平成26年6月27日 環境農政常任委員会での質疑のまとめ

○ 「ガソリンベーパー」対策について

松崎         PM2.5の報告資料によれば、本年度に入って以降も、県内で環境基準値を超える日が相当あり、PM2.5濃度の低減に向けた取組が重要になってきます。県ではVOCの一種であるガソリンベーパーに焦点をあてて取組を進めているとのことである。そこで、これに関して何点か伺いたい。

答弁

(小林大気水質課長)      環境省の調査によりますと、給油時にガソリンスタンドから大気に放出されるガソリンベーパーの量は、平成23年度において、全国で、年間約11万トンと推計されています。一方、走行時、駐車時の排出量は、未だ研究段階にありますが、試算では、全国で、年間約3万トンと推計されています。

次に、経年的にみますと、ガソリンスタンドからのガソリンベーパーの排出量は、全国で平成12年度が年間約10万8千トン、平成23年度が11万トンであり、ほぼ横ばいです。一方、走行時、駐車時の排出量の推移は過去に試算されたことがなく不明です。

松崎        何万トンという単位であり、相当な量だということであり、その対策は喫緊の課題であると受け止めます。日本国内でのガソリンベーパーの規制状況について伺いたい。

答弁

(小林大気水質課長)        我が国では、現在のところ法律による規制はありません。

一方、タンクローリーからガソリンスタンドの地下タンクに荷卸する際のガソリンベーパーの回収について、本県のほか、東京都、埼玉県など1都2府3県が、条例により義務付けを行っています。

松崎         今、1都2府3県というお答えがあり、国では法律による規制はない、ということですから、都市部を中心とする比較的規模の大きな自治体が先進的に規制を行っている状況です。当委員会では昨年度も我が会派で取り上げましたが、健康寿命日本一を掲げる本県としましては、こういった観点からの健康寿命の伸長を、積極的に取り組むべきだ、という視点を加えていただきたいと思います。

県では条例により、ガソリンスタンドの荷卸時の規制を行っているとのことだが、その規制の内容と規制を行った経緯について伺いたい。

答弁

(小林大気水質課長)       荷卸時の規制の内容ですが、タンクローリーからガソリンスタンドの地下タンクに荷卸する際、地下タンクに、ガソリンが溜まる過程で、地下タンク内のガソリンベーパーが通気管から外部に排出されないよう、通気管の途中に設けた切替弁によりタンクローリー内に回収させるものです。    

次に、規制を行った経緯ですが、本県では、昭和40年代に入って、光化学スモッグ注意報が多発し、大気汚染が深刻化していたことから、県では、独自に、原因物質である原油や石油製品の大気への排出を抑制するため、規制を行ったものです。

松崎        私も小さい頃、光化学スモッグ注意報により、退避をするという経験を何度もしております。その頃は青空を見るということが非常に少なくて、空といえば曇りというかどんよりとした空が当たり前だった、という記憶があります。神奈川の空が二度とああいうような空になってはいけないな、と強く思いますし、そういった淵源があって、今日のガソリンベーパー対策を含む大気汚染対策があるのだと理解をしています。

そこで、一方で国においては、ガソリンベーパー対策はどのように取り組まれているのか。先ほどの答弁では、法律による規制はない、という誠に心許ない状況と受け止めるのですが、何もない状況で1都2府3県だけが対策をしているというのは異常な状態であり、国においてどんな検討がされているのか伺いたい。

答弁

(小林大気水質課長)        国における状況ですが、国の中央環境審議会は、平成14年4月の「今後の自動車排出ガス 低減対策のあり方について」の第5次答申において、ガソリン燃料の蒸発ガス対策を取り上げており、特に、ガソリンスタンドにおける車への給油時の対策のあり方について、技術的課題、対策効果の検討を進め、欧米での状況も踏まえ、早急に結論を出すことが適当であるとの審議会からの答申はありました。

しかし、その後、国において具体的な動きはありません。

松崎        具体的な動きがない、ということで大変残念な状況ですが、一方、米国や欧州では既に規制されているとのことだが、どのような規制内容なのか具体的に伺いたい。

答弁

(小林大気水質課長)        米国やEUでは、タンクローリーからガソリンスタンドへの荷卸時だけでなく、車への給油時もガソリンベーパーの回収を義務付けています。

この規制に関して、回収の方法を比較すると、米国とEUでは、大きく異なっています。米国では、車に搭載されたキャニスターと呼ばれる、活性炭を入れた、大型回収装置でガソリンベーパーを車側で回収し、車の燃料として利用する方法をとっています。この車はORVR車と呼ばれています。

