平成26年10月21日決算特別委員会での質疑のまとめ
水道事業の経営について
松崎: 水道事業の経営について何点か伺う。25年度決算を中心に、今後の中長期的な展望をみながら、経営全般と、特に人材育成について伺う。
決算を見ると黒字決算ではあるが、水道料金は減少している中で特別利益もあり、何とか黒字を維持できたということであると捉えている。決して楽な経営ではないということである。私は、昨年県民企業常任委員会に所属したが、企業庁としては、25年度中に新たな経営計画の策定を進め、平成26年度からはこの新しい計画に基づき運営が始められていると承知している。そこで、26年度から新たな計画が始まっているが、この決算特別委員会に提出されている先の計画に基づく25年度に終了したものについて、これまでの計画全体の達成状況について、主な事業の状況を含めて伺いたい。
山田経営課長: 平成26年度から新たな経営計画をスタートしたところだが、平成25年度の達成状況について、代表的な事業として「耐震化促進事業」などに取組むことで、「管路の耐震化率」を16.6パーセントに向上させることを目標としていたが、平成25年度に17.1パーセントということで、目標値を上回っている状況である。
また、「老朽管更新事業」を計画的かつ着実に推進し、老朽管の割合を平成27年度までに17パーセント程度に減少させることを目標としていたが、平成25年度時点で17.2パーセントまで減少している。
このように計画全体の達成状況としては、ほぼ、予定どおり達成をしている状況である。
松崎: その一方で、水道料金収入であるが、計画でも事前に想定しているはずだが、実績はどうだったのか。
山田経営課長: 旧経営計画で定めていた事業を着実に実施するために、平成18年度から平成22年度まで5年間の財政収支見通しを策定した。しかしながら、収入の大部分を占める水道料金収入が、減少の傾向にあり、計画の内容を下回る状況となった。
特に平成20年度決算においては、リーマンショックなどによる景気低迷の影響も加わり、財政収支見通しを約31億円下回った。こうしたことから、計画に掲げた目標を着実に進めるため、経済状況など経営環境の変化を反映し、平成21年度から平成22年度までの財政収支見通しを新たに見直し、平成21年度から平成23年度までの3年間の財政収支見通しを策定した。
このことによって、平成21年度決算から平成23年度決算までは、ほぼ、財政収支見通しどおりの状況となった。
なお、平成24年度以降の財政収支見通しについては、平成23年に起きた東日本大震災や福島第一原子力発電所の事故など、水道の使用をめぐる不透明な状況もあり、財政収支見通しが困難であったことから、各年度の予算編成による事業経営を行ってきた。
松崎: 予測のつかない変動要因についてはそのとおりだと思うし、そのことに対応しなければならなかったことは受け止めるが、事前に想定していた以上に料金収入が落ち込んでいるにもかかわらず、事業量は落とさずに目標を達成できたというところについて伺いたい。目標の設定そのものが甘かったのではないかと言われてもしかたがないが、いかがか。
山田経営課長: 水道料金収入の減少が想定以上であったことは確かで、こうした中で、経営計画で定めた必要な事業を着実に推進していくために、水道事業の経営改革の徹底に努める中で、様々な経営改善や経費の削減に取り組んできた。
目標自体を変更したわけではなく、経営面の努力、経費の削減ということで、企業債権の繰り上げ償還に伴う支払利息の削減、また、受水費の削減、民間活力の導入や職員の削減による人件費の削減など、計画以上の経費の削減に努めたことにより、財政収支見通しに比べ、支出を大幅に削減することができた。この結果、経営計画で定めた目標は達成できたものと考えている。
松崎: そこに触れられている一つ一つは決算特別委員会でこれまでいろんな議論をしてきた中で、やはりいろんなことを指摘してきた。また、企業庁の中でも、いろいろな発見をし努力してきた。やはり、いろいろ相まってこの結果が出たということで、私どももそこのところは日ごろから県民の皆さまの意見をよく聞いて臨ましてもらうということを歴年繰り返しているので、これからもその努力を払う必要はあると思う。
ただ、支出の削減を効率化ということでギリギリ詰めていくというやり方はそのままでいくと大枠で考えればいずれ限界が来る。したがって、そこのところをどうやっていくのかということは、一段次のステップに入る訳だから、しっかりやらなければならないと思う。その点について、どう考えているのか伺いたい。
水道料金収入の確保とか効率化というところで、様々な努力を払っていくことをしっかりお願いしたい 。
山田経営課長: 今年度から新たな経営計画がスタートしたが、水道料金収入は下げ止まらない厳しい状況にある。このような状況で、様々な経営改善、費用の削減を行いながら、経営計画の計画期間である平成30年度までは、現行の料金水準のもと、主要な事業を着実に遂行していきたいと考えている。
