令和4年11月1日 決算特別委員会・総括質疑

(立憲民主党・民権クラブ 松崎委員)

1.地籍調査について

(松崎委員)

私からは県政の基本に関わる重要課題について何点か質問を行います。

まず、「地籍調査」についてです。

平成23年3月11日に発生した東日本大震災で、私は三陸道の一般車両の通行が可能となると同時に、生活物資を携えて、南三陸町を訪れました。山側から到着しますと、見渡す限り瓦礫に埋まった町の姿を目の当たりにしたわけであります。

その光景を振り返りますと、想定される首都圏の巨大地震を思えば、地元金沢区をはじめ、家屋の火災、倒壊、また沿岸から内陸への浸水被害など災害への備えが不可欠であると強く感じているところであります。

その不可欠な備えの一つが地籍調査です。

地籍調査は、市町村が主体となって土地の所有者や境界、面積などを一筆ごとに調査しており、住宅や事業所、施設の区画を確定することにより、土地取引の円滑化などに役立つだけでなく、想定される被害が甚大で、いつ発生するかわからない災害からの復旧の成否を分ける極めて重要な役割を果たすものと考えます。

しかし、本県における進捗率は、令和3年度末で約15%にとどまっています。

そこで、地籍調査の取組について、何点か伺います。

まず、地籍調査がなかなか進まない理由として、本県のような都市部では土地が細分化され、筆数が多いことが挙げられると承知をしていますが、その他にどのようなことが原因と考えているのか伺います。

(技術管理課長)

委員おっしゃるとおり、都市化が進んだ本県では、土地が細分化され筆数が多く、権利関係も複雑であることから、調査に多くの時間と費用を要しております。

 実際、調査の進捗率が1パーセント向上するには、概ね5年程度を要しています。

 また、実施主体の市町村が、調査を担当する職員を十分に確保できないといったこともあり、調査がなかなか進まない要因となっています。

(松崎委員)

そうした課題がある中ですが、実際、私の地元金沢区では国有地と民地の境界確定に時間がかかって、長い間、空地の活用が図られないといった事例もありました。

県として、地籍調査の進捗を図るため、これまでどのような取り組みを行ってきたのか伺います。

(技術管理課長)

昔、田んぼのあぜ道であった畦畔などの国有地では、境界が定まっていないケースもありますが、道路等の公共物では、一般的に民有地との境界は定まっています。

 そこで、県では、地籍調査を効率的に進めるため、一筆ごとの調査の前に、道路等の公共物と民有地の境界を先行して確定させる、「街区境界調査」という手法を積極的に活用するよう、市町村に働きかけています。

 また、津波による浸水被害が想定されています、相模湾沿岸の市街地を「緊急重点地域」と位置づけまして、市町村に対して優先的に調査を進めるよう促しており、令和3年度末の全県の進捗率が約15パーセントであるのに対し、この地域では、約36パーセントとなっています。

 さらに、従来、市町村職員が行っていました、境界立会などの業務の大半を測量会社等へ委託できる制度を活用し、調査の進捗を図ってきたところです。

(松崎委員)

阪神・淡路大震災や東日本大震災、そして、近年では本県にも大きな被害をもたらしました令和元年の台風15号、19号など、大規模な災害が頻発する度に、地籍調査は大変重要な取組であり、一層の促進を図る必要があると痛感をするわけであります。

今後、県としてどのように取り組んでいくのか伺います。

(技術管理課長)

調査を行う市町村では、担当する職員が少ないという課題を抱えており、先ほど答弁した、測量会社等へ業務の大半を委託する制度は、調査を促進する上で、有力な手段と考えております。

 そこで、この制度をより多くの市町村に使っていただけるよう、昨年度から県の職員が直接訪問して、働きかけを行っており、令和4年度から、真鶴町と清川村も活用することとなり、今後、その他の市町村にも活用を促していこうと考えています。

 また、今後、この制度を多くの市町村が採用した際には、これまで以上の予算が必要となります。

 地籍調査の市町村に対する県の補助額は、国からの負担金を含めた令和3年度の決算額で約1億7千6百万円、令和4年度の補助額は約2億2千5百万円と増額はしたところですが、さらなる予算の確保に向け、国に対して、様々な機会を捉えて要望するなど、県として必要な予算を確保してまいります。

