令和5年3月9日 予算委員会・一般質疑(立憲民主党・民権クラブ 松崎委員)

(松崎委員)

まず初めに、「本県の財政運営に係る諸問題」について、伺ってまいります。

これまでも、私は財政問題や財政健全化につきまして、当局と質疑を重ねてまいりました。新型コロナウイルス感染症への対応など、いざというときに備えるため財政調整基金を積み増すこと、また、財政運営に当たりましては、現役世代の負担と将来世代の負担のバランスを取り、中長期的視点に立って適切に県債を管理し、持続可能な財政運営を行うことの重要性につきまして、議論を重ねてきたところであります。

本日も、そうした観点から、本県の財政運営について伺っていきたいと思います。

日銀の総裁の交代ということで人事案が今国会に提示されて、現在、国会での同意に向けて調整が進められております。

ご承知のとおり、日銀の政策によって国債金利は低く抑えられてきましたが、総裁の交代によりまして、日銀の政策が変更され、今後、金利が上昇するのではないかと注目をされております。

そこで本日は、金利上昇の影響につきまして、特に県債の分野について確認させていただきます。

まず、昨年12月に日銀が長期金利の変動幅を拡大しましたが、これによる国債金利の変動状況はどうなっているのか、伺います。

(資金・公営事業組合担当課長)

長期金利の代表的な指標である10年国債金利につきましては、今年度当初の4月頃は0.25%程度で推移していました。

しかし、昨年12月に日銀が長期金利の変動幅を0.5%まで拡大する決定を行って以降、長期金利は上昇し、一時0.5%を大きく超える局面もありましたが、現在は0.5%で推移しています。

(松崎委員)

 今、10年国債の金利、これが0.5%程度で推移しているという答弁があったわけでありまして、日銀が長期金利の変動幅を引き上げたことにより、市場が反応したということがよく分かります。

そこでですが、国債金利は0.5%程度の水準となっておりますけれど、しかし、私が確認したところ、直近の3月の全国の市場公募地方債の発行実績ではですね、10年の市場公募地方債の利率は0.75%程度となっております。なぜこんなにも国債金利との利率が違うのか、また、こうした局面にありまして、今年度の本県における起債運営などに影響はなかったのか、伺います。

(資金・公営事業組合担当課長)

市場公募地方債につきましては、国債と比較して信用力や流通量に差があるため、国債の金利をベースに上乗せ利率を載せて利率を決定しています。

4年度においては、不安定な債券の市場の動向を踏まえまして、できるだけ年度の前半に発行を早めるように、年間発行計画の策定時点から備えた結果、金利の上昇の影響を最小限に抑えることができたと考えています。

具体的には、現在、他の地方公共団体が発行しました10年地方債の利率が0.75%程度の水準となってございますけども、本県が4月から10月に発行した今年度分の10年地方債の最高利率は0.444%となっておりまして、かなり低い利率で発行できたものと考えています。

(松崎委員)

今年度については、早期発行に取り組むことで乗り切ることができたとのことでありまして、状況については理解したところであります。

さて、日銀総裁の交代は4月ということで、さらなる金利の上昇の可能性もあります。来年度はより一層厳しい、難しい状況が見込まれるところですけども、どのように対応するか、伺います。

(資金・公営事業組合担当課長)

5年度においても、年度の後半に向けて、より一層不透明な状況となることが見込まれ、委員ご指摘のように金利がさらに上昇する可能性もあります。

 そこで本県では、市場公募債について、発行時期、発行額、発行年限を定めない発行形態でございますフレックス枠を大幅に増額させることで、その時々の債券市場の環境に応じて、機動的な発行を可能にし、今後の金利の上昇の影響を最小限に抑えるよう努めていきます。

(松崎委員)

今、フレックス枠を積極的に活用するというお答えでした。確かに、金利環境変動の局面こそ、機動的な県債発行に取り組み、安定的に資金を調達するという必要がございます。

そこでなんですが、フレックス枠について確認です。来年度は550億円といった大規模発行を計画していると私は承知しておるんですが、機動的な県債発行のためには、その発行時期が重要になります。どれくらいの時期に発行することを想定しているのか、伺います。

