対策債が319億円の増となっています。

その増額となった主な要因ですが、国の交付税算定で用いられている基準財政需要額のうち、主に社会保障関係費につきまして、本県の当初予算計上時の想定を上回ったことによるものです。

本県の当初予算計上時点では、国の通知を踏まえまして、そこで用いられている前年度からの伸び率を使って算定しましたが、昨年行われました国勢調査の人口増という、当初予算計上時には見込めなかったことが要因となりまして、基準財政需要額の増加が想定を上回ることになりました。

普通交付税と臨時財政対策債の令和3年度当初予算計上額につきましては、予算計上した時点では、適正に見込めていたものと考えています。

(松崎委員)

今後は、これまで以上に、精緻な額での計上に努めていただくように、要望しておきます。

 これまでの答弁をお聞きしますと、今年度は、県税収入も、地方交付税・臨時財政対策債も当初予算額を上回る額を見込めるとのことであります。通常、税収が増えると、その代わり交付税が減るというふうに理解していたわけですが、今年度は税収も交付税も増える稀な年ということになるわけであります。3年度は財源に余裕ができたということになるのか、伺います。

(財政課長)

令和3年度の交付税の交付決定額ですが、県税収入や譲与税が大幅に落ち込むという国の見込みが反映された結果、本県の当初予算比で332億円の増額となりました。

一方で、令和3年度の本県の県税と譲与税は、海外経済の回復による企業収益の増に加えまして、国内の消費活動の落ち込みが想定より小さかったことから、現時点では、当初予算比で実質560億円の増収が見込まれています。

このように、交付税の交付決定額が結果として過大になった場合、地方財政制度では、法人関係税などの一部の税目を対象に、その翌年度以降の交付税の交付額を、3年間にわたり減額精算する仕組みが設けられています。

今後の3年間で減額される精算額は390億円程度を見込んでおり、今後の財政運営を考慮しますと、その分は財政調整基金に積み立てておく必要があると思います。

そのため、交付税の増額交付があったとしても、財源に余裕ができたとは言えない状況であると考えています。

(松崎委員)

決して国は甘くないということですね。後年度の精算がある。それに備えて、財政調整基金に積み立てなければならない、そういう予定をしているとのことであります。持続可能な財政運営というまでもなく、当然の判断かと思っています。

では、仮に、その分の積立てを行ったとしますと財政調整基金の残高はいくらになるのでしょうか。

(財政課長)

現時点での令和3年度末の財政調整基金の残高の見込みは、299億円です。

それに、今回の390億円が積み増しされますので、残高の合計は、689億円となる見込みです。

(松崎委員)

7月のこの常任委員会で、私、財政調整基金の質問をしました。その際、今年度末の残高は215億円という答弁があり、「このまま取崩しが続いたら、大変心許ない状況となってくるので、今後、財政調整基金を本来積み増していかなければいけない」と申し上げたところです。

ところが、今の答弁によれば、今年度末の残高は299億円をベースに、交付税の精算分390億円を積み増して689億円ということですから、ベースとなる残高が299億円と、前回の答弁より増えています。前回の私の質疑の後も7月補正その2、8月補正と財政調整基金を約27億円取り崩したのですけれども、どうして逆に増えているのでしょうか。説明してください。                            

(財政課長)

前回7月の常任委員会におきまして残高を215億円と答弁させていただきました。

その後の変動につきまして、まず、令和2年度決算におきまして、コロナの影響等により、例年以上に不用額が発生しております。令和2年度中に財政調整基金から取り崩す予定だった額を171億円としていましたが、そのうち85億円については、これにより、取崩しが不要となり中止しています。

さらに、この令和2年度決算におきまして、実質収支の黒字額は53億円となりました。地方財政法の規定によりまして、実質収支の2分の1以上は財政調整基金に積み立てる必要がありますので、今後、27億円の積立を見込んでいます。