(松崎委員)

自然災害が激甚化、頻発化する中で、地籍調査をはじめとした災害対策事業の重要性はますます高まっておりますが、県としてどのように取り組んでいくのか、県土整備局長の決意を伺います。

(県土整備局長)

近年は、自然災害が激甚化、頻発化しておりまして、県では河川・海岸の施設整備、それから急傾斜地のがけ地の整備等々の、いわゆるハード対策を進めております。令和2年度からは水防災戦略のお金もいただきまして、加速化しているところでございます。

一方、ハード対策だけでは県民のいのちを守ることが、完全にはできませんので、ソフト対策にも力を入れております。最近、気象庁の予報で、これまで経験したことのない雨、台風といったフレーズをよく伺いますが、こうした最大クラスの豪雨ですとか台風を想定した、河川の氾濫、高潮、津波を想定した浸水想定区域図というものを作成しておりまして、こうしたものを避難に役立てていただく取組を進めております。

 こうした中、今ご指摘の地籍調査ですが、災害が起きてしまった後の復旧・復興を速やかに進めるために、必須の調査でございます。東日本大震災でも地籍調査の有り無しで、復興のスピードが違った、というようなこともございました。

県としては、津波の浸水や河川の氾濫が想定される市町村を中心に、重点的にこれからも訪問いたしまして、先ほどご答弁申し上げました、市町村が丸ごと測量業者に委託できる制度も国が推奨しておりますので、こういった取組が一つでも多くの市町村に広まるように、これからも努めていきたいと考えております。

(松崎委員)

是非、力を入れていただきたいと思います。

地籍調査は、大規模災害が発生した際、早期の復旧・復興を支える重要な事業です。地震や大規模な土砂災害など、災害はいつ発生するかわかりません。県においては、実施主体である市町村をしっかり支援して、地籍調査の促進を図っていただくよう要望します。

2.再委託等の透明性の向上に向けた取組について

(松崎委員)

次に、委託等の透明性の向上に向けた取組についてであります。昨年度、私は総務政策常任委員会におきまして、実態調査の実施、全庁的なルールづくり、個人情報保護の取扱いについて指摘いたしました。これを受け、当局では全庁を挙げて実態調査を行うとともに、より適正な実施に向け、今年度から契約事務におけるルールの明確化と透明性の向上を図ったところであります。昨年度この場において、我が会派から「委託はそもそも必要なのか」、「また再委託先が必要か適切か」など、委託事業の適正化を問う質疑を発端といたしましたので、非常に意義深いものと考えております。

その後、今年6月下旬、兵庫県尼崎市で再委託先の社員が全市民46万人の個人情報を紛失するという事案も発生した。

そのことも踏まえますと適時適切な指摘であったのではないかと考えているところです。

私は、これまで本県の再委託等の透明性を向上させ、ぜひ適正化してもらいたい、そのような思いで会派を挙げて、皆様と合計5回にわたり議論を重ねてきたところであります。

当局としては今回の取組についてどのように認識しているのか伺います。

(政策局副局長兼総務室長)

昨年来、再委託等につきましては、様々な問題提起をいただきまして、局横断的に取り組む課題であると受けとめまして取り組んでまいりました。

全庁挙げての実態調査では、契約事務について調査対象の約1割で、再委託の状況について把握しておらず、また個人情報についても、事前承諾を得ていないものがあるなどの状況が判明をいたしました。

こうした結果等を踏まえまして、契約事務につきましては、基本的な考え方や留意事項を整理させていただきまして、通知として発出するとともに、新たに契約書例に再委託に関する条項を追加するなどの対応をしたところでございます。

こうした今回の取組は、ルールの明確化に資するものでございまして、また再委託等に係る透明性の向上を図るために必要な取組であったと認識しております。

今後明確化しましたルール等を職員研修ですとか、会計事務検査等を通じまして、実効性を担保しながら、しっかりと運用することで、適正な執行に努めてまいりたいと考えてございます。

(松崎委員)

