令和7年3月4日(火)総務政策常任委員会
(立憲民主党・かながわクラブ 松崎委員)
(松崎委員)
来年度予算案の前提となる我が国の2025年度の日本の物価上昇の影響を除いた実質経済成長率の見通しは、+1.2%程度と見込まれています。今年度は、+0.4%程度とされていることから、来年度の我が国の実質GDPはさらに拡大することとなります。
一方、神奈川県のGDPは、シンクタンクの予測によれば、2025年度は+0.5%とされており、2024年度の+0.8%に比べて、伸び率は鈍化していますが上昇していくことが予想されております。日本経済は、30年間のデフレ状態から今まさに脱しつつあり、日本銀行総裁からも、2月4日の衆院予算委員会におきまして、日本経済の物価情勢はデフレかインフレかとの問いに対して、「現在はデフレでなくインフレの状態である」と述べられたところであります。
本定例会において提案された本県の来年度予算におきましては、税収が過去最大となり、これまで当局と様々な議論をさせていただいてきた臨時財政対策債の発行額についても、国税と地方税が好調であることを背景として、とうとうゼロとされたところです。本県財政にとっても大きな節目であるエポックメイキングな状況が到来したと感じております。
しかし、経済は堅調と言われても、多くの県民は、「豊かさ」というものを実感しておりません。所得が力強く増えていく状況が定着するまでの間、県としては、様々な行政サービスをしっかりと提供し、県民の生の声を聴きながら、それぞれの県民一人ひとりが生き生きと輝ける神奈川県を作っていくことが必要だと思われます。
国・県、労働団体、経済団体が参加する神奈川政労使会議からも1月20日に共同メッセージが発表され、「豊かさと幸せを実感することができる社会をめざして」というテーマのもと、「県民の豊かさと経済の好循環を実現」するため、「企業の生産性向上と適正な価格転嫁によって企業収益の拡大を図り、それを原資として物価上昇に見合った持続的・構造的な賃金の引上げにつなげることで、県民の所得を上げ、消費や投資を拡大させ、経済の好循環の実現を目指します。」とされたところであります。
県財政については、これまで厳しい財政状況の中、財政基盤の確立に向けてたゆまぬ努力を行ってきたことが、今まさに実を結びつつあると感じていますが、これからは、社会の変化に対応できるような健全な財政基盤を維持しながら、県民一人ひとりが生き生きと輝ける社会を作るということを最優先に考え、様々な行政サービスの充実を図る方向にシフトしていかなければなりません。
そういった観点も含めて7年度当初予算に関連して、何点か質問したいと思います。
まず、県民が「豊かさ」を実感するためには、もちろん、先ほども述べたとおり、所得の増加が重要であると考えます。近年では「賃金と物価の好循環」の実現の観点から、賃上げの必要性が叫ばれていますが、賃上げについて、全国と本県の動向を確認します。
(税制企画課長)
まず、全国の動向ですが、厚生労働省が公表している「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」によりますと、賃上げ率は、バブル崩壊後に経済活動が停滞した1990年代後半以降、1%から2%台で推移してきましたが、近年の好調な企業収益や人手不足などを背景に、令和5年は3.6%、令和6年も5.3%と、高い水準となっています。
本県におけるこうした統計はございませんので、神奈川県毎月勤労統計調査によりお答えしますと、1人当たりの給与総額の上昇率は、令和5年は3.2%、令和6年は、こちら11月までの平均となります、1.6%でありまして、上昇傾向で推移しております。以上です。
(松崎委員)
令和6年は非常に高い賃上げ率であったことを確認しました。
賃上げによりまして個人の所得が増えた場合、県民の「豊かさ」が増すだけでなく、本県税収の基幹税目である個人県民税の増収につながると思われます。
こうした賃上げの状況を考慮した上で、令和7年度の個人県民税収、これをどのように見込んだのか伺います。
(税制企画課長)
7年度の個人県民税の対象は、賃上げの動向等が反映された6年中の所得となります。所得の約8割を占める給与所得について、1月から11月までの毎月勤労統計調査の伸び率などを勘案し、1人あたり2%程度の増加を見込んでいます。
