平成21年12月14日 商工労働常任委員会質疑のまとめ

<製造業派遣の禁止について>

菅原委員               ● 派遣労働者の雇止めについてお伺いする。まず、派遣労働者の定義をお願いする。

雇用労政課長       ○ 派遣労働は、派遣元が派遣先と派遣契約を結んで労働者を派遣し、その場合に、派遣元が労働者と雇用関係を持ち、労働者に対して派遣先が指揮命令を行う。

 請負契約の場合、注文主が請負業者と請負契約を結んで、請負業者が雇用関係のある労働者に指揮命令しながら業務を行うことになるが、派遣労働者の場合は、派遣先との関係で指揮命令関係が生じる点が請負と異なる。

松崎委員               ● 先月20日の商工労働常任委員会の場で、製造業派遣の禁止についてお尋ねした関係で何点かお伺いする。

 今、国の労働政策審議会で、今後の労働者派遣制度のあり方について検討が行われている。製造業派遣の禁止については様々な意見が出ていると聞いている。大変景気が悪くなっている状況の中で、製造業において解雇、雇止めなどのいわゆる「派遣切り」が多く行われたことを踏まえる一方で、企業における人材の確保にも配慮しながら、制度設計を行うことが大切だという意見もある。

 11月20日に質疑を行った時には、当局から審議の状況を注視し、県としての考え方をまとめていくことを表明されているので、その後の経過を踏まえて改めて何点かお伺いする。

 前回質問をして以降、国の労働政策審議会で製造業派遣の禁止については、どのような検討がなされているのか、また、その中でどのような意見が出されているのか、把握していることころを聞きたい。

雇用労政課長       ○ 厚生労働省の労働政策審議会職業安定分科会の労働力需給制度部会において、現在、労働者派遣制度の在り方について審議が行われており、本年10月7日の諮問以来、部会が5回ほど開催されている。

 去る11月26日に開催された第5回の部会で論点案が出されており、これまで出された意見の集約になるが、製造業派遣の禁止の是非については、賛成の立場から、雇用の不安定さや派遣切りが起こったことなど問題なので禁止すべき、ものづくりの現場力が落ちたため禁止すべき、高度熟練技術の継承の一助となるもの以外は禁止すべき、という意見がある一方で、

 禁止に反対の立場からは、派遣を望む人のニーズに対応できなくなる、直接雇用に移行せず失業者の増大につながる、中小企業が人材を確保できなくなる、禁止されると海外に生産拠点を移す動きにつながることが懸念される、という意見が出されていると承知しております。

松崎委員               ● そういう意見が出されていることはわかった。県内について議論をしていかなければならないと申し上げ、当局からもそのとおりだというお答えだったが、その議論の前提としてまず確認させていただくが、県内の派遣労働者の人数は現況どのようになっているか、推移も含めてお尋ねする。

雇用労政課長       ○ 全国の数字から申し上げると、総務省の就業構造基本調査によりますと、直近の平成19年の数字だが、 全国で160万7千人、神奈川県が13万6千人となっている。

 全国の推移は、平成9年が25万7千人、平成14年が72万1千人、平成19年が160万7千人となっている。県内の推移は、平成9年が2万7千人、平成14年が6万9千人、平成19年が13万6千人となっている。

松崎委員               ● 今が平成21年の年末なので、平成19年の数字が現状を正しく反映したものなのか。もっと大勢いるのではないか。新聞報道でも全国で300万人が派遣労働で働いているとあり、そこから神奈川県が8%としても、20万人を超えていると思うがいかがか。

雇用労政課長       ○ 派遣労働者の推移ということで、詳細データがある就業構造基本調査でお答えした。総務省統計局の労働力調査では、全国数字しか出ていないが、平成19年が133万人、平成20年が140万人で、ほぼ横ばい又は微増、平成21年については派遣切りということもあったので減少が見込まれる。

 委員からお話のあった派遣労働者が300万人を超えるというのは、厚生労働省の労働者派遣法に基づく事業報告があり、これでは300万人を超える、あるいは399万人というデータがあるが、これはあたま数として捉えたもので、就業構造基本調査はフルタイム換算した実人数的なものなので、数字が乖離しているものと思う。

松崎委員               ● ここで国レベルがいくつかの役所がかけ離れたデータを出していることについて突き詰めて議論をしても答えは出ないだろうが、大勢の方が神奈川県内で派遣労働として働いていることは確認できた。

