平成19年1月25日 厚生常任委員会質疑のまとめ

<精神障害者福祉と精神科医療について(障害福祉課、医療課、病院事業庁)>

松崎       ●  障害者自立支援法については、議会でも様々な議論があったことを踏まえて、取組みをお願いしたい。

  私自身にも関連するところなのでお聞きするわけであるが、もちろん、身体、知的、精神と区分されていた施策を一元化していこうという法律の趣旨の大元は変わらないが、一方で、遅れていた精神障害者については、いよいよ、病院から地域へと動き出すことになる。

  私も、金沢区で精神障害者を支えるNPOの理事をしており、この間、当事者や関係者の皆さんと一緒に活動に参加してきたところであるが、来月には民設型で生活支援を行っていくという全国的にも画期的な精神障害者地域生活支援センターが開設する。これまで、精神保健福祉法に基づく社会復帰施設とされてきた精神障害者地域生活支援センターは、18年10月からは障害者自立支援法に基づく地域活動支援センターの一類型へと位置付けが変わったと聞いている。そこで、地域活動支援センターの位置付けについて説明願いたい。

障害福祉課長       ○ 障害者自立支援法は、精神障害者を含め3障害一体の福祉サービスを供給する仕組みに改めることにより、精神障害者に対する支援を抜本的に強化しようとするものである。

  この障害者自立支援法に基づく地域活動支援センターは、平成18年10月から新たに創設された制度であり、市町村地域生活支援事業として位置付けられ、市町村が実施主体となり必ず設置しなければならないとされたもので、地域作業所からの移行先としても想定されている。

  こうしたことから、従来の精神保健福祉法に基づく精神障害者地域生活支援センターは、新制度のもとで、地域活動支援センターの一つの類型となる訳であるが、市町村が地域のニーズや実態に応じて、例えば、精神障害に限らず3障害の受け入れなどが工夫されてくるものと考えている。

松崎       ● 地域生活支援センターについては、今までは、政令市については政令市が行うということになっていたが、障害者自立支援法の大きな特徴は、県の関与が新たに生まれてきているということで、両市も県との連携を深めたいと言っている。

  そこで確認であるが、地域生活支援センターを含め、横浜市、川崎市における精神障害者に係る地域活動支援センターの開設状況はどのようになっているか。

障害福祉課長       ○ これまで精神障害者地域生活支援センターは、横浜市で6か所・川崎市で1か所設置されていたが、障害者自立支援法の施行に伴い、地域生活支援センターは、平成18年10月に全て地域活動支援センターに移行した。

  横浜市においては、さらに平成18年11月に1か所開所しており、現時点では、ここで開所する金沢区のセンターを含めると8か所の設置となる。また、川崎市においては、1か所に加え、市単で行っていたものを地域活動支援センターに位置付けることで、2か所設置となっている。

  両市とも、全ての区に設置していきたいとの考えをもっている。

松崎       ● 金沢区における民設型というのは、NPOが中心になって、家族やボランティア等が民の力で運営するものであり、まさに、病院から地域へという理念を普遍化するものと考えるが、こうしたことについて障害福祉課長として、どのように考えるか。

障害福祉課長       ○ 今までの地域生活支援センターについては、NPOなどが設置したものもあるが、横浜市の場合はなかなか場所がないので、民設型という地域化の流れは、一層活発になるものと思う。

松崎       ● 根拠法が精神保健福祉法から障害者自立支援法に変わることで、地域生活支援センターの制度趣旨や事業展開は、どのように変わるのか。

障害福祉課長       ○ 根拠となる法律が変わっても、地域で生活する精神障害者を支えるという意義がなんら変わるわけではない。

  そういった意味で、地域生活支援センターと同様な事業が行われるので、スタッフやピアカウンセラーによる相談支援や、食事、入浴などの日常生活支援サービス、地域交流の場の提供、更には、関係機関との連絡調整など、これまでの役割を事業展開していただけることになっている。

  ただし、地域活動支援センターは、障害種別ごとに設置しなければならないものではなく、実施主体も市町村に一本化されたことから、地域の事情に応じて事業展開をすることとなると思う。例えば、複数の市町村による共同実施とか、3障害への対応などが行われるのではないかと考える。

松崎       ● 精神障害者の場合、通院のことはNPOの方の頭の中には常にあって、病院とのかかわりのことを考えている。その中に芹香病院もある。

  障害福祉計画では多くのページをさいて、精神障害者の地域生活移行ということが検討されているところであるが、人のことを数字で計るのには矛盾を感じるが、地域活動支援センターの目指すものは地域生活への円滑な移行であり、ともしび運動と相通じるものがある。

  数値目標という言葉は使いたくないが、そのあたりはどのようになっているか。

障害福祉課長       ○ 国では受け入れ条件が整えば退院可能な精神障害者を7万人としているが、そうした基本的な考えと県の調査に基づき、数値目標と言わせていただくが、57%程度の減をしていきたい。人の数で言うとおおよそ1,500人の減ということになる。