そのほか、6年中の株価上昇に伴う株式等の譲渡所得の伸びや雇用環境の改善による課税人員の増加などを踏まえ、所得全体として、4%程度の増加を見込んでおります。
また、6年度に実施された定額減税が終了するため、個人県民税の税収は、6年度当初予算額(3,570億円)を490億円程度上回る、4,070億円を見込んでいます。
なお、この税収額は、政令市への税源移譲が行われた平成30年度以降、最高ということになります。以上です。
(松崎委員)
賃上げのトレンドに伴いまして、個人県民税も好調な状況であることがわかりました。経済状況の好転によって、税収全体も増加を続けており、今後もこのような状況が一層進むことに期待を寄せたいと思います。
一方で、来年度の財源不足ですが、550億円から始まり、人件費などの増額もあって、750億円まで拡大したと承知しています。税収が大きく増えながらも、地方交付税が減少し、一般財源全体としては増えて行かないという地方財政制度の課題については、本委員会で当局と議論させていただいてきたところです。
地方交付税の交付団体である限り、この仕組上、一般財源は大幅に増えていかないというジレンマが大きく認識される状況に本県はあるのではないかと思います。
しかし、近年のように税収が記録を更新している状況からしますと、このまま税収が順調に伸びて行けば東京都のように不交付団体になることも可能性としてはあるのではないだろうかと思われます。
そこでなんですが、来年度の地方交付税は、臨時財政対策債の発行がない中で1,000億円とかなり少ない額が計上されています。税収がこのまま増えていった場合、どのくらい増えれば、交付税の算定上不交付団体となるのか伺います。
(資金調査担当課長)
令和7年度当初予算におきまして、交付税を1,000億円と見込んでございます。これは、基準財政需要額よりも基準財政収入額が1,000億円足りていないということになります。不交付団体となるためには、基準財政収入額が基準財政需要額を上回る必要がございますけれども、理論上、基準財政収入額が1,000億円増えるためには、約1,400億円の税収の増加が必要となります。
(松崎委員)
では、現実的に不交付団体となる可能性はあるのでしょうか。
(資金調査担当課長)
税収が増えることによって、基準財政収入額が増となることは、交付税の算定では不交付団体に近づく要因となります。
しかし、一方で、本県の基準財政需要額においては、社会保障関係費や給与費といった義務的経費が年々、増加傾向にございます。令和7年度の交付税予算の推計では、国の地方財政計画などを基に、6年度算定結果と比較して社会保障関係費が約160億円の増、給与費が約130億円の増と見込んでいます。
このように、現実的には、先ほどお答えした約1,400億円の税収増に加えて、基準財政需要額の増分を上回る税収増が必要になってきますので、不交付団体への道のりは容易ではないと考えています。
(松崎委員)
介護・医療・児童関係費や人件費の増加や物価高の影響などを考えると不交付団体になるまでの道のりは長いことがわかりました。歳出の上振れ要因を適切に地方財政計画の歳出に計上することが重要になると思いますから、地方交付税総額の確保・充実につきまして、引き続き国に対してしっかりと要望するようお願いします。
また、財政基盤を安定させるためには、県債残高をしっかりと管理していく必要があると思います。県債残高の増加は、公債費の増加という形を通じて、県財政の硬直化につながります。昨年度、令和6年度には、県債管理目標を達成することが確実となったため、県債管理方針を策定し、3兆円未満で県債残高を管理していくということについて、当局としっかりと議論させていただいたところです。
来年度予算において、平成13年度の制度創設以来、はじめて臨時財政対策債を発行しないということになり、中長期財政見通しを策定した当時と県債残高の状況は大きく変わってきていると考えます。
中長期財政見通しと県債残高について聞いていく前に確認しますけど、臨時財政対策債は制度そのものが廃止されたのでしょうか。
(資金調査担当課長)
