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2018年12月12日

(質問要旨) 本県の基地負担の更なる軽減に向けて

(松崎)

  先月の日米合同委員会合意では、根岸住宅地区の返還に向けた協議の開始や、横須賀基地などの県内4基地における施設整備と併せ、池子住宅地区の横浜市域での家族住宅等の建設を取り止めることも承認された。

 今回の合意は、本県の基地負担の更なる軽減に向けた突破口となるものであり、是非、今後の基地の整理・縮小・返還につなげていただきたいという趣旨で質問する。

  さて、この池子住宅地区での住宅建設の計画は、平成16年に日米合同委員会で合意されたが、当初、住宅建設は着手されないまま、今日までに至ったわけである。

  平成16年の日米合意に先立ち、日米で協議が行われていた段階では、横浜市域への住宅建設戸数は、およそ800戸で高層の建物により整備されるとのことであり、多くの住民が不安と困惑を抱いた。当時、確たる情報がないことから、私は、防衛省と外務省に直接赴いて、地元の声を届けたことを鮮明に記憶してる。

  その後、地元で協議会(「金沢区米軍施設建設・返還跡地利用対策協議会」)が結成され、国の計画に対し真摯に意見を聞き、地元としての要望をまとめるなど対応されてきたと承知している。

  まず、平成16年の住宅建設の合意から、地元の協議会「金沢区米軍施設建設・返還跡地利用対策協議会」からの要望などを受け、住宅建設の計画戸数が大幅に削減されてきたと承知しているが、その変遷を伺いたい。

 (答)

  まず、建設戸数について、平成15年7月の日米合同委員会の施設調整部会で、池子住宅地区の横浜市域において、800戸程度の住宅等の建設と、横浜市内の4施設の返還について、日米間で認識が一致したことに遡ります。

  その後、横浜市が建設戸数を縮減するなどの提案を国に行ない、協議が行なわれた結果、平成16年10月の日米合同委員会で合意され、平成18年8月、国は700戸に縮減した基本配置計画案を横浜市に提示・意見照会しました。

  平成18年10月、横浜市は、地元の「金沢区米軍施設建設・返還跡地利用対策協議会」の意見を踏まえ、貴重な緑や自然環境の保全、道路交通問題に関する要請文を国に提出し、それらを最大限尊重した措置を講じるよう求めました。

  そこで国は、日米間で住宅等の具体的な建設計画の策定作業を実施し、平成23年7月、戸数を385戸に縮減した基本計画案を横浜市に提示し、合わせて意見照会しました。

  しかし、横浜市は、これに対しても、従来からの地元要望が満たされていないとし、平成23年11月、国に対して再び要請文を提出しました。

  これ以降、国は要請内容を考慮しつつ、日米間で最終的な基本計画の作成作業を実施し、平成26年4月の日米合同委員会で、385戸(3階建て)から171戸(2階建て)に変更することなどが合意されました。

   平成26年6月、国は横浜市に対して、171戸に縮減した基本計画案を提示・照会を行ないました。また国は、地元の「金沢区米軍施設建設・返還跡地利用対策協議会」に対して同案の説明を行っています。

(松崎)

  平成16年の当初の合意から14年が経過したわけであるが、なぜこのタイ ミングで建設取り止めが決定されたのか伺いたい。

 (答)

  今回の合意について、国からの説明では、平成16年の日米合同委員会から10年以上が経過し、我が国を取り巻く安全保障は一層厳しさを増し、横須賀基地における艦船の運用が増大するなど、米海軍に変化が生じていること。

  そうした状況を踏まえ、米海軍の我が国における施設の希望を満たすための調整が行われ、平成16年の日米合同委員会合意を見直す必要が生じた。

  このため、日米間で協議が行われ、今回、池子住宅地区の横浜市域における住宅建設の取り止めなどについて合意された、とのことである。

 (松崎)

  建設の取り止めが決定されたことについて、県の受け止めと、対応について伺いたい。

 (答)

  これまで、横浜市は、地元の「金沢区米軍施設建設・返還跡地利用対策協議会」の意見を踏まえ、貴重な緑や自然環境の保全、道路交通問題に関する要請文を国に提出し、それらを最大限尊重した措置を講じるよう求めていた。

