神奈川県議会 平成17年9月定例会環境農政常任委員会質疑のまとめ
(1)神奈川県の不法投棄防止条例制定を委員会での質問で引き出す
松崎 私は、まず、補正予算においても掲載のあった「廃棄物の不法投棄対策」について、何点か伺っていきたいと思います。ご説明の中では補正予算に関連して、行政代執行によって不法投棄廃棄物の一部撤去と崩落防止工事を実施するということでありましたが、代執行するのは、行政法上の行政行為でありますけれど、非常に行政権限を発揮する、通常の行政の中ではうまくいかない言わば、どちらかと言えば、非常緊急の手段だと私は思う。かなり大きな、際立った補正予算の中での項目と受け止めている。
まず、この不法投棄について、なぜ、代執行を行わなくてはならなくなったのか、県としての対応を含めその経緯を伺いたい。
県側 経緯でございますが、この事案は、茅ヶ崎市内の解体業者が、平成15年2月ごろから、茅ヶ崎市北部、藤沢と寒川の境に近いところですが、芹沢地域内の自己所有地である斜面地に、自ら請け負いました建築物の解体工事により発生した大量の廃材を搬入しまして、これを積み上げたものでありますが、県としては、事案発生後、直ちに立入検査を実施するとともに、保管基準を守るよう行政指導を行ってまいりました。
また、県警とも連携をとりながら対応を進めたところであり、平成15年10月に、不法投棄により法人、代表取締役、従業員が逮捕されました。
県としては、逮捕後も、引き続き、行政指導を行ってきたものでありますが、それにもかかわらず、撤去が行われなかったことから、平成16年6月には、廃棄物処理法第19条の3に基づく改善命令を行ったところです。
このような再三の行政指導等を実施していたところですが、昨年10月頃には、積んであった産廃の一部約1,000?が崩落するという事態が発生しました。
こうした状況を鑑み、平成17年3月に、法人、取締役及び従業員4名に対し、さらに5月には、新たに判明した従業員1名に対し、廃棄物処理法第19条の5に基づく措置命令により、廃棄物の撤去を含め崩落防止に必要な措置を講ずるよう命じたところです。
現在、既に、この履行期限は到来しましたが、必要な措置は講じられていない状況にあり、早急に措置を講ずる必要があり、今回、9月補正予算案により、代執行を行うことについてお願いしているところです。
松崎 代執行というものについて、どういうものであると考えているのか。
県側 本来は、事業者自らが撤去しなければいけないものを、生活環境保全上、行政が早急に対応しなければいけない場合、行政が代わって行う強制的な執行であります。
松崎 県民の立場からすると、解体業者を追いかけていっても、原状回復が図られない、事実経過はそうですね。筋からすれば解体業者から一つ遡って解体工事を発注した者に責任を取ってもらうとか、何らかの役割を果たしてもらうとか、そういった他に責任を負っていただく、追及すべきことについてどう考えるのか。
県側 廃棄物処理法上、解体業者に法律上の排出者責任がありまして、発注した業者には法律上の排出者責任はないのですが、事実的には、発注者が請け負わせた工事によりこうした事態が発生しておりますので、こうした状況に鑑み、発注した者、8者が判明しておりますので、発注量に応じた撤去の協力を要請してきたところです。
その結果、現在、発注量に見合った合計500?ほどの自主撤去が行われているところでございます。
松崎 代執行において、具体的にどのような工事を予定されているのか。
県側 工事の概要ですが、現場について平成15年度から5回にわたって、環境調査を行いましたが、有害物質はないということで、あくまで崩落防止のために廃棄物の一部撤去を行うということでございます。
工事そのものの内容としては、廃棄物の一部を撤去する工事と崩落防止工事を併せて実施する予定です。
まず、一部撤去工事といたしまして、お認めいただければ、今年の11月から3月上旬にかけて総量約7,000m3のうち、既に崩落したり、撤去が必要な約4,900m3を、現地において掘削の上、選別し、そのうち、木くず等の可燃物約3,300m3については、搬出し茅ケ崎市の焼却施設において処分し、残りの約1,600m3については、現場の法面形成の材料といたします。
次に、崩落防止工事といたしまして、崖の下の部分に1m四方の大型土嚢を積んで下部に設置した上で、残りの土砂やがれき類により、安全な傾斜角度に形成した上で、表面を整形し覆土を行った後、種子吹き付けによる緑化を行うというものです。
一部撤去工事、崩落防止工事、施工監理等を含んで、9,188万円を見込んでいるところでございます。
松崎 代執行の経費に対しては、「産業廃棄物適正処理推進センター」の助成制度が適用されるとのことだが、念のため、この助成制度の概略と、現在までのセンターとの調整状況について伺いたい。