令和7年度の臨時財政対策債の新規発行はゼロとなりましたが、臨時財政対策債の制度自体は、令和7年度が時限となっており、制度は廃止されていません。
(松崎委員)
令和8年度以降どうするのか、国は検討していくことになると思うが、国に対しては、これまで通り、臨時財政対策債自体の廃止を求めていくという姿勢は変わらないということでよいのでしょうか。
(資金調査担当課長)
令和7年度は臨時財政対策債の新規発行がゼロになったとはいえ、制度が継続している以上、今後、臨時財政対策債の大量発行のリスクは残り続けますので、これが将来的な財政の硬直化の懸念材料の1つとなってまいります。
引き続き、臨時財政対策債は、期限である令和7年度に廃止するよう、国に求めてまいります。
(松崎委員)
臨時財政対策債の発行額が0となったことで、そのことは重いのですね。そこで、県債残高は、中長期財政見通しとどれくらい乖離しているのか伺います。
(資金調査担当課長)
中長期財政見通しでは令和7年度の臨時財政対策債の発行額を650億円、年度末県債残高を約2兆7,500億円と見込んでいました。
7年度の発行がゼロになることなどによりまして、7年度末県債残高は2兆6,700億円と、中長期財政見通しから800億円程度下回っています。
(松崎委員)
800億円乖離しているとのことですが、この乖離をどう受け止めているのでしょうか。
(資金調査担当課長)
令和7年度の臨時財政対策債を650億円と見込んでいることは、先ほど答弁しましたが、それが0になったということでございます。
総務省が8月に公表した「令和7年度地方財政収支の仮試算」においては、令和7年度の臨時財政対策債の新規発行が0.8兆円と見込まれており、現在の経済状況から、ある程度少なくなることは想定してございました。しかし、ここまで少なく、しかも0という数字は、驚きとともに、これまで前提としてきた状況とは大きく変わってきていると感じています。
(松崎委員)
今の経済状況を踏まえますと、臨財債の発行ゼロが続く、あるいは継続された場合でも見通しを下回って推移することも考えられるわけです。
仮に令和8年度以降も臨時財政対策債の発行額が0となった場合、中長期財政見通しの推計期間である令和22年度末の県債残高はどの程度まで減少するのでしょうか。
(資金調査担当課長)
中長期財政見通しでは臨時財政対策債を毎年度800~1,000億円程度発行するという前提で、令和22年度末の県債残高を約2兆4,800億円と推計しています。
仮の試算ではございますが、令和8年度以降も臨時財政対策債の発行額をゼロとした場合は、令和22年度には約1兆4,000億円まで減少します。
(松崎委員)
良い見通しになっていくわけですが、そうなるためにどうするか、また環境や状況がその通りに続くかどうかということ、どこまで自信が持てるのかという点が議論の的なわけですが、「令和8年度以降も臨時財政対策債の発行額がゼロ」を仮定して質問をしたわけですが、これは現実的に起こり得ると思っていますか。
(資金調査担当課長)
総務省が8月に公表した「令和7年度地方財政収支の仮試算」においては、令和7年度の臨時財政対策債の新規発行が0.8兆円と見込まれており、令和6年度の地方財政計画と比較し、+0.3兆円となっていました。
その後、12月に国が公表した地方財政対策では、仮試算の見込みよりも、人件費の増加や物価高への対応があり歳出が増えましたが、国税・地方税ともに伸びたことに伴いまして、地方の財源不足額が1.9兆円から1.1兆円へと縮小いたしまして、臨時財政対策債の新規発行がゼロとなりました。
次年度以降も、令和7年度と同じように国・地方の税収が増えることにより、交付税の原資が確保され、令和7年度地方財政計画の地方の財源不足の規模であれば、臨時財政対策債の発行がゼロになることも考えられます。
しかし、歳入面での今後の国・地方の税収動向や歳出面での今後の人件費や物価・金利の動向によりまして、将来の地方の財源不足額は影響されますので、今後を見通すことは難しいと考えています。
(松崎委員)
かつて、臨時財政対策債の残高が急増していきました。急増していく中で、県財政の危機的な状況について議論させていただきました。隔世の感があるわけですが、中長期財政見通しよりも大きく県債残高が下回ったことで県政運営は安定していくのではないかと感じています。
