令和5年12月8日(金) 総務政策常任委員会

(立憲民主党・かながわクラブ 松崎委員)

(松崎委員)

政府クラウドについて伺います。まず、政府クラウドとはどのようなものか説明を願います。

 

(岡本情報企画担当課長)

政府クラウドとは、これまで国や地方公共団体が個別に構築・管理していたシステムやデータを、共通で管理するための情報システム基盤として国が調達するクラウドサービスのことです。

現在、地方公共団体においては、「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」及び同法に基づく政令等に基づき、主に市町村における基幹業務の20業務を対象として、それらの業務で使用するシステムについて、令和7年度末までに国が調達した政府クラウドを活用した標準準拠システムに移行することを目指すとされています。

 

(松崎委員)

県では、対象となる業務っていうのはその20のうち幾つなんですか。

 

(岡本情報企画担当課長)

20のうち、県の業務として標準化が必要なものは「生活保護」と「児童扶養手当」の2つの業務です。

 

(松崎委員)

自治体が政府クラウドを利用するにあたりまして、アメリカ大手企業のクラウド事業者、これ選択せざるをえないということなんですけれど、どうしてですか。

 

(安藤情報システム担当課長)

国は政府クラウドを整備するにあたり、毎年度細かい仕様や要件を定めて調達を行っています。

その結果、令和3年度は米国のアマゾン社とGoogle社が提供しているサービス、令和4年度は同じく米国のマイクロソフト社とオラクル社が提供するサービスが選定されました。

本県をはじめ、全国の自治体は選定された企業が提供する政府クラウドを利用することになるため、結果として政府クラウドは米国大手企業4社のいずれかのサービスを利用することになります。

 

(松崎委員)

アメリカの大手企業のクラウド事業者を選択せざるをえないことに対しまして、多くの自治体から不安や懸念が出されているということですが、どういうことでしょうか。

 

(安藤情報システム担当課長)

米国大手企業のクラウド事業者のサービスであっても、通常利用している状況では、大きな問題は発生しないと想定されます。

しかしながら、不測の事態、例えば、サイバー攻撃による情報流出や、米国司法当局の開示命令等があった場合などに、個人情報をはじめとする重要情報が保管されているデータに対する主権が自治体側に保障されるのか、という懸念があります。

国は、米国司法当局による情報開示命令について、主権国家は他国の裁判権に服さない「主権免除」の原則に基づき回避できる、と説明していますが、国内企業であれば、国内法の範囲で全て対応可能である点で大きく異なっており、不安や懸念の要因になっているものと考えます。

 

(松崎委員)

国の当初要求事項すべてに対応できる企業がここ来なくて、今年度、条件を見直して再度調達をして、新たにさくらインターネットが条件つきで選定をされたということが、報道でも報じられているんですけれど、問題はですね、県ではその政府クラウドへの移行として2業務が対象だって言っているんですが、このさくらインターネットを使うということでは何か問題あるのですか。

 

(安藤情報システム担当課長)

本年度の選定におきまして、国内企業で初めてさくらインターネットが選定されました。ただし、報道等でもあるように、条件付きということで、2025年までに技術的な対応が可能になった場合に、選定対象となる条件付きの選定です。さくらインターネットも技術的対応を行うと表明していますが、現時点では不透明な状況であると。あと、令和7年度末という期限がどうしてもありますので、自治体もすでに着手している自治体が多くあります。その中で、本年度の11月末に選定されたと記憶していますが、その時点で対象となっても、こちらを選定し直すのも困難な状況であると推測されます。

 

(松崎委員)

まずシステムの話を確認しておきますけど、庁舎内のコンピューターシステムに個別のシステムを集約していたのが以前だとすると、今は、民間のデータセンターに原則すべてのシステムを集約しようということで、県専用のクラウド化を果たしており、これが平成27年であったということで間違いないでしょうか。

 

(安藤情報システム担当課長)

県では、平成27年度から、民間のデータセンター内に原則全ての業務システムを集約し、県専用クラウドとして位置づけまして、効率的な運用を行っています。

 

(松崎委員)

その県専用のクラウド運用することによりまして、どういうメリットがあるのか、また課題はあるのでしょうか。

 

(安藤情報システム担当課長)

県専用クラウドを運用するメリットは、システムや取扱うデータを全て県の管理下においてコントロールできること、システム基盤を構成する機器等を県専用に確保していることで、高い安全性・安定性が実現できることです。

また、全ての業務システムを共通のシステム基盤で一括管理することにより、業務システムごとに個別の基盤を運用する場合に比べて、効率性や利便性なども高くなります。

課題というかデメリットとしては、民間の一般的なクラウドサービスを利用した場合と比較すると、全ての管理を自前で行う必要があるため、県専用クラウドを運用するデジタル戦略本部室の職員の負荷が非常に高いことや、有効な新技術などが出た場合に対しても、そういったものの柔軟な導入が困難であると、そういったことが挙げられます。