県側 このセンターにつきましては、廃棄物処理法第13条の13に規定されておりまして、産業廃棄物適正処理推進センターが、都道府県が代執行する場合には協力すると定められており、撤去等の実施や資金の助成、その他の協力が行われることになっております。
センターの資金の助成につきましては、センターが認める支障の除去等の措置の限度内において、代執行経費の4分の3に相当する額の助成を受けることができることとなっておりますので、今回の経費の9,188万のうち6,891万円について助成を見込んでいるところであり、県負担分は残りの2,297万円となりますが、この県負担分の中で5分の4相当分は特別交付税の措置対象となりますので、これを見込んで差し引きますと、県の実質負担は、約500万円となります。
また、センターには、今回の代執行を行うに当たっての適切な工事方法等の技術的なアドバイスをいただくとともに、本県では初めての適用となりますので、助成に当たっての手続き等について、調整を重ねてきたところでございます。
松崎 不法投棄というのは、我が県だけの問題ではなくて、かねてから、全国で、その都度大きな問題となり、また、県民の関心というのも、非常に関心が高いというか、関心を寄せている人が多くなっているのが現状だと思います。私が思いますのは、不法投棄がある、あった、そして責めを負う、責任を負っている人が、いくらお願いなりしても腰をあげない。また、逮捕される前に、会社が倒産してしまったという場合は、動きようがない、そのような現状があり、最終的には、いつも県とか、市町村がコストを払って、この場合は、センターの助成制度があるということですが、それも、めぐりめぐって考えてみれば、結局は、税金の負担の中でやっていかざるを得なくなる。というのは、県民から見れば、腑に落ちないというか、納得のいかない話であります。身近な例でいえば、住宅地の中で、放置自転車がある、放置自動車がある、放置オートバイがある。あるいは、誰の所有者か分からない物が、捨ててある場合、自治会がやるのか、県がやるのか、誰がやるのか。でも、長い間時間がかかって、結局、例えば車の場合は、黄色い札が張りつけられたままで、なおかつ放置をされていて、あるいは、ある時は、放置されていたはずの物が、突然消えたりしまう。不法投棄ということをめぐっては、なかなか今まで、どのように対処していくのか。市なら市、町なら町、村なら村、あるいは県なら県、といったところが、今いち、はっきりしない。それは恐らく、ルールというか、決めというものが、はっきりと認識されていないからではないか。また、不法投棄自体、元々、県が積極的にやらなければいけないとか、あるいは、自治会が積極的にやらなければいけない、と誰が決めた訳でなく、車の場合であれば、警察に連絡すればその車を警察が運んで行ってくれるのか、というと、それは、警察の仕事ではなかろう、という話になります。そこで、考えるわけですが、こうした不法投棄を、補正予算をわざわざ組んで、しかも9,000万円という1億円近いコストを、一時的にせよ予算を組まなければならない。こういうことを、これから不法投棄が出る度に、補正予算を組んで、年度の中の期間において、審議をして議決をして、ということを繰り返すということをするならば、これは大変な、あらゆる意味において、コストの方がやたら大きくて、効果というのは結局、原状に戻すか、それも解体業者がやらなければ、その先の誰かが一部を負担してやる。そうすると、手間のかかることになってくると思う。県としても、やはりここは不法投棄対策ということで、不法投棄防止のための条例を制定するということが、有効な手段ではないかと考えておりますし、また、6月定例会の本委員会において大村委員の方から質疑を行った際、条例の制定に向けた検討を行っていくという答弁が、既に当局からなされております。そこでお聞きしたいのですが、今回の補正予算に9,000万円、1億円近い計上がなされているわけですけれども、こうしたことも踏まえまして、今の検討状況について、まず、質問したいと思います。
県側 条例の検討につきましては、今年の8月に、法律家などの学識経験者、それから業界団体、これは、廃棄物関係団体であるとか建設関係団体、それから、消費者であるとか、廃棄物についての活動をしているNPO団体、それから市町村の代表者、8名の委員によって構成されます、有識者会議を設置しまして、8月に開催しました。その中で、条例の基本的な考え方、どこまで対象とするのかという、条例の対象の問題や、盛り込むべき内容につきまして意見交換を行ったところでございます。
今後、こういう諸課題を整理した上で、今年中には第2回目の会議を開催しまして、条例の骨子などについて検討を深めてまいりたいと考えております。
