2021.3.5(金)
総務政策常任委員会(立憲民主党・民権クラブ 松崎委員)
(松崎委員)
これまでも私は財政問題、とりわけ財政健全化につきまして、継続的に取り上げ当局と繰り返し議論を行ってまいりました。常々厳しい財政状況の中では、優先度の見極めが重要であると申し上げてきたところです。「災害対応など緊急かつ差し迫ったものであるかどうか」、また、「効果が即時に期待できるかどうか」、更には、「今年度でなければならないのか」などいくつかの観点、複眼で見極めていただきたいと強く提言もしてまいりました。
令和3年度当初予算を見ると、1,100億円の財源不足を抱えてのスタートであったわけですけれども、徹底した事業見直しや、あるいは県債などにより財源確保に努めた、ただ、財政調整基金を130億円取り崩すことで、なんとか収支を均衡させたというところであります。
優先順位を見極めて、徹底した事業見直しを行ったということにつきましては、一定の評価をいたしますけれど、本県の財政は当該年度中の歳入で歳出を賄えない危機的な状況には変わりないと認識しています。財源確保の観点から、また、新型コロナウイルスから県民を守りその暮らしを支えるためにも財源としての県債は必要ですが、その一方で、将来の県民負担を増加させないというバランスの取れた財政運営も重要な視点であると議論のたびに申し上げてきたところです。
そこで、今後の財政運営について、何点か伺ってまいります。
まず、令和3年度当初予算編成、これは徹底した事業見直しを行うとともに、あらゆる財源対策を講じてきたわけですけれど、これらの取組では財源不足を解消できないで、減収補塡債などの県債の発行と財政調整基金の取崩しにより収支を均衡させております。
そこで、まず、県債につきまして、減収補塡債ではこれまで対象税目となっていなかった地方消費税などについても発行が認められたところですけれど、今回追加で対象となった税目とそれぞれの発行額について、伺います。
(三澤資金・公営事業組合担当課長)
令和2年度のコロナ禍による全国的な税収減を受けまして、本県では、全国知事会と連携し、議会の皆様のご支援も頂きながら、減収補塡債の対象税目の拡大を国に働き掛けてまいりました。
こうした動きを受けて、国は地方財政法を改正し、減収補塡債の対象に、消費や流通関連の7つの税目を追加することで、地方債で補える減収の範囲を拡大いたしました。
追加された税目及びそれぞれの発行対象額ですが、まず地方消費税142億9,000万円、不動産取得税21億2,000万円、道府県たばこ税3億4,000万円、ゴルフ場利用税1,000万円、軽油引取税18億9,000万円、地方揮発油譲与税9,000万円、航空機燃料譲与税、これは制度改正はされましたが本県では該当はございません、となっておりまして、発行額の合計は、約187億円となります。
(松崎委員)
約187億円ということでありました。今お答えになった、このほかに、猶予特例債と特別減収対策債につきましても、これまで発行実績がない新規の県債というふうに認識をしておりますけれども、それぞれの概要と、それから発行額についてお聞きします。
(三澤資金・公営事業組合担当課長)
まず、猶予特例債ですが、コロナ禍を受けて徴収が一時的に猶予された地方税につきまして、その減収を補うために発行できる地方債です。
猶予された税収は翌年度に納付されますので、その納付額を使って翌年度中に償還する仕組みであり、令和2年度から3年度にかけて猶予される分が対象です。本県では、償還年限1年の県債として125億円を発行いたします。
次に、特別減収対策債ですが、コロナ禍の影響を受けた地方団体の資金繰りに万全を期すという観点から新設された地方債です。
対象となるのは、今回の減収補塡債の制度改正後も、引き続き対象外となったままの税目の減収分、神奈川県では県民税配当割の約12億円が該当します、及び使用料と手数料につきまして、前年度決算からの減収分、これは約13億円となります、それぞれ合わせて本県では25億円を発行いたします。
(松崎委員)
今おっしゃったこれらの制度ですけれど、令和3年度以降も活用できるのか、お聞きします。
(三澤資金・公営事業組合担当課長)
まず、減収補塡債につきまして、地方消費税などの7税目が対象に追加されましたが、この追加分の減収に対する補塡は令和2年度限りの措置であり、令和3年度には活用できません。
猶予特例債も、基本的には令和2年度限りの措置であり、発行できるのは令和2年度から3年度にかけての徴収猶予分に限られます。
特別減収対策債につきましては、令和3年度も対象となっていますので、3年度も活用できるという見込みになっています。
(松崎委員)
今答弁にあったように、猶予特例債、これは令和2年度限りということでございます。猶予特例債発行額の算出の基礎となる各税目の徴収猶予額はいくらと見込んでいるのか、お聞きします。
(浅場税制企画課長)
猶予特例債発行額の算出の基礎となる特例の徴収猶予額の見込みにつきましては、大きく3つに区分して算定してございます。
まず、市町村が賦課徴収している個人県民税につきましては、市町村からの特例猶予の報告を踏まえまして、約4億円。
次に、本県の県税事務所等が賦課徴収している税目につきましては、各事務所からの報告を踏まえまして、約53億円と見込んでございます。
この53億円の税目別といたしましては、法人二税が9割以上を占めて50億円、その他といたしましては、不動産取得税、自動車税、個人事業税などで合わせて3億円を見込んでございます。
三つ目は、国から払い込まれる地方消費税や地方譲与税についてでございますけれども、国から通知されました年間猶予見込額に基づきまして、地方消費税が87億円、地方譲与税が26億円となってございます。
今、申し上げました3つの区分の猶予額の総額は、約170億円となりますが、猶予特例債発行額の算出の基礎となる徴収猶予額の算定に当たりましては、この額から、市町村へ交付する税交付金に係る猶予相当額、これは45億円でございますけれども、この45億円を差し引くこととなってございますので、計算の結果、約125億円と見込んだところでございます。
(松崎委員)
125億円ということでございました。それでは、徴収猶予の件数についても、お聞きします。どれくらいと見込んだのか、また、これまで猶予した中では、どのような税目が多いのか、1件当たりの最高額についてもお聞きします。
(足立税務指導課長)
まず徴収猶予の件数についてですけれども、徴収猶予は、一納税者が、例えば法人二税と自動車税のように、複数の税目を一つの申請で提出していただく場合もあり、税目別の件数を把握していないため、全体の件数でお答えさせていただきますと、1月31日時点で、2,841件となっております。
徴収猶予の特例の申請期限は2月1日までですけれども、期限内に申請していただいたもので審査中のものがあることや、新型コロナウイルス感染症の影響により、やむを得ず遅れて申請があったものは柔軟に対応するよう総務省から通知がございまして、現在も申請を受け付けていることから、最終的な件数は、3,000件を超えるものと見込んでおります。
