平成18年12月14日 県議会定例会 厚生常任委員会質疑のまとめ

<次世代育成支援対策推進のための条例(仮称)について(子ども家庭課)>

松崎       ●  条例の素案では高らかに目的が宣言されているが、いじめや児童虐待が深刻化している。こうした深刻な事態について、どこまでとらえ、どこまで踏み込もうとしているのかについての基本的な考えを、条例の中のどこから読み込めばよいのか。

次世代育成担当課長           ○  いじめや児童虐待は、児童の人権侵害としてとらえている。子どもを狙った卑劣な犯罪、体罰、いじめなど外から加えられる人権侵害もあるが、児童虐待は、本来監護すべき保護者から行われる人権侵害の中でも非常に悲しい深刻な課題だと捉えている。

 児童虐待の問題の基本的なルールについては、児童虐待の件数が増え、死亡事件も起きた平成12年に、議員立法により児童虐待防止法が成立し、警察と児童相談所の役割分担、実際に親と子の間を断ち切る措置も含めて、いろいろな規定が細かく規定されている。

 県の条例では、自治体として法律に抵触しないよう法律に盛り込まれていないものを中心に規定するもので、今回次世代の条例を作るにあたり、本格的に人権侵害を真正面にとらえ規定しているが、素案では「児童虐待」ということば自体は使っていない。

松崎       ● ことばを使っているかどうかを聞きたいのではない。質問の趣旨は繰り返さないが、子どもの虐待の実態がどこまで深刻化しているのかをとらえなければいけないということが私が抱いていることである。

子どもの関係では教育ビジョンとの関係はどうなっているのか。

それから、論議があるが、子どもを養育しない方が施設などに子どもを託す赤ちゃんポストをご存知だと思うが、これについてどう考えているのか。

また、こうした最近の課題についてどのように受けとめているのか。

次世代育成担当課長           ○ ご質問は3点かと思う。

 ひとつ目は、答え方が悪かったかと思うが、今の状況の厳しさの認識ということだが、親と子をめぐる社会環境が昔と全く異なっており、親自身が少子化の中で育ち、子どもの扱い方を知らないということがある。就業環境も厳しくなって、共稼ぎで子どもとのふれ合いがない。父親の長時間残業で母親が孤立して児童虐待に至ってしまうとか、まず親をケアしていかなければならず、家庭をどう支えていくかが一つのポイントになる。また、そういう家庭を支える地域の力も落ちている。親を支え、家庭生活の環境を整備し、地域を再構築することが、虐待とかいじめとか子どもを狙った犯罪を含めての課題だと受けとめている。素案はそういう視点で作ったつもりである。

 2点目として、教育ビジョンとの関係だが、素案では、子どもを支える、子育てを支える、家庭を支えるという視点で組み立てられている。一方、教育委員会で進めている教育ビジョンでは、中長期的な視点で、人づくりのために施策の方向をどうするかについて、議論を重ねて作ろうとしているものである。

 次世代の人をどう育てていくかについては表裏一体だが、私どもの子ども・子育て支援では、どうやって育ちを支えていくかが中心のテーマとなっている。

 最後に、赤ちゃんポストの受けとめ方だが、当課の中でもいろんな議論があり、人によっても様々であるので、県としてどうかということは定まっていないが、次世代育成担当課長の立場でいえば、捨てる人がいて拾って育てる人もいるということは、悪気があってやっているのではないが状況としては決して望ましい状況ではないのかなと、個人的な感想だがそのように受けとめている。

松崎       ● 私が聞きたいのは担当課長の受けとめではなくて、この素案の中にどういう受けとめで入っているかということである。

推進体制の整備等のところに、かながわ子ども・子育て支援月間とあるが、行政が何か取り組むときにかならず何とか月間とかがあるが、また一つ月間が増えるのかなという気がする。横浜駅西口でティッシュを配ったりそういうことをまたやるのかと正直思う。それだったら、具体的な親、子、地域というものを念頭におくなら、また赤ちゃんポストの現状を考えると、月間よりも24時間相談を拡充した方が現実的で具体的だと思う。児童虐待の状況を考えると、正月、夏休み土曜日曜もない。リアルな現実と向き合っているなら推進体制の中で示すべきだと思う。

次世代育成担当課長           ○ 赤ちゃんポストについては失礼した。この素案の中では、子どもの人権侵害に対する措置として、予防と、もしあった場合に必要な措置を講ずるとしており、児童相談所が必要な措置をとることになる。それは位置付けがある。

また、月間の話があったが、普及啓発は重ねても重ねても足りないのかなと。基本的考え方のパブリックコメントで説明会を3回行ったが、まだまだ足りないじゃないかと怒られたことがある。そういう意味では、毎年の繰り返しになるが、普及啓発を進めて行きたいと考えている。よろしくお願いする。

はかりや委員       ● 児童虐待は非常に大きな関心事であり、この条例の中にどのように盛り込んでいくかということについて、虐待ということばを使わずに人権侵害ということで大きく受けとめて書いているということであるが、時代の空気というか、そうしたものがしっかり盛り込まれた、また、本県として虐待についてどれほど重く受けとめているかということを条例に盛り込むことは非常に重要な意義があると感じるが、あえて虐待という文字を入れなかった考えはどういうところにあるのか伺いたい。

次世代育成担当課長           ○ 最初の答弁と重複して恐縮だが、児童虐待については、児童虐待防止法で相当緻密な規定がある。三重県では児童虐待防止そのものをテーマにした条例をつくっており、児童虐待防止法の施行のための条例で、より細かくルールとして定めたという条例である。他県の次世代育成の条例を見ても、どうやって育ち・育ての支援を中心に、ある意味暗い面の虐待とかいじめとかについては、背景、課題認識として持っていても、それを前面に出しては書いてなく、むしろ明るい、子どもが安心して育つ、安心して育てられるという書き方をしている。

 本県の条例で、県民の皆さんの意見を聞いても、あまり子育てが大変だとか、大勢のお年寄りを若い人が支えなければならないなどと言われると萎縮してしまうので、虐待とかいじめだとか暗い面を強調するよりもむしろどうやって支えていくかを主眼に条例づくりを進めてもらいたい、という意見が多かったように思うので、今の段階では、子どもの人権侵害に含ませていただきたいと考えている。

はかりや委員       【要望】

○ 法に定められているということであるが、非常に重要な課題であり大きな影を落とすのが児童虐待であることを考えると、人権侵害に含めるということも分からないではないが、やはり大きな課題として捉えているということを、条例の中に一言虐待を含めることで、より課題が明らかになるという印象を持っているので検討していただきたい。

 また、この条例は県のプランを大きく前進させるために条例化するという意義の大きな条例だと認識しているし期待もしているので、ぜひ検討していただければということを要望として申し上げる。

松崎       【要望】

● 暗い面を強調してほしいと要望しているのではないので受けとめを変えていただきたい。県内の子どもたちの置かれている状況を受けとめる必要がある。それを受けとめようとすればそこに見えてくるものもある。それを明るいトーンで書きたいからということで、このことばは使わないという取捨選択をしないでほしい。置かれた厳しい現状を厳しいなら厳しいと受けとめて、よりよい子ども・子育て支援に取り組める条例にしていかなければいけない。