税金がどのように使われているのかについて県民の皆様に説明責任を果たしていくこと、また、個人情報が適切に取り扱われていることが重要でありますので、今後は今回整理した全庁的なルールを実効性のあるものにし、本県においては再委託等の問題が起こることのないようくれぐれもお願いをしておきます。

また、新たな課題がありましたら、その都度取り上げ、改善を求めていきます。

3.財政運営について

(松崎委員)

続いて、「財政運営」について、伺っていきます。

令和3年度は、新型コロナウイルス感染症対策を中心とした数多くの事業を実施するため、実に計26回、総額9,838億円の補正予算を計上いたしましたが、その度に私が所属していた総務政策常任委員会で様々な議論をいたしました。その結果として、一般会計の歳出決算額は、過去最大の2兆9,000億円となっております。

そうした中、コロナとの闘いも、もうすぐ丸3年となり、水際対策の緩和など、コロナ禍前の日常が戻りつつあります。そろそろ、しっかりと、これまで本県が実施してきたコロナ対策について検証する時期になっていると思います。

私は、これまで財政問題、とりわけ財政健全化について、当局と質疑を重ねてきたところでありますが、コロナ対策で財政規模が膨れ上がる中、非常に危惧している点があります。

それは、このコロナ禍で、非常時の財政運営が続いた結果、財政規律が緩んでいるのではないかと、深く懸念しているところであります。

そこで、何点か質問していきます。

 令和3年度に実施したワクチン大規模接種会場の運営事業について伺います。

 私が、県ホームページの「入札情報サービス」で、入札結果を確認したところ、この事業は、昨年の7月9日に2者による見積り合せが実施されておりました。結果を見ると、2者のうち1者は、落札者で受託事業者である大企業。そして、もう1者は、中小企業で、理由は承知しておりませんが、見積り合わせを辞退しており、実質的には、落札者1者による見積り合わせとなっております。

見積り合わせという手法は、県が随意契約を締結する際、2者以上から見積書を徴取することで、これは、価格の公正と適正を期するためのものです。

この案件は、数億円規模の大規模な事業で、1か月に及ぶ大規模接種会場の運営を担える体力が求められます。したがって、競争性を担保するのであれば、落札者と同規模の事業者を選定するべきでなかったのか、という疑問もわいてくるところです。

 まず、お聞きしますが、見積り合わせ参加事業者はどのように選定したのか伺います。

(ワクチン接種担当課長)

 2者という話が今ありましたが、具体的には、株式会社JTB、それから、株式会社横浜アーチストという企業に見積もりを依頼しております。

株式会社JTBですが、東京都からJTBに大規模接種会場業務を当時、委託しているというお話を聞き、JTBに対し、見積もりを依頼したところです。

また、横浜アーチストですが、県の入札参加資格ではJTBと同じランクであり、イベント企画運営を主な業務とする中小企業ではありますが、本県におけるコロナ対策等の事業で受注実績があることから、見積もりを依頼したものでございます。

(松崎委員)

そのような答弁をされていますけれども、実際は落札者ありきだったのではないかと、私は疑念を抱いてしまいます。

そこでですが、落札者であるJTBは、その後も、県の大規模接種会場の運営事業を受託し続けているのか伺います。

(ワクチン接種担当課長)

 令和3年度は、ワクチンの供給について、不安定な状態で、県の大規模接種会場についても、ワクチンは当初9月末までしか確保できておりませんでしたが、10月以降のワクチンの確保もできる見込みが立ちましたので、接種期間を延長し、契約変更により、引き続きJTBに受託しているという状況でございます。

(松崎委員)

大規模接種会場の運営事業委託は、令和3年度6月補正予算その6で初めて予算計上されたと承知しております。当時は、まだ自衛隊の大規模接種センターも設置されたばかりの状況で、大規模接種会場に係るノウハウも世の中に蓄積されていなかったと記憶しています。

 そこでですが、予算計上に当たり、どのように積算を行ったのか伺います。また、予算の積算に当たり、業者から参考見積は徴取したのか、徴取したのであれば、どこから徴取したのか伺います。

(ワクチン接種担当課長)

 2つの事業者から参考見積を入手し、それを基に、県の積算を作成しております。

 参考見積につきましては、まず1者については、大規模接種会場業務の受注実績のあるJTB、それから、もう1者につきましては、医療関係のコンサルティング会社から参考見積を徴取しています。