これらの残高の増額要素に加えまして、7月補正その2及び8月補正で計27億円を取り崩した結果、前回答弁から約84億円の増加となり、299億円になったものでございます。

(松崎委員)

 2年度の決算におきまして、財政調整基金の取崩しを中止したということで、残高が増えたとのことでありました。残高の増加、これ自体は、これまでの私の意見を踏まえた対応でもありますし、財政調整基金は、県民の安全・安心のための最後の砦でありますので、一定の評価はしたいと思います。

 また、交付税の精算に備えて390億円積み立てた後の残高は、689億円になるとのことであります。一見すると、本県の財政調整基金の目安である660億円を上回るようにも見えますが、しかし、交付税の精算に備えるための390億円は、県民サービスを後退させないためにも、今後3年間で財源として取り崩す必要があると考えますので、実質的な残高は、それを除いた299億円と捉えるべきであります。

見た目の残高が増えたからといって、気を緩めることはできません、引き続き、財政調整基金の積み増しに努めていただきたいと要望しておきます。

話を地方交付税と臨時財政対策債に戻します。4年度は県税収入・地方譲与税が約580億円増収となることによりまして、地方交付税・臨時財政対策債は約440億円の減少となるものの、特に、臨時財政対策債につきましては、コロナ前の状況には戻らず、来年度も引き続き、多額の発行が見込まれると思います。

本県は、県債の大部分を市場公募債で発行しております。そこで、コロナ禍で、全国的に臨時財政対策債を含む地方債の発行が増えております。そうすることで市場からの資金調達も必然的に競争が激しくなってきていると思います。そういう懸念のもとで、本県に必要な資金を、市場から有利に調達する必要があります。市場公募債の発行にあたりまして、何か工夫していることはないのか、伺います。

(資金・公営事業組合担当課長)

本県では、神奈川県市場公募債発行計画を定めまして、発行年限だけでなく、発行時期、発行額をあらかじめ公表し、定時・定額発行を行うことで、投資家が資金の運用計画に取り込みやすく、本県債を優先的に購入したくなるような環境づくりを行ってまいりました。

しかし、今年度は、全国的に地方債の発行額が大幅に増額する見込みであることや、利率の低い公的資金が増額に伴いどのくらい借入できるのか不明であったことから、定時・定額発行に加え、本県で初めてとなるフレックス枠を導入し、機動的な県債運営が可能となるようにいたしました。

(松崎委員)

今の答弁で、本県で初めて「フレックス枠」を設けたという説明がありましたけれども、これはどのような発行形態となるのか、伺います。

(資金・公営事業組合担当課長)

フレックス枠は、地方債需要や長期金利の推移を確認しつつ、より良好な起債環境の下で発行できるよう、事前に発行時期、発行額、償還年限を定めない発行形態です。発行にあたっては、個別に起債することに加えて、当初予定していた発行額を増額するなど、起債環境に応じた自由な発行が可能となっております。

(松崎委員)

その「フレックス枠」でございますけれども、どのような理由、またどのような背景で設けることとしたのか、併せてどのような利点があるのか、伺います。

(資金・公営事業組合担当課長)

今年度は、新型コロナウイルス感染症の影響による税収減に伴い臨時財政対策債の発行可能額が全国的に増加し、全国ベースでは、昨年度から2兆3,398億円以上増加し、5兆4,796億円となるとともに、本県の発行額も昨年度を1,423億円上回る2,459億円となる見込みです。この全国的な地方債発行可能額の増加により、地方債市場が供給過多となり、資金調達が激化することで、金利上昇などのリスクが生じることが懸念されました。

このような環境の中でも、需要と供給を崩すことなく安定的かつ低金利で資金調達できる有利な起債環境のもとで県債を発行していくため、機動的な起債運営が必要と判断し、フレックス枠を設定することとしたものです。

