総務政策常任委員会(立憲民主党・民権クラブ 松崎委員)2022.3.8(火)

(松崎委員) 

 続きまして、私から財政運営について何点か伺っていきたいと思っております。

これまでも、私は財政問題、とりわけ財政健全化について、この常任委員会や決算特別委員会の場で、継続的に当局と質疑を重ねてまいりました。新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない中、いざというときに備えるため財政調整基金を積み増すこと、また、財政運営に当たっては、現役世代の負担と将来世代の負担のバランスを取り、中長期的視点に立って、持続可能な財政運営を行うことの重要性について、議論を重ねてきたところであります。

更に、コロナ禍という荒波におきましては、しっかりとした羅針盤を持ち、財政の舵取りをすることの大切さ、すなわち、「中期財政見通し」と「県債管理目標」の重要性についても、指摘を重ねてまいりました。

また、荒波という意味では、先日、政策局へ県の対応について質疑をしたところでありますが、ロシアによるウクライナ軍事侵攻という新たな荒波が、県財政に近づきつつあります。早期に収束すれば、もちろん、それは望ましいことでありますが、我が国を含め、欧米各国がロシアに対する経済制裁を行い、その対抗措置としてロシアからも経済制裁ということになれば、大国同士の泥沼化になり、その影響が長期化するという最悪の事態も想定しなければなりません。

本日の質疑におきましても、こうした問題意識を持ち、本定例会に提案されている令和4年度当初予算案など、更にはウクライナ情勢を踏まえた財政運営について、伺っていきたいと思います。

はじめに、令和4年度当初予算案について、伺ってまいります。

先の知事からの提案説明、また、我が会派の代表質問における答弁では、令和4年度当初予算案では、新型コロナウイルス感染症対応として、医療提供体制の維持と経済回復の支援にしっかりと取り組む一方で、コロナ禍で顕在化した新たな課題に取り組む、そして、県民生活に直結する事業を着実に推進する、更には、財政健全化に向けた取組も着実に推進するとのことでありました。これらが本当であれば、これまで積み重ねてきた議論が具現化された予算とも言えるところでありますが、年度の締めくくりでもありますので、本日の質疑では、その内容をしっかりと確認・検証・精査してまいりたいと思います。

私はこれまで、この常任委員会におきまして、臨時財政対策債は、県債管理目標の達成に大きく影響するなど、県財政への影響が非常に大きいことを確認してまいりました。そして、臨時財政対策債に焦点を当てて伺っていきたい。そんな思いで、本日臨んでおります。

まずは、令和3年度の臨時財政対策債について、地方交付税と併せて伺っていきます。

 既に、令和3年度の普通交付税と臨時財政対策債については、本県への交付額が確定し、昨年8月3日に記者発表されております。

発表資料によれば、普通交付税1,262億円、臨時財政対策債2,459億円で、合わせて3,722億円となっております。ところが令和3年度2月補正予算に係る「予算に関する説明書」で最終予算額を確認いたしましたところ、地方交付税は2,024億円、臨時財政対策債は2,177億円で、合わせて4,201億円となっておりまして、8月の金額とは乖離が生じております。

 そこで、令和3年度2月補正予算では地方交付税が761億円の大幅な増額となっておりますが、その内訳をまず伺います。

(財政課長)

増額された地方交付税761億円の内訳ですが、普通交付税が756億円、特別交付税が5億円となっております。

(松崎委員)

増額のほとんどが普通交付税ということであります。そこでですが、普通交付税が追加交付された理由とか背景、その内訳を伺います。

(財政課長)

地方交付税は、国税である所得税、法人税、消費税などの一定割合が財源となっていますが、世界経済の回復等により、国税では令和2年度決算及び3年度において上振れが生じ、地方交付税の財源も約4兆円増加しました。

そのため、国は、令和3年度補正予算において、そのうち約2兆円を令和3年度の普通交付税として地方に追加交付することとし、本県には、756億円が追加交付されました。

その主な内訳は、国の令和3年度補正予算における歳出の追加に伴う地方負担分として創設された「臨時経済対策費」が76億円、また、令和3年度に発行した臨時財政対策債の一部を将来償還するための経費として創設された「臨時財政対策債償還基金費」が673億円となっています。

 なお、これら「臨時経済対策費」と「臨時財政対策債償還基金費」は、令和3年度に限り措置された臨時費目で、基準財政需要額が再算定されたことにより、追加交付されたものです。