(松崎委員)

 その参考見積ですが、県としてどう活用し、積算したのか伺います。

(ワクチン接種担当課長)

 参考見積につきましては、会場設営ですとか、運営に必要な機材、予約のシステム、特設サイト、必要なスタッフの人数などの積算の参考とするために活用しています。

(松崎委員)

 では、財政当局として、積算の妥当さをどのように確認したのか伺います。

(財政課長)

財政課では、大規模接種会場の事業委託に要する費用につきまして、人件費や会場費用などの積算方法を中心に確認しています。

 具体的には、まず人件費につきまして、先行事例を参考に、大規模接種会場における実際のオペレーションを想定し、職種別の人員配置や運用時間を確認した上で、単価については事業者からの見積りを参考にしています。

また、会場使用料等につきましては、利用想定人数を基に会場の規模を確認した上で、類似施設の使用料と比較し、適正な金額であるかといった視点で調整を行いました。

さらに、ほぼ同時期に開設された、他の都道府県や県内市町村における大規模接種会場の予算規模とも比較を行うことでも、本県の積算の妥当性を確認しています。

(松崎委員)

 妥当性を確認したということでありました。県ホームページの「入札情報サービス」に掲載されている同時期に発注された大規模接種関係の契約に係る落札額を、私が合計したところ、5.2億円となりました。それに対して、6月補正予算その6の予算額は、8.4億円と承知しております。落札額と予算額に大きな乖離があるようでありますが、この乖離についてどのように考えているのか、伺います。

(ワクチン接種担当課長)

 6月補正予算の予算額8億4千万円ですが、この中には、会場運営費の委託以外に医療人材、医師・看護師・薬剤師等ですが、その人件費や医療資材の購入費などが含まれておりまして、会場運営の委託分としては、約7億円ということになります。

 委員がおっしゃったとおり本見積額は約4億4千万円ということで、7億円とは2億6千万円の差がありますが、この予算と見積もりの大きな違いとしましては、ホテルの会場費用、借り上げの費用ですが、予算時の想定より実際の費用が約5千万円程度低かったことなどがあります。

 また、全体で見ると、見積り合わせを実施したことによる競争効果が働いたものと考えております。

(松崎委員)

つまり、見込みと実際が違っていた、あるいは、考えていたことと実際に起きたこととは、かなり違っていたということかと思います。

この事業の財源は、緊急包括支援交付金と承知しています。

ここまでの質疑を通じまして、国庫補助金で財源が賄われるとの理由で、厳しい予算査定は、実際はあまりなかった、そして、実際に契約した金額も予算額から大きく乖離していたなど、業者の言い値で予算計上や契約締結がされたのではないかと、県民から思われても仕方がないと感じます。先日の予算委員会では、黒岩知事から「1者での随意契約について、計画的な発注を行うことで、原則どおり、競争入札での対応を検討する」旨の答弁があったところで、県予算執行の最高責任者の言葉として重く受けとめていますし、地方自治法施行令にもこの趣旨の規定があり、契約ルールとして明示されております。

ところで、大手旅行業各社が自治体への事業参入をどのようにとらえられているのか、今年1月、自治体でも取っている業界紙上でのトップ4社、社長座談会で、話しておりますのでご紹介したいと思います。ある社の社長は、「昨年は年初からの緊急事態宣言で国内の商売も思うように行かなかった。そこで当社として苦境の中で生き残ることを最優先に、ワクチン接種やPCR検査など取り組ませていただいた。旅行業はもちろん大事だが、需要が消滅している中でやれることを最大限やって、しっかり生き残るという判断をした。今のところは退職なども募らず親会社にも迷惑をかけずにここまできている。我々旅行業の人間は社会ですごく評価をされる可能性があるのだと気づかされた。気づくのが遅かったぐらいだ。」。

また別の社のトップの方は、「旅行会社がここまでやるのかという存在感と必要性を自治体に与えたことは大変意義があり、強いインパクトを与えることができた。人員削減や給与カットを一切せず、新規採用も継続することができ、年間を通じて黒字化できた。我々の事業領域におけるポートフォリオの追加部分として大きいものがある。」。

