令和6年9月30日(月) 総務政策常任委員会
(立憲民主党・かながわクラブ 松崎委員)
(松崎委員)
これまで金利の動向について確認させていただきましたが、併せて為替の影響についても確認したいと思います。
いま現在の15時25分段階で、ドル円相場は141円67銭から69銭ということで、142円から141円台で推移している状況でございますけれども、日本では、日銀が7月に政策金利の引き上げを行いまして、今後も利上げが見込まれている一方、アメリカでは、先日行われたFOMCで、令和2年3月以来の政策金利の引き下げが行われ、市場では12月までに更なる利下げが見込まれている所です。
日銀の政策金利引き上げまで円安傾向は続いていましたが、今後、日米の金利差が縮まることで、為替は円高に進むものと考えています。
そこで、先行会派での質疑を聞いておりますと、令和6年度の法人二税は当初予算から増収を見込んでいるとのことでありましたが、今後、為替がこのように円高となった場合にも、法人二税は増収を見込めるのでしょうか。
(税制企画課長)
各企業は、原則として、決算から2か月以内に申告を行うこととされており、今回の税収算定では、令和6年5月までに決算を迎えた法人について、申告納付の実績を取り込んでいます。
また、その後に決算を迎える法人については、企業収益の動向等を基に、6年度の法人二税の税収を見込んでいます。
今回の算定で取り込んだ実績というのは、法人二税全体の約7割を占めており、また、残り3割は7年1月までに決算を迎える法人からの税収となっており、これらの法人は、現時点で事業年度の3分の2以上を終えています。
こうしたことから、今後の為替変動が6年度の法人二税に与える影響は限定的であるため、当初予算に対して一定程度の増収を確保できるのではないかと考えています。
ただし、今後も気を緩めることなく、為替の動向を注視してまいりたいと考えています。
(松崎委員)
6年度の法人二税は、当初予算から増収となる可能性が高いことを理解しました。
全国的に企業収益が好調であると報道されており、東京都などもおそらく同様の状況であることが推測できます。
税収が増えることは喜ばしいことでありますが、6月の常任委員会でも議論させていただいたとおり、本県のような地方交付税の交付団体は、法人二税の税収が増えましても、地方交付税は減ってしまうため、自由に使える税源が大きく増加することはありません。
これに対して、東京都のような不交付団体は、税収が増えた分だけ、ストレートに新たな施策を行う税源が生まれるため、行政サービスの差は拡大する一方です。
これを解消するためには、当局と何度も議論をしてきたとおり、「地方自治体間の税収偏在の是正」を行う必要があると考えますが、この問題について、改めて、状況を確認したいと思います。
最近の大きな動きとしては、8月の全国知事会で、税源の偏在が小さく税収が安定的な地方税体系の構築が提言されたものと承知していますが、これに関し、会議当日、どのようなやり取りがあったのでしょうか。概要を教えてください。
(税制企画課長)
8月1日に、福井県において開催された全国知事会では、「税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築」の提言に関して、複数の知事から発言がありました。
主なものとして、埼玉県知事から、Eコマースの進展などにより、東京都への税収の集中が一層進んでいるため、適切な偏在是正措置が必要であるとの発言が、千葉県知事から、子ども施策の地域間格差拡大の背景には、地方自治体間の財政状況の違いが存在し、これは事業の取捨選択や行革の努力で実施できるレベルを超え、一般的な自治体ではやりたくてもやれない、との発言が、神奈川県知事からは、東京一極集中という話は、いつの間にか東京「圏」一極集中にすり替えられるが、都と3県では財政状況が大きく異なる、そして、それは国の仕組みがそうなっているところに問題があるといった発言が、それぞれありました。
また、こうした3県知事からの発言を受け、東京都知事からは、都の1人当たり一般財源は全国平均とほぼ同水準で、格差はない、といった反論や、子ども施策はワンボイスで進めていくべき、との発言がございました。
最終的に、全国知事会としては、「地方税財政常任委員会」の委員長である宮崎県知事から、「税源偏在などについて強い意見をいただいたことを踏まえ、税源偏在については今後、中長期的な課題として、さらに国とも意見を深めていきたい。今後の要望活動に生かしていく。」との発言がありました。