(松崎委員)

 国税が増収となったことが背景にあるということでありまして、県税でも同様に大幅な増収となっており、企業収益の持ち直しなどによる税収増、これが国・県共通で起きているということが理解できました。それでですが、過去にも、これほどまでに交付税が追加で交付された年があったのか、どうでしょうか。

(財政課長)

本県では、700億円を超える追加交付があったわけですが、過去にこれほどまで多額の追加交付があった例はございません。

 今回と同じように基準財政需要額が再算定された例としては、直近でも平成22年度にまで遡ります。

 平成22年度は、地方全体で2,800億円、本県に約50億円が追加交付されましたが、この分は、平成22年10月に閣議決定された国の「円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策」に伴う地方負担分として、追加交付されたものです。

(松崎委員)

過去にこれほどまでに増額になったことはなかったということです。通常であれば予想できない非常に稀なケースということであります。それでは、3年度の地方交付税と臨時財政対策債が当初予算と大きく乖離したと、さっき指摘したところですが、令和4年度の地方交付税と臨時財政対策債をどのように見込んだのか伺います。

(財政課長)

地方交付税及び臨時財政対策債は、国の地方財政計画などに基づき算定しておりますが、税収等の動向に大きく左右されるものでございます。

 令和4年度当初予算における地方交付税と臨時財政対策債を合わせた実質的な交付税の額は、令和4年度と3年度それぞれの県税収入の増額影響を踏まえて算定しました。

 まず、令和4年度の県税収入の影響については、前年度当初予算比で実質1,380億円増加することから、交付税は、約1,040億円の減額を見込みました。

 次に、令和3年度の県税収入の影響についてですが、年度途中で県税収入が大きく増加した結果、令和3年度の交付税は約700億円過大に交付されています。この700億円は、令和4年度から6年度の3か年の交付税の減額により精算されることから、令和4年度の交付税としては、約230億円の減額を見込んでいます。

 これらの結果、地方交付税と臨時財政対策債の総額は、令和3年度当初予算比で約1,290億円の減となる2,100億円を見込みました。

 なお、地方交付税と臨時財政対策債の内訳は、国の地方財政計画では、地方交付税が微増、臨時財政対策債はマイナス67.5%と大幅減となっていることから、本県においても同様の傾向で推移すると見込み、地方交付税を対前年度比10億円増の1,260億円、臨時財政対策債を1,300億円減の840億円と見込んでいます。

(松崎委員)

臨時財政対策債は、税収が大きく増加したことに伴い大きく減少する見込みであるということですので、一年前の状況から一変しているわけです。そうすると、コロナというものは、先を見通すことが非常に難しいというところを改めて痛感させられるわけです。先を見通すのが難しいということは、単に感染状況が見通せないというだけに留まりません。コロナ禍の影響は、社会経済、また税収など、複雑に及んでおりまして、非常に先が読み辛くなっております。そういった意味で、先々への備えの大切さを改めて痛感するところでございます。このことは、後で改めて触れさせていただければと思っております。

さて、先ほどの答弁の中で、令和3年度の普通交付税の増額の大部分は、臨時財政対策債償還基金費ということでありました。では、お聞きしますが、臨時財政対策債償還基金費は、どんな内容のものですか。

(資金・公営事業組合担当課長)

臨時財政対策債償還基金費ですが、令和3年度の臨時財政対策債の一部を償還するために基金の積立てに要する経費として措置されたものです。今後30年間、臨時財政対策債の償還財源として普通交付税の基準財政需要額に措置される額が一部前倒しで交付されたものです。

 本来は、普通交付税の増額に伴い、臨時財政対策債が減額となるところですが、12月での追加交付であり、既に令和3年度の臨時財政対策債を発行している地方団体は、この措置に応じ、償還財源として活用を行うこととされております。

 国に確認したところ、令和3年度の臨時財政対策債を発行していない場合は、追加交付額に相当する額の臨時財政対策債の発行をとり止めることも認められました。

 いずれにしましても、将来の公債費負担に備えるために活用するものでございます。

(松崎委員)

令和3年度に発行した臨時財政対策債の今後30年間の償還費の一部を前倒しで交付された、という答弁でした。将来30年間に亘って管理し続けるというのは、事務の煩雑さ一つとっても、現実的ではないと私は思います。

