令和4年7月13日 次世代育成・デジタル戦略推進特別委員会
(立憲民主党・民権クラブ 松崎委員)
(松崎委員)
私からも、引き続きヘルスケア・ニューフロンティア施策の関連でお伺いします。
6月下旬、兵庫県尼崎市で全市民46万人の氏名や住所のほか、生活保護世帯の銀行口座などの個人情報が入ったUSBメモリーを紛失したとの報道がありました。紛失したのは、市から新型コロナウイルスの給付金支給業務を受託していた会社の再委託先の社員ということですが、受託業者は市に事前の届けなしで業務を再委託、再々委託していたとのことであります。
この事件が起こるより前に、私は昨年度来、総務政策常任委員会におきまして、本県における再委託・再々委託に伴う委託事業の透明性の向上を図るため、再委託等及びこれに伴う個人情報の取扱いについて、全庁的なルールづくりをするよう求めていたところです。私がこうした問題提起をしたのは、令和2年度に、当時のヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室が実施した「新型コロナウイルス感染症の抗体保有状況等調査」の業務を産業技術総合研究所に委託し、さらに慶応義塾大学、総合健診センターヘルチェックに業務や個人情報が流れていったことについて、財務会計上の透明性は適切なのか、県民の皆様の個人情報はしっかり保護されているのかという懸念を持ったからにほかなりません。
そこで、ヘルスケア・ニューフロンティアの推進の一環として、実施された抗体保有状況等調査に関しまして、確認の意味でその後の対応も含めて何点か伺っていきます。
はじめに、抗体保有状況等調査における業務の流れや個人情報について、どのような課題があったと考えているのか伺います。
(ライフイノベーション担当課長)
令和2年度に実施いたしました、抗体保有状況等調査での課題は、3つあったと考えております。
一つ目は、抗体保有状況調査を実施した慶應義塾大学が、血液採取や検査を健診会社に外注しておりましたが、検査を実施した健診会社の選定理由について、県として事前に把握できておりませんでした。
二つ目は、慶應義塾大学の決算書には、人件費等が記載されておらず、事業の丸投げと誤解を生んでおり、県として報告書の受理時の確認が不十分でございました。
三つめは、検査を実施した検診会社がどのような個人情報保護対策をしているのかを、県として事前に確認しておりませんでした。
(松崎委員)
こうした課題を発端に、私は再委託等の透明性の向上に向けて、全庁的な課題として取り組むよう繰り返し求め、そして、その検討にあって、まずは再委託等の実態をきちんと調査すべきであると意見を申し上げました。今回、実態調査を行っていただいたと承知しておりますが、その結果はどうだったのかわかる範囲で伺います。
(ライフイノベーション担当課長)
実態調査の結果についてお答えいたします。
まず、契約事務につきましては、知事部局における令和3年4月1日から令和3年12月31日までに支出負担行為を行った250万円以上の対象となる委託764件を調査いたしました。そのうち再委託を実施していなかったものが539件、再委託を実施していたものが158件、再委託の状況について把握ができていなかったものが67件ございました。また、再委託を実施した158件のうち、再々委託を実施していなかったものが131件、再々委託を実施していたものが10件、再々委託の状況について把握ができていなかったものが17件ございました。
次に、個人情報保護については、個人情報の取扱いを伴う委託544件について、再委託先が93件ございまして、そのうち23件は、契約で事前承諾を定めておりましたが、承諾を事前に得ていなかったという結果が出たところでございます。
(松崎委員)
そうした結果を踏まえまして、再委託等についてどのような課題があったと考えているのか伺います。
(ライフイノベーション担当課長)
こうした結果になったことは、契約事務や個人情報保護の取扱いについて各所属における理解不足があり、契約事務におけるルールの明確化に加え、それぞれの取扱いについて理解を深める必要があるとの課題があったものと認識しているところでございます。
(松崎委員)
次に、再委託等の適正な実施に向けて、どのような対応をしたのか伺います。
(ライフイノベーション担当課長)
全庁的なルールとして、再委託等の基本的な考え方や留意事項を会計局指導課が通知しております。具体には、令和4年度の契約締結執行に向けまして、令和4年3月25日付、指導課長通知といたしまして、「一般業務委託契約における再委託の取扱いについて」という通知を発出し、再委託などの基本的な考え方や留意事項について周知するとともに委託業務標準契約書例に再委託に関する条項を新たに規定するなど、再委託等の適正な実施に向けて取り組んだところでございます。
(松崎委員)
私が求めていた全庁的なルールとして再委託等の基本的な考え方や留意事項を通知に取りまとめ発出するとともに、委託業務標準契約書例に再委託に関する条項を新たに規定したとのことであります。産業技術総合研究所の委託に話を戻しますが、確認ですが、産業技術総合研究所への委託は令和4年度も行っているのか伺います。
(ライフイノベーション担当課長)
先にお話しした、抗体保有状況等調査、これにつきましては令和2年度限りの事業のため、令和4年度は実施しておりませんが、
一方で、介護に資するヘルスケアロボットや、生き物である再生細胞の品質評価、こういった研究支援業務につきましては、産業技術総合研究所に委託をしているところでございます。令和4年度もしております。
(松崎委員)
