2021年3月1日(月)
総務政策常任委員会 立民 松崎委員
(松崎委員)
昨年の第3回定例会において取り上げた、根岸住宅地区の返還に向けた動向について、その後の状況など、確認も含めて、何点か伺います。
根岸住宅地区は、平成16年に、全面返還の方針が合意されたが、当時の返還の条件であった、池子住宅地区の横浜市域への住宅建設を巡って、地元との調整が整わず、その結果、根岸住宅地区の返還に向けた協議も進みませんでした。
しかし、平成30年11月に、日米合同委員会において新たな合意がなされ、全面返還に向けて動き出しました。そして、令和元年11月には、早期返還に向けて国が原状回復作業を行うため、共同使用することが合意されました。今年度は、国による原状回復に向けた作業が進められているところと承知しています。
それでは、返還に向けた国の原状回復作業の進捗状況について伺います。いかがですか。また、新型コロナ感染症の影響等で遅れが生じるようなことはなかったのかどうか、併せて伺います。
(基地対策課長)
これまで、南関東防衛局から受けている説明では、根岸住宅地区の返還にあたって、国は、地区内にある住宅等の建築物や、地下にある埋設管等の撤去などを行い、更地にする方針とのことです。併せて、土壌調査等も予定しております。
こうした作業に向け、今年度は既に、土壌調査に向けた土地の使用状況等の調査、PCB含有物の調査、埋設管等の地下構造物に係る現地調査、配置図等の作成、地区内に所在する建物等の地上にある工作物の現地調査、配置図等の作成、こういった作業に着手しておりまして、既に、一部の業務は終了、もしくは年度中の終了が見込まれております。なお、国から新型コロナウイルス感染症の影響で当初の予定から遅れている業務はないと説明を受けております。
(松崎委員)
原状回復の作業の内容等については、去年、作業実施に先立って、国が地権者に説明したことは承知しております。今後、作業工程に変更等が発生した場合には、改めて適切に説明していくことが必要でございます。県もアンテナをしっかり張っていただくようお願いします。
ところで、平成30年11月の日米合意では、横浜市内の他の基地でも施設整備が盛り込まれておりました。その進捗状況はどうなっているのか。確認のため伺います。
(基地対策課長)
平成30年11月の日米合同委員会においては、横浜市内の鶴見貯油施設の消防署の整備を行うことも合意されております。既存の消防署が狭隘であることから、整備を行うものでありまして、今後、日本側で整備し、米側に提供されるものとなりますが、国の説明ではこれまでに設計業務が完了し、来年度、工事着手が予定されているとのことでございます。
(松崎委員)
池子住宅地区の飛び地の返還に向けては、最近何か動きは何かございませんか。
(基地対策課長)
池子住宅地区の横浜市にある飛び地、横浜・横須賀道路により分断された約1ヘクタールほどの部分でございますが、平成16年の日米合同委員会合意で、返還方針が合意されておりますが、平成30年11月の日米合同委員会合意では、池子住宅地区の横浜市域における家族住宅等の建設は中止が決定されましたが、この飛び地の返還については、触れられませんでした。そのため、県では、これまでも南関東防衛局に、返還に向けた米側との調整状況等について確認を行ってきていますが、現在までに返還実現の具体的な方向性は示されておりません。ただし、国としても、当該飛び地の早期返還に向け、米側に働きかけを続けているとのことでございます。
(松崎委員)
さて、根岸住宅地区でございますが、横浜市は、地権者で組織する、「米軍根岸住宅地区・まちづくり協議会」、通称、ねぎまち協議会ですが、その意見を取り入れ、跡地利用の基本計画案を昨年9月に策定したところであります。その概要、特に、市がどのような考え方に基づき跡地利用を進めようとしているのか、伺いたい。
(基地対策課長)
根岸住宅地区の地権者組織であります「米軍根岸住宅地区返還・まちづくり協議会」が跡地利用の検討を重ねまして、平成29年5月にまちづくり計画の協議会案をまとめました。協議会案では、自然や緑が身近に感じられる環境と共生するまち、高齢者をはじめ、いろいろな世代の人が住めるまち、安全・安心なまち、などといった街づくりの方向性を示しております。
市はこの協議会案の方向性を踏まえまして、跡地を教育施設が隣接する立地を生かした文教ゾーン、駅からのアクセス性に配慮した住宅ゾーン、既存の根岸森林公園を活かした森林公園ゾーンという3つのゾーンに色分けし、道路のアクセス性の向上なども含めた、根岸住宅地区跡地利用基本計画案を示しました。
特に、基本計画案では、文教ゾーンにおいては、横浜市立大学医学部及び附属2病院の再整備の最有力候補地と位置付けております。
(松崎委員)
その3つのゾーンを幹とする同計画案について、市民の方々から意見募集を行った。その結果について、県が分かっている内容を伺います。
(基地対策課長)
昨年10月30日から11月30日までの間、市民意見募集が行われました。その結果につきまして、市から情報提供を受けた内容ですが、寄せられた意見数は345件ございました。その内、道路の整備に関する意見が89件、全体の約26%。計画全般に関する意見が69件、全体の約20%。交通アクセスに関する意見が49件、全体の約14%。景観に関する意見が39件、全体の約11%などとなっているとのことでした。
この内、道路の整備に関する意見では、主要道路の整備位置に関する要望や都市計画道路の整備等周辺の道路に関する要望、また計画全般に関する意見では、賛同する意見や、早期事業化を求める意見、交通アクセスに関する意見では、バスでの病院へのアクセスに関する意見などがあったと聞いております。