(資金・公営事業組合担当課長)

委員ご指摘のとおり、こうした市場動向を考慮すると、できる限り早期に発行することを想定して、積極的に動いていく必要があると考えています。

発行時期や発行額については、債券市場の動向を見極める必要があるため、フレックス枠のうち、一定規模の金額については、第一四半期、最速4月に発行することも視野に入れながら、機動的に対応していきたいと考えています。

(松崎委員)

最速4月ということでありました。来年度ごく早期の発行ということを見据えているということだと受け止めましたので、そこのところの対応を確認させていただきます。

私、懸念しておりますのは、金利が上がれば利払い費用も当然に増加するということでありまして、こうした状況の中で、本県では、償還費として公債費を計上しております。予算上、十分な備えはできているのか、伺います。

(資金・公営事業組合担当課長)

例えば、今後、金利が0.1%上昇した場合に、本県の公債費でございますけども、年間で3億円程度上昇するということが見込まれています。

本県の10年ものの県債に係る公債費の利率でございます。国の概算要求を元に設定しております。5年度に向けては、国が概算要求において、昨年度の1.2%から1.3%に引き上げたことから、1.3%で見込んで5年度当初予算に計上しています。

今後、急激に金利が上がることがなければ、公債費の利払いには影響がないようにしてございます。

(松崎委員)

来年度の公債費については、金利上昇の影響があったとしても、予算上はその備えができているということでありました。また、起債運営についても、機動的に対応していくというご答弁でした。それでも引き続き緊張感を持って対応していただきたい、と要望しておきます。

ここまで質疑を重ねてきて、やはりリスク管理が重要であると改めて認識したところでありまして、それだけに、県債の管理についても益々重要性を増していると思います。

財政健全化について、私はこれまで繰り返し当局と議論を重ねてまいりました。本日の質問におきましても、来年度に目標年度を迎えることになる県債管理目標について伺っていきます。

県債管理目標につきましては、先日、我が会派の代表質問におきまして、5年度までに2兆円台とする県債管理目標の達成が難しいという答弁がありました。

具体的には、5年度当初予算案時点での5年度末残高見込みが3兆664億円となっておりまして、現状、難しいということは理解いたしました。ただ、なぜ、こういった状況になっているのか、そこを確認していく必要があります。

そこでなんですが、去年3月の総務政策常任委員会では、目標まであと1,000億円を抑制することが必要であるという答弁があって、私からは目標達成に向けたたゆまぬ努力を続けていくことを要望したんですけど、その後の変動について伺います。                      

(資金・公営事業組合担当課長)

 昨年度3月時点では、2兆円台まで、1,000億円程度の開きがございました。その後、臨時財政対策債について、4年度の新規発行額が当初の見込みを60億円ほど上回る約900億円になりましたけれども、5年度の当初予算における新規発行額は、過去2番目に低い500億円となり、大幅な減少となりました。

これにより、現時点の見込みでは、その開きは700億円程度と、300億円程度縮まったものの、目標の達成には至りませんでした。

(松崎委員)

やはり、コロナ禍におきまして、3年度までの臨時財政対策債の発行可能額の急増や減収補塡債の大量発行の影響が大きいのではないかという風に思うわけであります。それによりどの程度のずれが生じたのか、伺います。

(資金・公営事業組合担当課長)

 令和2年2月の中期財政見通しで、今後の県債残高について推計していますが、コロナ禍により、その後の実績が大きく変動しています。

 特に、2年度に、推計では見込んでいない減収補塡債を500億円にのぼる規模で大量発行したことの影響や、3年度には臨時財政対策債を2,177億円発行しており、推計値よりも1,100億円以上発行増したことによる影響がありました。

 その後、3年度の税収増を活用して満期一括償還方式による県債の償還元金を積み立てたことや、国から臨時財政対策債の償還基金費が交付されるなど、現在高を減少させる要因もありましたけれども、その差を取り戻すことが困難だったと考えています。

(松崎委員)

見込みと現状が乖離した、その原因について答弁いただきました。そういった点をしっかりと把握していただくことこそ、県債を管理するうえで非常に重要なので、ここで申しあげておきます。

