令和6年6月27日(木) 総務政策常任委員会
(松崎委員)
まず、税収の偏在是正について質問していきます。
地方自治体間の税収の偏在是正、この問題につきましては、2月26日の一般質問で取り上げ、知事から、「従来の税源移譲に加え、今後は、地方自治体間の税収偏在の是正に向けた措置を講じるよう、国に要望していく」というご答弁をいただきました。
また、3月4日の総務政策常任委員会でも取り上げまして、「中長期の財政見通し」に新たに加わったキーワード「偏在是正」についての考え方や、自由に使える財源の都道府県間格差の要因などについて、当局の見解を確認させていただいた上で、私から、「同じ境遇にある他の自治体と足並みを合わせ、国に対して偏在是正を強く働きかけるよう」要望したところでございます。
その後、神奈川県として、この問題について、どのような取組を行ってきたのでしょうか。様々報道もなされているところですが、順を追って、具体的に確認していきたいと思います。
まず、4月22日に開催された九都県市首脳会議の場で、黒岩知事をはじめ、千葉県知事や埼玉県知事から、この問題について発言があったと認識していますが、具体的には、会議当日、どのような発言があったのでしょうか。
(税制企画課長)
九都県市首脳会議では、黒岩知事から、三つの観点で発言がありました。
一つ目は、「都道府県間の財政状況の違いにより、福祉や教育など住んでいる場所で大きな差がつくべきではない性質の行政サービスにおいて、格差が生じている」という課題共有です。
二つ目は、「東京都と神奈川県の間で法人二税の人口1人当たり税収に3倍以上の開きがある。東京都は経常収支比率が全国で最も低い。人口密度の高さとは不釣り合いな規模の一般財源を得ている」という、背景にある財政状況の違いについてです。
三つ目は、「東京都に隣接している神奈川県は、県民から厳しい意見を受けている。財政状況を理由に、県民からの要望に応えられずに苦しんでいるのは、本県だけではないと思うので、国において何らかの対応が必要である」という問題提起です。
黒岩知事のこの発言を受け、埼玉県の大野知事からは、「自治体間における行政サービスの不均衡が生じてしまっており、その背景には税源の偏在が存在しており強く懸念している。これらを踏まえ、国において更なる税源の偏在是正措置を講ずるべき」との発言がありました。
また、千葉県の熊谷知事からも、会議をまとめる中で、「客観的事実として、税源に大きな差が生じている状況であり、本来住んでいる地域によって差がつくべきではないサービスに差が生まれている。国には改めて、居住する地域にとらわれないこども施策の実現に向け、そのための税財源も含めて考えてもらいたい」との発言がありました。
(松崎委員)
黒岩知事の発言を受け、埼玉県知事、千葉県知事から、賛同する趣旨の発言があったとのことでありました。
そうした知事からの発言について、東京都の小池知事からも発言があったと承知していますが、それは、どのような内容だったのでしょうか。
(税制企画課長)
小池知事からは、「高校授業料無償化などは、本来国がなすべきことだが、国の方策が講じられるまでの間、東京が先行して取り組んでおり、その財源は、事業の徹底した見直しを積み重ね、ひねり出している」といったことや、「東京都の人口1人当たりの一般財源は全国と同水準であり、いわば逆偏在の状況にある」といった発言がございました。
(松崎委員)
東京都の立場からすれば、そうした発言をするのは一定理解できます。
しかし、3県知事も指摘しておりますように、東京都は、税収偏在を主要因とする潤沢な財源を背景に、本県をはじめ、周辺自治体では追いつくことのできない独自の事業を次々と展開し、地域間で差のつくべきではない行政サービスに差が生じてしまっているのは、客観的事実だと考えます。
次に、5月7日に行われました、神奈川県知事、埼玉県知事、千葉県知事の連名による、松本総務大臣、加藤こども政策担当大臣、盛山文部科学大臣に対する申入れについて、伺います。
まず、どういった内容の申入れを行ったのか。端的に教えてください。
(税制企画課長)
大きく、2本の柱で申入れを行っております。
一つ目は、「居住する地域にとらわれないこども施策の実現」です。自治体の財政状況に起因する格差が生じることがないように、国の責任と財源により必要な措置を講じるよう、求めております。
二つ目は、「税源の偏在是正」です。行政サービスの地域間格差が過度に生じないようにするためにも、税源の偏在性が小さく、税収が安定的な地方税体系の構築に向けた取組を早急に行うよう、求めております。
(松崎委員)
