令和3年12月14日 総務政策常任委員会 立民 松崎委員
(松崎委員)
私からは、県内米軍基地を巡る状況につきまして、何点か伺いたいと思います。
日米共同演習に参加する米兵のキャンプ座間での停留措置につきまして、当局より報告がありました。報告資料によると、来日する米陸軍の人員およそ120名を新型コロナ感染症対策のため、キャンプ座間に10日間停留させるという内容のご報告でありました。現在、新型コロナ感染症につきましては、新たな変異株でありますオミクロン株が海外で広がりつつありまして、わが国として、水際対策が重要な課題となっております。そこで米軍人が我が国に入国する場合の水際対策を中心に何点か伺ってまいります。
まず、今回の停留措置ですが、その前の入国につきまして、前提となる法の適用関係を伺います。日米地位協定上、我が国に入国する米兵は、我が国の入管手続きの例外になっているのではないかと思いますが、その点はどうなっているのでしょうか。
(基地対策部長)
お答えいたします。我が国に米軍人が入国する場合のルートというのは、大きく分けて2通りございます。まず1つ目は、米軍の艦船や航空機によりまして、米軍基地に直接入国する場合がございます。もう1つは、民間の方と同じように、民間の航空機を使いまして、国際空港から、入国するという場合がございます。
前者、米軍基地から直接入国する場合の手続き、検疫につきましては米側の手続に従うということでございます。また、日本の国際空港から入国する場合の検疫や入国手続きについては、日本側がこれを行う、というようになっております。
これは、日米合同委員会合意で定められたルールです。以上です。
(松崎委員)
では、具体の話といたしまして、今回の日米共同演習に伴って、我が国に入国した米軍人等は、いつ入国したのでしょうか。11月30日以降、オミクロン株の関係で、政府は新規の外国人の入国を停止しておりますけれど、それ以降に入国した人はいるのでしょうか。
(基地対策課長)
お答えいたします。まず、今回のヤマサクラ演習に伴う入国ですが、120名のうちおよそ110名は、輸送機で米軍基地から入国いたしましたが、11月30日より前に入国が完了したと聞いております。
残り約10名は、民間航空機により成田又は羽田から入国したとのことでございますが、それぞれいつ入国したかについては、情報提供を受けておりません。以上です。
(松崎委員)
先ほどのお話で、民間航空機で入国する方の手続きは日本側で行うとのことでありました。
一方で、現在我が国は、外国人の新規入国の受入れを停止しております。仮に、我が国が、米軍人の入国を拒否したいとなったときに、現行法や地位協定の条文上できるのかということが、問題になる可能性があると思いますが、そこはどうなっているのでしょうか。
(基地対策課長)
お答えします。今回の日米共同演習に関連しまして、改めて米軍人の入国手続きに関する日本法令の適用関係を外務省に照会、確認をさせていただきました。
その結果ですが、米軍の構成員は、日米地位協定上、「旅券及び査証に関する日本国の法令」の適用から除外されていることから、出入国管理及び難民認定法に基づく上陸拒否の対象とはならない、とのことでございました。以上です。
(松崎委員)
大変重要な事柄ですので、詳しくお聞きしたいと思いますが。
(基地対策部長)
お答えいたします。現在我が国が、新型コロナウイルス感染症のオミクロン株への対策として、外国人の新規入国停止を実施しております。この規定というのは、出入国管理及び難民認定法、通常は略しまして入管法と言いますけれども、この法律の規定に基づいて、上陸拒否という名称になりますけども、そのような措置を取っているということでございます。
今回の照会に対する外務省の回答でございますけれども、日米地位協定第9条の中に、合衆国軍隊の構成員は、旅券及び査証に関する日本国の法令の適用から除外されるという規定がございます。外務省の回答は、入管法に基づく上陸拒否の手続というのは、この、旅券及び査証に関する日本国の法令に該当することから、現在我が国が行っている、外国人の新規入国の停止措置は、日米地位協定上、米軍人には適用されないという趣旨であると理解をしております。以上です。
(松崎委員)
米兵の入国を拒否できないというお話でありますが、例えば、犯罪歴のある人の入国を拒否したい、あるいは、いったん入国した人を国外退去させたいという場合もあると思うのですが、それもできないということなのでしょうか。
(基地対策部長)
お答えいたします。今、委員がご指摘になったような事例に対しては、別に規定がございます。例えばいったん我が国に入国した米軍人を、犯罪等の理由によりまして、これを退去させたいという場合には、日米地位協定上の用語では「送出(そうしゅつ)」、送り出すと書くのですけれども、送出という手続が定められておりまして、日本国政府が米側に送出の要請を行いまして、米軍は、この送出に責任を持つということが、日米地位協定で定められております。また、先ほど答弁いたしました、米軍人の入国に際して、民間空港で日本側が手続を行う場合、審査の手続で、入国を許可できないという場合がございます。そうした場合の退去の手続につきましては、日米合同委員会で手続が定められております。
今回の外務省の、照会に対する回答は、あくまでも現在の、オミクロン株に対する、入国手続に関して照会したものでございますので、そういう文脈からの回答であると理解をしております。以上です。
(松崎委員)