次に、これまで猶予した中での税目についてですけれども、猶予の申請状況を月別に見ますと、自動車税の納税通知書を送付した5月、法人二税の申告が多い5月から6月、個人事業税の納税通知書を送付した8月に、それぞれ申請件数が多かったことから、件数ベースでは、自動車税、法人二税、個人事業税といったものが多いものと考えております。
また、1件当たりの最高額ですけれども、こちらも1月31日時点で、十数億程度となっております。
(松崎委員)
1件当たりの最高額ですが、十数億円ということですか、1番最高額で。
(足立税務指導課長)
十数億円程度となっております。
(松崎委員)
大変な高額の方もいらっしゃるということであります。また、自動車税という、非常に自動車所有の方にとってはなじみ深い税目でありますけれど、それについて、一年待ってほしいという方が多数いらっしゃるということは、やっぱり本県の今おかれている、個人の方々、あるいは事業主の方々、あるいは法人の皆様の、大変厳しい状況というのが、この徴収猶予という新たな制度を導入したことによって、一年限りということですけれど、非常に端的に表れていると。そして、その件数も今2,800件ということですが、最終的には3,000件を超えるだろうということで、少なくない事業所、また個人の方、あるいは個人事業主の方々が厳しい状況に置かれているということが、このことからはっきりと認識できます。
そこでなんですけれども、私はこの徴収猶予につきましては、昨年6月の本委員会でも、質問の中で取り上げさせていただいておりました。その時にも、実は、件数は大変多くなるんじゃないか、そして金額も多くなるんじゃないかということを危惧して質問させていただいた次第です。その時ご答弁があったのは、確か、一定程度の申請はあるかもしれないけれどもそれは恐らく10億、20億、そういった単位であろうというふうな見通しだったと記憶しておりますけれど、現実には125億円を見込むという事態に至っております。やはり、厳しい状況というのが全県的に広がってきているということは、当局の見通しを上回っているということが、この点からも明らかだというふうに私は認識をしているわけであります。今後の先行きというものを考えなければいけないわけですけれど、各事業主の方々あるいは個人の皆様が、先行き、これから先どうなるかということは非常に不透明であります。緊急事態宣言もこれからさらに2週間程度延長されるということがはっきりしてきているわけでありますけれど、令和3年度も納めたくても納められない人がいるということが想定されます。コロナ禍において大変苦しい状況というものが続いているわけでありまして、私の元にも、昨夜もそのような県民の方から、お声をいただき、またこれまでにも多数の方々からご相談をいただいております。そのたびに、真夜中でも、午前2時でも対応させていただいているところであります。
そういった状況下ということを踏まえていただきながらお聞きしますが、徴収猶予の特例制度、これは1年限りということでありました。そういたしますと、この徴収猶予の特例制度が無くなるわけであります。無くなる中でどのように対応していくのでしょうか、お聞きします。
(足立税務指導課長)
徴収猶予の特例は、感染症の影響により、厳しい状況に置かれている納税者に対し、緊急的かつ時限的な措置として創設されたものでございまして、その適用対象は、令和2年2月1日から今年2月1日までに納期限が到来する県税となっております。
この適用期間終了後に、納期限が到来する県税につきまして、収入が著しく減少し、税金を支払うと事業や生活が維持できない場合や、ご本人やご家族がコロナに感染して高額な医療費がかかり生活が困窮した場合など、納税が困難な方々に対しまして、従来からある、地方税法に基づく納税の猶予制度で対応してまいりたいと考えております。
(松崎委員)
今答弁の中にありました、その納税の猶予制度なんですけれど、これ、1年限りということで本県が今適用している、徴収猶予の特例制度とはどう違うのでしょうか、お聞きします。
(足立税務指導課長)
徴収猶予の特例制度につきましては、感染症の影響により納税が困難な場合に、無担保・延滞金なしで、納期限から1年間、納税を猶予するものでございます。
これに対しまして、納税の猶予制度につきましては、原則として、担保が必要で、猶予期間中の延滞金は2分の1が免除されますが、いずれも一定の要件に該当する場合には、担保を不要とする、あるいは残りの2分の1の延滞金も免除できるという規定が設けられております。
(松崎委員)
今お聞きすると、原則は、納税の猶予制度というのは、今の徴収猶予の特例制度とは違って、担保の提供が必要だと。また、延滞金が2分の1かかるということでございます。これ、いわばペナルティですよね。このペナルティというものを課されるということは、納税者が大変苦しい状況にあるということ、この実情に即していないのではないかと私は思う訳であります。そこでなのですが、納税される方も、納税を本当ならばしていたはず。あるいはまた、納税する意思は持っておられるはず。けれども現実には対応できないという状況にある。
ならば、その県民の方々の状況に即して、今を乗り切るためにどうするかということに知恵を絞る。これが県のあるべき姿だと私は思うのですが、どう考えているのでしょうか。
(足立税務指導課長)
多くの県民の方々が今もなお厳しい状況に置かれているということを踏まえまして、今、委員からも納税者の実情に即した対応というお話がありましたとおり、担保や延滞金につきましては、個別具体的な実情を十分に把握した上で、柔軟かつ適切に対応してまいります。
また、猶予に係る申請や審査の手続きにつきましても、感染症の影響で納税者が書類を準備できない場合は聞き取りにより確認するなど、特例猶予と同様に、納税者の置かれた事情に十分配慮しまして、迅速かつ柔軟に対応してまいります。
(松崎委員)
是非、これは柔軟にという一言で、どこまでを考えていらっしゃるかというのは、ケースバイケースということに、結局、税の場合はなってくると思うのですけれども、しかしながらですね、この税があることによって立ち行かなくなった、あるいはこのペナルティに対応できない、担保の差し出しができないということで、とてもじゃないがもう次乗り越えられなくなったということのないようにしていただきたい。
そういう意味での柔軟さをきちんと発揮していただけるのかどうか、そこをもう一回聞きたいと思うのですが、どうでしょう。
(足立税務指導課長)
まず、猶予の受付けにあたりましては、基本的な考え方といたしまして、納税者の置かれた立場に十分配慮して対応してまいりたいと考えております。
そうした中で、担保や延滞金につきましては、個別具体的に納税者の方のご事情を真摯にお伺いした上で、柔軟かつ適切に対応していきたいと考えております。
