平成21年11月20日 商工労働常任委員会質疑のまとめ
<製造業での派遣労働禁止について>
松崎 ● 経済雇用対策ということで、製造業派遣の禁止が大きなテーマとなっている。派遣労働に関する様々な課題が提起されてきた。率直にこの点について商工労働部としてはどのように受け止めておられるのか。
雇用労政課長 ○ 労働者派遣法については、現在、厚生労働省の労働政策審議会の分科会において議論されていると承知している。
製造業派遣については、使用者側からは存続を望む声、一方で禁止をして正規労働者を増やすべきとの意見の双方が出ていると承知している。研究者の中では、製造業派遣を禁止すれば、直ちに正規雇用につながるかどうかわからない、製造業派遣の禁止については、中長期的な視点からの議論が必要という、様々な視点から議論がなされており、さらにこの議論を深める必要があると考えている。
県としても、そういった国の状況をみて、十分議論を尽くした上で、労使双方のコンセンサスに基づき決められていく事項と考えている。
松崎 ● つまり、ニュートラルな立場でいるということでしょうか。
雇用労政課長 ○ 現時点においては、様々な可能性、禁止することによって生産活動が落ちる可能性、あるいは非合法、すり抜けて禁止された違法状態に入る、といったさまざまな可能性があるので、議論を尽くさないと結論は難しいのではと考えている。
松崎 ● 具体的に伺うが、働く側、働き方としてはどういう課題があるのか。
雇用労政課長 ○ 派遣労働全般ということになるが、短期的に自分の都合で働く方、短時間の就労を好まれる方もおられるので、派遣労働自体が必ずしも悪と捉えることもない。一方で、先程の貧困率との話とも重なるが、本来正規でフルタイムで働きたい方が、職がなく派遣というかたち、あるいは短時間労働、短期間労働というかたちで、低所得、不安定な職に就くというのは望ましいことではない。ご本人が希望して派遣労働、短期的な雇用に従事されているのであれば、それは一つの考え方だが、正規労働につきたくても、そういう形につけない方が増えているということであれば、そこは労働行政としてできるだけ正規化が一つの課題、目標とすべきものと考えている。
松崎 ● 課題全体に対してはニュートラルだが、働き方、働く側ということの観点からすれば正規労働が望ましいというお答えがあったが、そういうことか。
雇用労政課長 ○ 希望されていない方については別だが、希望されている方がつけないということであれば、それは何とか正規にもっていくのが望ましいし、行政としても取り組むべきということである。
松崎 ● 部長そういう考え方か。
商工労働部長 ○ この問題は視点が二つある。働く側の立場からいうと、安定して継続し長く働けることがよいが、企業を経営する側としては、生産がピークの時と生産が落ちた時にある程度調整をつけるために派遣労働を活用するという面がある。その兼ね合いをどうするのかが大きな課題である。立場によって見解が違うので、もう少し議論を尽くしていく段階にある。
松崎 ● その議論は当然、県議会、この商工労働常任委員会の場、あるいは労働側、使用者側との議論の場、知事をはじめとする県執行部の中での政策展開の議論の場、県民が参加する様々な場面がある。
一方で政治日程からすると、来年の通常国会でと噂されている。労働法規は強行法規で決まれば懲役を含めて罰則が設けられ、神奈川県が違うといってもそちらには進まない。その時に神奈川県民の意見、神奈川県としての意見というのはどのように伝え反映させるつもりなのか。国会で決まれば終わりとするのか、その前に国と地方との行政サイドの協議で提言していくつもりか。
雇用労政課長 ○ 自治体という立場で、全国知事会、八都県市首脳会議という場面がある。そういった場面で、自治体としての意見について議論することが必要だと思う。
また、こうして議会で議論させていただき、神奈川県としてのスタンスについてご示唆いただければとも思う。また、審議会の場も持っているので、有識者の皆さんともお話しする機会もある。さまざまなご意見をいただきながら議論を尽くし、まとめるべきものがあればまとめ、意見具申という機会があればしていきたい。
