令和6年6月27日(木) 総務政策常任委員会

松崎議員

県と米陸海軍との意見交換会について尋ねる。

主な結果としていくつかの成果が報告されているが、とりわけ目に付くのが「PFOS等の環境問題について、日米間で連携して対応していくことについて合意」したという点である。大変重要な意味を持つように思うので、少し掘り下げて質問をする。

「環境問題について、日米間で連携して対応する」というのは、具体的にはどのようなやり取りだったのか。

基地対策課長

 知事から、米海軍横須賀基地、厚木基地におけるPFOS等流出について、流出防止など一連の対応について、米軍が実施した対応について感謝の意を伝えた。そのうえで、PFOS等の環境問題について、米側と県が引き続き連携することの重要性を伝えたところ、米陸海軍司令官から賛同するとの意見表明があった。

松崎議員

 米軍基地からのPFOS等流出につきましては、いくつかの問題点があったと思う。これまでの当委員会での報告、質疑を踏まえると、問題点としてはそもそも米軍基地からの流出により基地周辺に危険を及ぼしたこと、米側の情報提供が不十分であったこと、さらに横須賀基地におきましては原因が究明できなかったことなどが挙げられる。こうした問題については今後も県として改善を働きかけてほしい。一方で、環境問題では、批判だけでは相手方の協力を得られず、前に進まない面もある。PFOS等流出を巡る米側の一連の対応に、仮に評価すべき点があるとすれば何か。

基地対策課長

 PFOS等については、我が国においては令和2年に水道水や公共用水、地下水について、1リットルあたり50ナノグラムとする暫定目標値が定められた。その後、令和5年2月に施行された、水質汚濁防止法施行令の一部改正によりPFOS等が指定物質となった。これにより流出事故時には、指定事業所の設置者は、直ちに応急の措置を講じるとともに、事故の状況等を県知事等に届け出ることとなった。

 一方、県内の米軍基地からの流出事故は、横須賀基地においては令和4年5月、厚木基地については令和4年9月に発生しており、我が国で指定物質として指定される前であるが、米軍は日本側に連絡するとともに、粒状活性炭フィルターを設置するなど公共用水域への流出防止措置をとった。

 こうした背景には、米国においては規制が先行しており、在日米軍のレギュレーションであるJEGS(日本環境管理基準)では、当時からPFOS等は流出防止の対象となる物質とされていたという状況である。JEGSは、日米の基準のうち、より規制的なものを採用するという基本的な考え方に基づくものとされており、このような状況になっていると思われる。

松崎議員 

 アメリカのPFOS等に対する規制は我が国より先行しているというのは重要な指摘である。私もこの問題に関心を持ち調べているが、アメリカのほうが様々な点でPFOS等の規制が進んでいる。日本ではPFOS・PFOAの2種類について暫定目標値が1リットルあたり50ナノグラムである。一方、米国ではEPA(米国環境保護局)が強制力のある飲料水の基準を今年4月10日に定めた。その値はPFOSとPFOAが1リットルあたり4ナノグラム(ナノは10億分の1)である。また、PFNAなど他の4種類の有機フッ素化合物や混合物の基準値は1リットルあたり10ナノグラムである。これらの物質について日本では規制基準がない。また、これは昨年4月のNHKのクローズアップ現代で放送された内容であるが、米国本土では軍事基地でも対策が取られており、ミシガン州にある基地では、泡消火剤の影響で湖の汚染が発覚し、軍が巨大なフィルターを設置し、地下水を浄化し、排水しているということである。こうしたアメリカ側の状況について、県として把握していることを答えてほしい。

基地対策課長

 米国では、今年4月に強制力を持った水道水基準を定める前に、昨年3月の時点で、EPA(米国環境保護局)が、水道水の規制値案をPFOS、PFOAそれぞれにつき4ng/lとする案を提示するなど、様々な対策が取られてきたと承知している。

 米国本土の基地については、2022年の米会計年度に係る国防予算権限法において、基地の外に対する汚染の可能性がある場合には、必要な対策をとることが義務付けられ、基地に隣接する水源の調査や、汚染があった場合の除染、除染が困難な場合は代替水源の提供や、場合によってはペットボトルの提供等を国防予算により実施していると承知している。

松崎議員 

 今の答弁を聞いて、アメリカ本土による規制が我が国における規制よりも1歩も2歩も進んでいるということが明らかになった。さらに私が調べたところ、4月10日のEPAが定めた飲料水基準には続きがあり、米国の公共水道事業者が3年以内、2027年までに水道水のPFOS等を測定し、公表するとともに5年以内、2029年までに基準値をクリアするよう措置するとのことである。少し大胆な発想かもしれないが、アメリカのほうがPFOS等に関する規制が今後も先行するのであれば、例えば知事と司令官の意見交換の場などを通じて、アメリカ側から問題提起してもらい、日本政府に規制強化を働きかけるという動きがあってもいいのではないかと思うが、現実には様々な課題があり、それは難しい面もある。PFOS等の規制については、やはり先進的な事例を我々自らが学び、国会等で議論を踏まえて、自ら定めるというのが常道であろうと思う。一方でPFOS等の問題においては、米国のほうが規制が先行している現実があるわけで、アメリカ本土の基地における対策も進んでいるという事実がある。そこで、第2の基地県である本県として、渉外知事会の会長県として、米国の進んだ規制や取組について、我が国が取り入れていけるよう、何らかのアクションを起こすべきではないか。意見交換会において知事と司令官が環境問題について協力することで合意をしたことを踏まえて、県として基地対策の枠組みにとらわれず、積極的に行動してほしいと強く思うが、基地対策担当局長の見解を伺う。

基地対策担当局長兼基地対策部長

 意見交換会について、これは相互に義務付けをしない、要請活動の場にはしないという大前提がある。そのうえで、互いの施策、取組を紹介し、相手のことを相互に理解したり、学びの場にすることは可能である。

 また、知事レベルだけではなくて、我々各担当者においても各レベルで米軍とは情報交換等を行っている。

 併せて、環境問題については米国の規制の動向について、特に基地問題にかかわるものについては積極的に情報収集していきたいと考えている。そのうえで、渉外知事会の構成都道府県と情報を共有しながら米国の進んだ規制や取組をどのように我が国としての規制、国への働きかけに反映していくのか、検討していく。

 また、本日委員から問題提起のあった米国本土の基地等の規制の状況やPFOS等に関する規制強化の考え方は、我が国としてPFOS等の規制を強化していく上での重要な方向性であると思う。県の所管部局に情報提供することはもとより環境省の我々のパートナー部局、すなわち米軍基地の環境問題を所管するセクションに情報を共有して、在日米軍基地を含む我が国におけるPFOS等の規制の在り方についての検討を促していきたいと考えている。

松崎議員

 知事と在日米陸海軍司令官との意見交換会というトップ同士の会談で話し合われた内容は、少なからぬ意義をもつと思う。アメリカでは、PFOS等の規制が我が国よりも先行しており、アメリカ本土の基地における対策がすでに始まっている。それらの規制は今後強化される見通しである。PFOS等については、わが国でも水源等の汚染が明らかとなり、国民県民には一体どこまで汚染が広がっているのか、不安も広がっている。国を挙げて対策強化に乗り出すべきところ、第2の基地県であり、米軍の環境問題のいわば最前線である本県が果たすべき役割が大きいと思う。是非、答弁もあったが、県として積極的な取組をお願いしたい。