日米地位協定上、我が国の法令に基づく上陸拒否が適用できないということは、重要なポイントであると思います。
そこで、基地対策部長にお聞きしますが、現在、政府は新規の外国人の入国受け入れを停止しています。一方で、米軍人の入国が認められている現状は、日本政府の水際対策と齟齬が生じているのではないか、そうした疑問もあり得ると思うのですが、その点はどのように考えるのでしょうか。
(基地対策部長)
お答えいたします。オミクロン株に関する日本政府の水際対策でございますが、12月末までのおよそ1ヵ月間、原則として、新規の外国人の入国等を停止するというものです。外国人の入国につきましては、特段の事情がある者に限って許可されるということでございます。出入国在留管理庁の資料によりますと、特段の事情として認められるのは、例えば、日本人や永住者の配偶者や子の入国、外交又は公用の在留資格を有する者、などとされております。このうち公用につきましては、必要性・緊急性が高いものとされております。
また、現在の米軍人の入国に関しまして、米側が取っている措置でございますが、外務省によりますと、まず、日本に入国した者に対し、入国時検査の受診、及び14日間の移動制限の義務付け、空港からの移動について公共交通機関の利用の禁止、移動制限措置終了時のPCR検査、及び米軍医師による診察の義務付け、こうした措置をとっております。これらの措置は、厚労省を含む日本政府との協議のうえで行われているとのことでございます。
日本政府が、公用について、一定の入国を認めているということ、また、米軍人の入国については、日米間で協議が行われ、対策が強化されているということを考え合わせますと、少なくとも現時点において、日本政府の水際対策と齟齬が生じているとは言えないのではないかと、受け止めております。以上です。
(松崎委員)
現状はそうだとしても、今後の可能性について問題があります。
オミクロン株については、いまだ不明な点がありますが、今後、我が国としてさらに水際対策を強化する必要が生じたときには、先ほど答弁があったように、我が国として米軍人等の入国を拒否できないという点がネックになる可能性があると思います。米軍人の入国が、我が国の水際対策の抜け道になってしまう恐れがあると思うがその点はいかがでしょうか。
(基地対策部長)
お答えいたします。米軍基地が原因となって、水際対策に穴が開き、新型コロナウイルス感染症が基地周辺等に広がるということは、あってはならないことだと考えております。
抜本的な解決策としましては、日米地位協定を改定し、法律の適用関係を見直す必要があると考えておりますが、現状では、現行の地位協定を前提に、関係機関がベストを尽くしていくことが必要だと考えます。
新型コロナウイルス感染症につきましては、国に照会してきておりますが、日米両国政府は、水際対策についても協議を行い、見直しを行ってきており、日本側の意見も反映されているとのことでございました。
また、入国の停止につきましては、日本の法令を適用して入国停止、ということはできないとのことですが、新型コロナ感染症がまん延を始めた当初、米国は自主的に、我が国を含む外国基地間の移動を、一定期間停止した時期がございました。米軍は、新型コロナウイルス感染症の感染状況に伴い、対策を度々変更しており、日米両国政府が協力し、感染症の動向に対応して、適切な対策が取られることが重要であると、このように考えます。
本県としては、日米両国が緊密に連携し、米軍人の入国を含む新型コロナウイルス感染症対策が常に我が国の最善の措置と整合したものとなるよう、引き続き働きかけてまいります。以上です。
(松崎委員)
ただいまの答弁について確認ですけれども、今後、オミクロン株の状況によりましては、県として、米軍人の新規入国停止を求める場合もある、ということでございますか。
(基地対策部長)
お答えいたします。この新型コロナウイルス感染症の変異株であるオミクロン株は、まだ、不明な点が多々ございます。現時点で、対策については、あらゆる可能性を排除すべきでないというふうに考えます。従いまして、今後の状況によりましては、米軍人等の一時的な入国の停止や、基地間の移動を制限していただくといった、より厳しい措置を求める可能性はありうるものだと考えております。以上です。
(松崎委員)
水際対策の現状と課題について伺いました。新型コロナウイルス感染症の水際対策につきましては、対応を誤れば、基地周辺の安全性という基地対策の根幹が揺らぎかねない重大な問題であります。
今回、国の正式な見解として、日米地位協定上、米軍人は、日本国の法令の適用から除外されており、上陸拒否ができない、すなわち現状の、外国人の入国停止措置が適用できないという見解が示されたことは、大変重い意味があると思います。最終的には日米地位協定を改定し、日本の法令を適用することが必要だと思いますが、それまでの間は、現行の仕組みを前提に水際対策をやらざるを得ません。
オミクロン株については、不明な点が多く、できれば経済、社会に大きな影響が出ないことを希望いたしますが、最悪の場合も想定しておくことが必要だと思います。そうした中で、オミクロン株の動向によっては、入国停止を含む厳しい措置を求める場合もあるとの、県の見解も示されたところでございまして、オミクロン株を含め、新型コロナウイルス感染症に対しては常に最新の動向を把握しつつ、引き続き最善の措置が取られるよう、国や米側に適時に働きかけていただくことを強く要望しまして、私からの質問は終わります。