フレックス枠を設定する利点といたしましては、金利や市場の需要動向を確認しつつ、柔軟かつ機動的な起債運営を行うことで、県債を大量に発行しなければならない状況においても、より有利な条件での発行が可能となり、その結果として、将来的な県民の負担軽減を図ることができるということがあげられます。

(松崎委員)

今、答弁があったのですけど、今年度、既に発行しているのであれば、どのような結果となったのか、伺います。

(資金・公営事業組合担当課長)

今年度は、既に8月に発行した20年満期一括償還債を当初の発行予定200億円から、フレックス枠400億円のうち200億円を活用して、400億円まで増加して発行いたしました。

20年満期一括地方債の国債上乗せ金利は、8月時点で0.02%と最低水準となっていたこと、他の発行団体が少ないことから増額を検討しておりました。結果として、投資家への初日のヒアリング段階で、351億円の申し込み希望があり、増額希望者も多数見受けられたことから、発行額の増額を行った結果、購入を検討していた投資家も購入に踏み切り、最終的には、636億円の申し込みを獲得することができました。

また、金利も、今年度の20年地方債最低金利となる0.4%で条件決定できたことから、有利な起債環境で発行できたものと考えています。今年度20年債を400億円発行した愛知県・東京都の申込額は、それぞれ489億円と567億円となっていることから、今回の本県債のフレックス枠を活用した発行が、投資家から好意的に受け止められたものと考えております。

残りの200億円につきましても、今後の市場環境を見ながら、発行の適否も含めて判断してまいりたいと考えています。

(松崎委員)

今年度から新たに本県として「フレックス枠」を設けたということです。初めてということでありましたが、こうした工夫は、資金を毎年、市場から多額に調達しなくてはならない大都市圏ならではと思います。残りの200億円の発行につきましても、将来の県民負担を軽減させるよう、しっかりと取り組んでいただくよう要望しておきます。

 さて、ここまで歳入について伺ってまいりましたが、今年度も来年度も、海外経済の回復による企業収益の持ち直しで県税収入が増えた分が、地方交付税等の減につながってしまい、一般財源総額の大幅な増を期待できない状況であります。

県税収入の増という一面だけを捉えて、ぬか喜びになるようなことではよくないわけでありまして、県税収入が減ると、地方交付税ではなく、借金である臨時財政対策債が増えまして、逆に、県税収入が増えると、臨時財政対策債が減るということで、一般財源総額としては増えない。本県財政は厳しさから、なかなか脱却することができません。これが、本県財政の置かれた本当の立場でありまして、改めて地方税財政制度の課題というものを認識したところでありまして、非常に忸怩たる思いであります。

 次に、歳出について伺ってまいります。

本県の歳出の8割を占めるのは義務的経費であります。中でも、介護・医療・児童関係費は、近年、幼児教育・保育の無償化や高齢化などに伴いまして、増加が顕著であり、また、県財政に与える影響は大きいです。そこで、より正確な予算額を計上することがどうしても必要です。

そこで、その推計にあたっては、やはりデータに基づいた根拠が欠かせないと考えております。4年度は、現時点で、どのようなデータに基づいて推計しているのか、伺います。

(財政課長)

令和4年度の介護・医療・児童関係費ですが、現時点で4,307億円を見込んでおり、前年度から240億円の増となっています。

主な内訳は、介護保険制度への法定負担分が1,100億円、後期高齢者医療制度への法定負担分が973億円、児童福祉関連の措置費等が877億円などとなっております。

全体として、介護保険や後期高齢者医療関連は、高齢化の進展により事業費の増加が続いております。また、児童福祉関連につきましても、幼保無償化などの国の制度変更により、増加が続いているという状況です。

推計にあたりましては、まず、令和2年度実績となる4,018億円をベースに、令和3年度分について、可能な範囲で事業別の実績を反映させまして、3年度の見込額を4,162億円と算出しました。

