立民・松崎委員
総務政策常任委員会
令和7年3月4日
松崎委員
神奈川県においても人口減少がさらに進行し、社会課題が多様化するなかで、行政と協働して、先進性や専門性、行動力を持って活動し、社会的課題を解決する担い手となるNPOの存在意義はますます高まっている。
私自身、地元横浜市金沢区で、生活上様々な障害のある方とそのご家族に対して生活支援を行う障がい者支援NPOの役員を長らく務めているが、NPO活動の重要性や、活動にかかわる関係者の方々のご努力には心から敬意を表し、また、仲間としてこれからも協働しながら支えていきたいと思っている。
NPOは、言うまでもないが、熱意をもってそれぞれの団体が活動しているが、地域課題の解決に向けた素晴らしい取組を行っているが、活動の基盤となる資金や、NPO活動の新たな担い手を確保しにくいといった課題を抱えているNPOが沢山ある。
NPOにとっては、寄附を集めることは、安定的に団体を運営し、活動を継続するためには不可欠であり、本県としても、NPOへの寄附の促進に向けて、さらに積極的に取り組んでいくべきと考えている。
そうした中で、今定例会の本会議において、我が会派の赤野議員から、ふるさと納税を活用したNPOへの寄附について質問をしたところである。
NPOが寄附をより獲得しやすくするためには、県として、ふるさと納税をより一層活用して、NPOが寄附を集めやすくなる仕組みを整備するとともに、寄附の募集を通じて、課題解決に取り組むNPOの活動内容をもっと知ってもらい、多くの方に活動を応援していただけるよう、NPOへの寄附を促進していくことが重要と考える。
そこで、何点か伺う。
まず、これまで、県ではNPOへの寄附促進策として、どのような取組を行ってきたのか、また、取組の中でどのような課題があったのか。
NPO協働推進課長
県では、寄附者への税制優遇のある認定・指定NPO法人制度に全国に先駆けて取り組み、団体への直接寄附を促進するとともに、ふるさと納税も活用して、かながわボランタリー活動推進基金21への寄附を呼びかけてきた。
しかし、認定・指定NPO法人制度による寄附は、寄附者が応援したいNPOに直接寄附できることから寄附が多く集まっているが、基金21への寄附は、寄附者が具体的な寄附先のNPOを選択できず、寄附の使い道がうまく伝わっていないことなどから、寄附が十分に集まっていないという課題がある。
松崎委員
そうした中で、来年度から開始する、ふるさと納税を活用して、支援したいNPOを選択して寄附できる制度の概要について確認する。
NPO協働推進課長
NPOの関係者からは、「ふるさと納税を活用して特定のNPOを選択して寄附できる仕組みがあると良い」という声がある一方で、「県として寄附を促進するからには、信頼性の高いNPOを対象として支援すべき」との意見があり、県としては、ふるさと納税を活用して、公益性や信頼性の高い認定・指定NPO法人の中から、団体を選択して寄附できる新たな制度を来年度から開始したいと考えている。
具体的には、寄附者が寄附したいNPOを選択して本県に寄附し、県が基金21に積み立てた上で、寄附者が選択したNPOに対し補助する仕組みとし、その際、いただいた寄附の7割を上限にNPOに補助し、残りの3割は、基金21に積み立て、NPOの先駆的な取組への支援策に活用していきたいと考えている。
なお、選択された団体に寄附を速やかに交付するため、審査会の諮問対象から除外する条例改正案を今定例会に提案しており、ご議決いただければ、この制度を4月から開始する予定。
松崎委員
NPOにおいては、例えば、生活困難者対策や地域の交流拠点づくりなど、自らの実現したいプロジェクトを掲げて寄附を集める、いわゆるクラウドファンディング型の寄附募集をしているところもあると承知している。
本会議において、知事から検討していくとの答弁があったが、そうしたNPOが掲げるクラウドファンディング型の寄附募集についても、ふるさと納税を活用できる仕組みを導入することで、どういった効果が見込めるのか、また、導入に向けてどのような課題があるのか。
NPO協働推進課長
NPOの中には、自ら具体的なプロジェクトや事業を掲げ、賛同者を募るクラウドファンディング型の寄附募集をしているところもあると承知しているが、こうした寄附募集は団体自らが行っているため、税制優遇措置の大きいふるさと納税を活用できず、また、寄附者へ御礼をする場合には、NPOが自前で用意する必要がある。
そのため、NPOが掲げるクラウドファンディング型の寄附についても、ふるさと納税を活用できる仕組みがあれば、寄附者の共感がより得やすくなり、税制優遇も大きいことから、一層の寄附の促進が期待できるものと考えている。
また、県外の寄附者に対して、神奈川の魅力をPRする体験型ツアー等の返礼品のメニューも県が用意できるため、NPOにとって負担が軽減され活用しやすくなる面もある。