一方で、県民目線からひとつ意見させていただきますと、この2兆円・3兆円という規模は中々あまりにも大きく、イメージし難いこともあるのではないでしょうか。
人口も年々変わってきているなか、県民一人当たりの負担に置き換えるとどのように変化しているのか、わかりやすくお示しいただきたいと思います。
(資金調査担当課長)
県民一人当たりの負担がどれくらいであるのかをお示しする指標として、本県では毎年度の当初予算で、県債残高を人口で割り返した「県民一人当たりの県債残高」を公表しています。
県債残高のピークであった平成26年度は、一人当たり約40万円にまで拡大していましたが、県債管理目標を掲げ県債を適切に管理した結果、令和7年度末には、一人当たり約28万円まで減少する見込みとなっています。
(松崎委員)
県民一人当たりの負担は40万円から28万円へと、年々軽くなってきているものと理解しましたが、この額は全国的に見てどの程度のものなのか、またそれに対する県の受け止めをお聞きします。
(資金調査担当課長)
現時点で公表されている全国比較が可能な最新の数字である、令和5年度決算および人口統計を基に県独自で試算した結果、本県の「県民一人あたりの県債残高」は東京都の約26万円に次いで全国で2番目に低い約32万円となっています。
相対的ではありますが、全国的にみても県民の負担は比較的小さいものと考えています。
(松崎委員)
やはり、東京都が一番少ないのですね。税収だけではなく、県民の負担感も頭一つ抜けているといったところでしょうか。
トランプ政権の誕生によって、アメリカの関税措置への報復関税の応酬や為替の変動などに加え、海外景気の停滞、これも日本の経済状況に対しても影響が及ぶ可能性もあります。
これによって、国税、地方税ともに減少することも考えられます。臨時財政対策債が、このままゼロの状態が続くのか不透明な状況ではありますが、しっかりと県債をコントロールし、良好な状況を保持することを要望します。
次に、財政調整基金残高は、令和7年度末には、700億円となる見込みとなり、一定の水準を確保できたということでありました。何か、急激な変化があり、国の対応が遅れている場合は、財政調整基金を使って、一時的に事態を凌いでいくことも必要となるかもしれません。コロナ禍におきましても、国の準備が整うまでの間、財政調整基金を取崩し緊急的な対応を行いましたが、その時は300億円にまで残高が縮小したと記憶しています。こうしたパンデミックや首都直下型地震などの災害に備えるためには、財政運営が厳しい局面においても一定水準の財政調整基金を確保しておく必要があると考えます。
そこで、近年の財政調整基金残高はどのように推移しているのか確認します。
(資金調査担当課長)
本県の財政調整基金残高ですが、委員ご指摘のとおり、コロナ禍において一時300億円にまで縮小する時期もありましたが、その後の税収増やコロナ対策に係る国の財源措置などもあり、令和5年度以降は700億円台で推移しています。
(松崎委員)
継続的に700億円台を確保していかなければいけないということで、本県の財政基盤、これを安定させるというのが大事なのではないでしょうか。特に令和7年度当初予算では、4年ぶりに財政調整基金を取り崩して収支を均衡させたところでありまして、それでも700億円台をキープできたことは非常に心強いことではあります。
一方で、物価高騰や地球温暖化などに伴う気候変動による災害など、今後、様々な事態に対応するための金額は、大きくなっていくと思われます。これまで以上にしっかりと基金を確保する必要があるのではないかと思われますので、可能な限り財政調整基金を積み増していくよう要望します。
ところで、12月の常任委員会では、国において年収の壁の見直しが議論されていたところであり、見直しに伴う本県財政への影響について、やり取りさせていただき、国の議論を注視していくとのことでした。
その後、国における年収の壁の議論は、103万円から123万円に引き上げる法案が提出され、更なる引上げに向けて3党協議が行われましたが決裂し、与党から所得制限などを設けた160万円の修正法案が提出されたところです。