  県としても、国に、こうした地元の意向について尊重することや情報提供について働きかけてきた。  こうしたことから、今回の建設取り止めの決定を期に、改めて地元への丁寧な説明を行うことを国に求めたところである。

  国においては、11月20日に開かれた、「金沢区米軍施設建設・返還跡地利用対策協議会」に出席し、改めて、合意内容について説明を行ったと承知している。

  今後も、地元に対し、丁寧な対応を行うよう求めていく。

(松崎)

  池子住宅地区の横浜市域については、住宅建設が取り止めになったことで、米軍住宅地区として提供理由はなくなったと考えます。池子住宅地区の横浜市域の返還については、昭和47年に、「池子接収地返還促進金沢区民協議会」が結成され、基地返還に向けた活動を行い、私も、県議会議員になってからは、顧問として活動してきました。私は、この土地については、早急に返還がされるべきと思いますが、県の認識はいかがでしょうか。

 (答)

  今回の合意では、池子住宅地区の横浜市域について、住宅建設の取り止めは決定されたが、返還については触れられていない。

  また、11月20日に開かれた「金沢区米軍施設建設・返還跡地利用対策協議会」でも、国からは、横浜市域の今後の使われ方や、返還の見通しは、示されなかったと承知している

  これまで、県は、横浜市をはじめ、基地に関係する9市とで構成する「神奈川県基地関係県市連絡協議会」(県市協)を通じて、遊休化した基地等については、早期返還を重点的に求めてきた。

  今後、国に対し、更なる情報提供を求めつつ、横浜市の意向を尊重しながら、返還に向けた取組について検討していく。

 (松崎)

  そういう答弁を聞くと、何か、後ろ向きの姿勢のようにも、聞こえてしまいますが。県の姿勢、そういうことでいいんですか!そこで、確認ですが、基地の返還について、日米地位協定の規定は、どうなっていましたでしょうか。

(答)

   日米地位協定第2条(3項)では、米軍が使用する施設及び区域は、必要でなくなったきには、いつでも、日本国に返還しなければならない。合衆国は、施設及び区域の必要性を前記の返還を目的にたえず検討することに同意する、と規定しております。

(松崎)

  そうですね。今回の日米合意からすると、施設整備を取りやめるとのことですので、今後は、基地の使用しつづける必要性はない。基地は返還されてしかるべきである。私はそのように思いますし、地元でも、先ほど述べた「返還促進区民協議会」を中心に、返還に向けた期待が高まっています。そういう地元の意見があるということをご認識いただいたうえで、池子住宅地区の横浜市域の返還について、再度、見解を伺います。

(答)

  もともと、横浜市域の住宅建設が持ち上がる前、池子住宅地区にの返還について、県の取組は、(当時の)横浜市、逗子市の意向をもとに、横浜市域、逗子市域を区分けせずに、基地全体の将来の返還を求めるものであった。

  その後、平成16年10月の横浜市域への住宅建設等の日米合意を受け、当面の目標として、池子住宅地区の横浜市域については、約1ヘクタールの飛び地について、周辺住民が災害時に利用できる避難場所等として利用を図ることを求めてきた。

  今回、家族住宅の建設取り止め等の日米合意を受け、今後、返還等の取組をどのように進めていくのか、早急に横浜市との協議が必要であると考えている。

  そのためにも、横浜市域の今後の動向について、国に対し早期に情報提供するよう働きかけるとともに、地元意向に沿った返還等が早期に実現するよう、取り組んでいく。

 (松崎)

  池子住宅地区では、過去にはオオタカの飛来が確認されるなど、貴重な生態系があると承知している。今後、住宅地区として提供される間、横浜市域での、この貴重な緑は、保存され続けると考えてよいのか。

 (答)

  これまでも、米軍基地内の自然環境の保護(及び文化遺産の保 全)については、特段の配慮を行うよう国に求めてきている。  住宅建設を行う計画にあった段階でも、国は、貴重な緑や自然環境保全に係る市からの要望を米側に伝えていた。

  今回、横浜市域における住宅建設は取り止めとなったことから、当該市域において、緑地は保全されるものと受け止めている。

  今後も、自然環境の保護について、国に働きかけていく。

(松崎)