申入れの際、3人の大臣それぞれの受け止めはどのようなものでしたか。
(税制企画課長)
3大臣とも、3県知事の訴えに共感していただきました。具体的には、松本総務大臣からは、「3県知事揃ってというのは、極めて重大だと思う」といった発言を、加藤こども政策担当大臣からは、「3県の知事が想いを一つにしたことに心から感謝と敬意を表したい。切実な思いを重みがあると受け止めさせていただく」といった発言を、盛山文部科学大臣からは、「お三方の思いに少しでも応えられるように検討して行きたい」といった発言をいただきました。
(松崎委員)
冒頭申し上げましたとおり、3月の常任委員会で、「同じ境遇にある他の自治体と足並みを合わせ、国に対して偏在是正を強く働きかけるよう」要望し、それが実現したことは評価しておりまして、3大臣からも共感を得られたということは、大きな一歩であったと思います。
3県知事による要望は、複数のメディアで取り上げられました。それを受け、東京都が黙っているはずはないと思うのですけれど、東京都から反論はあったのでしょうか。
(税制企画課長)
5月10日に行われました都知事の定例記者会見におきまして、3県要望に関し、小池知事から発言がございました。
具体的には、3県知事は、東京都の経常収支比率が低いと主張するが、経常収支比率の算定には投資的経費が含まれていないこと、東京都は、首都東京の安全・安心を守る取組、大都市特有の交通対策などの財政需要が膨大であり、近隣3県と比べても莫大な額の投資的経費の支出を要していること、更に、経常収支比率が低いのは様々な財政上の努力の賜物でもあること、これらにつきまして発言されて、行政サービスの地域間格差が拡大している要因は財政状況の違いにあるという主張は明らかな事実誤認だ、といった反論がありました。
(松崎委員)
投資的経費というのは、道路や施設など、将来に残るものに支出される経費だと思います。
東京都は、毎年莫大な額の投資的経費の支出を要するため、自由に使える財源が多いとは言えない、という主張は分からなくもないわけですけれども、この点、どのように分析されているのでしょうか。
(税制企画課長)
投資的経費が経常収支比率の算定に含まれていないこと、これは事実でございますが、経常的経費に投資的経費を加えたとしても、東京都の一般財源は、その額を上回るほど潤沢です。
一方、3県では、一般財源のほとんどを経常的経費が占めており、投資的経費に回せるお金はごくわずかしかありません。
実際、本県では、投資的経費の中核である公共事業費等を、最盛期の4分の1にまで激減させて、その時々の財政危機を凌いでまいりました。
その投資的経費にしっかりとお金をかけられるということこそが、東京都の財源が潤沢であるということの、何よりの証左だと考えております。
(松崎委員)
また、小池都知事は、東京都の経常収支比率が低いのは、様々な財政上の努力の賜物である、とも主張していますが、この点、どのように考えますか。
(税制企画課長)
東京都の経常収支比率が低いのは、財政上の努力を積み重ねた結果、という面も当然あるとは思いますけれども、財政上の努力をしているのは、本県も同じ状況でございます。
本県の分析では、東京都の経常収支比率は、法人関係税収との関係性が強いと考えられます。東京都は、地方交付税の不交付団体であるため、法人関係税が増収となりますと、ストレートに自由に使える一般財源が増えます。
一方で、本県のような交付団体は、法人関係税が増収となっても、その分、交付税が減らされるため、自由に使える財源は、それほど増えません。
事実、東京都の経常収支比率の動きを見てみますと、リーマン・ショックのような景気後退局面では、法人関係税が落ち込み、これに連動して経常収支比率が悪化しており、法人関係税が増えたときは、経常収支比率が好転しております。
このように、経常収支比率に開きがあるのは、主に現在の税財政制度に起因するものというふうに考えております。
(松崎委員)
大変良く分かりました。先ほども申し上げましたが、やはり、東京都に、税収偏在を主要因とする潤沢な財源があることは、客観的事実だと思います。
県当局として、これまでの取組をどのように評価していますか。
(税制企画課長)
本県と同じ境遇にある埼玉、千葉と足並みを揃えて、現在の窮状を国に訴えて、これに対して3大臣の共感を得られたことは、税収の偏在是正という課題を国としっかりと共有できたという点で、成果があったと考えています。
しかしながら、3月の総務政策常任委員会で、松崎委員からご指摘を受けました、住んでいる場所を理由とする行政サービスの不公平感、これにつきましては解消された訳ではありませんので、あくまでも、課題解決に向けて第一歩を踏み出したものというふうに捉えております。
