令和6年9月30日(月) 総務政策常任委員会

(立憲民主党・かながわクラブ 松崎委員)

(松崎委員)

私の方から、現在の金利の状況と県財政への影響について、質問をしてまいります。

8月5日にアメリカ市場の株価急落をうけ、日本市場でも日経平均株価が一時4千円以上下落し、「ブラックマンデーの再来」と言われてから、2か月が経過しようとしています。この日以降、7月初めには、対ドルレートで160円をつけていた円相場も円高に再び振れ、現在は、141円台で推移しております。これらの原因として、7月末に日銀が、国債買い入れの減額とともに追加の政策金利の利上げを決定したことが要因ではないかという報道もございました。

日銀による金融政策が、グローバルな金融市場を通じて、国債金利や為替などに影響し、それらが地方経済にも波及してくるのではないかと懸念しています。

本県におきましても、このような金融政策やその影響をしっかり見極めていく必要があります。

そういった観点から、金融市場の動向や県財政への影響について何点か質問したいと思います。

まず、近年の国債金利の動向を確認したいと思います。

(資金調査担当課長)

平成28年に日銀が、いわゆる「マイナス金利政策」を開始して以降、10年国債金利の利回りは、0%程度で推移していました。

その後、令和4年12月には、日銀が、10年国債金利の目標金利として設定しておりました0%からの乖離幅について、+-0.25%程度から+-0.5%程度へと長短金利操作、いわゆるイールドカーブコントロールと言われていますが、こちらの方を修正したことに伴い、金利は上昇し、年末には0.4%程度となってございます。

その後もイールドカーブコントロールの修正が行われるのに合わせて、金利は上下動を繰り返しつつ上昇し、今年3月のマイナス金利政策解除後の5月には、1%を超える水準となりましたが、8月5日以降金利は0.75%まで急低下しまして、9月30日現在は0.8%台となっています。

(松崎委員)

8月5日の金利の急低下は、株と債券がトレードオフの関係にあることが影響していると考えるが、そういう理解でよいのでしょうか。

(資金調査担当課長)

委員お見込みのとおり、株価と債券価格の動きは、一般的にはシーソーのように相反する関係にあるとされています。さらには債券価格と金利についても同様の関係にあると言われています。

今回、株価が急落したことで、安全な資産であり、かつ、投資対象として株に対して相対的に魅力が高まっている債券に資金が流れまして、その結果、債券価格が上昇し、これに伴って、金利が低下したものと考えております。

(松崎委員)

その後の金利は8月5日以前の水準に戻っていないが、今後も大きく上昇することはないとみているのでしょうか。

(資金調査担当課長)

 市場関係者の間では、金融政策の正常化にむけまして、日銀が今後も利上げを行うとの見方が多数を占めています。

一方、近年は金融市場のグローバル化によりまして、金利の動向は株価だけではなく、景気や為替にも大きく影響いたします。

今後の利上げの動きが、8月5日に見られたような市場の混乱や、景気の腰折れを招く懸念もありますので、日銀としても市場動向を見ながら段階的かつ慎重に対応するのではないかと想定しています。

(松崎委員)

いま、段階的かつ慎重に対応するのではないかと見ているというのは、なかなか国に対する評価とか様子を語る公共の立場の人は少ないものですから、非常に重要な答弁だと私は受け止めています。

次に債権の状況について、聞いていきます。国債金利が変動することに伴い、県債の利率はどのように推移しているのか伺います。

(資金調査担当課長)

県債の利率は、国債金利に、地方債としての信用リスクや流動性リスクが上乗せされて決まっています。そのため、そのトレンドは国債金利に連動することとなります。

本格的なマイナス金利政策下において、本県の10年債の利率は0.1%をきるような時期もありました。しかし、マイナス金利政策解除の機運が高まるにつれ、県債の利率も上昇し、令和4年10月には0.44%、令和5年10月には0.85%となってございます。

その後、今年の3月にマイナス金利政策が解除されたこと伴いまして、7月には1.16%まで上昇しました。

なお、8月5日以降に関してですが、直近の10年債は今月9月13日に発行したところですが、利率は1.00%となっています。

(松崎委員)