その上で、令和4年度分の推計では、コロナの感染拡大により発生した令和2年度特有の現象、具体的には、受診控えによる医療費負担の減少ですとか、所得の低下を受けた国民健康保険等の減免の拡大、こうしたものを特殊要因として除外しまして、過去3年から5年間程度の対前年度伸び率の平均を個別の事業ごとに乗じまして、それらの合計を見込額としています。

(松崎委員)

 義務的経費については引き続き増加の傾向にあるという点でありまして、一方、政策的経費についてですけど、どのような事業の予算を計上するのかは、残念ながら、来年度も新型コロナウイルス感染症がどのようになるのかに左右されてしまうと思います。

3年度の当初予算では、県主催のイベントの中止等を行うなど、徹底した事業見直しを行い、新型コロナへの対応に重点的に予算を配分いたしました。

しかし、その後も、新型コロナウイルス感染症対策の補正予算を審議するため、今年度に入り、臨時会を6回開催し、3年度予算につきましては、これまで総額7,032億8,173万円の補正予算が提案され、現在審議中の9月補正予算案を除いて半年間に17本、5,410億円の補正予算を審議の末に可決したところであります。

最近になりまして、全国的に新規感染者数は減少し、病床利用率も改善が見られています。また、ワクチン接種につきましても、希望する全国民に対して2回目の接種が11月の完了に向けて進んでいることもあって、9月30日をもって、緊急事態措置が解除されるなど、明るい兆しもあります。

しかし、本県を含む一都三県では、感染がリバウンドし、再び医療のひっ迫を招くことにつながりかねないことから、これまで行ってきた要請を段階的に緩和することとしておりますし、また、専門家などからは、冬場の第6波を懸念する声もあり、先行きはまだまだ不透明な状況であります。

そこで、4年度の当初予算では、新型コロナウイルス感染症の状況を見極め、それを踏まえた対応を取りつつ、県内経済の回復に向けた取組を推進していくなど、軸足をどちらに置くのかを含めて、バランスが極めて重要な予算となると考えますが、こうした点について、どのように考えているのか、伺います。

(財政課長)

当初予算の対象となる分野は多岐に渡るため、その計上にあたっては、新型コロナウイルス感染症の状況をしっかりと見極め、事業費を計上していくことが重要になります。

現時点では感染状況は落ち着きを見せているものの、全体的に収束したと言える状況ではなく、先行きは見通せない状況です。

そこで、令和4年度当初予算の編成にあたっては、コロナ対策の継続を想定すると同時に、その収束後も見越して、国の経済対策等と連動した取組や、ポストコロナを見据えた施策を展開していく必要があると考えています。

今後の予算編成にあたりましては、新型コロナウイルス感染症の感染状況をしっかりと見極め、コロナ対策と経済回復のバランスの取れた予算となるように調整していきたいと考えています。

(松崎委員)

冒頭に申し上げましたように、県民、事業者の皆様にとりまして、必要な施策を適時適切に行っていただくよう、これはくれぐれも再度、再々度お願いします。

一つ例を言いますと、今年度の予算に、中小企業や小規模企業のビジネスモデル転換に対して、3,000万円を上限にした県独自の補助制度があります。この制度は、コロナの影響が長引く中、新たに事業転換に踏み切りたい事業者にとって、使いづらい国の制度とは違って、現場に即したものとなっていることから、感謝の声を多くいただいておりますし、私としては、新規雇用の創出や競争環境の整備にもつながると思っております。

今後も新型コロナウイルス感染症の状況は、刻一刻と変わることが想定されますので、財政当局におかれましては、その状況を十分に見極めて、県民や事業者の皆様の目線に立って、予算編成していただくよう要望しておきます。