(松崎委員)
いま、縷々ご答弁がありました。神奈川だけでなく、また、3県だけでなくて、関東3県だけでなく全国の知事の皆様からも、やはり、本県の主張あるいは議会においても意見書採択がございましたけれども、神奈川の声が国に対して、賛同あるいは同じような趣旨の思いというものが、広く訴えられておられて、それが制度的な問題を含めて解決を急がなければいけないということで、よく分かりました。
そこで「税収の偏在是正」問題について、県は今後、どのように対応していくのでしょうか。
(税制企画課長)
様々な機会をとらえ、今後も粘り強く、国に対して働き掛けてまいりたいと考えております。
(松崎委員)
「居住する地域にとらわれないこども施策の実現」は言うのは簡単ですが、実現するためには、制度の壁というのを取り払う必要がどうしてもあるわけです。また、「税源の偏在是正」は、8月の全国知事会での議論を経て、3県知事の思いが、一定程度、全国にも伝わってきているということを改めて確認させていただきました。
こうした問題は、多くの自治体から声を上げて、制度見直しの機運を高めていかなければなりません。大変重要な課題があるというわけで、今後も引き続き、しっかりと対応していく必要がどうしてもあるわけです。このことについて、当局から何かありますか。
(税制企画課長)
先ほどご答弁しました全国知事会の本会議以外にも、全国知事会に所属する「地方税財政常任委員会」が、7月16日に開催され、その場でも、「税収の偏在是正」問題に関する発言がありました。主なものとして、事務局である宮崎県知事から、「税源偏在の問題は、国全体の課題であるとして、声を上げていく必要がある」といった発言や、鳥取県知事から、「税源の偏在が是正されて、持続可能な、安定性と普遍性のある財源となる税財政体系が求められるべき」といった発言がありました。
今後も、多くの自治体から声を上げ、機運を高められるよう、引き続き、しっかりと取り組んでまいりたいと考えています。
(松崎委員)
ご答弁を聞いていますと、まさに神奈川県議会が端を発したこの議論が、全国へと波及し、そして全国の知事さん方によっても認識が共有されているようにも受け止められるところです。東京都のような歳入が歳出を大きく上回る地方交付税の不交付団体の場合には、財源の不足を埋めるために臨時財政対策債を発行する必要もありませんし、その豊かな財源を活用して、自由に施策を推し進めることができます。先般のこの委員会の議論では、そうした余裕の財源というものが、年間6,400億円程度あるということが、単年度の決算の中で分析によって明らかになったというご答弁もありました。そのことを考えると、本県のように、それが足りなくて、借金までしなければいけない財政状況とは大きな違いがあるわけであります。
また、将来の利払い負担の軽減ということも考えなければいけないわけでありまして、金利上昇局面ではあえて地方債を活用せず、一般財源により施策を行うといった対応も東京の場合だったら可能かもしれません。
一方で、本県をはじめとするほとんどの団体はそうはいきません。現在の地方財政制度下において臨時財政対策債を発行することも必要となりますし、事業を進めるために通常の県債を最大限活用して行くことも必要となるわけですが、これはどれも借金でありまして、いずれ必ず利息を付けて返済しなければいけないわけですから、どんどんどんどん財政に余裕ができるところとは大きな違いがあるわけです。
先ほど、国債の金利が上昇し、これに合わせて県債の利率についても上昇しているということで議論させていただきましたが、先日示された国の概算要求では、金利上昇によって国債の利払いが、11兆円程度まで増加するということでした。
県債管理目標から、新たな県債管理方針に移行したとは言いましても、今後、県債においても、利払いが増加すると公債費も増加し、県財政を圧迫するというのは自明の理であります。そこで、仮に0.1%金利が上昇すると、県の公債費に対して、年間どの程度の影響があるのですか。
(資金調査担当課長)
県債の発行額は、借換債も含みまして、年間およそ3,000億円です。
単純計算になりますが、仮に0.1%上昇した場合については、公債費は年間3億円程度増加すると見込んでいます。
(松崎委員)