一方、こうした仕組みについては、現段階ではNPOのニーズの把握ができていないことから、今後、NPOに説明や周知を行い、個々のニーズを把握した上で、プロジェクトの提案募集方法等の制度設計を行い、来年度中の導入に向けて検討していきたいと考えている。
松崎委員
NPOへの寄附を促進していくためには、新たな制度を運用していく中で、効果的な寄附募集に取り組むことが重要と考える。そこは県の認識と私の認識は一致していると考えるが、県として、どのように取り組んでいくのか。
NPO協働推進課長
より多くの方に寄附したいと思っていただくためには、様々な手法で、より広く効果的に寄附を呼びかけることや、寄附の成果を分かりやすく発信することが重要である。
そのため、新たな制度の仕組みや寄附によるメリット、いただいた寄附が実際にどのようにNPOの活動に活用されたのかなどを分かりやすく示していきたいと考えている。
具体的には、寄附者目線でわかりやすく情報を整理した寄附のページを県ホームページ上のNPOのページに新設するとともに、新たにわかりやすいチラシを作成する。
また、寄附のページには、寄附者が、支援したい団体を選択しやすくなるよう、寄附対象団体を、子ども、教育など支援分野ごとに整理した一覧を掲載するほか、寄附者からの応援メッセージや、NPOからの感謝の声なども掲載することを想定している。
さらに、XやfacebookなどのSNSを活用するとともに、県のイベントなどの機会も活用しながら、寄附の機運が高まるよう、県内外の方や企業に向けて積極的に発信していく。
松崎委員
感謝の声を県ホームページに載せるというのは前向きな取組だなと思う。県のホームページは、入ったはいいが、どこに繋がっているのか、項目数も多く、彷徨ってしまうとかなりの方からお声をいただいている。利用しやすいホームページを考えていくことを同時にやっていただければと思う。それから、現場の感謝の声は重要で、NPOがどのような活動をしているか分かっていただける。そのことにより、支援の厚みが増していく。遠くの方からの支援もありがたいが、何より私はやはり地元の方とか県民の方から、温かい気持ちを譲っていただけるのがNPOにとっても県民の方にとってもより良くなる、神奈川県全体としてWIN-WINになっていくということだと思うので、ぜひその取組をよろしくお願いする。
寄附を増やしていくためには、NPO自身も積極的に寄附を働きかけていくことも大切なことと考えるが、どのように考えているか。
NPO協働推進課長
委員のご指摘の通り、寄附を増やしていくためには、NPO自身が自らの活動をPRして多くの方に知っていただくことが重要と認識しており、ふるさと納税を活用した新たな制度の開始をきっかけに、NPOがより積極的かつ効果的に寄附募集に取り組みやすくなるよう、県としても後押ししていく必要があると考えている。
そこで、今後、NPO向けの説明会を開催し、団体を選択して寄附できる新たな制度の積極的な活用を促すとともに、NPOが自らのホームページ等で写真や動画を活用して、その活動内容や寄附の成果を、寄附者に分かりやすく伝えられるよう、積極的な発信を呼びかける。
こうしたNPOの寄附の呼びかけが、より多くの方に届きやすくなるよう、新たな制度の仕組み等を分かりやすく示したチラシのひな型を、県から団体に提供して活用してもらうほか、県の寄附のページに、NPOのホームページへのリンクを張るなど、県として、しっかりと下支えをしていきたいと考えている。
松崎委員
来年度から開始するふるさと納税を活用して支援したい団体を指定して寄附できる制度において、制度面の特徴はどういったところにあるのか。
また、それ以外にも神奈川ならではの工夫があると一層の寄附が期待できると思うが、何か考えていることはあるのか。
NPO協働推進課長
まず、制度面の特徴ですが、認定・指定NPO法人を対象とすることで、これまで本県が注力してきた「認定・指定NPO法人制度」の更なる促進につなげていく。
また、他の自治体においては、寄附の一定割合を差し引いて、返礼品等の事務費の財源に充てている自治体もあるなかで、本県は、寄附の7割をNPOに補助するが、残りの3割については、事務費等に使用せず、基金21に積み立て、先駆的なNPOの取組への支援に上乗せして活用し、県内のNPO活動全体の更なる活性化につなげたいと考えている。
次に、神奈川ならではの工夫であるが、NPO関係者から、県内のNPOの活動を知ってもらう機会があると良いといった声もあるので、NPOの意向を確認した上ではあるが、寄附者とNPOが直接つながることができるような、例えば、県内のNPO活動の現地見学ツアーを寄附者への御礼とするなど、新たな寄附促進策も検討していきたいと考えている。
松崎委員