また、条例の骨子案などをもとに、議会に御報告させていただくとともに、市町村や広く県民の皆様の御意見をいただいてまいりたいと考えております。
松崎 確認なんですが、条例を制定すべく取り組んでいるということでよろしいんですか。
県側 今まで総合的な対策をとっていたのですが、新たな不法投棄防止のためのしくみづくりということで、条例を制定するという方向で検討しているところでございます。
松崎 では、お聞きしますが、もし、こうした条例を制定する場合、当然確認されていることだと思うんですが、他の都道府県の不法投棄防止条例の制定状況というのは、どうなっていますか。
県側 各都道府県の状況でございますが、全国で、千葉県、大阪府など含めまして、11府県ほど、こうした不法投棄関係の条例を制定しているところでございます。
松崎 それでは、他の都道府県が制定している不法投棄防止条例では、具体的には、自治体によっていろいろ考え方もあるんでしょうけれども、大体、こういうことが共通して骨格となっています、ということが、もし分かれば教えていただきたい。
県側 主に共通してございますのは、例えば、自社の廃棄物、これについての保管の届出制度であるとか、土地の管理者に対する適正管理についての義務化であるとか、比較的多いのは、不正行為者に対する公表の制度であるとか、それから、県外の産業廃棄物の搬入の届出制度であるとか、そのようなところが大体、多いという状況でございます。
松崎 罰則もありますか。
県側 まちまちなのですけれども、例えば、排出事業者の保管場所の許可とか、届出につきましては、罰則が定められている例が比較的多いようでございます。その他、それぞれの遵守規定の状況に応じて罰則を設けたり、罰則によらずに規制しているところでございます。
松崎 そうした共通する部分があり、それぞれが考えの中で独自に決めている部分もあるといった中で、我が県の、産業が非常に盛んである。それから解体ということに特化して集中的に審議しようと言うつもりはないのですが、例えば、建物の解体などを考えると2015年ごろには築後30年のような経年劣化が進んだような、あるいは取り壊しもあり得るかという建物が60%を超えてくるだろうと言われる首都圏、神奈川という特性も踏まえなければいけない、ということから考えると、今の段階でどういう内容が考えられるのか。
県側 今、委員からご指摘ございましたように、これから、建築の廃材が出る。今回の代執行の事案もそういう事案なのですけれども、こういうことに鑑み、自社の廃棄物、この保管制度を作る。それから、土地の所有者について適正管理について義務付ける方向。その他神奈川県の特色としては、先ほど申しました、NPO等の活動もなかなか盛んですので、県民とかNPOを巻き込みながらそういう制度が作れるのか。等々について幅広く、いろいろなご意見を頂きながら、検討していきたいということでございます。
松崎 今の段階で、これはどうしようかというような、悩んでいるとか、あるいは、前向きに深く検討しているというものがあったら教えていただきたい。
県側 一つ、法律的な問題として挙げられてますのは、生活環境保全条例というのがございますので、それとの関係であるとか。それから、先ほど委員からお話頂きましたけれども、廃棄物の場合、一般廃棄物は市町村で、産業廃棄物については、事業者が責任を持ってやると決まっておりますが、そういう中で、条例を定めた場合の市町村との、特に、保健所設置市、これは、産業廃棄物も所管しておりますので、こういう市の関係であるとか、こういった団体との関係等々をこれから整理していかなければならないという風に思います。
松崎 条例の制定は、言わずもがなですが最終目的ではないわけであります。問題は、今回のような、補正予算が組まれていて、その金額のボリュームの大きさに、誰しも、ちょっと待てよと、このままでいいのかなと思わせるような事案が今後起きないようにするということが到達目標なのかなと私は思います。そういうことから考えると条例を制定して、そのことによって、県民の皆様に、さらなる意識、関心等を高めていただくことも重要でありましょうし、なにしろ不法投棄をするような業者、決め付けた言い方をするのもなんなんですが、不法投棄をするような者、あるいは会社、個人が出ないようにするということだと思うんです。そういった、観点に立ちますと、この不法投棄の事案というものを、防止する観点から、条例ではどういう規定が考えられるんでしょうか。