松崎 ● 部長、雇用労政課長からお答えがあったが、一つ目として、働き方、働く側の問題がある。二つ目は企業、産業側の問題である。景気のいいときは働き手をたくさん確保したい、厳しい状況の中では、なるべく少ない人手で取り組まざるを得ない。7~9月期GDPが延びているが、まだら模様ではあるものの、一部の産業では人手を必要とする状況が生まれている。中小企業についてみると、継続して働いていても正社員化には二の足を踏んでいる。
産業側に対しては、神奈川県として様々な権限、あるいは裁量に基づき日常的に指導している。派遣労働に関して、働き方に関しては働く人の意志があるが、神奈川県として、産業側には指導権限、裁量を持っている中で、どういう考え方に基づいて、どのように企業側に接し、求めていくつもりか。
雇用労政課長 ○ 現在行っている取組みとしては、労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法という法令で雇用関係が位置付けられているので、労働センター、県政総合センター労働課の職員が、企業に助成制度を含めて国の制度をPRしており、その中での様々な啓発資料に基づく制度の紹介や、非正規雇用をテーマとしたセミナー開催など、企業の働きかけを行っている。
松崎 ● どういうスタンスで何を具体的に行っているかが見えない。
先日も横浜市港北区の企業を訪問して話を伺う機会があった。横浜北工業会の皆さんと懇談した。その時出てきた意見は、製造業派遣の禁止が行われようとしているが、現状、中小企業、零細企業の事業者の中には派遣労働がないと企業の存続が難しい、という声が多数出された。
しかし、規模の比較的大きな企業を訪問させていただくと、逆に派遣労働については自分達も課題なしとはしてこなかった。これからはきちんとルールに則ったかたちで、しかも、なるべく正社員化に取り組みながらやっていきたい、との表明があった。
一くくりにして産業界というが、両方の意向が同じ神奈川県内にある。神奈川県としてこの問題にどのようにして臨んでいかれるのか。現場の意見を踏まえてと言われるが、それはこのようにある。何か方向性だけでもお聞かせいただければと質問している。
雇用労政課長 ○ 繰り返しになるかもしれないが、経営側の問題と労働者側の問題、二つの側面があるので、この二つがまとまれば、かなり国民的コンセンサスに近くなると思う。今いただいたご意見ではコンセンサスが取れているのではとのご指摘と思うが、国の審議会の様子では、まだまだ労使間、学識者の意見がまとまっていないとの印象を持っている。まとまってきてこういう形なら禁止してもよい、あるいは残してもよいというものが見えてくれば、正しい結論だと思うが、まだ、議論が収斂していないのではと考えている。
松崎 ● 部長に最後に訊く。このことが問題となったのは、貧困率とも関係するが、明日が見える、将来設計ができることが、労働にはあるべきだという点にあると思う。しかし、所得水準が下がる、年齢とともに派遣労働にもつけなくなるということが厳然としてあって、国民に不安が高まってきた。製造業で成り立ってきた神奈川県だが、ここをどう捉えて解決していくかは、国だけでなく、県としての考え方を検討いただいて、指し示していくチャンスが必要と思っているが、いかがか。
商工労働部長 ○ 冒頭報告したが、失業率が5%台にあり、有効求人倍率も下がっている。新聞では新卒の就職内定率が62%前後となっており、働くことに対する不安がある。学校を卒業しても職場がない、職場がなければお金が稼げない、生活ができないという状況にある。
働く場として大きな役割を果たしているのは企業、とくに中小企業での雇用だが、まだそこまで元気がない。GDPも前期比で1.2%、年率換算で4.8%の成長という報告が16日に内閣府からあったが、それが末端までいっていない状況にある。そういった中で、製造業の派遣について結論を出すのは現段階では難しく、議論をしていかなければいけない。
私が企業の方々から聞いた中では、仮に製造業の派遣が全てダメといわれたときには、海外に出て行かなければならないという声もある。一旦出たけれども、様子をみてここのところ国内への回帰現象もあり、言い方は悪いが、派遣労働を労働の調整弁として使ってここまで実績をあげてきたが、昨年のリーマンショックでいきなり派遣切りという事態が起きた。
製造業の派遣が全て禁止できるのかは、国内の経済をみながら、もう少し議論が必要である。労使双方様々な意見があるので、その議論を見守る中で、もう少し時間をいただいて検討していきたいと考えている。
松崎 ● 県としての考え方もご検討いただけるということですね。わかりました。