(松崎委員)
全てがこうだからこうするという答えはなかなか、税制の下では公平かつ簡素かつ中立という原則がございますので、全てを具体的に網羅したような言い方が、なかなかこういう言い方しか出来ないというのは理解するのですけれども、一点ですね、やっぱり県民の方々が置かれている状況は、このコロナという予想もつかなかった状況が、もうかれこれ1年以上続くという状況下にあって、国も地方自治体、県も市もそれぞれが懸命な対応をしなくてはいけない、そして、それぞれの方々にまだ収束の目処がつかない、立たないという状況であります。
そんな中で事業継続をしようにもなかなか継続が厳しい、あるいは個人の方々にとっても今日を乗り切るのが精一杯という方が多数いらっしゃるわけでありまして、その実情に即して柔軟に対応するということは、やっぱり厳しさを厳しいときちんと把握して、そして次へ繋げられるように、そこを柔軟にやるということなのですけれど、そういう柔軟さをきちんともって対応できますか、ということを聞いているのですが、大丈夫ですか。
(足立税務指導課長)
受付けを行うのは県税事務所ですけれども、先程申し上げた基本的な考え方、柔軟な対応につきまして、私どもの方から通知をしているところでありますので、改めて徹底したいと考えております。
(松崎委員)
是非よろしくお願いいたします。私がこの委員会で今申し上げたことは、私個人の意見であると同時に多くの県民の方々の願いであり、そして実情を反映していると私は信じております。是非ともその趣旨も勘案していただいて、しっかりとした対応をお願いしたい、本当に柔軟な対応をお願いしたいと思います。
それからですね、特例猶予を受けているのは、大きな法人だけではなく、むしろ中小の法人、あるいは事業者、あるいは個人事業主、あるいは個人の方が多く含まれていると思うんです。猶予期限が到来したらですね、これ結局納税しなければなりませんよね。それって結局、一年遅らせてはもらえるけれど、結局自助ですよね。自助・共助・公助の自助ですよね。そういう自助を求めるといった場面に結局は戻ってくるわけであります。その場面が来た時点で、中小企業、あるいは零細企業、個人事業主、あるいは個人の方が生活、あるいは事業が立ち行かなくなるという、私は大きな懸念を持っておるんですけれど、納税の猶予だけでは、それはやっぱりなかなか乗り越えられないと思うんですね。そうしますと、事業の継続ですとか、資金繰りですとか、雇用の維持、あるいは新規分野への進出だとか、業種の転換、そういったトータルの支援が重要だというふうに思うんですが、その点はいかがですか。
(黒岩財政課長)
中小企業者への支援でございますけれども、まず、「事業継続に向けた支援」といたしまして、中小企業者の感染拡大防止対策ですとか、新たな事業展開を支援するためのビジネスモデル転換に対する補助ですとか、過去最大となる3,000億円の制度融資枠の確保、信用保証料の引き下げに対する補助といった「資金繰りの支援」などの予算を計上しているところでございます。
また、「雇用の維持」では、合同就職説明会の開催ですとか、就職氷河期世代への就業支援、また、雇用の維持を図るためにですね、第三者への事業継承後に継続雇用される人件費への補助などの予算を計上しているところでございます。
さらに需要喚起策としまして、キャッシュレス決済時の20%還元ですとか、県内工業製品の割引購入支援、また、商店街等が行うプレミアム商品券に対する補助などの予算を計上しているところでございます。こうした取組みによりまして、中小企業者等に対しまして、総合的に支援をしていくということをやってまいりたいというふうに考えてございます。
(松崎委員)
中小企業、あるいは零細、あるいは小規模企業の方々、あるいは個人事業主の人、あるいは個人の皆様に対してですね、今私どもが申し上げた資金繰り、あるいは事業継続、あるいは雇用の維持、そして新規分野への進出や業種の転換へのトータルの支援、そういったものはですね、我が会派としてもですね、当局に対して新年度予算の編成にあたり強く要望してきたところでありますので、やっぱりそこはですね、税をただ猶予しただけでは乗り越えられない、そういう事業主の方は大変多いと思いますので、是非トータルの視点で支援をやっていただくように強く要望させていただきます。
それから、もう1点なんですけれども、猶予特例債につきましては、県債の利率、これが発行年限が短いほど低いというふうに一般的に認識しておるわけでありますが、一方で、2016年から日銀はマイナス金利政策を導入しております。マイナス金利付き質的量的緩和というものでございますけれども、金利全体の水準は大きく下がってきております。制度上、1年債として発行されますこの猶予特例債につきましては、非常に低い金利になるのではないかというふうに予想しております。そこで、猶予特例債がどの程度の利率になると見込んでいるのか、お聞きします。
(三澤資金・公営事業組合担当課長)
まず県債ですが、発行年限が長いほど利率が高くなりますが、これは償還完了までの年限が長いほど、返済リスクですとか、その後の金利の変動リスクが高くなることを反映したものです。逆に年限が短いほど利率は低くなる、こういう仕組みになってございます。
また、神奈川県債をはじめとしまして、地方債といいますのは、国債に次ぐ信用度がありますので、その利率は国債を若干上回る水準となっています。その結果、地方債の発行利率といいますのは、国債の日々の金利変動に常に左右される、こういうことになってございます。
その国債金利ですが、2016年1月に日銀がマイナス金利の導入を決定して以降、非常に低い、大幅に低い水準が続いております。例えば3年国債ですとか5年国債は、現在に至るまで一貫して0%よりも低い、マイナスの利率をつけてございます。
近年の地方債の利率低下は、こうした国債の利率低下を反映したものですけれども、今回発行する猶予特例債は、既に利回りがマイナスとなっている3年国債よりも更に短い1年債として、複数の地方団体による共同債形式で発行するものです。
猶予特例債を発行する時期の国債金利の状況にもよりますけれども、地方債で初のマイナスの利回りとなる可能性も出てきている、そのように考えております。
(松崎委員)
仮に、今答弁にあったように猶予特例債の発行利率がマイナスとなった場合ですけれど、投資家への利子の支払いは、具体的にどうなるのか、お聞きします。
(三澤資金・公営事業組合担当課長)
神奈川県の県債発行ですが、年2回の利払いを行いまして、満期が到来した時に元金を一括して返済するという満期一括償還方式というものが主流となっております。今回の猶予特例債もこの方式を採用する予定です。
マイナスの利回りとなった場合ですが、神奈川県が投資家への利払いを行う場合とは逆に、投資家の皆様に年2回の利払いをお願いすることになってしまいます。ですがこれは、投資家の側からすると、少額の利子をいちいち県に振り込むことになりますので、現実的には、そうした対応は非常に困難である、ということになると思います。