一方、EUでは、ガソリンスタンドの給油時に、給油ノズルから車のガソリンタンク内のガソリンベーパーを吸引して回収し、ガソリンスタンドの地下タンクに戻す方式によっています。

なお、米国は当初はEUと同じガソリンスタンドでの回収を義務付けていましたが、最近になって方針を転換し、車での回収を義務付けています。

松崎        つまり、車側とスタンド側というやり方があり、アメリカでは車側、ヨーロッパではスタンド側で回収を行っている。アメリカでは以前はスタンド側だったが、最近になって車側に変更し、燃料として利用されている。

さて、そういう2つのやり方がある中で、県では条例でタンクローリーからの荷卸し時にやっているという中で、アメリカのような車側の対策を国に要望したとのことだが、車側での対策を選択した理由を伺いたい。

答弁

(小林大気水質課長)        車側での対策を国の方に要望した理由ですが、スタンド側と比べますと、給油時だけでなく、走行時、駐車時といったあらゆる場面でベーパーを回収できることが1つ。

もう1つは、回収したベーパーを車の燃料として再利用できることの2つが挙げられます。

松崎        つまり、コストその他を含め、こちらの方が効率がよい、ということですね。また、無駄が生じず、有効活用する中で公害防止に役立てるということだが、本年1月29日に「ガソリンベーパーを考えるシンポジウム」を開催し、この問題を提起して以降、どのような取組みを進めてきたのか伺いたい。

答弁

(小林大気水質課長)        この問題を広く社会に発信するため、1月に開催したシンポジウムの開催状況を県のホームページに掲載するとともに、全国の自治体にも周知しました。

また、5月13日に開催された関東地方知事会義の場で、知事から、ガソリンベーパー問題について提起し、アメリカの規制に対応して、輸出されている大型回収装置が装着された車、いわゆるORVR車の制度化に向けて、連携した取組を提案しました。

また、県では、この6月に、国への重点要望として、ORVR車の早期義務付けを要望しました 。

松崎

                5月に黒岩知事自身が関東知事会において、車側で回収する方法を提案したとのことだが、他県の知事は、東京を含め反応はいかがであったか。

答弁

(小林大気水質課長)        海スタンド側でもできるのではないか、といった質問などいくつか出ましたけれども、各都県でもこの問題を検討していこう、と、その場面ではそういった話になりました。

松崎        前向き、という理解でよろしいのでしょうか。

答弁

(小林大気水質課長)        その時は初めての問題提起でもありましたので、これから本県としても精一杯努力していきたいと考えているところです。

松崎        ガソリンベーパーの問題については、PM2.5の中で特筆すべき、力を入れて取り組まなければいけない大きな課題だと思っております。大気汚染、ということからいうと、本県独自の対策ということではなく、関東とか近隣の、東京周辺とかある程度のスケールを持って取り組む必要があると思います。

 東京都は、前の石原都知事など、大気汚染に関して真剣に取り組んでいたと思いますし、桝添知事も路線は変わらないと思うので、是非とも、東京ピンポイントということではないですが、まずは神奈川と東京でよく連携をとって、対策を進めていただきたいと思います。

重ねて聞きますがこの問題を車側で提案したとすると、自動車を作っている業界ですとか、 ドライバーの業界だとか、ドライバーと言ってもマイカーと運輸業界などありますが、同時に連携をとらないと県内での浸透も図れないと思う。他県も含めて県内の様々なステークホルダーと一般のユーザーも含めて本腰を入れて取り組んでいかなければならないと思うが、この問題にどのように取り組んでいくのか伺いたい。

答弁

(小林大気水質課長)        まず、シンポジウムを開催する場面におきまして、本県は、ガソリンを製造するコンビナートがあり、日産自動車といった自動車製造メーカー、給油機を製造するタツノがあり、このように関係者が集まっているというのが本県の特長であります。 先のシンポジウムでは、これら企業に参加をいただいたところです。今後は、委員の指摘にもありましたが、さらに幅を広げながら取り組んでいきたいと考えているところです。

(要望)                今業界の話が出ましたが、1つ欠けていると思うのは、本県の工業製品出荷額の中で、それぞれの製品別に見た場合には、ダントツの1位なのが石油製品です。ここの説明が欠けており、石油製品を作っている業者が一番集まっているのが神奈川県なのです。製品出荷額も一番多い。そういうところにも呼びかけて、具体例だとJXとかいろいろありますので、そういったところとも連携をする必要があります。

 ガソリンベーパーについて欧米では対策が進む中、日本は遅れています。東京でのオリンピック開催を前に、この問題は解決をしていかなければならない課題であると思う。排出抑制の対策に技術を持つわが国においても、早期に対応の方向性が出るよう取組に全力をあげてもらいたい。