さて、代表質問では、知事から令和6年度には1年遅れで2兆円台となる見込みという答弁がありました。具体的にはどんな見通しなのか、また今後の県債管理のあり方についてどう考えているのか、伺います。

(資金・公営事業組合担当課長)

 6年度も県債発行額が5年度当初予算と同規模と想定しますと、2兆9,000億円程度にまで減少できると見込んでいます。

 公債費の償還がピークを越えたとはいえ、臨時財政対策債の償還は高止まりすることが見込まれております。一方で、インフラ整備など、必要な施策にはしっかりと県債を充当していくことも大切です。

 今後も県民サービスの低下を招かないように収支のバランスを見ながら、財政運営を継続していくには、県債を適切に活用し、管理していくことが欠かせないと考えています。

(松崎委員)

コロナ禍の影響という事で確認したいことがありまして、県内経済に目を向けますと、私の地元の金沢区の中小企業からは、コロナ禍に加えまして、物価高騰の影響で経営に打撃を受けており、さらには賃上げなどの課題にも直面をしていて、厳しい状況が続いている、そんな声をたくさんいただいています。そこで、中小企業支援について伺います。

コロナ禍で苦しむ県内中小企業を支援していくために県は令和2年度から、ビジネスモデル転換への補助を実施しております。この補助は令和4年度も継続して実施し、コロナ禍に加え、物価高騰の影響を受ける事業者を支援してきたものと承知しております。今年度、この補助によりどのような支援をしてきたか、伺います。

(事業者支援調整担当課長)

ビジネスモデル転換事業費補助金では、既存事業から新たな商品やサービス、生産方式への転換、例えば、自動車部品の製造から医療機器分野への進出や、運送業から介護タクシー事業への進出などを支援してまいりました。

 その結果、今年度は933件の申請をいただき、435件の交付決定をいたしました。交付決定額は、63億7,035万円となっております。

(松崎委員)

この制度が生まれるにあたって、これまで私が提言してきたという経緯もあります。現実に多くの申請があり、事業者からのニーズが大変高いことを確認いたしました。

令和5年度予算案におきましても、この補助に係る予算が計上されており、引き続き、中小企業がコロナ禍から脱却し、成長を図るための事業転換、新たなチャレンジを支援していく姿勢は理解いたします。一方、支援を継続するだけでなく、中小企業の置かれている状況に応じ、的確に展開していくことも重要であります。

令和5年度にビジネスモデル転換への補助を実施するに当たり、県としてどのようなポイントに力を入れていくのか伺います。

(事業者支援調整担当課長)

 コロナ禍や物価高騰を乗り越えようとする中小企業の取組みを、引き続き支援するとともに、賃上げや脱炭素化といった新たな課題に対応するための取組みも支援いたします。

こうした事業により、県内中小企業が様々な社会経済状況の変化に直面する中、中小企業が「稼ぐ力」を身に付け、将来に向かって成長できるよう、しっかりと後押ししていきたいと考えております。

 今後も、中小企業一社一社に寄り添い、丁寧な支援に努めてまいります。

(松崎委員)

 「稼ぐ力」という答弁がありました。ただ「稼ぐ力」を一社ごとそれぞれつけるために、様々な求められる事柄は一社ごとに全部違うと思うんです。

業態ですとか業種ですとか、各社の事情によりまして、直面している困難も一社ごとに異なります。従って支援も、一社ごとにカスタマイズしていただきたい。

そのことがなにより大事であって、実際に温かい手が届くように取り組んでいただきたいことを要望いたします。

 さて、県債管理目標や中小企業支援のあり方について確認させていただきましたけど、これらの事業を見ただけでも、コロナ禍の影響が大変大きいことが分かります。

ここで再度、財政面から質問いたします。

コロナ対策の実施に当たって、今となっては、国の「地方創生臨時交付金」や「緊急包括支援交付金」を財源に活用することが当たり前の状況となっていますが、対策を開始したばかりの段階は、そうではなかったはずであります。

これまで、コロナ対策に当たって、財源の確保を含めて、財政運営上どのような対応をしてきたのか伺います。

(財政課長)