3党協議の結果、仮の話ではありますが、123万円から178万円に引き上げられていたならば、今の103万円のときと比較して、個人の手取りはどのくらい増加するものか、モデルケースで教えていただきたいと思います。一方で、県税収入はどれくらい減収になり、また、その減収分をどのように手立てしてくのかお聞きします。
(税制企画課長)
123万円から178万円への引上げについては、引上げの方法によって、影響の度合いは異なります。
仮に、基礎控除の引き上げによる場合、例えば、夫が年収600万円の給与所得者で、妻と小学生の子ども2人の4人家族のケースでは、壁が103万円の場合と比較して、所得税と住民税を合わせて年12万円ほど減税となり、その分手取りが増加します。
一方、本県の減収影響額は、123万円への引上げに伴う減収額13億円を含め、最大で650億円程度と見込まれます。与党の税制改正大綱では、今後、123万円を超える見直しが行われる場合、減収補てん措置を講ずることとされておりますが、具体的な内容までは記載されていないため、今後の国の議論を注視してまいります。
(松崎委員)
与党から提出された修正法案は、所得税における見直しであり、住民税には影響がないようですが、年収の壁が修正法案のとおり引き上げられた場合、個人の手取りは変わってくると思います。先ほどと同じモデルケースだと、手取りはどのくらい増加するのか教えてください。
(税制企画課長)
修正法案では、給与所得者で年収200万円以下の方については、所得税の基礎控除を更に37万円引き上げ、年収200万円超850万円以下の方については、所得税の基礎控除を2年限りで、年収区分に応じて3段階で上乗せすることとなりました。
この見直しが行われた場合、先ほど申し上げた年収600万円の給与所得者の場合、壁が103万円の場合と比較して、所得税のみが約2万円ほどの減税となり、その分手取り増となります。
(松崎委員)
年収の壁の引上げは、手取りが増えることで、県民の豊かさにつながるものだと思います。一方で、仮に年収の壁が、住民税で「給与所得控除の最低保障額」のみ10万円引き上げられた場合、本県税収としては約13億円の減収となるということであり、県財政にはマイナスの影響が生じるものでもあります。
同じような観点でいうと、わが党も、ガソリン税の暫定税率廃止等を行うため、令和7年度税制改正法案の修正案を国会に提出したところです。この暫定税率の廃止によりガソリン価格が下がることで、生活費も減るため、県民の負担軽減につながるものですが、県財政へのマイナス影響が生じます。
暫定税率の廃止により、県民はどれくらいプラスになるのでしょうか。一方で、本県の税収はどれだけの減収になるのでしょうか。
(税制企画課長)
現在、ガソリン価格には、揮発油税と地方揮発油税の暫定税率と、それに課される消費税・地方消費税を合わせて1リットルあたり27.6円、軽油価格につきましては、軽油引取税の暫定税率が1リットルあたり17.1円が上乗せされています。
仮にガソリン価格が27.6円引き下げられた場合、全国の1世帯あたりの年間平均ガソリン購入数量である約431リットルで計算しますと、1世帯あたり12,000円程度の支出減となります。
一方で、本県の税収については、暫定税率の廃止に伴い、軽油引取税と地方揮発油税、地方消費税で減収となり、市町村への税交付金を除いた実質ベースで110億円程度の減収が生じる見込みです。
(松崎委員)
年収の壁の引上げやガソリン税の暫定税率廃止により、個人の手取り額が増えるだけでなく経済の好循環にも影響を与えることは、大変喜ばしいことではありますが、一方で、本県財政にも多大な影響があるということです。
国の責任において、制度の見直しを行うことを決定したのであれば、見直しに伴う地方の減収に対し、国が適切に財源を補填することは当然のことと考えます。そうは言っても、その補填を交付税に含ませるなど財源確保措置がうやむやとなり、地方に負担を押し付けるようなことにならないように、きちんと財源確保措置を要望していく必要があります。
それはまさに、税財政を所管する当局の皆さんとそしてまた私どもを含めた神奈川県の仕事だと思うので、是非しっかりやっていただかなければならないと思いを新たに要望します。