(松崎委員)
九都県市首脳会議や3県要望のほかに、取り組んだことがありましたら教えてください。
(税制企画課長)
5月23日に開催された関東地方知事会議では、税収の偏在是正までは盛り込まれてはおりませんが、地方税財源の充実強化を図ることや地方一般財源総額を確保すること、また、高等学校等における教育費負担の軽減につきまして、国が財源を確保し、責任を持って措置することについて東京都にも賛同いただき、一致団結して国へ働きかけることになりました。
また、6月には、本県単独で行った「令和7年度国の施策・制度・予算に関する提案」の中で、地方自治体間の税収偏在の是正に向けた措置を講じること、また、子ども施策実現のための安定的な財源を国の責任において確保することにつきまして、国に要望いたしました。
(松崎委員)
ここまで、これまでの取組につきまして確認をしてまいりました。今年2月の一般質問で知事に答弁いただいてから4か月余り、メディアにおきましても様々取り上げられ、この問題に一石を投じることはできたと思います。しかし、税収そのものの偏在是正を実現しなければ、今の東京都のいわばやりたい放題の状態が継続し、今後も、更に地域間の行政サービスの格差が拡大しかねません。
最後に伺いますが、この問題についての認識と決意をお伺いしたいと思います。
(総務局副局長)
まず、地域ごとに特色のある行政サービスが展開されること、それは地方自治体としては一般的な話であり、そこに問題があるわけではありません。
例えば、東京都がその潤沢な財源により、首都機能の強化などを通じて世界的な競争力をつけるというのであれば、近隣県はもちろん、日本全体にとっても良い影響が期待できます。そうした動きであれば、本県も歓迎すべき話になると思います。
一方で、法令により、機会均等や普遍性が保障されている、教育や福祉の行政サービスでは、住んでいる地域を理由に、経済的負担の面で大きな差がつくというのは、決して望ましくありません。
今回起きている問題、例えば私立高校の授業料補助に対しまして、ある自治体が独自に所得制限を撤廃するといいますのは、近隣団体との間で大きな格差を発生させてしまいます。また、所得制限の撤廃といいますのは、補助制度の根幹的な話です。全国的に実施されているこうした私立高校の授業料補助のような事業におきまして、一部の自治体だけが、財源的に可能だからやってもよい、という話ではないと考えています。
また、東京都は、経常的経費以外の投資的経費に多額の財源が必要、としていますが、実態としては、それを踏まえてもなお十分に余裕がある状況です。
東京都の令和4年度決算を見ますと、一般財源を経常的経費と投資的経費に充当した上で、なお、6,431億円、一般財源全体の14%もの余剰財源が出ている状況ですが、神奈川県は、一般財源だけでは経常的経費と投資的経費を賄えません。超過課税により、何とか不足を埋めている状況でありまして、大きな格差が生じています。
東京都におけるこうした多額の余剰財源が、単なる個人給付などに使われてしまいまして、それが周辺地域との経済的負担の差を拡大させてしまうというのであれば、それを許している現状の税財政制度に対しては、改善を求めざるを得ないと考えています。
本県では、こうした認識のもと、国レベルの最優先課題である子育て施策などは、全国一律での実施を国に強く求めていくとともに、その財源となる税財政制度の改善も、併せて求めていきたいと考えています。
(松崎委員)
この税収の偏在是正という問題に関しては、3県知事による要望など、大きな一歩を踏み出していただきました。黒岩知事も「まずまずのスタートが切れた」と仰っていましたが、私も、国に問題提起するという観点で、3県の知事による要望は効果があったと思います。
神奈川・埼玉・千葉3県の要望では、施策面と財政面の2本柱で申入れを行っていますが、そのうちの1本目、「居住する地域にとらわれないこども施策」が仮に実現したとしても、2本目の「税源の偏在是正」が解決しない限り、その財源を使った更なるサービス格差が生じかねません。税収偏在の問題解決には、時間がかかると思いますが、その実現に向けて、粘り強く、行動し続けていただくよう要望いたします。その覚悟はありますか。
(総務局副局長)
そうした覚悟を持って取り組んでまいります。
(松崎委員)
覚悟を持って取り組むというお話をいただきましたので、私の要望も、そのご覚悟を踏まえてしっかりと実現されるものと受け止めました。どうぞよろしくお願いいたします。