3億円であります。このお金があったら、子ども施策なり、介護関係の費用も含めて、どんな施策を打てたのだろうと思うと、大変な数字です。金利がさらに上昇し続けると、影響は後年度にわたるわけであります。今年の2月に作成した中長期財政見通しでは、県債の利率をどの程度で見ているのでしょうか。
(資金調査担当課長)
中長期財政見通しにおける10年債の与件利率は、令和6年度の10年国債の与件利率である1.9%に、信用リスク等を踏まえた上乗せ金利、こちらの0.1%を加えた2.0%で見込んでおります。推計期間である令和22年度まで、この数字で見込んでいます。
(松崎委員)
来年度の国の概算要求が2.1%ですから、大体それに収まるというふうな概算を持っておられると思っていますが、既に中長期財政見通しの利率を上回っておりまして、今後、公債費が推計を大きく上回っていく可能性はないのでしょうか。
(資金調査担当課長)
委員ご指摘のとおりでございまして、現時点で、国の概算要求の与件利率が中長期財政見通しの与件利率を上回った状態にあります。しかし、一方で、実勢の県債利率については1.0%程度と、未だ2.0%に届いておりませんので、利率の上昇に対する当面のバッファーは確保されているものと認識しています。
そのため、今後の県債発行額にもよりますが、利率の上昇により、公債費が推計を大きく上回る事態は当面ないものと考えています。
しかしながら、利払い増加による毎年度の公債費の増加は、財政の硬直化に繋がりますので、市場や国の動向を注視し、適切に対応してまいりたいと考えています。
(松崎委員)
今後の金利や為替の変動もありうることで、既にドル円相場が141円台に入っていることを目の当たりにしていて、そういったことも考えると、やはり過去に経験したような、臨時財政対策債の大量発行を余儀なくされる可能性もなくはないということであります。そうしたことも考えると、あらためて県債管理方針のもとで、どのように県債を管理していくのかということはしっかり押さえておく必要があると思います。そこで、財政部長の見解を伺います。
(財政部長)
従前の県債管理目標は、県債残高をコントロールすることで、将来的な公債費による財政の硬直化を防止しようということで始まりました。
これまでの取組の結果、県債残高が減少し、公債費もピークを越えたことから、今後は必要な事業をしっかりと進めながら県債を適切に管理しようということで、県債残高を3兆円未満で管理するという県債管理方針を今年の2月に策定したところです。
将来に向かって金利は上昇し、利払いが増加することが見込まれていますが、利払い増加による財政負担が、必要な事業にブレーキをかけるようなことがあってはならないと考えています。
県債の発行にあたっては可能な限り将来の利払い負担を抑制する工夫をしつつ、毎年度の公債費への影響も意識しながら、県債残高の管理をしっかりと行っていきたいと考えています。
今後も、県民生活の向上と将来世代の負担について、バランスをとりながら、金利が上昇する中にあっても、安定的な財政運営を行っていきたいと考えています。
(松崎委員)
この15年、16年を振り返ると、大変苦しい時期を過ごしてきたと改めて思います。特に県債管理目標を設定して以降、県の取組というのは、議会とも本当に協力しながら、よくここまで頑張ってこられたなと思いますが、それにはなにより県民の皆様のご理解をたまわったのが、一番大きかったと私なりに振り返らせていただきます。
しかし、これから先ももし苦しくなったときに、県民の皆様のご理解をたまわれるような経済、あるいは暮らしの状況が前と同じようにあるとは何も保証がないわけです。これは、やはり政治や経済が期待した以上に、あるいは期待した通りに展開していくことが必要で、そのためには議会の機能や当局の様々な役割も大切になってくると思います。そういった意味では、経済の状況を見た財政のかじ取りが、何においても重要だと私は思います。
これまでは、超低金利時代だったというのが、基本的な環境としてあったわけで、県債も、大変底堅い需要と低利率での発行を実現できたわけです。金融政策の正常化に合わせて、そのような時代もついに終焉を迎えてきていて、金利というものが、再び「金利のある世界」へカーブを描きながら戻っていこうとしています。