一方で、先日発表された東京都の予算は、税収が5,400億円増えたことで、子育て支援の一環として、第一子の保育料無償化に279億円を計上しているほか、無痛分娩費用の助成や住宅の防犯カメラや防犯カメラ付きインターフォンなどの防犯機器購入への補助など大胆に次から次と施策を充実してきています。交付団体である本県にとっては、そこまで矢継ぎ早に施策を行うことは難しいことと思われます。このままでは、東京都との格差はますます拡大していってしまうではないかと懸念します。
そういった格差が拡大している中にあっても、低所得世帯に限らず、広く多くの県民が豊かさを実感できるよう、子育て支援や産業・経済対策など様々な差し迫った課題について、きめ細やかに対応をしていく必要があると思われます。
豊かさの実現という、今、県民が求めている切実な課題について、来年度予算では、新たにどのような施策を充実するのでしょうか。具体的に説明願います。
(財政課長)
7年度当初予算案では、子ども・子育て支援や災害対策の充実をはじめ、県民が安心して生活できるよう、様々な分野できめ細やかな支援を行うための予算を計上したところです。
例えば、私立高校等に通う生徒の授業料実質無償化の対象世帯を、年収700万円未満から、約750万円未満まで拡充するとともに、年収約910万円未満の世帯を貸付対象としている高等学校奨学金の所得制限を撤廃します。
また、住宅への太陽光発電と蓄電池を併せた導入に対する補助を新設し、太陽光は1kWあたり7万円、蓄電池は1台あたり15万円の支援を行います。
次に、雇用対策ですが、中小企業の従業員のリスキング支援として、150社を想定した予算を計上したほか、保育士の宿舎家賃に対する市町村補助について、国庫補助対象外となる採用6~10年目に対して、1人あたり月額7万4千円を上限とした支援を行います。
また、乗合バス事業者に対する、大型二種免許の取得に必要な経験年数を短縮できる特例教習の受講に必要な費用の1/4を補助する制度の創設などを行います。
さらに、災害対策では、住宅の耐震改修を進めるため、要配慮者に対する補助上限額を、現状の1戸あたり25万円から100万円に引き上げるとともに、マンションの耐震改修に対して、新たに、1棟あたり700万円を上限に補助するほか、スマートフォンなどから、県民が地震発生時に直面する場面と取るべき行動などを検索できる「私の被害想定」というツールの構築や、「かながわ防災パーソナルサポート」の機能拡充などにより、県民一人ひとりの状況に応じた支援を行います。
(松崎委員)
本県の行政サービスを向上させるためには、税収が東京都に集中しているという課題を解消する必要があります。12月の常任委員会でこの問題を取り上げた際には、全国的にも課題認識が広がっていることが確認できましたが、その後、何かの動きはありましたか。
(税制企画課長)
その後の動きとしては、令和7年度与党税制改正大綱において、「行政サービスの地域間格差が顕在化する中、拡大しつつある地方公共団体間の税収の偏在や財政力格差の状況について原因・課題の分析を進め、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築に向けて取り組む」という記載がされました。
税収偏在などの原因・課題の分析を進めるという部分が、これまでよりも踏み込んだ内容となっています。
(松崎委員)
取組を深めていただいていることは分かりますが、では具体的に、今さっきおっしゃった原因・分析のところですが、具体的にどのように原因・分析を進めていくのか、国に確認しましたか。
(税制企画課長)
大綱が閣議決定された後、総務省に確認したところ、調整中との答えでした。この件につきましては、県としても関心が高いので、引き続き、国への情報収集に努めてまいります。
(松崎委員)
この税収の偏在是正については、ちょうど一年前の2月26日に、私が一般質問で初めてこの問題を取り上げ、知事からは「偏在是正にむけた措置を講じるよう、国に要望していきたい」旨のご答弁をいただきました。これを皮切りに、昨年5月には3県知事が国に要望をし、全国知事会などの場でも議論され、ついに税制改正大綱でも、これまでより踏み込んだ表現が記載されることとなりました。