このようなご発言をされております。そして本件受託者であるJTB、お話が当局からありましたが、旅行業で日本を代表する大手企業でありますけれど、この業界は横並びで減資が相次ぎ、同社も今回受注前にあたる21年3月には、資本金を23億円から1億円に減資をしております。減資の前年には6,500人の要員削減を発表し、昨年本社ビルも売却しております。

報道によるとこの減資には税制上中小企業とみなされることで、税負担を軽くするほか、巨額損失の補填財源を確保するねらいもあるとされたところです。

本県の大規模接種会場の運営委託への参入に絞ってみますと、最初は中小企業との競争に参入し、次に一者随契の相手方となり、その後も続けて本県の大規模接種会場運営委託事業の受託者となってきたところであります。

そこでですが、今回2者で行われるはずの入札の競争相手となった地元の中小企業は辞退をしております。そもそも会社の体力が違いますし、参考見積が8億で実際には、税込みで5億2,000万円で受注をしておるわけであります。

令和4年度の大規模接種会場運営委託事業も、3者のうち2者が辞退をし、同社と随意契約で金額は2億4,800万円というところであります。

ちなみにですが、東京都では同社が令和4年度、特命随意契約をとっております。唯一性とか代替性といった理由も付されております。大きな理由は、契約の切り換えには1日の夜間しかなく、担当業者の物品の入替えや研修に必要な時間を取れないからということです。

特命がつくかつかないかで契約形態が違うかもしれませんけど、本県も業者が変わるとしたら、前後で起きてくる事情はほぼ同じでないでしょうか。

でも、だからこそ、接種体制の維持と競争性の確保を両立させるために、汗をかくのが、公の役割じゃないのかというふうに考えますが、一者随契のほかに創意工夫の余地はないのか、いかがでしょうか。

(健康医療局長)

確かにワクチンは、接種会場がずっと期間中継続しておりまして、なかなか入替え・引継ぎというものが、難しいという点はございます。

ただし、そういった継続性のある業務については、入札や見積り合わせの条件に、あらかじめ期間を取れれば、引継ぎも含めて、期間を設定して、次の業者に業務を引き継いでくださいという条件をつけることができます。これまでワクチンの接種業務については、いつワクチンが来るのか、何ヶ月間隔で打てばいいのか、対象は誰にするのかということが、直前にならないと、国から示されないということもございました。非常にそういう条件つけるのが難しかったのですが、もし、あらかじめそういったような条件や、準備期間を取れるようであれば、しっかりとそういう条件もつけて、公正に、競争性を担保して、やっていきたいと考えております。

(松崎委員)

公に属する事業発注に求められるのは透明性の確保にとどまらないと思います。赤字国債、つまり子供たちとか国民へのツケを財源にした事業委託です。本県産業の振興とか中小企業支援に回らないで、旅行業界大手の経営維持になっている。ここに課題もあると思いますけれど、局長いかがお考えですか。

(健康医療局長)

私、新採用の時に先輩職員から、県の調達制度については、2つ目的があるというふうに言われました。1点目が公正な競争性の確保による経済性の確保、もう1点が地場産業の育成であります。やはり、県内企業を見てみると、企業数のうち99%が中小企業、そして働いている従業員も70%は中小企業に勤めているということで、中小企業の育成というのは非常に大事だと思っております。ですから、今回も私どもワクチンの接種の契約で1回目、残念ながら辞退ということになりましたけれども、県内の中小企業にもお声をかけさせていただいています。やはり今後とも、県内中小企業に参入の機会、これを提供するために、金額によって入札参加のランクとかありますけれども、入札参加資格者名簿を参考にしながら、県内中小企業の参入、この参加の機会の確保に努めてまいりたいと考えております。

(松崎委員)

ぜひそこは大切なところですのでよろしくお願いいたします。対策本部室に少し聞きますけど、今回の随意契約、任せられるというふうに客観的に評価して、随意契約をし続けているということであるならば、受託者のその都道府県レベルですとか県内の大規模接種会場の運営業務委託の受注実績は把握していますか。

(医療危機対策本部室長)