そうすると、金融市場が一気にグローバル化してきている、その中で将来を予測しなければいけないということになりますので、一気に、ここの運用の難しさが増したと言わざるを得ないわけです。したがって、長期間にわたって、低金利で運用されることが見込まれているものとしての県債というものではなくて、短期や中期で運用されることが前提で、金利の上下をめぐって、需要と供給が動いていく中にある県債というふうに変わるので、そのことを非常に念頭に置きながら取り組んでいく必要があると改めて指摘させていただきます。
つまり、リスク管理をしっかりと行うことに尽きるわけですが、世界経済の動向もしっかりとアンテナを張りながら、県債管理方針のもと、適切な県債管理を行っていただいて、それを管理するだけでなく県民生活に必要な事業は着実に投資をする必要があるわけですから、そのことについても、よろしくお願いしたいと思います。
次に、わが会派の代表質問において、地方財政制度の課題を質問させていただきました。地方の財源保障や財源調整を保障する制度が機能しなければ、国の制度によって、団体間の行政施策に関する格差が広がってしまうという点では、先ほど質問した偏在是正にも通じる大きな課題でございます。
そこで、地方財政制度について、もう少し詳しく伺ってまいります。そして、またその取組についても確認をしていきます。
まず、知事の提案説明ですが、税収が650億円増えたにも関わらず、地方交付税と臨時財政対策債が減額となっているとの説明がありました。昨年度より財源不足が拡大する要因の1つと考えていますが、どうして、このように大きく地方交付税等が減少してしまうのか確認します。
(資金調査担当課長)
地方交付税と臨時財政対債を合わせた実質的な地方交付税は、地方交付税法に定める一定のルールに基づき、歳出に相当する基準財政需要額と歳入に相当する基準財政収入額を計算し、その差し引きの結果、不足分を交付するという仕組みになっております。
この基準財政収入額は、税収等の見込額により算出されるので、税収が増えれば実質的な交付税は減るということになっております。
その上で、令和7年度につきましては、基準財政需要額は、社会保障関係費が約200億円増加しますが、県債残高の減少に伴い公債費が約50億円減少することになります。その結果として、150億円増加します。
一方で、基準財政収入額は、税収増等により約400億円増加しますので、需要から収入を差し引くと収入が250億円上回るので、交付税と臨時財政対策債は合わせて250億円減ることになります。
さらに、地方交付税の精算に備えて積み立てていた基金からの繰入金が80億円減るため、実質的な交付税全体としては、330億円減少するものと見込んでおります。
(松崎委員)
本県の来年度の状況は説明の通りなのだろうと思いますが、問題なのは先日の我が会派からの質問で、「こうした厳しい状況に置かれているのは、交付税制度を中心とした地方財政制度に課題があるのではないか」と質問をしました。改めて、地方財政計画と地方交付税、両者の関係はどのようになっているのか説明してください。
(資金調査担当課長)
地方財政計画とは、地方交付税法上、毎年度「地方自治体全体の歳入と歳出の総額の見積り額」を記載した書類として作成される計画です。この地方財政計画で、地方全体の地方税などの歳入や給与関係費、社会保障関係費などの行政一般経費、建設事業などの投資的経費などの歳出が見込まれます。
地方財政計画の歳入と歳出の収支均衡を図るための財源対策として、実質的な地方交付税の総額が決められます。
その上で、この計画で定められた地方交付税の総額を、人口などの総括的な状況や個別の事業費に応じて、各自治体に地方交付税として配分するという仕組みになっております。
地方財政計画により、地方が、地域間格差や景気の動向による税収の年度間格差に関わらず、住民生活に必要な行政サービスを提供できるよう、地方の財源が保障されていると言えますけれども、一方では、地方の行政需要の伸びに対して上限をはめているということも言える状況にあります。
(松崎委員)
保障しているようで、上限をはめているとも言えるというのは、重要な観点であり指摘であると思います。というのも、地方財政計画上は、社会保障関係費が約2.6倍に大きく増加しているにも関わらず、地方交付税総額が伸びていないという点です。具体的には、どのような状況でしょうか。
(資金調査担当課長)
三位一体改革前の平成17年度と令和6年度の地方財政計画の社会保障関係費を比較すると、8兆円から22兆円へと、2.6倍に増加しております。
しかし、地方交付税等の総額は、平成17年度は、約20兆円、令和6年度は、約19兆円と増えておりません。