そこで、もし猶予特例債の利回りがマイナスとなった場合ですが、国債でも同じようなやり方でやられておりますけれども、発行時に元金を調達いたします。この際、利子相当の額もまとめて調達してしまいます。そして償還期限が到来した時には元金のみをお返しする、そういうやり方を考えてございます。
猶予特例債ですけれども、2月補正予算の議決をいただいた後の発行となりますので、令和3年4月の発行を想定しております。その償還時期ですが、1年後の令和4年4月となる見込みです。
(松崎委員)
そこで疑問が沸いてくるんですが、どうして、わざわざ逆に金利を負担してまで、マイナス金利の県債、これを購入する投資家が現れるのか。また、どういった層の方が購入する見込みなのか、伺います。
(三澤資金・公営事業組合担当課長)
国債の例でお話いたしますが、仮に国債の利回りがマイナスとなったとしましても、実際はその後、国債の値上がりが期待できる場合には、売却益を目的に購入が進む場合がございます。そして日銀は市場を通じた国債購入の継続を宣言しておりますので、そうした姿勢が銀行による国債購入を後押ししている、そのように言われております。
地方債としての猶予特例債と言いますのは、信用度は国債に次ぐ高さがあります。そして同じ年限の国債よりも利率は必ず高くなりますので、仮に利回りがマイナスになったとしても、一定の需要が見込めるものと考えています。
なお、こうしたかなり特殊な資金ニーズとなりますので、購入いただくのは大手銀行や地方銀行などの大口の機関投資家に集中することが一般的です。猶予特例債も、そうした大手の金融機関が購入するものと見込んでいます。
(松崎委員)
大手金融機関が主な購買層であって、これは投資商品として、あるいは転売による安定的な収益が見込めるということから、マイナス金利であっても一定の売却というものが確保できると見込んでいるとのお答えでありました。だとするとですね、猶予特例債でマイナス金利でも、これは発行が見込める、あるいはマイナス金利による発行が見込めるということであるならば、こういった1年債などのごく短い年限の県債を増やせばいいんじゃないか、本県の状況を考えますとそういうことも議論としてはありうるというふうに思うんですけれど、コロナ禍で大幅な税収減が現実になってくるわけです。そういう現状にあってはですね、財源対策として検討してみてはどうですか。
(三澤資金・公営事業組合担当課長)
実際に投資家に県債を購入いただく場合ですけれども、幅広く市場から調達する必要がございますので、ノウハウを持つ証券会社などの金融機関に販売を委託せざるを得ないという状況がございます。そこでは、手数料が発生いたします。
仮にマイナスの利回りで県債を発行して、その後マイナス金利分の収入が得られたといましても、手数料の負担を含めれば、その効果は相殺されてしまうという状況がございます。
また、この手数料といいますのは、販売の手数料だけではなくて、債券電子化のための手数料ですとか、指定金融機関に委託している支払い管理の手数料などもあります。こうしたものを含めますと、マイナス金利による収入だけでこれらのコストを吸収するのは非常に困難になってくると考えています。
また、マイナス利回りによる発行は、県債を購入いただく投資家の皆様に一定の負担を強いることになりますので、そうした県債の購入ニーズというのは限られてきます。
今回の猶予特例債による1年債の発行といいますのは、地方債としては例外的な措置と考えることが適切であり、これ以上の拡大は考えておりません。
(休憩)
(松崎委員)
午前中に引き続きまして、私の方から、今後の財政運営について、引き続き伺っていきたいと思います。午前中の質疑の中では、本県の発行する債券、県債について、確認とそれから新たな観点を含めまして織り込んだ中で聞いていったわけであります。
特に、コロナの影響で県民の皆様が法人・個人問わず、大変厳しい状況にあります。そして、1年限り、令和2年度限りということで、発行を組んだ猶予特例債、こちらもですね当初の見込みでは多くとも数十億だろうと見ていたわけですけれども、実際のところ125億円という100億円を超える規模に至っているわけでございます。そしてまた、ご利用になられた方、なられる方々も、現在1月末の段階で2,800件を超えていて、最終的には3,000件を超える見通しだということが当局から明らかになったわけであります。
このように、大変厳しい経済情勢ということが色濃く反映をされているのが、今の本県の税を巡る、そしてまた、財政を巡る実情、実態だというふうに受け止めています。それ故、本県の財政を論じるときも、そういう県民の方々の今置かれている大変厳しい状況というものをしっかりと踏まえてやっぱり議論し、そして予算をしっかりと組み立てていかなければいけないというふうに思いを新たにしたところでございます。
さて、ここまでの議論で猶予特例債を始め、あるいはまた県債、猶予特例債についてはマイナス金利による発行が見込まれる部分があるということでございましたけれども、そういった状況の中で、県債全体、またあるいは県債のこれからということも何点かしっかりと伺っていきたいというふうに思っています。
そこでまず、令和3年度、これは、国債というものを見ると国債発行という、これも大幅に増えています。そして、国債依存度、こちらも4割ということで高い依存度となっているわけでありますけれども、では、本県の県債依存度はどの程度増えたのでしょうか。
(三澤資金・公営事業組合担当課長)
県債依存度でございますが、歳入全体に占める県債の割合のことで、本県の財政運営がどの程度借金に頼っているかを示す指標となるものでございます。神奈川県の令和2年度2月現計予算では、その値は10.89%、令和3年度当初予算では14.24%となっています。
なお、令和3年度の地方財政計画、これは全国の自治体平均ということになりますが、それは12.47%となっておりますので、全国平均を上回る県債依存度となってございます。
(松崎委員)
地方財政計画との比較ではどうなりますか。
(三澤資金・公営事業組合担当課長)
地方財政計画上、こちらは日本全国の自治体平均を総務省でまとめたものになりますので全国平均になりますが、こちらの令和3年度は12.47%です。これに対して神奈川県は14.24%になりますので、若干高いという状態になります。
(松崎委員)
今、ご報告ございましたけれども、全国平均よりも本県の県債依存度は高いということでございました。
それと令和2年2月の現計予算ですと県債依存度というのは10.89%だったわけでありますけれども、令和3年度の当初予算では、14.24%ということで大幅にこれは高くなったということでございます。やはりこうした数字、県債依存度の観点からも本県の財政というのは悪化したというふうに受け止めざる得ないわけですけれども、当局の受け止めもそうなんでしょうか。