今委員からご指摘ありました県の大規模接種会場は比較的早期でございまして、この当時は、株式会社JTB程度しかその情報がなかったというところが正直なところでございます。

そのあと委員からもありましたけれども、各旅行会社が、非常にこの大規模接種事業には積極的にご参入いただきまして、この数というところでは今手元にはございませんが、大手各社はすべて、参画をしております。それから旅行会社は主に10社程度さらに中堅どころがありますけど、そういったところも県内各市町村含めて、参画されている。ただですね、今その前に、健康医療局長からもありましたけれども、中小企業の参加も実は結構ありまして、各市町村では、地元の例えば広告代理店ですとか、こういったイベント業務に長けた方、こうしたところへの発注もあると承知をしているところです。

そうしたところを踏まえて、こうした競争の適正性、あるいは公平性、こうしたところを極力担保してまいりたいと思っているところでございます。

(松崎委員)

問を立てたので私の方で調べたことだけは申し上げますけど、県内自治体で、このJTB自身は受注の実績はないということでありましたけれど、ただ本県を含む7つの都県で大規模接種会場の運営事業委託の受託者になっていることは、わかりました。そしてこのうち、随意契約なのが本県と東京都、愛知、滋賀、1都3県ですが、他の3県のうち奈良と徳島、公募プロポーザル方式。また高知では一般競争入札でございました。

知事はですね、計画によらない、つまり緊急やむを得ない場合を除いて、一者随契を改め競争入札を前提とする方針を示されております。

また地方自治法施行令にもそうした契約の原則が明示されているところであります。公正な競争を促進する県の役割を果たすべきだということで、先ほどより、縷々、局長並びに対策本部室長からお答えございますけれども、少しまとめとして、具体的な目標を定めて目に見える改善を求めたいですけど、具体的にどう変えるのか改めて伺いたいと思いますが、いかがでございますか。局長、いかがでしょうか。

(健康医療局長)

やはり、執行については、入札が基本ということでございます。

一般に、これまでの経験から申しますと、入札により事業を執行するためには、これは準備も含めて2ヶ月程度かかります。ですから緊急に、このままでいくと、県民の命とか、暮らし、健康に関わってくると、こういうものについては、自治法施行令に規定がございます緊急随契、こういったものを適切に使って、県民の命と健康を守っていく必要があると考えております。

一方で、やはりですね、きちんと最初はわからなくても、2回目、3回目となってくると、ここら辺でこういうことが起きるなとこういうことが予測できる場合がございます。そういった予測が立つ場合には、契約までに2ヶ月程度のスケジュールがかかるということを勘案して、あらかじめ想定のスケジュールを立てて、そのスケジュール管理をすることで、極力入札を行えるようにしてまいりたいと考えております。

(松崎委員)

契約のあり方は、県政運営の根幹を支える非常に大切なことでございます。県民から疑念・疑惑を抱かれることのないよう、適切な方法での予算執行をお願いします。

 次に、コロナ対策のうち、経済対策として実施してきた事業の効果についても、確認していきます。県が、コロナに係る経済対策として、多額の予算を計上してきた事業の一つである、中小企業等のビジネスモデル転換への補助について伺います。

 この事業は、令和2年度から実施されており、今年で3年目に入りました。コロナ禍の中、新たなビジネスにチャレンジし、売上の回復や生産性の向上を目指す中小企業にとって有益な事業だと承知しております。一方で、事業の効果が本当に出ているのかどうか、しっかりと検証することも必要でありまして、昨年度、本委員会で事業効果について質問したところ、「まだ、ビジネスモデル転換後1年目のため、適切な分析が難しい」という答弁でありました。

 そこで改めて伺いますけども、ビジネスモデル転換事業に対する補助を行った結果、定量的にどのような効果が表れているのか、確認します。

(中小企業支援課長)

 定量的な効果でございますけれども、補助金を交付した事業者に対しましては、補助金の交付後、5年間、売上高等の報告を求めております。

 今年度は、令和2年度に補助した先が、ビジネスモデルの転換から2年目になりますので、補助の効果が出始めております。その報告結果についてお答えします。

 昨年度の報告では、補助金を申請した前年度、つまり令和元年度と令和2年度を比較して、売上高が増加した事業者は全体の38.9%でございました。一方、同じ事業者の今年度の報告では、令和2年度と令和3年度と比較して売上高が増加した事業者は64.8%と、およそ1.7倍に増加しております。補助金を活用して、ビジネスモデル転換した事業者が、着実に売り上げを伸ばしている結果となっております。