そこで、本県では具体的にどのように活用するのか、その点いかがですか。

(資金・公営事業組合担当課長)

臨財債の償還基金費として追加交付された673億円については、償還財源として活用するよりも、臨時財政対策債の発行そのものの抑制に活用した方が、県債残高を増加させないことに加え、利払いが無いという点で有利になります。そのため、発行抑制のために活用いたします。

 本来であれば、3年度の臨時財政対策債の発行抑制に全額を活用するところですが、地方交付税の追加の交付時期が12月末で、県債発行が終了しているものもあり、全額を発行抑制に活用することができなかったため、12月時点で発行手続に入り投資家にアナウンスを行っているものを除いた281億円を令和3年度の発行抑制に活用することとしました。

 残りの392億円については、一旦、3年度に県債管理基金に積み立てた上で、4年度に取り崩し、臨時財政対策債の借替債の発行抑制に必要となる公債費の財源として活用することといたしました。

(松崎委員)

今のお答えを聞いていて、借替債の財源にまで、とうとう到達することができたのかと、私などは、非常にある種の感慨を受けるわけであります。

さて、発行した上で30年間に亘って償還の財源とするというのではなくて、そもそもの発行抑制に活用するという大きな趣旨があったわけですが、発行抑制は利子負担を避けることができるということと、県債残高を減少させることにも直結しますから、その対応は一定の評価をいたします。

さて、令和4年度は、臨時財政対策債の発行額を大きく減少する見込みであるという先の答弁でございました。そうしますと、気になるのは県債残高となります。そこで、県債関係について更に伺ってまいります。

先日のわが会派代表質問におきまして、将来を見据え、財政健全化に向けた二つの取組を行うこととし、その一つに県債償還方法の見直しを行う知事答弁がありました。この県債の償還方法の見直しにつきまして、どのような見直しを行うのか伺います。

(資金・公営事業組合担当課長)

満期一括償還方式の県債については、償還に備えて、毎年度一定の率により県債管理基金へ積立てを行っております。

 これまでの積立ルールでは、元金を償還しない据置期間を3年間とし、4年目から元金分の積立てを行い、積立率については、例えば、基幹的な発行年限である10年債では、残りの7年間で6%ずつ積立て、10年間で42%を積み立てることとしておりました。これは、満期一括償還方式が採用された平成4年度に総務省から示された通知に基づいた積立率であり、本県でも、平成4年度に発行した市場公募債から、この積立率を採用しております。しかし、この積立方式では、はじめの10年間の積立額が42%で最も大きく、借替後の11年から20年目で約24%、最後の21年目から30年目で約34%を積み立てるため、30年間で見た場合の積立率の変動が大きくなることが課題となっておりました。

 併せまして、国からも、据置期間を短く平準化するよう変更を促されておりましたので、今回、1年据置で年3.7%積立てというルールに変更し、30年間一定の率で積立てとすることで、公債費の長期的な平準化を図り、財政運営の安定化を図っていくことといたしました。

(松崎委員)

どうして3年度から見直すこととしたのか、答えられますか。

(資金・公営事業組合担当課長)

据置期間を3年から1年に変更することに伴い、当初の10年間で見ると後年度の積立率が下がり、年度間の平準化が図れますが、2年目から元金償還が始まりますので、見直しからの3年間は一時的な財政負担として、公債費が250億円増加いたします。そのため、この増加に備えて必要となる財源を確実に確保しておく必要がございます。

 当初、令和2年度からの新ルールの適用を目指してまいりましたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により財政調整基金の取崩しなど、厳しい財政運営を強いられる中、新たな財政負担は難しく、適用時期を検討しておりました。

 しかし、令和3年度において、県税収入等の増収により、ルール変更に伴い増加する後年度分を含めた一時的な財政負担の財源確保の目途が立ったため、将来負担の軽減も見据え、3年度発行分から新ルールを適用することとしたものです。

(松崎委員)

 今、一時的な250億円の財政負担の目途が立ったという主旨の答弁があったのですが、この金額はどのように活用するのか、伺います。

(資金・公営事業組合担当課長)

