厚生常任委員会県外調査報告書 調査日 平成18年9月4日(月)~6日(水)
長崎県離島医療圏組合対馬いづはら病院
1 目的
当病院は、昭和43年に長崎県離島医療圏組合が設立されると同時に開設され、長崎県医学修学生や自治医科大学から医師が派遣されることで、病院規模を拡大させ、現在は対馬の基幹病院として専門医療や救急医療の提供を行っている市内最大の医療機関である。また、保健と福祉を連携させ、地域に根ざした包括医療を提供するとともに、画像転送のネットワークシステムが本土の長崎医療センター等と結ばれており、遠隔による専門医の診断が受けられることによる救急医療体制も整えている。
そこで、離島における医療体制や医師確保の状況等を調査することにより、本県における医療施設の管理及び運営についての検討に資する。
2 病院概要
所在地 長崎県対馬市厳原町東里303-1
病床 病床 199床(一般154床、精神45床)
標榜診療科 16科
職員数 268名(医師22名、看護師等126名、その他医療職27名)
敷地面積 19,867㎡
延床面積 14,076㎡
沿 革
昭和43年4月 長崎県離島医療圏組合設立。同組合「厳原病院」として発足(55床)
昭和47年9月 「伝染病棟」併設
昭和55年2月 救急告示病院指定
昭和56年10月 「人工透析室」増築
昭和63年3月 病院新築完成「対馬いづはら病院」と名称変更(一般150床、精神50床)
平成3年6月 老人性痴呆疾患センター指定
平成9年7月 遠隔医療画像伝送システム稼動
平成11年5月 長崎県マルチメディア医療モデル展開事業開始
平成13年3月 訪問看護ステーション科増改築
(参考)
平成18年4月現在 人口38,991人
5歳未満4.6% 10歳未満9.6% 15歳未満14.5% 20歳未満19.3% 65歳以上26.5% 70歳以上19.7%
対馬市の島内には、長崎県離島医療圏組合立の病院が3病院、開業医が5診療所、市立民営診療所が5診療所、他は医師が常駐しない出張診療所がある。医師は、長崎医療センター、長崎大学医学部附属病院、佐賀医科大学附属病院から派遣されている。組合立の3病院についての必要医師数44名に対して、現在41.5名の医師が勤務している。対馬いづはら病院は、対馬の二次医療圏拠点病院や災害拠点病院として位置付けられているとともに、長崎医療センター等離島医療親元病院と連携し、医師の派遣を要請し、また、島内の出張診療所に医師等を派遣している拠点病院である。
3 救急医療の概要
島内の救急搬送について、島の3分の1の地域が、救急車が現場到着するまで10分以上かかり、病院搬送に1時間以上かかる地域もかなりある。対馬における心肺停止搬送状態は約5%であり、長崎市に比べ約2倍である。
三次医療にはヘリコプター搬送が行われており、昭和40年から積算し合計1,040件の搬送がなされ、平成16年では年間44件の搬送が行われた。ヘリコプター搬送は、災害救助法に基づき、海上自衛隊のヘリが利用される。この際、ヘリコプター搬送すべきかの決定について、遠隔医療画像伝送システムを用いて、長崎医療センター等に画像を送り専門医の判断を仰ぐことがある。
4 質疑応答
質疑 ● 院長はこれまで。白血病の研究に取り組んでこられたようだが、今までの成果は。
回答
○ 国の「がん10か年戦略」のひとつとして取り組み、研究成果は厚生労働省に報告した。最近、個人情報の関係で研究が難しくなり、今後はできないであろう。
質疑 ● 総合診療に対応できる医師が島内にいると思うが、家庭医をバックアップするという病院の役割についてどのように考えるか。
回答 ○ 自治医科大学卒業生が離島に派遣されるが、重点は内科、小児科、整形外科ができることを目指している。当病院でも内科と外科をあわせて総合診療ができるようにしている。家庭医制度は都会ではいいかもしれないが、田舎では採算が取れないので、対馬での難しいであろう。
質疑 ● 高齢化率が非常に高いが、リハビリ日数の上限設定についてどう考えるか。
回答 ○ 痛手は大きいと感じる。その上限日数に達してしまい、外出を控える人など影響がでている。
質疑 ● ヘリコプターは天候に左右されて大変ではないか。
回答 ○ ヘリコプター搬送の要請があると、もちろん天候を調べて飛べるかどうかの判断をする。そこで、飛べない場合には翌日になることもあり、運用は難しい。
3 調査結果
対馬いづはら病院は、離島での拠点病院として、約4万人の島民の医療に貢献している。離島における医療体制や医師確保の状況等を調査することにより、本県における医療施設の管理及び運営についての検討に資することができた。