(松崎委員)

費用対効果の面から、この事業を、どう評価しているのかも伺います。

(中小企業支援課長)

まず、費用に関しては、令和2年度にこの事業で約25億円の補助金を交付しました。

一方、その効果ですけども、令和2年度に補助金を交付した全事業者の売上高を合計すると、令和2年度と令和3年度を比較しまして、全体で売上高が約15億円増加しております。

この15億円という数字は、単年度のものですが、現在の増加傾向がこのまま継続すれば、来年度にも費用を上回る効果が生じることになりますので、費用対効果の面でも、順調に成果が上がってきていると考えています。

 長引くコロナ禍の影響や物価高騰によりまして、中小企業は引き続き厳しい状況が続いている中にありましても、売上高が増加する事業者が着実に増えておりまして、順調に事業の成果が上がっていると評価しております。

(松崎委員)

事業を実施した後で、事業効果を検証することは大変大切だと思います。県民への説明責任があると思いますので、その点にもご留意いただいて引き続き取り組んでいただきたいと思います。

続きまして、現役世代と将来世代の負担のあり方という観点から、ずっと取り上げてまいりました県債管理目標について、「令和5年度までに県債残高を2兆円台まで減少」という県債管理目標達成に向けた現在の進捗状況を確認していきたいと思いますが、簡潔に伺っていきたいと思います。

まず、現時点での3兆1,000億円の県債残高の中で、臨財債がどれぐらいの割合を占めているのか、伺います。

(資金・公営事業組合担当課長)

臨時財政対策債は、リーマンショックが発生した平成20年度末では、県債全体の約2割であったところです。今現在でございますけれども3年度末の県債現在高に占める割合といたしましては57%、令和5年度末の推計値、先生がおっしゃいました3兆1,000億円、その中では、6割程度の比率を占める見込みでございます。

(松崎委員)

県債発行額の中で臨財債が占めている割合の大きさから、どういう考え方で県債管理に取り組んできたのか伺います。

(資金・公営事業組合担当課長)

平成25年2月に策定した県債管理目標で、臨時財政対策債を含めています。これはリーマンショック以降の財政状況の悪化の中、大量の臨時財政対策債の発行を余儀なくされたことから、県債全体の残高を押し上げておりました。償還財源となる地方交付税も全体としてなかなか増えていかない。そのような状況でございまして、リーマンショックが発生した20年度末と県債管理目標を設定した24年度末、この間に4年間で約8,200億円臨時財政対策債は増加していました。こうしたことから、わかりやすい目標を定めて県民にお示しする必要があるということで、臨時財政対策債を含めた形で県債管理目標を設定しています。

(松崎委員)

まさに臨時財政対策債であっても、県民にとって借金に変わりはないわけでありまして、これを適切に管理していかなければいけないし、また説明責任が県にはあるということなので、引き続き、現状の取組を推進していかなければならないと思います。

そこでですが、現在の県債管理目標に対する現状認識と今後の対応について伺います。

(資金・公営事業組合担当課長)

 令和5年度末の県債現在高ですけど、約3兆1,000億円を見込んでいまして、目標達成まで約1,000億円を抑制する必要がございます。依然として厳しい状況ですけれども、県税収入の動向等によっては、今後、臨時財政対策債や県債発行額が減る可能性もございますので、引き続き経済情勢を注視しつつ、県債管理目標を堅持して、適切に管理していきたいと思っています。

(松崎委員)

県債管理目標の達成こそが、財政運営の基本の中にございますので、目標達成に向けてしっかり対応するのは当然ですけれど、その努力を重ねていくにあたり、現在の目標は間もなく期限を迎えるので、その後の県債管理のあり方を考える時期にいよいよ来ているわけでありまして、現時点どのように考えているのか伺います。

(資金・公営事業組合担当課長)

