平成21年3月17日 商工労働常任委員会質疑のまとめ

<商店街振興施策について>

松崎       ● 私の地元でも、まちづくりの一環として駅前の整備が進んでも、そこに隣接する商店街は、商店主の高齢化や後継者不足等でなかなか大変な状況に置かれている。しかしその一方では、頑張っている商店街の方々もたくさんいることを、私も承知している。

 昨年4月に施行された「神奈川県商店街活性化条例」では、「県の責務」ということがうたわれているが、この点をどのように受け止めて施策の体系化を諮っているのか、まず確認をしておきたい。

答弁要旨               ○ 条例の規定にもあるように、県の責務として、市町村と連携して、地域の実情に応じた支援をしていく。これは大変重要な県の役割であろうと考えている。こうした考え方に基づき、平成21年度の施策の策定に当たっては、県内商店街を取り巻く様々な課題や広域自治体としての県の役割を踏まえて、商店街振興施策を4つの柱に整理して推進することとした。一点目は、商店街の総合対策推進である。商店街団体等が市町村の総合ビジョンに沿って行うまちづくりと連携した取組に対して重点的・継続的に支援するとともに、個別の商店街による賑わいづくりの取組についても既存の施設整備等の支援メニューを活用して支援していくことにより、成功事例の創出と併せて全面的な底上げを行うという、両面から商店街の総合対策を進めていく。またこうした取組を進めていくに当たっては、商店街だけではなく、地域の様々な主体、例えば大学、高校、NPO、こうした方々と連携することが大変効果的であることから、そうした連携に対し、県がコーディネーターとしての役割を果たしていく。三点目に、商店街活動のためには人材が不可欠である。高齢化や後継者不足のため商店街活動の担い手が不足しているが、若い方々の活動が県内各地で芽生えており、そうした商店街組織の枠を超えて地域で活動しているような若い商業者を支援するという考え方に基づき「若手商業者連携促進事業」をスタートさせることとした。四点目は、個店の魅力創出である。商店街を活性化するためには、やはり消費の場としての、あるいは物品を提供する場としての機能が不可欠であり、商店街に一つでも多く、魅力的な店舗を創出するため、様々な時代の変化やニーズに対応して経営革新を図ろうとする事業者に対して新たに「地域共生型モデル商店支援事業」をスタートさせる。以上のように4つの柱で、市町村ともしっかり連携しながら、今後、商店街の振興に取り組んでいきたいと考えている。

松崎       ● いま、県はコーディネーター役である、とのご説明があったが、その点について、もう少し具体的に説明してほしい。

答弁要旨               ○ 具体例で申し上げると、先ほども触れた「商店街・大学・地域団体パートナーシップ促進事業」の中で、大学と連携をしたいという商店街に対し、県が間に入り、どういった大学のどういったところと連携するのかということを、商店街とマッチングをして、両者のニーズのすり合わせを行い、「一緒にやっていこう」ということになれば、さらに専門家を派遣してそうした活動が軌道に乗るように支援をしていく。こういった形で現在取り組んでいるところである。商店街の目的は「商業」であるが、大学やNPOなど地域の主体にはそれぞれの目的があり、そういった面のすり合わせには大変難しい部分がある。この点については県がしっかりご相談に乗り、連携したまちづくりの活動がスムーズにいくように取り組んでいきたいと考えている。

松崎      

● いま、大学というお話もあったが、横須賀市内の商店街で引きこもりの青少年の就労のための活動をしているNPOの活動支援を、特に商工労働部で力を入れて行ってきていると承知しているが、どのようなきっかけから始まったのかというあたりを聞かせてほしい。

答弁要旨               ○ 横須賀のアンガージュマンを支援しており、そのことと思うが、この取組は数年前に始まっており、そもそものきっかけについては私も詳しくは承知していないが、NPOの方々が商店街の空き店舗の活用に着目し、商店街の方々も運用面でも協力し、行政それも商工労働部だけではなく、県民部あるいは保健福祉部とも連携しながら様々な形でサポートしてきている。

松崎       ● この事業には産業活性課も係わっていたと思うが。

答弁要旨              

○ 産業活性課では、ビジネス支援というか、創業支援というか、そうした観点から係わってきており、商店街の活性化とともに、子どもたちへの支援ということでもあるが、それとともに増えている商店街の空き店舗を活用して書店を経営していただくことで、商店街の活性化にも資するだろうと、こういう考え方で関わっている。