今、話題にしているNPOは、NPO全般ではなく、ある種の優良なNPO、県の方でお墨付きを与えたいNPOが対象になっているわけですが、私が思うのは、そこまでいかないが、そこにいきたい、そういうふうに扱って欲しいと願っているNPOはまだまだ沢山あると思っている。県の仕事としてもう一つ提起しておきたいのが、一般のNPOで、意思がある、希望がある、願っているNPOの方々に対して、どうすればそういったお墨付きを得られるのか、一段ステップを踏めるのかというところについても、どう支援していくのか、ぜひ併せて考えていただきたい。それが冒頭に申し上げた、NPO先進県である本県らしい、市民社会を支えるのが、個人であり、会社、企業であり、色々なところがあるのがNPOなのだと定義してきた神奈川県らしい取組の充実に繋がると思う。
最後に、政策局長に伺いたいが、今、色々と工夫しながら取り組んでいくことはご説明いただき理解したが、ふるさと納税を活用した新たな寄附制度等により、県として、NPOへの寄附の促進に向けてどのように取り組んでいくのか、また、今、私が提起した課題認識についても触れていただきながら答弁いただきたい。
政策局長
近年、社会課題が一層複雑化、多様化してきている。その一方で、行政組織は過去から行政改革や最近では人材不足、そうしたことからスリム化してきている状況にあり、行政がすべての課題に対して対応していく、所謂、行政のフルセット主義の考え方が難しくなってきている。そうした中で、県民の多様なニーズ、社会的な課題に答えているNPOの存在はますます重要になってきていると認識している。
本県では、認定・指定NPO法人制度の普及に全国に先駆けて取り組んできたが、それ以外にも、かながわボランタリー活動推進基金21、こちらは基金に積み立てて、その運用資金をNPO支援に充てるといった取組、そして、横浜駅近くの県民センターに、NPOの活動拠点として、県民活動サポートセンターを設置したり、さらには、NPO研修施設として、かながわコミュニティ・カレッジを設置している。これらはいずれも、都道府県としては全国初の取組で、先ほど松崎委員からお話があったとおり、本県はNPO先進県としてこれまで色々とNPOの支援をしてきたと考えている。
NPOの活動が今後も持続的なものになるように、寄附を獲得しやすい環境を整えることも、本県が他県の先進モデルとなれるように、積極的に取り組まなければいけないと認識している。
そこで、まず、ふるさと納税を活用し、支援したいNPOを選択して寄附できる仕組みを4月から開始する。そして、NPOが掲げるクラウドファンディング型の寄附についても、ふるさと納税を活用できるよう、出来るだけ早急に導入したいと考えており、来年度中の導入に向けて考えていきたい。
こうした取組の充実の結果として、ピンポイントに寄附したい人は寄附したいところにダイレクトに寄附が届く仕組みが整うと思っている。
また、NPOと連携して、これまで寄附がどういった活動に繋がったのか、そういった成果を発信していきたい、その際には、現地見学ツアー等、神奈川ならではの寄附促進策も一緒に検討していきたいと思っている。
そして、先ほど松崎委員から、例えば、指定・認定NPO法人にどうアプローチしていけば良いか難しいという声も聞こえるとお話があったが、こういったNPO法人については、県として、県民活動サポートセンター等でNPOを支援しているので、そこで仕組みを説明するとか、コミュニティ・カレッジ等で情報提供していきたいと考えている。
このように、懸命に社会課題の解決に取り組んでいる本県のNPOの活動を多くの方から応援してもらえるように、寄附のさらなる促進に向けて本県としてしっかりと支援していきたい。
松崎委員
最後に要望を申し上げる。神奈川県が、NPO法人への支援の一環として、ふるさと納税を活用して、団体を指定して寄附ができる制度を新たに開始しようとしていることは理解した。また、NPOが掲げるクラウドファンディング型の寄附募集についても、ふるさと納税を活用できる仕組みを検討していくとのことである。
こうした新たな仕組みを構築し、県内のNPOを応援する環境を整備していこうとしている県の姿勢には一定の評価をしている。
私は、質疑の中で申し上げたように、そこに届こうとしているが、なかなか敷居を跨げない、もう少しワンステップ踏み込まなければいけないNPOを応援していくことも、県の重要な役割だと思っているし、NPO先進県である神奈川県の果たすべき役目だと思っている。
ふるさと納税をより一層活用した仕組みを整備することも大切であるし、課題解決に取り組む本県のNPOの活動をもっと知ってもらい、多くの方に活動を応援していただけるよう、寄附の募集に効果的に取り組むことも重要と考えている。それは結局NPOへの寄附を一層促進することによってNPO活動を盛んにする、そして、県がスリムになってきた、あるいは社会全体が縮小していくという時に、それが豊かな社会へと繋がるので、NPOが寄附をより集めやすい環境を整備し、NPOが課題解決の担い手として一層活躍できるよう、県としてしっかりと応援していくことを要望する。