 臨時財政対策債ですけれども、リーマンショック後に大量発行しておりまして、現在進行形で償還が進んでおります。まだこの公債費につきましては、今しばらくの間、高止まりすると、見込まれていますので、したがって公債費総額、一般会計予算の全体像をお示しするためにも、今後も一般会計において、臨時財政対策債を計上して、しっかりと管理していかなければならないと考えています。

また、このような取組を進めてきたからこそ、臨財債を含めて、今後は、公債費が増加から全体では減少に転じていく状況が見込まれてございます。今後の県債の管理のあり方については検討するにあたって、こうした経緯も考慮していきたいと考えています。

(松崎委員)

 ここから総務局長にお聞きしたいと思いますが、今後の財政運営をどのように行っていくのか、予算編成も間もなく始まっていくわけですけど、その点も含めて伺います。

(総務局長)

 今後の財政運営についてです。

まず歳入面では、現時点で県税収入が、4年度、5年度とも好調、増収と見込んでおります、しかし、海外経済の不透明感などにより、今後の景気動向の下振れリスクも高まっております。

 一方、歳出面では、近年頻発しています、自然災害等の突発的な財政需要のほかにも引き続きコロナ対策や物価高騰対策にも備えていく必要がございます。

 令和5年度の財源不足額は350億円ですが、これは平成20年度以来の金額でございます。当時は、その翌年度にリーマンショックが起こりまして、財源不足が一気に1,350億円まで拡大したというような状況でした。海外経済の不安定さというのは、現在の状況にも通じるところがございます。引き続き今後の動向について注視してまいりたいと思います。

 こうした状況を踏まえますと、現時点での増収には気を緩めることなく、不断の事業見直しなどを通じまして、強固な財政基盤を作っていくことが必要です。

 また、中期的な視点では、現役世代と将来世代の負担のバランスを適切にとる上でも、県債を適切に管理していくことが必要です。

 現在の県債管理目標は、間もなく期限を迎えますが、先ほど課長が答弁したとおり、今後の県債管理のあり方、今まで臨財債を含めてしっかりと管理してきたという取組、そういったことや、公債費が増加から減少に転じていく点を踏まえまして、分かりやすいようにするにはどうしたらよいか、ということについて議論していきたいと考えています。

 そもそも、本県が多額の臨時財政対策債の発行を強いられてきた根本的な要因は、地方税財政制度そのものにありますので、安定的な税収構造の構築、地方交付税総額の確保、臨時財政対策債の廃止・縮減などを、引き続き国に求めてまいります。

(松崎委員)

 4年度の県税収入増収が期待できるということです。3年度と同様に、将来世代のために基金に積み立てていただきたいと強く思うわけでありまして、現役世代、将来世代負担のバランスをとるという観点からも取組をお願いしたいと考えておりますがいかがでしょうか。

(総務局長)

委員のお話がありました令和4年度の当初予算の編成では、安全安心のためのインフラ整備を加速するために後年度の必要となる財源を令和3年度中の税収増を基金に積み立て確保し、実施してきたということがございます。今年度そういう予算を立てております。今後の景気動向は、先ほども申しましたが、不透明でございますが、現時点での税収増が見込まれる中では、その活用については基金の積立ても含めまして令和5年度の当初予算編成の中で、検討していきたいと考えています。

(松崎委員)

 最後に要望を述べて終わります。

コロナ対策によって、財政規律が緩んだと言われることのないように、PDCAサイクルをしっかり回していただいて、事業の効果検証をしっかりと次年度予算に反映してください。

また、3年度は、年度途中の税収増を、基金に積み立て、急傾斜地崩壊対策などの安全・安心のためのインフラ等整備の加速化のための後年度負担、つまり将来世代のための財源として確保しました。4年度の県税収入は増収が期待できるということですので、同様に、将来世代のために基金に積み立てていただきたいと思います。是非、現役世代と将来世代の負担のバランスを取るという観点からも、取組をお願いします。

最少の経費で最大の効果を挙げるという、自治体の原点に立ち返っていただいて、現役世代にご理解をいただきながら、将来世代に過度の負担を押し付けない予算を編成いただき、持続可能な財政運営を行っていただくよう強く要望して質問を終わります。