(三澤資金・公営事業組合担当課長)
今回の14.24%という数字でございますけれども、まず令和2年度につきましては、新型コロナウイルス対策で、国から多くの国庫が大量に来てございます。その結果、歳入総額が膨らんでいることもありまして、分母の母数が大きいので10.89%と比較的少なめの数字に一見見える状態でございます。それを除きますと、やはり10%を、全国平均を上回る、県の3年度の数値に近い数字になります。
そのうえで令和3年度当初予算は、臨時財政対策債を1,090億円増額しますので、大幅に増える深刻な状況になってきていると認識しています。
(松崎委員)
深刻な状況になってきているとの認識が示されたわけでございます。県債依存度の観点からも、やはり本県の財政状況は危機的であるということが裏付けられたというふうに思います。
調べるところですね、リーマンショックの頃は平成22年度ですけれども、17.8%だったということであります。
また、バブル経済の崩壊したときは平成6年度になりますが、19.1%だったわけでありますから、そういう意味では、本県の財政がどん底になったということではないですけれども、しかし、今コロナの状況がいつ終息するのかなかなか見通しが効かない。変異株のこともあります。そういった意味では、この先は予断を許さないというふうに受け止めています。
そこでもう一点お聞きしますが、実は県債の発行残高というのは、減少がずっと続いてきたわけであります。それは、もちろん県当局、あるいは県民の皆様の多大な御協力をいただいて、県当局も歳出を削ったり、さまざまな形での事業の見直しをしたりして、発行残高というのは減少を続けてきたわけでありますけれども、2年度末から残高は上昇に転じています。令和3年度も引き続き上昇する見込みということであります。
この傾向はいつまで続くのか、また、どうなれば再び減少に転じると考えているのか、この辺りを聞かせてください。
(三澤資金・公営事業組合担当課長)
今回の県債残高の上昇でございますが、令和2年度につきましては、減収補塡債をはじめとした大量の特例債を2月補正予算で計上させていただきました。これが820億円程度となり、また、令和3年度につきましては、先程も答弁しましたとおり、臨時財政対策債が1,090億円という、それぞれ1,000億円近い急増がございますので、一度に県債残高が、ぞれぞれ増えていったということでございます。
これらはいずれも現在のコロナ禍を受けた景気後退及びそれにより発生した税収の減少が要因ということになります。したがいまして、今後の県債現在高がどうなっていくかという見通しは、本県のこのコロナの収束を含めまして、本県の今後の税収の見通し次第というふうに考えています。
(松崎委員)
私ども神奈川県の場合ですね、県債を発行したら、国のように、例えばどこかが引き受けてくれるという必ずいわば引き受け手が現れて、そういったいわば借金というのはほんのコンマ何秒のことであったと、後はもう引き受けられた後はですね債券はどこかへきちんとしまわれていくというそういうものではありません。神奈川県の借金というのは、いくら借金が出るのかということを厳しく見ておかないとそれが県の財政にストレートに影響して、結局様々な事業を削ったり止めたり県民にとって必要なものを減らしたりということに直結してきた、そういう歴史がございます。
そういった意味では、この発行残高の減少が止まった、そして残高は上昇に転じている、そしてこの先どうなっていくのかという部分について今お聞きをしたら、税収次第だということでございますので、税収がどうやったら上がるのかといえば、言うまでもありませんけれども、県民の皆様の生活が安定し、そして、事業が継続され、発展し、そして県民の皆様が幸せだなということを実感されて、付加価値が相対として出てくる、上がってくるということがなければ、豊かさが実感されるということがなければ税収は安定して上がっていかない、あるいはまた、見通せないということかと思うんですね。そこのところをやっぱりしっかりとやっていかないと、それはすなわち本県財政の悪化という形で、また、県債発行残高の上昇という形で、もろにですね、本県財政に響いてきてそれがまた県民の皆様に対するリターンをやせ細らせてしまうという悪循環になっていきますよね。だからやっぱりそこのところはしっかり肝に銘じていく必要があるし、税収がどうやって見通せるようになるのか、どうすれば県民の皆様の幸せが実感されるようになるのかということを、コロナ禍の中でもやっぱり考えてしっかりと方針を打ち出す必要があると思います。当面今は、コロナに対する対応をしっかりやるということになるんでしょうけれども、しかし、県民のいのちということと同時にですね、経済もいのちでありますので、そこのところを両方見ながらですね、対策を立てていくという必要が私はあると思います。
それでは、県債管理目標についてお聞きをしたいと思っております。県債管理目標の考え方、これはプライマリーバランスの黒字化にあると端的に言えば、思うわけでありますけど、来年度予算の編成に当たりまして、国はプライマリーバランスの赤字が大幅に拡大をする、ということでございます。神奈川県のプライマリーバランスは、ではどのようになるのでしょうか。
(三澤資金・公営事業組合担当課長)
令和3年度当初予算における神奈川県のプライマリーバランスでございますが、246億円の黒字となってございます。
また、令和2年度につきましても、271億円のこれは最終予算ベースでは黒字となってございます。
令和2年度、3年度ともに辛うじて黒字を維持しておりますが、黒字幅は、例えば令和元年度は683億円、平成30年度は992億円という形で次々に下がってきているという状況でございまして、元年度までの水準から3分の1以下のレベルにまで低下しているという状況でございます。
(松崎委員)
県民の皆様から見たら、プライマリーバランスが黒字というふうなニュアンスは、非常に違和感があります。一方でその黒字といっても、黒字幅が大幅に減少しているというところについてだけを見れば、そこは非常にやっぱり厳しくなってきている、必要な、どうしても欠くべからざる必要な部分について、お金の手当が十分いかなくなり始めているというふうにも読めるんですが、これはどういうふうに見たらいいんでしょうか。
(三澤資金・公営事業組合担当課長)
プライマリーバランスの定義でございますけれども、借金の返済額と借金をする額、新規発行額を比較したもので、返済する方が多ければ黒字になる、こういう性質のものでございます。この借金の返済の中には元金と利子と二つを含めたものになります。この元利合計の方が多ければ、中長期の財政状況は好転に向かいまして、この状態がプライマリーバランスの黒字ということになります。
一方で、県債残高、こちらは元金のみが対象となります。ここには利子が含まれておりません。そのため、県債残高の増減といいますのは、借金の元金の償還額と県債の新規発行額の関係だけで決まってまいります。