松崎       ● 言うのは簡単だが、様々な配慮、支援、条件整備が必要であり、差別や偏見の解消も必要になるが、一番大切な通院との関係では、どのような課題があると認識しているか。

障害福祉課長       ○ 通院の問題では、障害者本人が通院するかどうかがあり、そういう意味で地域活動支援センターの役割は重要であると考えているところで、関係機関との連携・調整などもしていただきながら、本人が通院できるように、また、薬を飲むようになど、日常的な場面でかかわっていただいている。それと、病院の費用の問題があるが、これについては、自立支援医療で対応しているところである。

松崎       ● これは医療課長にお尋ねするのだが、精神科を標榜していても精神科の医師がいる場合が非常に少なくなっていて、受診、診察を受けられることがとても限られているという話を聞いているのだが、今、神奈川県内の大学病院や総合病院などの大きな病院の精神科はどういう状況にあるのか。

医療課長               ○ 大きな病院ということではなく、神奈川県無内で精神科を標榜している病院数についてお答えすると、平成16年度では66か所という状況にある。

松崎       ● その中味までは分からないか。

医療課長               ○ 精神科を標榜しているのに、実際に精神科の医療をやっていないところがあるのではないかというお話しだが、県では毎年、医療法に基づく病院の立入検査を行い、標榜科と実際の診療については確認しており、標榜した内容と実態が事実上異なるようなことがある場合には、標榜と実際の医療内容とがなるべく合うようにと指導している。

松崎       ● 足柄上病院の精神科医の確保が難しいということだが、今どういう状況か伺いたい。

県立病院課長       ○ 足柄上病院は、総合病院ということで精神科を置いており、定数1名の配置である。昨年度末までいた職員が退職し、現在欠員となっている。そこについては、十分という訳ではないが、週1回非常勤の医師で対応している。入院患者については、神経内科の医師が対応している。

松崎       ● 芹香病院について、患者の動向はどうか伺いたい。

県立病院課長       ○ 現在、全体の傾向として、入院中心から地域中心になっている。近年3年間では、精神医療センターの入院患者は、平成15年は15万9千人、平成16年度は15万5千人、平成17年度は14万4千人と減っている。一方、外来患者は、平成15年は4万6千人、平成16年は4万8千人、平成17年度は5万人となっている。

松崎       ● 脱病院化の中で、自立を後押しするのには、病院とのかかわりはこれからもあるし、障害者自立支援法の趣旨を考えると地域の総合病院が果たす役割は増していくと思う。その中で、バックアップの中心を成すのが芹香病院であると私は思っているが、その肝心の所で精神科の医師が独立したり、他科へ移るとかして中抜けになると、一人で自分らしく暮らすことを応援する形がとれるのか心配であるが、そのあたりをどう考えるか。障害福祉計画において、どのようにしていこうとしているのか。

障害福祉課長       ○ 退院促進については、数年前から取り組んでいるが、調査を行った結果、地域で暮らすことを困難にしている課題は、一つ目として長期にわたる入院のため家族の支援が得られない、二つ目には地域に受け入れ体制が無い、三つ目には本人に退院の意欲がないことなど挙げられているところであり、障害福祉課としては、ピア・サポーターと連携して本人の退院への意欲を高めてもらう、また、地域生活のためにはグループホームやケアホーム、さらには地域活動支援センターなどを含めて、地域の受け入れ態勢を整えることがあり、その中には偏見を解消することも含まれていると考えている。

  また、病院とは別にクリニックが増えてきたので、地域で暮らす障害者にとっては、身近なところにクリニックがあるようになった。

県立病院課長       ○ 芹香病院では現在、地域医療という観点から、訪問看護の事業を行っている。件数も近年増えてきており、15年度は414件、16年度は746件、17年度は1,153件となっている。こうした、看護師が訪問するという事業を行っていることが、地域で生活されている方への大きな支援になっていると考えている。

  また、総合病院である足柄上病院については、地域の精神科病院等との連携を図っている。

松崎       ● かねて本会議で質問した、芹香病院の患者が自殺したことに関連して聞くわけであるが、他科の受診を希望する方が一方において精神科の患者でもあるときは、科を越えた連携を柔軟にとることが地域生活を支援するための重層的な支援体制の中心にあると思うが、どのように総合病院の精神科を位置付けるのか。

障害福祉課長     ○ 精神科の救急医療体制については、従来から整備してきているが、まだ十分ではなかったので、19年度には24時間体制で救急体制がとれるような動きをしようとしている。その中で精神科のほかに疾病を持つ、合併症についてもベッドの確保を図る方向である。救急の体制がなくして地域で安心して暮らすことはできないと考えている。

松崎       ● 【要望】基幹病院が5つから7つになるということだったと思うが、その時の答弁で、知事はさらにやらなければならないと言っていたが、一定の前進であると評価している。

  問題は、第一線の現場において、いかに具現化するかということであり、計画に沿って進めてくれというよりは、肌身で良くなったことを、障害のあるなしにかかわらず、県民が実感できるように取組みを進めてもらいたい。