まず、一時的な公債費の増加に対応するため、令和3年度2月補正において、3年間に要する経費である250億円を県債管理基金へ積み立てます。

 令和4年度以降、この県債管理基金から、その年のルール変更に伴う公債費の増加分を取り崩し、その財源として充当いたします。

 その年度ごとの取崩額として、令和4年度24億円、令和5年度97億円、令和6年度は、128億円を予定しております。

(松崎委員)

 24億、97億、128億と年を追うごとに増えていくわけです。そこでですが、今まで色々と県債について伺ってきましたが、県債の発行額とか償還方法の見直しなど、県債を取り巻く状況は、10月のこの常任委員会で伺った時と大きく変わっているわけであります。

 10月の常任委員会では、5年度末の県債残高は、3兆3,000億円程度の見込みで、県債管理目標の見直しが必要な状況であるという答弁がありました。私からは、県債管理目標を中期財政見通しと切り離して速やかに見直すことを要望させていただいた次第です。

 そこで、現行の県債管理目標の目標年度である5年度末県債現在高はどうなる見込みなのか、現時点の見込みを改めて伺います。

(資金・公営事業組合担当課長)

委員お話しのとおり、10月の常任委員会時点では、令和5年度末の県債現在高は、3兆3,000億円程度となるものと見込んでおりました。

 この時点では、令和4年度の臨時財政対策債の発行額を1,860億円としておりましたが、その後、臨時財政対策債の発行額を県税収入の増、それから国税収入の増による本県への割り当ての減少を踏まえ、再度算定した結果、令和4年度当初予算における臨時財政対策債の発行額は840億円と見込みました。

 また、先ほどの臨時財政対策債償還基金費として交付された673億円を発行抑制に活用することに加え、積立ルールの変更に伴い250億円を積立て、活用することなど、状況の変化を反映した結果、5年度末の県債現在高は、4年度の発行水準が5年度も継続すると仮定した場合、3兆1,000億円程度となるものと見込んでおります。

(松崎委員)

つまり10月の時点では3兆3,000億円程度と見込んでいたけれど、3兆1,000億円程度になる見込みであるということです。2,000億円も県債残高が減少したということは、令和3年度当初予算編成時では想定できなかったと思います。

それでは、県債管理目標に対する現状認識を改めてお伺いします。また、併せて、前回答弁いただきました中期財政見通しと切り離した県債管理目標の見直しの検討結果についてもお伺いいたします。

(資金・公営事業組合担当課長)

まず、県債管理目標に対する現状認識についてですが、「令和5年度末までに2兆円台」という目標まで、あと1,000億円を抑制することが必要であるため、目標達成は依然として難しい状況であると考えています。

 しかし、県税収入や地方交付税の原資となる国税収入の動向によっては、臨時財政対策債を中心とした県債の発行額は、今年度と同様に減少する可能性もあり、状況によっては、目標を達成できる可能性も視野に入ってまいりました。そのため、経済状況を注視しつつも、引き続き、現在の県債管理目標の達成に向けた取組を進めてまいりたいと考えています。

 次に、中期財政見通しと切り離した県債管理目標の見直しについてです。コロナ禍における国や県の税収入の変動が大きい中であることに加え、ウクライナ情勢を受けた海外経済の状況など、変動要素の多い状況においては、まずは、目標達成の可能性も視野に入ってきた現在の県債管理目標の達成に向けて取組を進め、新たな県債管理目標については、状況を見極めた上で中期財政見通しと同時期に策定することが望ましいと現時点では考えております。

(松崎委員)

県債管理目標の達成は、依然厳しい状況にあるものの、不可能な状況にはないということであります。更に、目標は堅持していきたいということであります。これは、例えて言うならば、コロナ禍という嵐の中で、荒波で一時進路を見失っていたが、税収が回復し、再び視界が開けて、見失った進路を再確認することができたというところだと思います。将来世代のことを考えますと、目標を堅持する方が望ましいのは当然でありますが、掲げているだけでは意味がないわけであります。

そこで、県債管理目標の達成に向けてどのように取り組んでいくのか、お聞きします。

(資金・公営事業組合担当課長)

まず、県債残高を減らすためには、県債残高の5割以上を占めるに至った臨時財政対策債を減少させることが重要であると考えています。ここまで臨時財政対策債の現在高が増加したのは、臨時財政対策債が国の財源不足に伴う地方交付税の代替措置として、時限的に設けられた制度であったにもかかわらず、度重なる延長により、現在も継続していることが要因となっております。そこで、制度の廃止や臨時財政対策債に頼らず交付税総額の確保を図るよう要望するとともに、現状においても、財政力の高い団体に対して過度に配分される算定方法の見直しなど、全国知事会等とも連携しながら、国に強く働き掛け、発行額の圧縮に取り組んでまいります。