たまたまこの令和2年度と3年度と言いますのは、借金のこの償還する元金よりも新規発行額の方がたまたま多かったので、県債残高は増えるんですけれども、プライマリーバランスはたまたま黒字になっているという、ギリギリの状態でこういうことになっています。
(松崎委員)
つまり、償還する元金とそれから新規発行額の関係で決まるんだということですよね。つまり、プライマリーバランスが黒字だと一般的に聞けば、なんとなく県の財政は非常に健全なのかなというふうに思うし、また、いっとき、本県はプライマリーバランスの黒字化ということを大きな声で何年も言い続けた、そういう時期がございました。その時は財政非常に厳しかった。そのことを憶えている人たちからすると、やっぱりプライマリーバランスが黒字だと聞けば県財政は非常に健全で、もうやっぱり大丈夫なんだというふうにも聞こえる。けれども実際はそんなふうにして、償還元金とそれから新規発行額の差、関係、これで決まるんだということであればですね、そういったものなんだということも含めて一緒にアナウンスしないと、やっぱり県民の皆様に正しく受け止めていただけないんじゃないかという危惧を持つんですが、その点はどのように思われてますか。
(三澤資金・公営事業組合担当課長)
今現在、プライマリーバランスの指標そのものを大々的に公表して、大きく県民の皆様にPRしているという部分はまだございませんけれども、今後財政指標がどんどん悪化してプライマリーバランスを前面に出さなければならないような状態になったときには、こうしたプライマリーバランスの仕組みも含めて、正しくアナウンスしていく必要があると認識しております。
(松崎委員)
正しくアナウンスする必要があると私も思いますので、是非実行してください。よろしくお願い致します。
さて、ここまでの質問で県債全体では2年度から、また臨時財政対策債につきましても3年度から、これは増加に転じてしまう。そうなると、当然ですけれど県債管理目標が大きな問題でございます。
そこでお聞きしますが、県債管理目標の達成については、県としてどう考えているのか、お聞きします。
(三澤資金・公営事業組合担当課長)
現行の県債管理目標である「令和5年度末までに県債全体の残高を2兆円台」、つまり3兆円を下回る水準にまで減少させるという現行の目標を達成するには、令和4年度及び令和5年度の県債の新規発行額をそれぞれ900億円程度に収める必要が出てきます。
一方で、神奈川県の県債の発行状況でございますが、このコロナ禍が生じる前の時点で、つまり、今回の大幅な税収減がおきる前の時点であっても、建設事業などに活用する通常の県債を大体例年500億円から800億円程度発行しています。また、臨時財政対策債も、コロナ禍の前の時点で、毎年1,000億円から1,200億円程度発行しておりまして、合計で、大体1,600から2,000億円程度というのが、県債の新規発行の規模ということになります。
これを踏まえますと、年間の発行額を900億円に収める水準といいますのは、臨時財政対策債を殆ど発行しない場合に近い状況となってしまいます。このため、目標達成は極めて困難であると、このように考えています。
(松崎委員)
今、お答えの中に、目標の達成をどうしてもやろうとすると、臨時財政対策債の発行がほとんどゼロという事態に至るということでございます。では、お聞きしますけど、臨時財政対策債の発行をゼロにする、本県の。仮に、ゼロとすることができる場合っていうのは、どんな場合なんですか。
(三澤資金・公営事業組合担当課長)
臨時財政対策債と申しますのは、一般財源の財源となるものでございます。そうなりますと、仮に900億円程度、毎年収めるとなりますと、仮にコロナ禍が終息したとしましても、毎年、一般財源を1,000億円規模で削減するということになってまいります。そうなりますと、神奈川県の義務的経費の割合は、7割、8割と高いですので、非常に、この政策的経費をどんどん減らしていくと、極端なことをしないとおよそ達成できないという内容になります。
(松崎委員)
政策的経費をどんどん削り込んでいく以外の方法はないということでありますが、そういうことをすると、県民生活あるいはまた将来に向けた投資的なもの含めて、ほとんど神奈川県自体が舵取りができなくなるということを意味しているというふうに、私は受け止めました。それで間違いはないですか。
(三澤資金・公営事業組合担当課長)
その認識のとおりかと考えています。
(松崎委員)
つまり、県債管理目標、今のままですと、達成は非常に難しいということであります。そうなんですか。
(三澤資金・公営事業組合担当課長)
現行の地方財政制度の枠組の中では、目標達成は極めて困難であると、このように認識しています。
(松崎委員)
目標の達成、非常に困難であるという答弁でありました。それでは、目標の見直しをしなければいけません。どのように考えているのでしょうか。
(三澤資金・公営事業組合担当課長)
現行の県債管理目標ですが、令和元年度末に策定しました現行の中期財政見通しの中で設定させていただいてございます。この県債管理目標の設定に当たりましては、単にこの県債の残高ですとか、今後の公債費、借金の返済の見通しだけで設定できるものではありませんので、今後の税収全体の状況ですとか、投資的経費全般の見通しを十分に踏まえて、その上で今後数年の県債発行額ですとか、県債の現在高を把握していく必要がある、ということになります。
したがいまして、県債管理目標の見直しといいますのは、中期財政見通しの見直しと合わせて取り組む必要があると考えています。
(松崎委員)
従前より、中期財政見通しを策定するというときに、県債管理目標というものも設定してきた。しかし、それは、策定をする時点で将来を見通すということと一体なわけであります。今後3年間、5年間どうなるだろうということ、本県経済、あるいは人々の暮らし、あるいは人口の動態、そういった非常に基本的な数値と言いますか状況を踏まえるわけでありますけれども、今、コロナという大変厳しい、ある意味予期せざる事態が進行中なわけでありまして、そういった中での検討というのは、非常に困難を極めるだろうなということは、誰しも、そこは気が付くところであります。
中期財政見通しというものを、県債管理目標と一体のものという答弁がありました。中期財政見通しそのものを、では、よく見ていきたい思うわけでありますけれども、去年9月、予算編成方針の出た時、財源不足額は1,100億円でございました。中期財政見通しで、令和3年度の財源不足額をいくらで見ていたかというと、550億円であります。つまり、2倍、ちょうど、同額、同じ額550億円ほど大幅増額しているわけであります。