松崎: もう一つ伺いたい。人口減少などを踏まえると、料金収入の減少は不可避かもしれないが、それでも収入増に努力をして、しっかりと確保していかねばならない、効率的な事業運営をやらなければならないといった使命は変わらないというのは、そのとおりだと思う。
それでは25年度の黒字決算をそのまま26年度、27年度と続けていけるのかということを、少し 考えると、実は大きな変化が財務上はおきているわけである。というのは26年度の予算においては、地方公営企業会計制度の改正があり、特別損失の計上によって赤字でのスタートとなっていると思う。
常任委員会においても質問をしたが、これは見かけだけのものであって経営には影響がないという答弁があったところであるが、私はこのこと自体、捉え方として、非常に重大なことを含んでいると考える。財務状態が見かけと実態でかけ離れているという、それも黒字と赤字でかけ離れているというのは、かなりきわどいことではないかというように受け止めざるをえないのであるが、この点について企業庁としてはどのように考えているか、伺いたい。
小嶋財務課長: ご指摘のとおり、平成26年度の予算については地方公営企業法の改正による退職給付引当金の引当及び減損会計等によって約70億円の費用が増えることとなり、18億7,500万円の赤字となったところである。この費用については、現金支出を伴わないものであり、資金的に問題が発生するものではないため、経営には影響しない。
また26年度の赤字については、会計制度によって新たな利益が生み出されるという制度改正があった関係で26年度単独の赤字、27年度より後に続かない赤字となることから、収益・資金ともに27年度以降は健全であると考えている。
松崎: その答弁は昨年度もいただいたが、県民の皆様からすれば、そこが大丈夫ということがメッセージとしてしっかり伝わるということが重要なのではないか。やはり赤字なのか黒字なのかということを見てわかるものが財務諸表や決算だったりするわけで、そういったところで県民の皆様に対してどのように説明するのか、あるいは説明をされてきたのか、これから財政運営をどのようにやっていくのかというあたりも含めて、もっとはっきりと示すべきではないか。
これからもこのようなことに取り組んでいきたいと思っているが、ぜひとも県民の皆様に納得をいただいて、はじめて企業庁が成り立つというように思っているので、そこのところをご理解・納得いただくということを大切にしていただきたいと考える。
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小嶋財務課長: 県民、水道利用者の方に対する説明について、まず予算の資料については、企業庁のホームページでお伝えしている。また、5月に広報紙「さがみの水」において、会計制度が変わり、その中で26年度は赤字となるという広報をし、単年度限りの赤字であることを県民の皆様にお伝えしている。こういった広報を行うことによって、県民の理解を得るように努めてきたところである。
松崎: 次に、先ほど、自民党の委員から質問があったが、私どもも水道利用加入金については廃止も含めて検討をしていくべきであると考えてきたことであり、委員会等でも取り上げてきた経緯もある。そこで、平成18年度の料金改定の際に、水道利用加入金について、どういう見直しを行ったのか伺いたい。
常任委員会で当局からも新たな経営計画の期間中に水道料金体系を検討する中で、水道利用加入金のあり方についても検討していくと明確に答弁している。制度の見直しにしっかり取り組んでいただいて、収入確保ということも大事であるが、見えやすい、よく見える、納得がいくということがあって初めての水道事業だと思うので是非ともしっかり取り組むように強く要望する。
山田経営課長: 水道利用加入金の平成18年度における見直しは、家庭用の口径の場合、税抜き15万円であった加入金を税抜き12万円に、約20パーセント、そのほか、事業所等に設置されているより口径の大きいものについても、約30パーセント、単価を下げている。値下げの内容については、新たな水源開発という施設整備に必要ということで、従来いただいていたが、水源開発の経費のみならず、長い間維持管理をしていくための必要な費用を加入金としていただきたいということで、金額の引下げを行った。
松崎: 水道の経営を考えるとき、私としては企業庁にぜひとも考えていただきたいのが、「人材の育成」「技術の継承」ということである。そこで、まず伺うが、技術職員については、高い技術を持つベテラン職員が退職し、若い職員に対して技術が引き継がれなくなっているという傾向、これについて企業庁は、25年度技術職員の退職・採用の状況、現状の課題をどう捉えているのか、お聞かせいただきたい。
神山総務室長: 現在、企業庁には土木職、電気職を中心に、機械職、化学職を加えて約630名余りの技術職員がいる。平成25年度の技術職員の退職は14名であった。
一方、採用については、その時々の組織体制をみながら、再任用の希望なども考慮し、必要な人数を採用しており、平成25年4月の採用者は25名であった。