そうした中、県としては今後どのように取り組んでいくのでしょうか。
(税制企画課長)
大綱の表現上は踏み込んだ内容とはなったものの、税収偏在は依然として解消しておらず、委員ご指摘のとおり、東京都との行政サービスの格差はますます拡大している状況でございます。そのため、引き続き様々な機会を捉えて国に要望をするとともに、全国的な機運を高めていきたいと考えております。
(松崎委員)
税の偏在是正に向けて、徐々に東京都以外の団体の共感と解消に向けた動きがご答弁からも広がっていると感じております。
今後は、足元のつまり私どもが暮らしている神奈川県内においても、掘り下げていただいて、各種の業界団体であったり、各層の共感を得る努力をしていただきたいと考えますが、いかがでしょうか。
(税制企画課長)
税の偏在是正に関しては、知事から、定例記者会見など様々な場面で発言をしているほか、議会でも質疑をしていただきまして、その結果は各種マスメディアでも報道されているところでございます。
こうしたことを通じ、この問題に関しては、県民や各種団体に対して一定程度周知されていると考えております。
一方で、委員ご指摘のとおり、より多くの方のご理解を得ていくことは大変重要だと考えますので、今後とも、粘り強く行動してまいりたいと考えております。
(松崎委員)
現在、国の当初予算案に対して修正案を提案したところであり、給食費無償化や高校授業料無償化、先ほども触れましたがガソリンの暫定税率廃止などを求めているところです。給食費無償化や授業料無償化が実現した場合、国全体で行政サービスの向上が図られ、格差の解消が図られるものと期待しますが、一方で、国の施策となれば、その分東京都の財源には余裕が生まれ、さらにそれ以外の施策に予算を振り向けられることとなります。施策の内容によっては、更なるサービスの格差につながりますから、根本的には、税収の偏在是正を図らない限り、この問題は解決しないと考えているので、引き続き偏在是正に向けた取組みを進めてもらいたいと思います。
本県の財政については、毎年度の財源不足に悩まされてまいりました。来年度の予算編成においても、当局はかなり苦労されたものと思います。しかし、一方で、県の財政基盤は、着実に充実しているのではないかと思います。また、充実させていかなければならないとも思います。今後、国の税制改正や税収の動向など、海外経済の下振れリスクや人口減少など本県を取り巻く状況は、大きく変化していくものと思われます。
こうした中にあっても、しっかりと財政基盤を強化し、県民ニーズに沿った行政サービスを充実させていかなければなりません。
そこで最後に、今後、どのように、県民が「豊かさ」を実感できるようにしていくのか、財政部長の決意を伺います。
(財政部長)
令和7年度の予算案は、新かながわグランドデザインを着実に推進し、「県民目線のデジタル行政でやさしい社会の実現」、これを目指したものとなっています。
先ほど課長から答弁させていただいた通り、子ども・子育て支援ですとか、脱炭素社会の実現、また雇用対策、あるいは災害対応など県民の喫緊の課題に答える事業の充実を図ったものとなっております。
まさに、議員からご質問のあった県民の豊かさの実現ということと、県民の皆様が安心して暮らせる、やさしい社会を実現するという目標につきましては同じ方向を目指していると我々としては考えているところでございます。
現在、税収は増加基調にありますが、今後の経済動向によっては、変化していくことも当然想定されるわけでございます。そのような時にもしっかりと対応できるよう県債残高の減少ですとか、基金の積み立てなどを通じて安定的に財政基盤を維持することと、県民が豊かさを実感する施策を着実に推進していくこと、この二つを両輪として進めて行くことで、今後も、県民の期待に応えられる持続的な財政運営ができるのではないかと思っておりますので、その点を含めて努めていきたいと考えております。
(松崎委員)
県民の「豊かさ」を実現していくことが県の使命だと思います。財政部長の決意をお聞きしたところですが、今後も、さらに県民の一人一人が輝ける未来の構築に向けて新しい事業に挑戦し続けることを要望して、この質問を終わります。