今の答弁を簡略に整理しますと、マイナス金利政策下では0.1%であった利率が現在1.0%、実に10倍になった状況でございます。当然、利払いが増えます。こういった状況に対して、何かしらの対策をしていくことが必要だと思います。

利率を抑制するために、県債の発行にあたって工夫していることはありますか。

(資金調査担当課長)

本県の県債は、毎年度、同時期に同額程度を発行する「定時・定額発行」を基本としています。

あらかじめ発行時期を特定し、対外的に示すことで、投資家にとっても購入計画を立てやすく購入し易い県債となっています。このことが本県の安定的な資金調達を支えてきました。

一方で、価格の変動性、いわゆるボラティリティと呼んでいますが、ボラティリティが高い状況においては、定時・定額発行では、県債発行にとって不利な環境、すなわち金利の高い市場環境での発行を余儀なくされる場合があります。

そこで近年は、市場動向を見ながら機動的に発行時期や発行額を設定する「フレックス枠」を一定程度確保し、日銀金融政策決定会合やFOMC、こちら米国連邦公開市場委員会のことですが、こちらの開催時期など、特にボラティリティが高くなる時期を回避しながら発行することで、利率を抑える工夫をしています。

(松崎委員)

このことは、大変私なりに評価をさせていただきたいと思っています。それともう一つ、かねてより私は、当委員会で県債の発行に関して議論させていただいてきたところですが、県債価格に影響を与えるイベントに起因した、今お話しのあったボラティリティの高い時期を外し、比較的有利な環境で県債を発行できるフレックス枠は非常に有効と考えています。市場動向を的確に把握することは、難しいものと承知していますが、県財政の観点から、引き続き利率を抑える工夫をお願いしたいと思いますので、要望させていただきます。

次に投資家の動向も確認したいと思います。

金利の上昇に伴い、投資家の需要はどのように変化していますか。

(資金調査担当課長)

これまでの超低金利下においては、利率が限りなくゼロに近い国債と比較して、相対的に利率の高い県債は、すべての年限で投資対象として優位性がありました。

しかしながら、マイナス金利政策の解除によって国債金利が上昇したことで、地方債より信用力があり、かつ、発行額が巨額で多くの資金を運用しやすく、また、債券市場において既発債の流通量も多い国債に投資家の目線がシフトしつつございます。これまでのような県債の優位性は失われつつあると考えています。

本来は、短期から中期の債券を購入対象としていた投資家もおりましたけれども、そのような投資家を中心に10年債や20年債のような長い年限の需要が減退しています。

特に20年債の需要は厳しく、7月に発行した20年債は予定の200億円をぎりぎり調達できたという状況でした。

(松崎委員)

決して、楽観できる状況ではなくなってきているようでありますが、確かに金利上昇局面において、20年債のような長い年限の需要というのは、長期保有やラダー運用、短期から長期まで幅広く投資することですが、そういうことを前提とした生命保険会社など一部の機関投資家に限られるのだろうとお話を聞いていて、推察されます。

しかしながら、そうした局面においても必要な資金は確実に調達する必要があり、事業を進めていただきたいと考えています。

そこで、今後さらに、需要構造が変化することによって、県債の販売が難しくなる局面があると思われるが、どのように安定した資金調達を実現していくのかお聞きします。

(資金調査担当課長)

投資家の需要が大きく変わりつつあるなか、今後も安定した資金調達を継続していくためには、これまでの運用を見直す必要があるものと考えています。

具体的には、これまでは各年限の発行額や発行時期を一定程度固定していましたが、需要が減退している長い年限から、需要が見込める短い年限に発行額を調整いたしますとともに、確実に需要が見込める時期に機動的な発行ができるようフレックス枠をより効果的に活用してまいりたいと考えています。

また、今年度の傾向として、市場公募での調達に比べて、銀行から融資を受ける方がより低利率のケースも散見されておりますので、その時々の需要に合わせ市場公募と銀行引受を柔軟に変更できるよう、運用を弾力化してまいりたいと思っています。