 ここまで、令和3年度、4年度の状況、いわば短期的な視点に基づいて、質問をしてきました。

しかし、財政運営においては、中期的な視点で舵取りを行うことが欠かせません。そこで、ここからは、中長期的な視点も加えながら伺っていきます。

 私は、3月の常任委員会で、県債管理目標について質疑を行いました。

その際、「現行の県債管理目標『令和5年度末までに県債全体の残高を2兆円台』を達成するためには、令和4年度及び5年度の県債の新規発行額を900億円程度に収める必要があり、目標達成は非常に困難で、目標の見直しが必要。」という答弁があったところであります。3年度の臨時財政対策債の発行可能額は、当初予算よりも、さらに増えていますが、県債管理目標に対する現状認識を伺います。

(資金・公営事業組合担当課長)

今年度の当初予算に比べ、臨時財政対策債の発行額が319億円増えることにより、令和3年度末残高は、3兆4,057億円となる見込みです。これは中期推計で見込んだ3兆2,350億円を約1,700億円上回る残高となり、中期推計と実績との乖離は大きくなっています。

令和2年度に発行した減収補塡債、今年度発行する臨時財政対策債の影響に加え、令和4年度も臨時財政対策債を大量に発行する必要があることが見込まれていることから、令和5年度末の県債残高の見込みは、3兆3,000億円程度となると見込んでいます。そのため、県債管理目標で定める「令和5年度末に2兆円台」という目標の達成は、3,000億円以上の抑制が必要となり、更に困難な状況です。今後、県債管理目標の見直しが必要な状況であると認識しております。 

(松崎委員)

3月の質疑では、「県債管理目標の見直しは、中期財政見通しの見直しと合わせて取り組む必要がある」とのことでありました。今回の財源不足は850億円であり、中期財政見通しの800億円に近い結果となったわけですが、県債管理目標と中期財政見通しの見直しをどのように考えているのか、伺います。

(資金・公営事業組合担当課長)

令和4年度の財源不足額850億円は、中期財政見通しの見込み額800億円とほぼ同じとなりましたが、未だに新型コロナウイルス感染症が収束しておらず、今後の財政状況を見通せる状況ではありません。

県債管理目標の見直しを行うためには、今後の税収動向や投資的経費の見通しを踏まえた上で、必要となる県債の発行額や償還額を新たに算定する必要があります。その根拠となる中期財政見通しと合わせて取り組む必要があると考えてございます。

先行きの見えない新型コロナウイルス感染症の影響が収まり、今後の財政状況を見極められるようになった適切な時期に、税収や投資的経費の動向をしっかり把握ながら検討していきたいと考えてございます。

(松崎委員)

依然、コロナ禍の収束は見通せません。税収や投資的経費の見通しが立たないというのは理解しますが、新型コロナウイルス感染症の影響が収まるのを待ち続けることになれば、形骸化した目標を掲げ続けることになりかねません。

令和4年度の財源不足額850億円が、中期財政見通しで見込んでいた800億円とほぼ乖離がないことを踏まえれば、中期財政見通しとは切り離し、県債管理目標だけを見直すという選択肢もあるのではと考えますが、いかがでしょうか。

(資金・公営事業組合担当課長)

委員ご指摘のとおり、令和5年度に県債残高を2兆円台にするという目標の達成がきわめて難しいことが見込まれる中、現行の県債管理目標を堅持することは望ましいことではないと認識しております。

そのため、中期財政見通しと県債管理目標を切り離し、県債管理目標だけを見直すということも、今後、検討してまいります。

県債管理目標の見直しにあたっては、県債残高の5割以上を占める臨時財政対策債を推計し直すことが必要ですが、コロナ禍の影響が見通せず、本県の税収動向や国の地方財政計画が把握できない中、どのように精緻な推計ができるのか、検証してまいります。

この検証は、今後の状況について一定の方向性を見定める必要がありますので、令和4年度の当初予算編成の状況等を踏まえながら、中期財政見通しと切り離した県債管理目標の見直しも視野に入れ検討してまいりたいと考えてございます。

(松崎委員)