(松崎委員)
私も話を聞いて実感するところですが、意見募集の結果を今伺ったところでも様々な課題、特に交通に関する課題を市民が感じていることがよく伝わってまいります。実際根岸住宅地区の周辺には、幼稚園、小学校、中学校、高校、森林公園、よくみんなも知っていると思いますが、それから商店街、住宅街がございます。新しいまちづくりにあたって、周辺の生活環境に影響を与えないように配慮する必要があると強く実感するところであります。
一方で、報道によると、横浜市は、根岸住宅地区の地権者の方々にアンケート調査を実施したとのことであります。調査結果の概要について、県が把握している内容を伺います。
(基地対策課長)
横浜市では、昨年12月21日から本年1月8日までの間、地権者172名の方にアンケート調査を実施しまして、73名の方から回答を得たということです。
寄せられた回答では、跡地利用基本計画案については、「良いと思う」「概ね良いと思う」の合計が86%、「良いと思わない」「あまり良いとは思わない」の合計が1%とのことでありました。
市大医学部及び附属2病院の再整備候補地となっていることについては、「良いと思う」、「概ね良いと思う」の合計が83%、「良いと思わない」「あまり良いとは思わない」の合計が3%とのことでございました。
(松崎委員)
地権者について言うと、この調査自体が172名中73名ということで、回答された方が地権者の一部であることと、それから地権者の方々と言いましても、実際に返還に至るまでにあまりにも長い時間が経っているということで、こうした方々からすると、今、自分のものとしてどうするかと突然問われても、一方でこういう計画を考えていると示されれば、どうしてもそちらの方に考える、焦点が当たっていくのかなと感じざるをえません。
そこでなんですが、跡地利用計画、これを今後どういったスケジュールで進めるのか、今の段階では明確に示されてないが、アンケートにとどまらず、住民の意向、地権者の意向といったものを、引き続き十分踏まえていく必要があると逆に強く感じるわけであります。
実際に、横浜市が市民や地権者の方々の意見を聞きながら、慎重に跡地利用計画を作っていくのだろうと思うのですが、ここから先も実現までには長い期間がございます。そこで、今後、具体的な問題に直面することもあると思うわけであります。調整にあたっては、長い間基地の負担を担ってこられた地権者や地元の方々の思いに十分配慮する必要があると考えますが、県の見解を伺います。
(基地対策課長)
根岸住宅地区内には多くの民有地が存在しますが、そうした土地は、昭和22年から70年以上、米側に提供され続けてきたわけであり、跡地利用計画策定において、こうした地権者の方々の意向に十分に配慮していく必要があります。
一方で、根岸住宅地区の跡地は、都市部に隣接しておりまして、かつ、約43ヘクタールという広大な規模を有する貴重な土地であります。跡地利用に対する市民の方々の関心も高いと思います。
横浜市の跡地利用計画の策定に向けたこれまでの作業では、地権者の方々からの意見を踏まえた基本計画案を策定しまして、そして、その計画案について、広く市民の方々からの意見を集めており、これまで、丁寧な対応を図ってきているものと承知しており、これからも、こうした対応が必要と考えております。
(松崎委員)
非常に横浜市も慎重にかつ意向を汲みながら、基本線はよく守っていると受け止めています。同時に答弁にありましたが、43ヘクタールという広大な土地が大都市部にあるということ、これをどのように活用するのかということですが、基礎自治体は横浜市でありますが、一方では神奈川県、あるいは日本というくくりの中で位置づけを考えていく必要がある。それは、例えば市民生活への影響とか様々な観点から見ていく必要があると思います。そこで、県としては根岸住宅地区についてどのように取り組んでいくのか。もちろん、返還が大きな前提ですので、それを基軸にしつつ、今後どのように取り組んでいくのか、これは基地対策部長の見解を伺います。
(基地対策部長)
平成16年10月の日米合同委員会により、全面返還の方針が合意された横浜市内の5つの基地のうち、最後に残されているのが根岸住宅地区でございます。根岸住宅地区の早期返還は、地元にとりましては長年の悲願であり、これまでも、円滑な実現、及び返還実現までの基地の安全管理等について、国に働きかけてまいりました。国においても、早期返還に向けた作業が進められておりまして、返還実現のプロセスは、今まさに進みつつあるという状況にあります。
横浜市では、跡地利用の一つの核となる、市大医学部と市大附属2病院の再編整備の最有力候補地とする計画を含んだ、利用計画案が示されまして、市民意見募集も実施されているところでございます。
今後、市民の皆様からの意見を踏まえ、跡地利用の基本計画がまとめられることとなりますが、県としましては、引き続き、横浜市と情報の共有など、緊密に連携させていただき、早期返還の実現と、市や地元の意向に沿った跡地利用の実現について、しっかりと国に働きかけてまいります。
(松崎委員)
私はこの委員会で機会あるごとに、この根岸住宅地区の早期返還の実現について要望し、取り上げてきていますが、これまでの県や市の取組は、一定の成果、一定の前進につながっているものと受け止めています。しかし、早期返還の具体的な実現には、これからの取組が重要となっております。
根岸住宅地区は、敷地の4割近く、これが民有地でございます。こうした土地の地権者の方々は、長い間、返還を先延ばしされ続けてまいりました。早期返還の具体的な実現に向けまして、県と横浜市で連携しながらしっかりと取り組むことが肝要でございますので、そのことを要望して次の質問に移ります。