 

(松崎委員)

職員の負荷が高いということ、それから運用面や最新技術導入の点で、パブリッククラウドよりやや不利かもしれないということでありました。

そこでなんですけど、県民の重要な個人情報とか行政の重要情報を管理する立場としまして、県は今後どのようにシステム基盤を整備、運用していくのか、局長にお伺いしたい。

 

 

(市原デジタル行政担当局長)

まず、県の「生活保護」と「児童扶養手当」の2業務の政府クラウドを活用した標準準拠システムの移行について、業務システム所管課がしっかりと対応できるよう、デジタル戦略本部室が、プロジェクト・マネジメント・オフィスとして支援・牽引していきます。

また、住民基本台帳や戸籍、各種の税、介護保険・国民年金のシステムなどの住民サービス、合計20業務の政府クラウドを活用した標準準拠システムに移行についても、市町村が円滑に進められるよう、県は必要な連携・支援を行っていきます。

次に、県民の重要な個人情報や行政の重要情報を管理する県のシステム基盤についてですが、現在運用している、県専用クラウドについては、今ちょうど、次期システム基盤の検討を開始する段階となっています。

検討に当たりましては、政府クラウドをはじめ、今後、一般的に活用が始まっていますパブリッククラウド利用の流れも大きくなっていく中で、効率性や利便性、低コストも重要ですが、それ以上に県民の重要な個人情報や行政の重要情報を管理する者として、取り扱うデータのコントロールが県の意思に基づいて、最終的に保障されるのかということが大変重要だと考えております。

そのうえで、次の県のシステム基盤を、県専用クラウドの継続なのか、民間が提供するパブリッククラウドに移行するのか、またはそれらを組み合わせた、ハイブリッド方式を目指すのかなど、様々な選択肢を十分に検討しながら、安定した安全なシステム基盤の構築・運用を目指します。

 

(松崎委員)

局長から答弁がありましたが、特に次期システム基盤ですね。つまり次期コンピューターセンターですが、これの検討についてと、それからお答えなんかにもありましたけれども、ハイブリッドクラウドですね、この考え方について、さらに詳しくお答えいただきたいと思います。

 

(市原デジタル行政担当局長)

一般的にパブリッククラウドと申しますものは、個人からも利用ができますが、インターネットを経由して接続するサービスというものになっております。

一方、私どもが運用しています県専用クラウド、いわゆるプライベートクラウドと呼ばれておりますが、こちらは、インターネットではなく専用線を使って、県の専用で使うサーバにシステムを導入して使っているというものです。

大きな違いとしましては、パブリッククラウドは、例えば県以外の別のお客さんと一緒にサーバを共有する、ネットワークを共有する、そしてインターネットを経由しなければならないというような事情があります。

平成27年度に日本年金機構が起こしました125万件の個人情報流出事案を受けまして、県では、自治体情報セキュリティの抜本的強化ということで、我々が使っている端末も含めまして、インターネットに直結していません。ただ、県の中には、重要な情報もございますが、公開できる情報資産を扱うシステムもございます。次期コンピューターシステムにつきましては、すべてプライベートクラウドと呼ばれている県専用のクラウドに収容するという考え方に固執せずに、パブリッククラウドも使えるものは使う。一方、インターネットの驚異から守らなければいけないシステム、データ、情報資産につきましては、専用のクラウドで運用していくというようなハイブリッド型のですね、新しいコンピューターセンターの構築というものも検討しなければならないと考えます。

 

(松崎委員)

是非ですね的確な形で、そういう場面分け場合分けをしっかり仕分けをしながら、構築をしていっていただきたいと思いますので、要望させていただきます。

まず政府クラウドの事業というのは、これ自体は避けて通れないと言われておりますが、しかし今答弁にも局長からもあったようにですね、その中でもどうするのかという点ではハイブリッドクラウドという選択肢、非常に有力かと思われるので、これの検討をぜひ進めていただきたいと思います。

世界展開しているわけですから、大手企業、それと国内企業では、規模、人材技術に全部差があるのは事実でありますけれども、一方ですね、国内企業の方については、1団体でも多く利用することによって、大手企業4社、米国に対しても明確なメッセージを送るということも可能であるかなというふうにも思われます。

せっかく日本全体が利用できる共通の情報システム基盤を用意いたしましても、自治体が個別に構築されていた時より、安全面、業務継続、これでリスクが大きくなってしまっては本末転倒だということがありますので、このことを指摘させていただきながら、次期コンピューターセンターについても言及をされましたので、プライベートクラウド、パブリッククラウド利用も視野に入れて検討するということですが、闇雲に利便性、効率性、或いはコスト面の検討だけに留まらずですね、本当に出資し、守るべき個人情報ですとか、大切な行政情報といったものをしっかりと守るんだということを、まず原点に置いて取り組んでいただくことを要望します。