また、通常の県債につきましても、県民サービスの低下を招かないよう収支のバランスを考慮しながら、従来の施策事業の見直しに加え、これまで以上に事業の優先度を厳しく見極め、発行額を決定していきたいと考えています。

更に、財政状況にもよりますが、不用額等により生じた財源を活用し、可能な限り借替債等の発行を抑制するなどの取組にも努めてまいります。

これらの取組により、県債残高を減少させ、将来世代への負担を軽減していきたいと考えております。

(松崎委員)

目標を堅持する以上は単に掲げるだけでは困るわけでありまして、しっかりと達成に向けて努力いただくよう、お願いをいたします。

これまでの県債に関する質疑を通じまして、現役世代と将来世代の負担のバランスという意味では、県債現在高が再び減少に転じており、財政健全化に向けて前進していることが確認できました。

さて、財政得健全化のもう一つの視点といたしまして、私は、財政調整基金の積増しを当常任委員会で求めてきたところであります。また、先ほど、コロナ禍は社会経済にどんな影響を与えるのか、先を見通すことが難しくて先々の備えが大切であるということを指摘させていただいたところでもあります。

 先日の我が会派の代表質問においても、財政健全化に向けた二つの取組の一つして、財政調整基金の積立てを行い、300億円程度にまで減少していた残高が、コロナ禍前と同規模の620億円までに回復するとの知事の答弁があったわけでございます。ただ、10月のこの常任委員会ではですね、今年度の税収増により交付税が過大になっており、後年度で交付税が減額精算される、そしてその精算額390億円を加えて689憶円となる見込みだ、という説明でした。それで、代表質問の答弁では、交付税の精算分に対して備えができているのか、この点、確認ができませんでした。そこでですが、今の時点で、現時点で3年度及び4年度末の財政調整基金の残高はどのような見込みなのか、地方交付税の精算分を加えた場合も含めて、改めて確認のためお聞きします。

(財政課長)

財政調整基金の残高につきまして、令和3年度末の残高は、税収の増加により1,867億円となる見込です。このうち、701億円は3年度に過大に交付された地方交付税の今後3年間の精算分であるため、実質的な残高は1,165億円となる見込みです。

 また、令和4年度の残高は1,088億円となりますが、そのうち地方交付税の精算分の残りの467億円を除いた実質的な残高は、コロナ禍前と同規模の621億円となる見込みです。

(松崎委員)

 交付税の精算分を除いて実質的な残高として、コロナ禍前の水準で620億円まで積み増しているということと、また、交付税の精算分についてもしっかりとした備えをしているという説明でありました。一定の評価はさせていただきたいと思います。しっかりと財政調整基金を積み増して、コロナ禍前の水準にまで回復したことについて、一定の評価をしているわけであります。

 これまで質疑を通じまして、県債や財政調整基金などの状況を確認してまいりましたが、4年度の当初予算段階としては、一時期の深刻な状態から脱しつつあるという説明でありました。

ただ、新たな不安要素がありまして、これは周知のとおり、ロシアでのウクライナへの軍事侵攻です。国際法に照らしても断じて許されない行為であることは言うまでもないわけですが、事態が長期化すればするほど、県経済、そして県財政、この影響も危惧されるわけであります。財政運営に当たりましては、その影響を注視する、よく注視すると言うのですが、注視するだけでは足りないです。早期終息に向かえばよいですが、長期化が現実になった場合、対応をどうするのかということを予め考えておく必要があると私は強く思います。

 昨年度をはじめ、本県では過去に何度も年度途中に県税収入の減収となって、苦しい財政運営を強いられた経験を持っております。そこで、今こそ、その過去の経験に学ぶということが大変重要かと思います。

これまで、年度途中に県税収入はどれくらい減収したことがあるか、そして、その際、どのようにして、その状況を乗り切ったのか、これ、もう当然レビューされていると思いますが、お答えください。

(財政課長)

年度途中で税収が大きく減少した事例としましては、平成21年度において、リーマンショック後の世界的な金融危機の影響により、当初予算に対して515億円もの大幅減となったことがございます。このときは、減収補塡債を発行したほか、事業費の執行を抑制したことなどにより対応いたしました。