 コロナ禍が顕在化した令和2年3月から数か月の間は、国の準備も整わないことから、予備費や既決予算を活用することで、緊急避難的に財源を確保しました。

 その後、国が緊急包括支援交付金などのコロナ対策の財源を措置したことから、基本的には、これを財源とすることで、県として各種対策を講じてきましたが、一部の施策の実施にあたっては、引き続き県費による負担が続いたため、財政調整基金を取り崩すことで対応してきました。

 この間、財政調整基金の残高は、一時的に大きく減少しましたが、その後の税収増等により、現在は、約660億円と、概ねコロナ禍前の水準にまで回復させています。

(松崎委員)

財政調整基金の残高は、一時期大変大幅に減少した、現在はコロナ前の水準まで回復してきている、ということであります。ただ有事において機動的な財政出動を行うためには、一定程度、本県の判断で活用できる財源が不可欠ですので、是非、現在の水準を保つように努めていただきたいと要望申し上げておきます。

また、新型コロナにつきましては、5月8日から、現在の2類相当から5類へ移行する方針が示されております。

今回提案された予算案におけるコロナ対策費は、2類相当で算定しているため、5類への移行に伴う対応の詳細が判明次第、何らかの財政措置が行われると認識しております。しかし、今後、ハイリスクな事象が発生いたしますと、また本県が独自かつ緊急に対応しなければならない場合が想定されます。状況の変化に合わせて機動的に対応する必要があると思いますが、見解を伺います。

(財政課長)

国は、現時点では、今後の対策等につきまして、必要な準備を進めながら段階的に移行していくとしていることから、詳細が確定した後には、影響する部分の予算執行を停止し、適切な時期に補正措置を行う方向で対応したいと考えています。

また、補正予算措置にあたりましては、今後の感染再拡大のリスクも考慮の上、必要な対策に滞りが生じないよう具体的な対応策を検討していきますが、仮に、想定を超える事態が生じた場合には、これまで同様、予備費や財政調整基金などを活用することで、機動的に対応してまいります。

(松崎委員)

この項目の最後、あらためて5類への移行も踏まえまして、コロナ禍における財政運営について、知事の思いを伺います。

(知事)

県では、これまでの累計で約2兆2,692億円に及ぶ新型コロナ対策予算を編成してきました。

その主な財源は、国の臨時交付金や包括交付金などの国庫支出金ですが、コロナ禍の初期段階では、これらの財源が措置されていなかったことから、県の財政負担となる財政調整基金の活用が続き、残高は一時約300億円にまで縮小しました。

このような状況を受け、県では全国知事会等と連携して国に財源措置を要望し、臨時交付金等の大幅増につなげたほか、経済活動の再開に伴う税収増等も追い風となり、財政調整基金の残高を約660億円にまで回復させました。

 こうした中、国は、5月8日から、新型コロナの類型を5類に見直す方針を決定し、これまで講じてきた各種政策についても、大きな方向転換が行われることになりました。

しかし、新型コロナそのものが消滅するわけではありません。5類移行後も、コロナとの共存を前提に様々な施策に取り組んでいく必要があるため、引き続き確実な財源措置が行われるよう、国に対して要望していきます。

県としては、コロナ禍からの回復に合わせて、財政健全化にも着実に取り組み、持続可能な財政運営を目指してまいります。

(松崎委員)

 知事の一言一言にですね、これまで辿ったあゆみというものが反映されていると私は受け止めました。問題は今後でありまして、再び深刻な状況に直面した時に十分に対応できるのか、というそこの備えの部分であります。持続的に県政を運営していく必要があります。そこでなんですが、コロナの5類への移行、金利の上昇、さらにはウクライナ情勢、様々な状況変化にしっかりと対応し、県民生活、また中小企業を守るために必要な事業に取り組んでいただきたいと思います。

 また、県債管理目標についてもであります。目標達成が困難ということでありますが、現在の経済情勢や物価高騰などの状況を踏まえますと、県民また事業者の皆さまを守るために必要な施策を講じるための県債は適切に発行しつつ、県債をどのように管理していくのか、これにつきましても、もう待ったなしであります。検討を進めなければならないということを指摘しておきます。