これ、このままにしておくと、中期財政見通しというものは、一応あるけれど、これを物差しとして当てはめること自体ができなくなるのではないかと、そういう懸念、疑問あるいは不安を持つわけです。なんで中期財政見通しを立てているのかというと、単年度でやっていかなければならないという地方自治体の会計の原則がありますけど、それだけだと、3年後、5年後、人口がどうなる、あるいは経済がどうなる、神奈川県がどっちを向いて進んでいくということを考えたときに、財政もしっかりと考えていきましょうという本来の中期財政見通しの果たすべき役割からすると、このずれ、この差、この開きをそのままにしておくということは、すなわち、この本県の財政が、これからどっち向いて進んでいくのか、舵取りをしていくのかが見えなくなる。だから、これを修正できるものならば早い時期に修正する必要があるし、また、その時、県債はどういうふうになっていくのかということを、一体のものだとおっしゃるのですから、しっかりと指し示す必要があると思うんですね。そこでなのですが、中期財政見通し、今言ったように、実態とはもう大きくずれが生じてきてしまっているわけでありまして、この修正についてどう考えているのか、当局の見解をお聞きしたいと思います。
(黒岩財政課長)
委員ご指摘のとおり、新型コロナウイルス感染症の影響により、予算編成方針を発出した時点における令和3年度の財源不足額は、大幅に増加をしてしまいました。そのほか、臨時財政対策債等も大量発行となったことから、今後、中期財政見通しにつきましては、見直していく必要があるというふうに認識しております。
しかし、現時点では新型コロナウイルス感染症の影響が見通せず、例えば、歳入面では、今後の景気動向や、それに伴う県税収入の動向をしっかり見極める必要があること、また、歳出面では、今後どのような新型コロナウイルス対策を行うか、またその財源がどうなるのかなど、多くの変動要素があることから、すぐに見直すことはなかなか困難であるというふうに考えてございます。
加えまして、中期財政見通しの見直しに当たりましては、歳入面・歳出面で多くの部局に作業していただかなければいけないといった事情もあります。現在、全庁コロナシフトということで、変異株やワクチン接種など、新たに生じる様々な課題に日々対応しているところございます。
こうした課題がクリアされまして、新型コロナウイルス感染症が収束に向かうなど、各種影響を分析・検証できる状況になったときには、適切な時期に速やかに見直していきたいというふうに考えてございます。
(松崎委員)
財政課長のおっしゃることは確かに分かるんです。おっしゃるとおりだと思います。ですが、私、危惧するのは、そういうことを言っていて、1年経ちました、2年経ちました、そしてある程度見通せるようになりました、さあ、やりましょうといった時、実はもう、どう転んでも、どうやっても、どう逆立ちしても、何年かけてもこの財政に空いた穴っていうのが埋まりそうにない、国からいくらか来るんだけれども、それが本県の財政を埋め合わせるには、もう足りない、十分ではないということが、その時から少しずつ見え始めたということになると、後の世代に明らかに大きな負担を、つけを回すことに、子ども達につけを回すことに繋がってしまうんじゃないかと、そこを危惧しているんです。
なので、やっぱり、このコロナの状況は、これからも続くかもしれない、続くかもしれないけどもその中で、一方で、もう一つですね、先程、経済の目というのも大事だと申し上げましたけれども、財政というものも、どういうふうに見ておくのかという目は、いつも持っておかないといけないと思います。持っておられるとは思いますがね。もちろん。だけども、持っていないといけないと思います。コロナの状況が大変だから、もう少し後にしよう、今また大変だからもう少し後にしよう、変異株が現れたからもう少しあとにしよう、やっているうちに手遅れになる、見通しがついた頃には、いくらかずつ足りないままがずっと続くならということになってくると、本県財政がだんだん坂道を転げ始めている、止まらなくなる、危惧を持っているわけです。
これ、国がいつでも助けてくれるからいいじゃないかっていう人がいるかもしれないけれど、そんなに甘いものじゃないということは、皆さん、もう体験上、よく御存知だと思うし、私も、県会議員になってから、今日までの間で何度か経験していますので、そんなに甘いものじゃないと思っていますので、そこは心して臨む、あるいはもう一つの目を持つ、複眼的視点を持つということを強くお願いしておきたいと思っています。
さて、そういう中におきまして、財源ということに少し目を移していきたいと思っています。
特に今日採り上げたいのは、今回、川崎競馬組合から、収益配分金、大変大きな財源だというふうに、私、認識をしております。と言いますのも、私自身も川崎競馬組合議会に参画をしていますけれども、川崎競馬組合の職員の方々、現場で大変頑張っておられて、特に昨年の台風のときなんかは、小向きゅう舎など、修繕費用が多額に見込まれるという状況の中で、馬主や、あるいは調教師の皆様などと協力いたしまして、財政状況厳しい本県、また、川崎市のために、繰出しを行って、競馬事業収益配分金が大幅に増額となったわけであります。
さて、そこで改めて伺いますけれども、今回、川崎競馬組合からの収益配分金は具体的にいくらになるのか。また、その規模は過去と比べてどの程度の水準なのか、伺います。
(三澤資金・公営事業組合担当課長)
まず、令和2年度の川崎競馬組合から神奈川県への繰出金ですが、令和2年度当初予算では 4億2,000万円を計上してございました。これが、2月補正後の2月現計の金額としては、40億2,000万円となります。
2月補正予算により、36億円の増額をしていただいたということになります。
また、令和3年度当初予算の繰出金は14億円となり、前年度の当初予算から約10億円の増額となります。
これまでの繰出金の規模ですが、川崎競馬組合が平成12年度に一部事務組合として再出発し、27年度に初めて6,000万円の繰出しを開始して以降、この繰出金の額は、毎年拡大しています。令和元年度の繰出額は3億6,000万円となりました。
今回の繰出金の水準は、令和2年度が40億円、令和3年度が14億円となりますので、これまでの数億円までの規模を大幅に上回るものと、そういう水準となってございます。
(松崎委員)
インターネット投票が大変普及したから、だから、収入が大変多かったんだ、それ故、繰出金も多くなったんだというふうに伝えられているときもありますけれど、実際、組合議会に身を置かせていただき、また組合の皆様、いろんなお話をお伺いする中で、それだけではなくて、その面だけではなくて、やっぱりそこで働く一人ひとりの方々の大変なご努力が、そこの影にちゃんとあるということを、私は直に知っております。やはり、そこのところもしっかりと見ておく必要があるということを強く申し上げさせていただきたいと思います。
それともう一つ、この繰出金の使い途なんですけれど、県はどういう考え方でいるのでしょうか。
(三澤資金・公営事業組合担当課長)