 また、昨年度におきましても、新型コロナウイルス感染症の影響で、当初予算から511億円もの減収となりました。このときも減収補塡債を発行したほか、事業費の執行を抑制したことなどにより対応しています。

 特に、昨年度においては、減収補塡債の対象ではなかった地方消費税等においても大幅な税収減が見込まれたことから、対象税目の拡大を国に働き掛け、令和2年度限りの措置として、地方消費税などの7税目の減少分についても減収補塡債の発行が認められ、これにより150億円の財源を確保しています。

(松崎委員)

仮にですが、この令和4年度中に、同じ規模の県税収入の減収が生じた場合、どのような対応を考えているのか、伺います。

(財政課長)

令和4年度中に県税収入の大幅な減少が生じた場合、まず、減収補塡債の発行を検討します。地方財政の制度上、景気の変動などの影響を受けやすい法人二税等は、その減収額について減収補塡債の発行が認められていますが、今回のウクライナ情勢は法人の収益にマイナスの影響を与える可能性が十分に考えられるため、減収補填債を有効に活用したいと考えています。

一方、地方消費税等は、令和2年度に減収補塡債の対象税目に追加されましたが、それは当該年度限りの措置だったため、現状では発行が認められておりません。今後、再び地方消費税等の減収が見込まれる場合には、改めて減収補塡債の発行対象とするよう、国に働き掛けていく必要があります。

 こうした対応に加えまして、事業費の執行抑制に努めるほか、場合によっては、今回、620億円まで回復した財政調整基金の取崩しについても視野に入れることになると考えています。

(松崎委員)

まだ記憶に新しいところですよね。減収補塡債の対象税目に地方消費税を入れてくれ、国に要求したというのは、本当にもう記憶に新しい、生々しい記憶でございます。そうしたことをやはりもう一度やる必要が出てくるかもしれない。そして、それだけでは足りない場合、今、620億円まで回復したところの財政調整基金の取崩しについても視野に入れることになるということでありました。

そうならないことをただ祈るということを申し上げても、それは詮無いことでありまして、現状、非常に厳しい状況が続いていますから、一日も早く事態を収拾していただくということを願いつつも、そうなった場合どうするかということを、やっぱり備えていく必要があるということであります。議論をし、シミュレーションをしておくという必要があると思います。

さて、県経済、今、懸念をしておるように悪化いたしますと歳入が減るだけではなくて、県民や事業者を守る対策のための必要な施策を適時適切に講じていく必要があります。この点についてはいかがですか。

(財政課長)

委員御指摘のとおり、今後、県経済が悪化した場合には、県税収入の減への対策だけでなく、県民や事業者を守るため、必要な施策を適時適切に講じていかなければなりません。県では、既に、ウクライナ情勢の影響を受ける中小企業への支援として、速やかに相談窓口を開設するとともに、昨日、制度融資のメニューに原油・原材料高騰等対策のための特別融資を創設したところです。今後も引き続き、ウクライナ情勢が県経済に与える影響を注視しつつ、必要に応じて、国の状況も見ながら適切に対応していきます。

 また、こうした対策を講じる上で必要な財源は、地方財政制度上の制約からも、本県だけでは十分に賄うことが困難です。そこで、対策のための財源が必要な場合には、機会を捉えて国に財源措置を求めていきたいと考えています。

(松崎委員)

影響を注視して、必要な対策は躊躇なく講じていただきたいと強く要望いたします。また、先ほどの答弁で、財政調整基金には、交付税の精算分とは別に400億円の残高があるということでありました。目の前の県民・事業者を守るための対策に迫られて財源がどうしても必要になった場合には、その400億円の活用も選択肢の一つとして考えられると思いますから、指摘をしておきます。

事態が長期化すれば、4年度の企業収益に悪い影響が出る、そうなると、翌年度、つまり5年度の県税収入により深刻な影響が出るのではないかと強く懸念いたします。いずれにせよ、影響が見通せない現時点におきましては、あらゆる可能性を排除せず、対応を考えておくことが重要ですから、準備を怠らないよう、また、シミュレーションをしておくように、想定外だと言って後で慌てることが絶対ないようにお願いいたします。