県側 一つは、廃棄物処理法の中で対処できないような今の、自分の廃棄物についての保管であるとか、そういう、法の隙間といっては何ですが、空いている部分について、どうするのかという具体的な措置を取りまして、それに対する取締りをする、ということが一つあります。それから、もう一つは、県民とかNPOが活動されていますので、そういうことを巻き込みながら、責務というほどではないんですが、認識をもって頂きながら、ともに不法投棄防止を進めていくということもあるかと思います。業者に対しても、そういう観点ではそういうことに取組みながら、事業者の責任を考慮の中に入れながら、県全体、県民、事業者全体の中で不法投棄防止について向かって行く。そういう形のものをどう取り組んでいったらよいか考えています。
松崎 あとは、具体的に罰則ですね、これを実施する場合、当然検察庁と協議をしたり、いろいろな他の関係機関との調整、警察もそうだと思うんですが、そういう協議もあり得ると考えていますか。
県側 今、言われたような検察等と調整しながら、検討してまいりたいと考えております。
松崎 その点について、最後に聞きますが、森田担当部長にお聞きしたいと思うんですけれども、条例制定に向けた、ご決意の程をですね、お聞かせをいただければと思いますが。
県側 松崎委員の方からも先ほどお話があった、不法投棄防止につきましては、私ども、この条例制定だけで対応できるとは考えておりません。もともと不法投棄は、態様も非常に様々で、その原因についても、様々であります。どういう形で、不法投棄に至るのか、これは、案件にもよりますけれども、物流そのものの根本に立ち返り、廃棄物の発生抑制、再使用、再生利用、適正処理、こういうシステムが構築されてくることが非常に大きいのではないかというのは、常々、新たに認識しております。この不法投棄防止条例につきましては、基本的には不法投棄されるものというのは、非常に広範囲でして、ある意味では市場を背景にしながら、不法投棄されるというものでございます。基本的には、私ども本来は、国が法律で必要なものについては対応するべきものと考えて、条例について検討というよりも、国に対して、我々が直面しているところから提言するべき中身、こういうものを実質提言しまして、そういうものの対応を法によってやって欲しいということを求めていくものです。従いまして、課長から説明させていただいております、不法投棄防止条例と申しましても、基本的には、法を補完するもの以上ではない。したがいまして、私共のスタンスとしては、法をもってできるだけ対応して欲しい、ということを今までと同じ様に国には申し上げていく。とは申しましても、地方は現実にこういう状況に直面しているわけです。地方から条例化をすることによって国を動かす、というのも一つの考え方としてあるのではないか。もう一つは、全国的な広がりが多いとは申しておりますが、やはり、地域地域、状況に応じまして、不法投棄の対応が違います。そういうものに対応していく部分もあるのではないか。そのようなところから、不法投棄防止条例というものについて、検討してみようということで、有識者の会議も発足させていただいた。ただ、先ほど来、課長から申し上げておりました、国との関係、県との関係、県内市町村の関係が非常に複雑であります。廃棄物についての権限も多岐にわたっております。政令市あり、保健所設置市あり、それから市町村がある。廃棄物というのは、一般廃棄物と産業廃棄物がある。不法に捨てられているので原因者がなかなか特定しきれない。そういう状況もあるという中で、検討を進めてまいりたい。また、先ほど来、お答えした中で、一つだけ申し上げたいのは、今回補正予算の意味でございます。廃棄物の不法投棄の対応の中で、大規模に至るものというのは、どちらかといえば、法の網をくぐるような形で、処理業者ではなく、今回の場合、解体業者でございますが、自社廃棄物ということで法をくぐるような形で大量化してくる。ですから、原因者がきちっとつきとめやすい。こういうものについては原因者に求めて、それから、原因者が実施できないという時に、それに代わってやるということですので、これは今回のように補正予算なり何なりという事で対応せざるを得ない。ただ、こういうものでない、一般的な不法投棄、小規模な偽装化されていないものについては、そんなに大規模なものはございません。そういうものについては、産業廃棄物協会等の協力を得まして、私どもも、弾力的に対応できるというような体制を整えさせていただいている。ですから、対応によって、また、こういう案件があり得る、望ましくないとしても、出た場合は、またお願いするというようなことが、あるかと考えております。いずれにしましても、不法投棄の撲滅に向けまして、一生懸命取組みたい、と考えております。
松崎 分かりました。是非とも、条例制定に向けて、これから作業を詰めて行かれると思うのですけれども、それと並行して、やはり、県民の皆様、あるいは団体、あるいは個人の不法投棄ということが未然に防止されるという環境の下に、これを併せて進めていかれることをお願いします。