松崎      

● 大学との連携ということで伺いたい。県内における商店街と大学との連携というのは、今どのような状況にあるのか。

答弁要旨               ○ 県内ではいろいろな取組が行われている。全部で何件あるかは把握していないが、主要な事例で申し上げると、関東学院大学が横須賀市の追浜商盛会と、やはり空き店舗を活用してコミュニティスペースを運営している。ここでは大学の提案により、地元で採れる海洋深層水を使用してワインを開発、生産してその場で販売している。また、そのコミュニティスペースにおいて同大学によるまちづくり研究室などの様々な活動が行われているなど、地域住民と連携してまちづくりの活動が行われている。また同じく、横浜市の保土ヶ谷区で、和田町商店街と横浜国立大学が連携し、大学だけではなく町内会やNPO等も加わって協議会を構成し、その協議会を母体として様々な取組を進めている、例えば、市民も出店できるフリーマーケットの開催や、面白いところでは商店街と大学が協力してオリジナル弁当「和田べん」をつくりそれを学内で販売するなどの事例もある。その他にも、川崎市の西生田商盛会と日本女子大学が商品開発を行っている。また、川崎市多摩区の長沢商店会では専修大学と連携してコミュニティスペースを活用したいろいろなイベントを企画・実施している。最近ではこうした動きが県内各地で活発になっていると認識している。

松崎       ● 平成20年度、21年度と重要な時期であると思うが、どういう事業を行い、また、行っていこうとしているのか。

答弁要旨               ○ この大学との連携事業は20年度にスタートした事業であるが、それ以前にも同じような事業を実施し、それを母体として20年度から「商店街・大学・地域団体パートナーシップ促進事業」として実施している。20年度は、横浜市の洪福寺松原商店街と横浜国立大学との連携及び相模原中央商店街と相模女子大学との連携を支援している。これらの取組が来年度も継続するように、県としても引き続きコーディネーターや専門家の派遣といった形で支援していきたい。また、今申し上げたのは大学の事例であるが、商店街の連携先のニーズとしては大学だけではなくNPOもあるし、自治会あるいは小学校という例もある。商店街のそうしたニーズを受け止め、来年度以降、大学以外にも範囲を広げて支援していきたい。先ほども申し上げたように、両者の目的がなかなかすり合わないという点も踏まえて、今後効果的な連携が進むよう支援していきたい。

松崎       ● 今お話しのあったような課題をどう乗り越えていくのか、また、コーディネートの仕方が、熱すぎてもいけない、冷たすぎてもいけないという微妙な部分というのは、その人の腕にかかっていると思う。そうしたことをきっちり踏まえてやっていける人材を育てるということも大切ではないかと思う。最初は県の職員がコーディネートを行うとしても、そのこと自体も担っていただけるNPOなどの民間の方々が次々出てくるような環境を整えていく必要もあるのではないかと思う。半ば提案めいているが、その点についてどのように考えているか。

答弁要旨               ○ 大学やNPOと商店街が連携していくことのもう一つの難しさというのが、今委員からご指摘いただいた、そうした活動をうまくコーディネートして育てていけるような的確なアドバイザーが、新しい分野であることから、まだあまりいない。今後、的確なアドバイスのできる専門的な人材を、今後こうした実践の中で育てていくことが成功のキーポイントになるものと考えている。そのためにも活動が継続することが必要であり、NPO等の組織づくりはもちろん地元でやっていただく必要があるが、県としてはその活動が継続するように、この事業により連携が生まれた後は、「商店街競争力強化支援事業」という商店街が取り組む社会的なニーズに応じた取組を支援するソフト支援や、空き店舗活用の支援制度、さらにはアドバイザー派遣制度など、他の施策も有効に活用しながら、できるだけ活動が定着し、継続していくようにフォローしていきたいと考えている。

松崎       ● 商店主の高齢化や後継者不足という側面が強くある一方、何より賑わいを取り戻したいという強い熱意も商店街にはある。ただ、そのための人材が不足しているということも事実である。さらに、そのコーディネート役となると「新しい分野であるから」ということもある。そうした中で、新たな発想が必要とされている。そのためにもいま進めている取組をさらに充実させていただきたいと思う。ご労苦を多としたいが、一方では、民間の方に渡していく、そして民の力でかながわの商店街が活性化していくという姿に向けて、強力なスターターとしての県がエンジンをかけているところだと思うので、この厳しい経済情勢の中ではあるが、新たな幹となり森となるような商店街の賑わいを取り戻していくため、これからも一所懸命やっていただきたいし、応援もさせていただきたいと思っている。