  ちなみに、基地内の生態系の保護に関する米側の取組については、何か情報はありますでしょうか。

(答)

  米軍は、基地の環境管理について、日米の規制基準のうち、より厳しい基準を採用するとの考え方のもと、JEGS(日本環境管理基準)という基準を独自に定めており、自然生物の保全についても取組の対象となっています。

  特に池子住宅地区は、自然豊かなエリアであり、取組の概要について、米側の環境部の担当者から説明を受けたことがございますが、鳥類モニタリング、絶滅危惧種に指定されている植物の調査、外来種の駆除といった取り組みを行っているとのことです。

 (松崎)

  横浜市は、災害時の広域避難場所として、池子住宅地区内の一部を指定している。ただ、現地を知る一個人としての感想では、ゲートは米軍により施錠されており、いざとなった時、避難所として使用できるのか甚だ疑問を持っている。 実際に、避難所として使用することはできるのか。

 (答)

  横浜市は、平成5年4月から、池子住宅地区の横浜市域内の一部、2.1ヘクタールを、災害時の広域避難場所として指定している。

  基地であることから、ゲートの鍵は、米側が管理しているが、市(災害対策本部長)から、基地司令部(横須賀基地司令部)に使用及び援助のための連絡を行い、米軍の指示のもと、広域避難場所として使用することとなる、と伺っている。

(松崎)

   池子住宅地区の横浜市域には、横浜・横須賀道路で分断された約1haの飛び地があり、平成16年の当初の合意では、この飛び地の返還も含まれていたが、今回の新たな合意では、飛び地の返還については一切触れられていない。この飛び地の返還に向け、これまでどういった取組を行ってきているのか伺いたい。

(答)

  池子住宅地区の横浜市域の飛び地(約1.2ha)については、平成16年の日米合意で、返還方針が合意されている。

  当時の返還の考え方としては、現在の使用が終了した時点で必要性がなくなるため、返還に向けた手続きを開始する、とされていた。

  そこで、これまでも、この飛び地を周辺住民が災害時に利用できる避難場所等として利用するという市の具体的な跡地利用の構想を示し、早期返還について、「神奈川県基地関係県市連絡協議会」を通じて、国に求めてきたところである。

  今回の合意では、この飛び地について触れられていないことに関して、国から具体的な説明はなかった。

  今後も、この飛び地については、返還に向けた調整の状況について、情報提供を求めていくとともに、横浜市と連携し、早期返還の実現を国に働きかけていく。

(松崎)

  最後に、この飛び地の返還も含め、今後、どう取り組んでいくのか伺いたい。

(答)

  本県には、人口密集地域に米軍基地が所在し、周辺地域に様々な影響を与えていることから、これまでも基地の整理・縮小・返還に取り組んできました。

  取組を進めるにあたっては、国に対し、特に遊休化した基地や、周辺住民に多大な障害を与えている基地等について、重点的に返還を求めてきました。今回の米軍家族住宅の建設取り止めは、地元の負担軽減のきっかけになりうるものと認識している。

  また、池子住宅地区の横浜市域につきましては、先生からご指摘いただきました地元の協議会(池子接収地返還促進金沢区民協議会)を含め、長い取組の経緯がございます。そうした地元の思いを取組に反映させることは大変重要であると認識しています。

  一方で、先ほど日米地位協定の規定にも言及しましたが、基地の必要性については、米側が検討するということであり、基地の返還を実現するためには、米側の理解が不可欠です。また、現時点で、今後の基地の運用について、詳細が不明であるという課題もございます。

  今後、米軍家族住宅の建設取り止めが、地元の負担軽減の契機となるよう、横浜市とも連絡を密にしつつ、国や米側への働きかけを含め、取組を進めてまいります。

(松崎)

   今回の日米合意において、池子住宅地区の横浜市域での住宅建設が取り止めとなったことは、基地負担軽減の観点から、重要な決定であると受け止めている。 一方で、真の負担軽減は、地元の意向に沿った返還等の実現であり、今回の日米合意を一つの節目として、まずは飛び地の返還に向けた取組を進め、かつ、最終的には横浜市域の全体が返還されるよう、県としてしっかりと取り組んで頂くことを要望する。