これは、地方財政計画の歳出全体が平成17年度は84兆円、令和6年度は94兆円と社会保障関係費の伸びほど増えていないため、歳出の内訳で見てみると、給与関係費は23兆円から20兆円に減少し、投資的経費も20兆円から12兆円へと減少しており、適切に財政需要が歳出に計上されていないことが要因となっています。
(松崎委員)
地方の財源が十分に確保されていないことは、はっきりしているわけです。では、地方交付税の総額が伸びない、ものによっては大きく減少しているという中で、本県では、どのように対応しているのでしょうか。
(資金調査担当課長)
都市部における本県は、全国平均より高齢化の影響が大きく、増加率は、約3.4倍に達しており、社会保障関係費の増加の影響が大きくなっております。
他の道府県も同じ状況ではありますが、本県では、給与関係経費や投資的経費の削減により、財源をねん出している状況です。
(松崎委員)
よく分かりました。
次に、これも我が会派の質問に対する知事の答弁の中で、本県の地方交付税の算定において、大都市圏の財政需要が適切に反映されていないということでありました。具体的にはどのような分野で適切に反映されていないのか伺います。
(資金調査担当課長)
例えば、地域の文化・スポーツ振興など国の基準付けがない、もしくは弱い行政分野での需要を簡易的に算定している「包括算定経費」や、都市計画に要する需要などを算定している「その他土木費」など、個別の事業ごとに算定している需要の中では、18項目で適切に反映されていないと考えています。
特に、人口を基礎として算定をする「包括算定経費」や「その他土木費」においては、人口規模ごとに割り落としを行う補正により特に大きく割り落とされています。
(松崎委員)
割り落としについて、初めて聞く県民の方もいらっしゃると思うので、割り落としについて、簡潔に説明してください。
(資金調査担当課長)
割り落としと申しますのは、一定の人口規模に応じまして、一定程度の率をかけて、減額をしていることでございます。その額につきましては、結果として、小さい団体の方が、減額が相対的に小さくなるというような割り落としを行っているものです。
(松崎委員)
確認しますが、大きな自治体ほど、損をするということですか。
(資金調査担当課長)
大きい団体ほど損をするということになっています。例えば、包括算定経費を例にとりますと、人口900万人を超える本県に適用される補正による割り落とし率は0.458となっています。
一方、人口550万人規模の団体を想定したときに適用される割り落とし率は0.582となっており、割り落としが緩やかになっています。
人口が多いことによる「規模の経済」により行政コストが割安になることにより、割り落としの補正が行われることは一定の合理性はありますが、一方で過度の割り落としが行われている状態にあると考えています。
(松崎委員)
重ねて聞きますが、交付税算定おいて、大都市圏の需要を割り落とす補正が行われている理由は何でしょうか。
(資金調査担当課長)
理由をお答えします。人口規模ごとに割落としを行う補正の考え方としては、行政事務は一般的に「規模の経済」、いわゆるスケールメリットが働き、規模が大きくなる程、測定単位あたりの経費が割安になる傾向があるという考えから、大都市圏でより強く割り落としが行われております。
しかし、実際には、大都市圏は、土地価格やモノ・サービスの価格が高くなっておりまして、行政コストが割高になる側面もあります。
このように、交付税の算定にあたっては、過度な割り落としが行われている一方で、割高な行政コストは反映されず、実態にあった算定が行われていないものと考えております。
(松崎委員)
では、割り落としによる補正の影響はどの程度ですか。
(資金調査担当課長)
先ほど申しましたが、割り落とし率が、大規模な900万人を超える神奈川県くらいですと、0.458となっています。
一方、550万人程度ですと、0.582となっておりまして、人口を単純に神奈川県900万人とすると大体100億円くらい違ってまいります。ただ、これは仮定的な話で実際は違ってまいりますが、単純な計算としては、その程度の差が出てまいります。
(松崎委員)
100億というのは大変無視できない金額であります。それくらい過度な割り落としがあると考えておられるように思います。確かに、人口が多い本県では「規模の経済」により行政コストが一定程度、抑えられる面もあると思いますが、人口が多い以外に、大都市がある故によりコストがかかる面も多々あるわけでありまして、「過度な割り落とし」と当局が捉えていることを裏付ける面もありますが、当局として「過度な割り落とし」と考える根本的な理由はなんですか。