 そこで、県として、法改正以前に製造業派遣そのものについて、現状どのような問題があると認識しているか。

雇用労政課長       ○ 製造業派遣については、平成15年の労働者派遣法の改正で解禁されて以来、多くの製造業の現場で派遣労働者の受け入れが行われてきた。

 その中で、とくに昨年秋以降の景気悪化の影響を受けて雇用情勢が急速に悪化し、解雇、雇止めなどのいわゆる「派遣切り」が多く発生した。厚生労働省のとりまとめによると、本年12月までに雇止め等を実施済み又は実施予定として把握できた非正規労働者の数が、全国で246,847人、そのうち派遣労働者が143,908人となっており、さらに派遣労働者のうち製造業が139,904人となっている。同様に県内でみても8,610人の非正規労働者、このうち5,296人の派遣労働者が雇止め等の対象となっている。

 とくに雇用の面だけでなく、職を失うと同時に住居も失う事例も発生している。全国のデータでは、派遣の方が職を失って住居喪失の割合が2.8%という数字も出ている。

こういった意味で、製造業派遣については、雇用や生活の安定という面でみると、景気が好調なときは、雇用の受け皿となるが、一旦景気が悪化すると真っ先に影響を受けやすい点が大きな課題と認識している。

松崎       ● ものづくり立県神奈川を標榜して、戦後本県は経済・産業を成り立たせ、人々の生活を豊かにするという方向で、繁栄する県の姿を描いてきた。その中で働く人の姿に明日の希望が見えないということでは、本末転倒である。

製造業で成り立ってきた神奈川県としても、よく考えなければならない。現況の派遣労働を是認する意図は全くないが、改正の影響は少なくないので、こうしたことから、様々な場面でしっかりと議論して、県としての考え方を整理しておく必要があると思う。そこで、今後、検討の場を設ける予定があるのか。

商工労働部長       ○ 製造業の派遣については、現在、公労使三者による検討が行われている。まずは、その動向を注視していきたいと考えている

 しかし、この改正は県民の雇用はもとより、企業の現場にとっても重要な問題なので、県としても議論をしていく場面を設けていく必要があると考えている。

 具体的には、私どもで事務局を務めている神奈川県産業労働問題懇話会で、労使双方の代表の皆様に学識者の方を加え、様々な労働問題について協議をしており、年明けの1月又は2月に開催予定なので、ここで議論をしていただければと考えている。いきなり議論もできないので、国の動きや最近の報道、企業の意見、労働者側の意見を、事前に各委員に公平な情報提供をした上で、しっかりとした議論していきたいと考えている。

松崎       ● この懇話会は何名で構成され、産業側、労働側それぞれ何名か。

雇用労政課長       ○ 全員で17名により構成され、労働者団体が7名、使用者団代が7名、学識経験者が3名となっている。

松崎       ● そういう場面設定を考えられたことについては、ご労苦を多としたい。そうした場で出された意見を、どのようにとりまとめ、活用していく予定か伺いたい。

雇用労政課長       ○ 現状や今後の課題を踏まえ、法規制のあり方はどうあるべきかについて、労使、学経の皆様から忌憚のないご意見をいただき、可能な限り集約してまいりたいと考えております。

 今後、国では、審議会が審議の結果を厚生労働大臣に対して報告、厚生労働大臣が法案要綱を審議会に諮問・答申、最終的には政府として法案を国会に提出というのが一般的な流れになると思うが、この立法スケジュールを睨みながら、こうした場で出された意見を取りまとめ、適切な時期に国に伝えてまいりたいと考えている。

松崎       ● 今後、法改正が行われた場合、来年の通常国会と言われているが、県としてはどのような対応を取るのか、最後に商工労働部長にお伺いしたい。

商工労働部長       ○ 法の施行は一義的には国だが、労使双方にとっても、県民の皆さんにとっても、非常に重要な問題である。県としましても、派遣労働者の保護や派遣事業の適切な運営が図られるよう、神奈川労働局とも十分に連絡をとって、労使・県民、企業に対する普及啓発に努めてまいりたい。

 具体的には、県が持っている媒体、とくに私どもが持っている「労働かながわ」といった啓発冊子で、改正の内容を紹介する、企業や関係する方々へのセミナーの開催が考えられるので、こうした広報、セミナーを通じて周知・広報を図ってまいりたいと考えております。

松崎       ● 製造業派遣の禁止について、11月20日と今回の2度にわたって、取り上げさせていただいた。いろいろと意見の対立、様々な意見があるようだが、改正の影響は非常に大きいので、県としても法改正に向けた動きを把握することがもちろん大切である。

 何よりも大切なのは、県民の皆様が働く場面において影響が大きい。人らしく働きたいという方向にそった形で捉え直す機会でもある。労使間での議論の場を設け、国に対ししっかりと本県の考えを伝えるとあったが、適切な対応をお願いしたい。