4年度の財源不足額は850億円と巨額であり、また、財政調整基金の残高も、決算で若干持ち直したとは言え、残高が減少している状況に変わりはありません。

引き続き、危機的な財政状況が続く中、今後、4年度当初予算編成にどのように臨むのか、伺います。

(財政課長)

850億円という財源不足額は、前年度の1,100億円より縮小したものの、本県財政は引き続き危機的な状況にあると認識しています。

また、現時点では感染状況が落ち着きを見せているものの、その先行きは見通せないことから、令和4年度当初予算編成にあたっては、コロナ対策と経済回復を両睨みで考え、バランスの取れた予算とする必要がございます。

財源不足の解消を目指しつつ、コロナの状況を踏まえた予算とする必要があることから、その編成にあたっては、改めて既存事業の優先順位を見極めた上で、スクラップ・アンド・ビルドを徹底していかざるを得ないと考えています。

また、EBPMに基づく事業成果の検証につきましても、コロナ禍で事業の実施を見合わせているものを除いて、その活用を継続し、効果的な施策・事業の構築に努めてまいります。

これらの取組を通じて財源確保に努め、850億円の財源不足の解消を達成していきたいと考えています。

(松崎委員)

最後に、こうした危機的な財政状況の中ではありますが、財政当局には、4年度だけではなく、中長期の視点を持ったうえで、財政運営を求めていかなくてはならないと考えております。

引き続き、難しい舵取りを求められると思いますが、どのように財政運営に取り組んでいくのか、財政部長の決意を伺います。

(財政部長)

850億円という財源不足に加えまして、財政調整基金も残高が減少している状況にございまして、まさに、本県財政は引き続き危機的な状況にございます。

こうした中、令和4年度の当初予算編成におきまして、新型コロナウイルス感染症対策の継続を想定すると同時に、収束後を見越して、国の経済対策等と連動した取組やポストコロナを見据えた施策を展開していくこととなりますが、委員ご指摘のとおり、感染状況を注意深く見極めながら、それらのバランスをとりつつ、県民や事業者の皆様にとって有益となる予算を編成していきたいと考えてございます。

一方で、将来世代への負担を先送りするこのないように、中長期的な視野も持って、現役世代の負担と将来世代の負担のバランスを取りながら持続可能な財政運営をしっかりと行ってまいりたいと考えてございます。

そして、そのためにも中期財政見通しと県債管理目標は重要でございます。

未だ新型コロナウイルス感染症が収束しておらず、今後の財政状況が見通せる状況ではないため、それを見極められるようになった適切な時期に見直しをしていきたいと考えてございますが、現状の県債管理目標については、その達成が困難な状況であることが現時点でも明らかでございますので、委員からご提案いただきました、中期財政見通しと切り離した見直しも視野に入れてしっかり検討してまいりたいと考えてございます。

(松崎委員)

 4年度当初予算は、引き続き危機的な財政状況の中で、先行きが不透明な新型コロナウイルス感染症への対応や県内経済の回復など、今後も、刻一刻と変わる感染状況を踏まえながら、予算を編成する必要があります。つまり、極めて厳しい予算編成になることが予想されます。そうした中でも、常に県民や事業者の皆様の視点に立って、施策・事業を組み立てていただくよう要望します。

また、財政運営にあたりまして、現役世代の負担と将来世代の負担のバランスをいかに取っていくかも、非常に重要な視点であります。そして、その目指すべきバランスを見える化したものが中期財政見通しであり、県債管理目標であると考えています。だからこそ、その羅針盤である、中期財政見通し、さらに県債管理目標は重要であり、県民に対して明確にし、当局は常にそれを意識して財政運営にあたることが必要です。

 答弁にございましたように、やはり現状の県債管理目標につきましては、実態ともはや乖離しすぎていることが明白でありますので、中期財政見通しと切り離した形も視野に入れてということでございましたので、しっかり検討していくということでありますから、これは速やかに見直していただくことを要望いたしまして、私からの質問を終わります。