競馬事業からの収益の使途でございますが、競馬法におきまして、考え方が具体的に示されてございます。そこでは、畜産振興や社会福祉、医療、教育、スポーツ振興、災害復旧などの財源に充てるよう努めることとされています。
本県でも、原則としてこの法律の考え方に沿って繰出金の使途を決めています。手順としましては、まず特別会計である公営競技収益配分金等管理会計、こちらに一度、収益金を全部入れます。その上で、一般会計と市町村自治振興事業会計に半額ずつを繰り出して、それぞれの会計で事業に充当する、そういうやり方をとっております。
具体的に、まず一般会計ですが、昨年度からギャンブル依存症対策や畜産技術センターの機器整備費などに活用してございます。また、今回の2月補正予算での増額分については、教育局における仮設校舎のリース料に全額を充当しています。ギャンブル依存症対策は令和2年度からです。
また、市町村自治振興事業会計ですが、地方創生推進事業の支援などに活用しているほか、2月補正予算での増額分については、市町村のために新設した無利子貸付制度の財源として活用していきます。
(松崎委員)
今、ギャンブル依存症対策という話もありましたが、やはりギャンブル等への依存ということを同時にしっかり考えておく必要があると思います。公営競技自体は既に法律によって定められた事業であり、地方自治体に認められた事業ですけれども、インターネット投票が非常に普及したということから、大変多額の繰出金に結びついているという側面、さっき一面的とは言ったけれども、その実態がございますので、そうすると、今までと違ってお客様はそこにいらっしゃらないわけですから、どういった状況になっておられるか、ひょっとしたらその方々はギャンブル依存という、その淵に立っておられるかもしれない、ということにも思いを致しながら、では、どのような形で健全な娯楽としてこれを維持させるのか、あるいは経営していくのかという観点が、やはり必要かと思います。そして県民の方々が、ギャンブル依存というところにはまり込まないような形で楽しんでいただくということを考えて、使途もしっかり考えていただきたいと思います。
それと、これまで財源の面から縷々伺ってきたわけでありますけど、先程から何度か触れておりますが、コロナの収束がなかなか見通せない状況にあります。そういたしますと、質疑の中でも明らかになりましたが、厳しい財政状況が、もっと深刻になることも含めて考えておかなければいけない、想定しておかなければならないと思います。マイナス金利になっても、引き受けてくださる、そういう投資家がある、あるいは機関投資家があるということに決して甘んじることはできないし、また、本県の財政というのは、市場においては確かに高い評価、国債に次ぐ評価を債券の面から得ているかもしれないけれど、県民生活を実際に、具体的にどうやって支えるのか、機動性か効くのかという観点からすると、厳しくなってきているということも、また明らかです。借金が増えているのか減っているのか、あるいはきつくなったのか緩くなったのか、ということからしても、県債依存度は上昇してきている。そういうところからすると、やはりトータルとして見た場合、財政運営は厳しくなる方向へこれからも動いていく可能性が高いと思います。
そこで、財政部長に伺いますが、今後どのように財政運営に取り組んでいくのか、ご所見をお聞きします。
(西村財政部長)
令和3年度の予算編成に当たりましては、110億円規模の事業見直しを行ったものの、先程からお話いただいております、多額の県債の発行、これは県債依存度、プライマリーバランス、それから県債管理目標に如実に響いてくるものでございますけれども、そういった県債の発行と財政調整基金の取崩しによりまして、なんとか収支を均衡させたというものでございまして、まさに危機的な財政状況にあるわけでございます。
今後の財政運営にあたりましては、将来の負担が伴う県債の発行や財政調整基金の取崩しに頼らない財政運営を念頭に置く必要がございますけれども、昨今では、新型コロナウイルス感染症の影響というものがございまして、そうしたものの危機を乗り越えていく必要がございます。そのため、今回、大量の県債発行と財政調整基金の取崩しという形の対応をさせていただいたところでございますが、大変私どもも忸怩たる思いがございまして、やむを得ないものだったと考えております。
先程、担当課長が答弁申し上げましたが、令和2年度限りの措置として、大幅な税収減が生じる見込みの地方消費税等につきましては、減収補塡措置が講じられたところではございますけれど、新型コロナウイルス感染症の収束がやはり未だ見えない中にでは、やはりこうした税収減に伴う減収補塡措置の継続や地方創生臨時交付金の追加交付等、国に全面的な財政措置を、引き続き求めていきたいと思っております。
また、県自らも「スクラップ・アンド・ビルド」を継続・徹底していくという視点が重要でございますし、そうしたことにより、優先順位をしっかり見極めまして、取り組むべき事業に一層集中活用していく、財源をそういう形で活用していくということと、更には、今回取崩しをさせていただきましたけれども、財政調整基金の確保に向けてできる限り努めていきたいと考えております。
こうした取組によりまして、財政基盤の強化を図りまして、新型コロナウイルス感染症への対応に加えまして、自然災害への対応など、県民生活に直結する事業につきましては、的確に対応していく必要がございますので、そうしたことを念頭に持続可能な財政運営をしていきたいと考えております。
(松崎委員)
コロナに伴う影響が先行き不透明ということであります。また、医療提供体制の維持と経済活動の再開、こちらも両方にらみながら対策を進めていかなければなりません。本県は、その年の歳入で歳出が賄えていない状況が続いております。
ただ、厳しい財政状況の中でも、財政需要、行政課題に対して、的確に対応して暮らしを支えていかなければなりません。今後も優先度を見極めながらも、必要な対策に手当を行うということが重要であります。
また、災害への対応や老朽化対策なども同時に行わなければなりません。財源として県債の需要はそういった意味で高まっているわけであります。また、指摘したように臨時財政対策債の増加もあります。
公債費として県財政を圧迫するということを避けつつ、安全・安心の提供をするという両方のバランスをとっていかなければならないわけであります。将来を見据えて発行額をコントロールすることが今まで以上に大変重要になります。取り崩した財政調整基金も今後を踏まえると積み増していかなければなりません。
そこで、中期財政見通しについて、新型コロナウイルス感染症の影響が見通せず、変動要素も多い現状の中にありましても、的確に積算し再構築することにより、将来の財政状況を正確に見通し、今後の財政運営の方向性を確固としたものするよう、求めておきます。そういう意味で「中期財政見通し」は非常に重要でありますから、各種影響を見極めた上で、適切な時期に見直しを行うよう要望し、私からの質問は終わります。