これまで、コロナ禍における4年度当初予算、それから、ウクライナ情勢の影響と目まぐるしく変化する環境の中での財政運営について伺ってまいりました。

最後に、今までの質疑を踏まえつつ、現在の本県の財政状況に係る認識と、今後の財政運営にどのように取り組んでいくのか、財政部長に伺います。

(財政部長)

まず、現在の本県の財政状況の認識でございますが、幸運にも海外経済の回復によりまして、企業収益が短期間で増益に転じたことですとか、株取引が好調であったことなどから、3年度の県税収入は大幅な増収を見込める状況となりました。この税収増によりまして確保した財源を活用しまして、4年度当初予算では、コロナ禍で顕在化した新たな課題ですとか、県民の安全・安心のためのインフラ整備の加速化に取り組む一方、委員から従来御指摘いただいています、将来世代へ負担を先送りすることがないよう、現役世代と将来世代との負担のバランスという視点を持って、先程、縷々御答弁させていただきましたとおり、県債償還額の平準化に加えまして、地方交付税の増額を活用した臨時財政対策債の償還を行い、将来負担の軽減に努めたところでございます。

 また、将来への備えといたしまして、財政調整基金の残高も確保するなど、財政健全化に取り組むことができたこともございまして、財政状況は一定の改善をしたと認識をしております。

 しかし、今後を見通しますと、オミクロン株のような新たな変異株の発生を予想することは極めて難しいこともございますし、昨日から重点措置が延長されたことなど、未だに新型コロナウイルス感染症の状況は、見通せない状況でございます。更に、これも委員から御指摘のとおり、ウクライナ情勢に伴う経済状況の悪化の想定をしなければならないと考えてございます。こうした状況を、今まで以上に注意深く見極めながら、税収減があった場合には、減収補塡債の発行など、過去の本県のノウハウを十分に発揮いたしまして、財源確保を図っていきたいと考えてございます。

 更に、事態が長期化しますと、リーマンショック時など、過去の事例を踏まえますと、当該年度、来年度よりも、その翌年度である令和5年度に県税収入が大幅な減収となりまして、県財政が再び悪化するということも想定しなければなりませんので、こういったことに備えまして、国に対して、一般財源総額の確保充実、地方交付税の増額確保を、しっかり引き続き働き掛けてまいりたいと考えてございます。

 いざというときに慌てないように、こうした備えをしっかり行うことで、県民や事業者の皆様にとって有益かつ必要な施策を適時適切に講じてまいりたいと考えております。

 そのためには、当面の税収増に安心することなく、将来への備えをしつつ、引き続き、世代間のバランスを取りながら、コロナや自然災害など様々な状況の変化に的確に対応できる「持続可能な財政運営」を行ってまいりたいと考えてございます。

(松崎委員)

 最後に要望を申し上げます。

私、思い出しますのは、台風19号が来たときでありまして、予期しないものが来ても、しっかりとそれに耐えて乗り越えられる県財政というものがどれだけ大切かということを、身を以って痛感したわけであります。

4年度の当初予算編成におきましては、県税収入の増という追い風をうまく活用して、これまで私が求めてまいりました県財政健全化の取組を進めたということについては一定の評価をいたします。

しかし、コロナ禍は本当に先が見通せず、残念ながらウクライナ情勢も先が見通せません。一年前に、今回の財政状況の好転を予測できなかったように、一年後に、何が起きているかも分からない状況であります。だからこそ、財政運営に当たりましては、常に、先々のあらゆる可能性を想定に入れ、多くの選択肢を準備した中で、最適な選択をしていただくようお願いします。シミュレーションも大切であります。

 また、県債管理目標につきましては、「令和5年度末までに県債全体の残高を2兆円台」という目標を堅持するということであります。税収の増ですとか、臨時財政対策債の減を踏まえたものであり、理解はいたしますが、堅持する以上、将来世代に負担を先送りしないという意味でも、目標達成に向けたたゆまぬ努力を続けていくことを求めます。

ウクライナ情勢によりましては、目標に過度に拘り過ぎることもまた良くないことでありまして、県民や事業者の皆様を守る、この、柔軟に対応して必要な施策を適時適切に講じる、このことについて、このためにこそ、県債は適切に発行する、必要な分を発行する、躊躇なく発行するということ、こちらの方も要望させていただきます。

バランスの取れた財政運営を引き続き求めさせていただいていて、私の質問を終わります。