(資金調査担当課長)
本県の交付税と臨時財政対策債等を含めた一般財源の人口一人当たりの額は全国最下位で全国平均の71%しかありません。
さらに、人口一人当たりの基準財政需要額も全国最下位となっています。これは、割り落としをする補正等により、都市部に対して過度に財源調整が行われているだけでなく、都市化の度合いが基準財政需要額に十分に反映されていないことが一因であると考えられます。
(松崎委員)
つまり、大都市であるということを特に考慮されていないに等しい状況であるため、必要な交付税が措置されておらず、その足りない財源を補填するがために、本県独自の財源も使わざるを得ず、そして、これからの財政需要がもっと高まってくる恐れは義務的経費が多い状況かと思います。
これまでの議論を通じて、こうした恒常的な財源不足を解消するためには、本県自身が自らの手で財政需要に見合った様々な財源を確保していく必要があると思われるが、その中で中心になるのは、やはり地方交付税。今の体制では、地方交付税だと思いますが、今後どのように取り組んでいくのか、財政部長に伺います。
(財政部長)
これまでも、本県独自での要望も行ってまいりましたし、全国知事会等の関係団体等とも連携して、地方交付税を含む地方の一般財源の総額を確保・充実することなどについて要望してまいりました。
また、個別の算定方法についても、算定方法の改善について、申し入れも行ってまいりました。
一方で、これまでの要望にも関わらず、一般財源総額は確保できているという状況ではありません。
今後も、具体的な事例も国に提示しながら、様々な手段により本県に見合った地方交付税が交付されるよう粘り強く、国に要望を続けてまいりたいと考えています。
(松崎委員)
毎年、「来年度の予算を展望したら、現在、財源不足がこれほどになります。」というアナウンスが当局からあります。私は、最初議員になった頃は、「本当に大変だ。なんとか神奈川県の中で、帳尻を合わせるためにはどうしたらいいのだろう」と考えていました。しかし、よく考えたら、割り落としが過度に行われていることだったり、必要な財源を手当てして、伸びしろもないくらい伸び切った歳入を引いて、そして、もう借金ができないくらいまでやったが挙句に、これくらい足りないというわけであるとするならば、根幹は地方交付税あるいは地方財政計画にあるのではないかと思わざるを得ない事態であると思います。したがいまして、他の自治体とも、特に大都市圏にある自治体とは連携協働しながら、財源を確保するためにどうしたらいいか、特に偏在是正の問題と、そして地方財政制度の2つの是正について、真剣に取り組んでいく必要があると私は思います。
でなければ、毎年、「来年度当初予算これだけ足りません。」という発表を永遠と続けることになり、そして、そのアナウンスメントがいずれは総務省や政府を動かすだろうと信じてやっているのかもしれません。しかし、一向に耳をかさないということであれば、ではどうするのかということになりますので、あまり我が国の地方政府の安定にとってよろしくないと思います。しっかり聞き届けていただくような形でもって、議論進めていただくことがどうしても必要だと思います。
要望をさせていただきますが、偏在是正の関係でも少し述べましたが、東京都の場合には、地方交付税の不交付団体となっているため、本県と同じ大都市圏にあっても、地方交付税の影響を受けることなく、税収の伸びを、そのまま、積極的に新たな施策に投入することができます。
一方で、地方交付税の制度上、税収が伸びても、大きく一般財源が増えない仕組に加え、その算定上、人口が集中していることを理由に、過度に割り落とされてしまっているなど、東京都と同じ大都市圏であるにも関わらず、神奈川県の場合は、地方交付税の交付団体であるがために、さらに一般財源が減らされるという状況にあります。
今後、偏在是正だけでなく、地方交付税を含む地方税財政制度が構造的に抱える課題を解消していかない限り、東京都との行政サービスの格差は拡大していく一方ではないかと思います。
そのため、今後も、機会をとらえて、地方財政制度の課題解消に向けて国に強く求めていく、そういう仕組みをしっかりと作る取り組みを進めてもらいたいと思います。