お答えでは、今年度は抗体保有状況等調査については実施していないとのことですが、産業技術総合研究所への委託は引き続き行っている訳でありますから、先程、縷々ご答弁いただいた課題について、報告された全庁的なルールに沿って、産技総研への委託についてもしっかり対応する必要があると考えるわけであります。そこで、今年度の契約では、どのような見直しを行っているのか伺います。
(ライフイノベーション担当課長)
産業技術総合研究所への研究支援業務の委託に関する契約につきましては、今年の3月25日付で会計局調達課長より通知された「入札・契約事務の手引きの一部改正について」で新たに追加された、第6条の再委託の項目を追加するとともに、先の3つの課題に対して改めて個別に対応も実施しております。
一つ目の研究支援先の大学等の外注先の選定方法等の確認につきましては、研究開始前に提出する計画書の中に、外注先の選定方法や名称を記載することを、契約書に付随する仕様書に追加させていただきました。
二つ目の報告書の受理時の確認につきましては、産業技術総合研究所の研究支援以外に、別途、国等から支援を受け研究費として支出した場合については、その内容を実施報告書に記載することを仕様書に追加しております。
三つ目の個人情報保護対策の確認につきましては、計画書の方に、個人情報の取り扱いの有無や扱う場合の措置内容、外注先の個人情報保護の措置内容を記載することを、仕様書の方に追加しているところでございます。
(松崎委員)
只今、仕様書ということが出てきました。当初より私はこの仕様書について度重なる機会を取り、確認を取っていったわけですが、その時点においてはないという答えが次々と返って来たので驚いたわけです。従って改善を求めていったという経緯がありますから、この改善は非常に重要であると私も思います。改善というよりはこれはもはや改革と呼ばなければいけないと思っております。県政改革だと思っています。
尼崎市の事例におきましては、記録媒体は複数人で運ぶ、作業後にメモリーからデータを消去するなど、個人情報の取扱いに関する教育が委託業者に徹底していなかったとも言われておりまして、そうしたことも踏まえますと、2重3重の手当を講じていくことが重要だと思います。先程、答弁していただいた内容で十分と考えているのか、認識を伺います。
(ライフイノベーション担当課長)
今年度、産業技術総合研究所に委託した研究支援業務の契約にあたりましては、仕様書に、研究計画段階でのチェック体制を新たに記載するとともに、産業技術総合研究所には、趣旨なども含めて、十分に説明しているところでございます。
これを受けまして、産業技術総合研究所では、この県の方針に基づき、当該事業の研究支援を実施する際の「研究実施マニュアル」を4月に改訂いたしまして、個人情報の取り扱いを新たに追加するとともに、県の標準契約書で定めている個人情報の保護に係る順守すべき事項について、研究支援先の大学等にしっかりと周知したところでございます。
また、計画書の様式なども改訂いたしまして、具体に外注先の個人情報保護の取り扱いを記載させており、こうした手当を実施していることから、尼崎市のような受託業者の認識の甘さはないものと認識しているところでございます。
(松崎委員)
今、甘さはないという答えでしたが、甘さを無くしていただいたということだと思うのです。やはり、個人情報保護というのは時代の要請というよりは根源的に大切にしなければいけない、本来、県民の皆様の命と同じですから、そこについて甘さやうっかりというのはゼロにしていただくことが基本だと思いますので、よろしくお願いします。
産業技術総合研究所への委託につきまして、改善が図られていることは一定理解しました。最後に、ヘルスケアの抗体保有状況等調査をきっかけにして、県庁全体の再委託等の見直しにつながった訳ですが、再委託等の適正な実施につきまして、今後、どのように取り組んでいくのか、いのち・未来戦略本部室長に伺います。
(いのち・未来戦略本部室長)
昨年来、ご指摘をいただいておりました産業技術総合研究所への委託につきまして、先ほど、課長から答弁いたしましたが、外注先の選定方法の確認、業務報告書の受理時の確認、そして、個人情報保護対策の確認につきましては、当室においても、関係者とも議論し、改善に向けた対応を図ってまいりました。
また、今回のご指摘が非常に重要だという認識をしております。こうした認識のもと、関係部局が主導いたしまして、全庁を対象に、改めて再委託等に関する認識について職員の意識を高め、改革とも言うべき新たなルールを取りまとめさせていただいたところでございます。
そこで今後は、当室においても、産業技術総合研究所などへの委託について、新たなルールに基づき、適正に執行すべく必要な対応を講じてまいります。
そして県全体としても、県民の皆様にしっかりと説明責任を果たすことができるように、新たなルールに基づいた取組みを進めていきたいと思います。
(松崎委員)
昨年度の私の指摘や提案などを踏まえ、実態調査を行い、ルールの明確化などの取組を整理していただいたことについて、一定の評価をいたします。
しかし、委託事業に係る再委託・再々委託の問題は、県がこの問題に対しての認識を改めてしっかり持っていただき、先導的に変わっていくことによって、再委託等の透明性の確保に加え、個人情報の保護についても県民の皆様に安心していただくことができ、県民の皆様への説明責任を果たすことができるのではないかと思います。
今回、全庁的なルールづくりをしていただきましたので、今後はしっかり運用していただき、本県においては、再び再委託等の問題が起こることのないよう強く要望して、私の質問を終わります。