課題としては、現在、中堅・ベテランの職員が全体の63%であり、特に中堅職員といわれる40代の職員が43%を占めていることから、しばらくは技術職員の退職は現行ペースで推移するが、今後10年後あたりから、再び、退職者が増加し、ピーク時には30名を超える規模となってくる。まさに若い職員への「技術の継承」ということが課題であり、今のうちにできるだけの対応をしておくことが重要と認識している。
松崎: 今、答弁があったように先に見えている状況はなかなか厳しいものがあるといえる。技術職員についての育成とか技術の継承は一日とか一週間といった簡単なスパンでは無理で、やはり計画立てていろいろと取り組んでいく必要があると思う。実は横浜市水道局の取組みを紹介するが、技術継承ということを重く見て、職員を任命してかかるという取組みで、名称は「横浜市水道局マスターエンジニア制度」「ME制度」というものであり、平成22年度に創設され、実施されている。通称「ヨコスイ」、神奈川県を「ケンスイ」と呼んでいると仄聞しているが、神奈川県の水道事業においても、技術の継承をやっていただきたいということで、例えば、長年企業庁の仕事に従事し高い技術を有する職員あるいはOBの方を活用して、次世代の職員に技術を伝承、継承していく仕組みをつくるべきと考えているところである。この点を含めて、今後人材育成・技術継承に向けてどういうふうに具体的に取り組んでいくのか、お聞かせいただきたい。
神山総務室長: 企業庁ではこれまでも一般的な技術研修のほか、設計施工や漏水調査技術等の専門技術研修などを積極的に実施している。
また、全庁的な取組みではあるが、新採用職員に対して「新採用職員指導者」、メンター制度というが、指名して、職務の内外を問わず気軽に相談・助言できる環境を整えている。こうした人材育成・技術継承は大変重要であり、継続的に取り組んでいく必要があるので、本年3月に策定した企業庁の「経営方針」や「水道事業経営計画」においても、「人材育成と組織力の強化」という項目で位置づけているところである。
質問の中で、「OB職員などを活用した技術継承の仕組みをつくるべき」との提言をいただき、横浜市の事例も紹介いただいた。
県企業庁としても、OB職員等の活用も含め、今後の人材育成・技術継承に向けた新たな仕組みづくりが必要と考えており、現在局内でも内部検討しているところである。
具体的には、特徴的な工事の、例えば現場映像の保存とか、技術・経験豊富な職員を局内で登録して、技術指導などに活用する「人材バンク」の設置など、重点的な取組みとして今後検討してまいりたいと考えている。
松崎: 今、具体的な答弁をいただいたが、是非ともよろしくお願いしたい。
「経営」ということになると、どうしても「数字」が前に出てくるが、一方で、私の長くおつきあいをいただき、ご指導を受けている企業経営者の多くの方々に聞いても、やはり「人」だよと言われる方が圧倒的に多い。
ただ、実際には中谷委員から質問させていただいたが、数字ということを疎かにして成り立つわけではないので…。「人」か「数字」かということになりがちだが、「人」も「数字」もということになるのかなと考えている。ただ、「人なくして企業なし」「人なくして企業庁なし」「人なくして県庁なし」ということを私はやはり基本においてもらいと考えている。
そこで、最後に伺うが、人材育成・技術の継承をしっかりやっていただくという意味において、効率的な事業実施と、そしてまた若手職員の育成などやらなければならないことが多くある。ライフラインをしっかり維持するというところで、今後の水道事業の安定経営に向けて、どう考えておられるのか、決意を伺いたい。
北村企業庁長: 中長期の経営を見通すと、委員からお話があったが、人材育成・技術の継承が大きな課題となっている。これまでも対応をしてきたが、かつての水道施設を拡張していた時代の職員も50代となり、それらの職員と若手の職員との世代的に間が空いている現状がある。
今、話があったとおり、知識とか技術の継承も大切だが、やはり、もう一つ大事なのが「経験」をつないでいくことであり、その観点からいえば、OBの方々にご協力をいただくことは重要であると考えており、何らかの形で仕組みが作れればなと思っている。
水道利用加入金の話もいただいたが、水道料金の体系自体が、先の料金改定のときの議論の中でも検討したが、これから更新の時代にあるべき形に見直していかなければいけないと認識しており、その中での加入金のあり方をどのようにしていくのか、しっかり議論していきたいと思っている。
中長期の財政の見通しの中で、会計制度の話もいただいた。民間企業と同じ形にもっていこうということで、従って、これから水道事業の経営も一般の方にもわかりやすくなる、比較しやすくなるというように透明性が高まるということであるので、しっかりと経営分析もして、我々が水道事業体としてどのような経営状況なのか、しっかりと分析をして説明をしていくと、このような対応を考えている。
いずれにしても、新しい経営計画のもとで、財政収支を立てて計画的にこれからも取り組んでまいりたい。