総務政策常任委員会(立憲民主党・民権クラブ 松崎委員)2022.3.8(火)

(松崎委員)

 私からは税務職員の人材育成につきまして、まず伺っていきたいと思います。

財政運営の基盤である県税収入を確保していくことは言うまでもなく非常に重要なことであります。その税務を担う人材をしっかりと確保することは当然でありまして、これまでは、一定の人数を採用し県税事務所にも配置して参りましたけれど、行政改革の一環として行った採用抑制の影響によりまして、現在は、若手職員とベテラン職員の中間層が少ない、そんな状況であります。

また、県の人事ローテーションも、以前は、採用後も継続して税務に従事する職員がおられましたが、今は、3年程度で税以外の所属に転出される。そんなケースが増えています。

そうした中、税の現場は、これまでの経験で培った専門知識を持ったベテラン職員が活躍をしておりますが、数年後を見据えれば、そうした職員も退職を迎えて、ある世代から急激に少なくなってしまい大変だと心配であります。一方、専門知識を有する税務職員の人材育成というのは、一朝一夕にはできませんので、そうした人材を持続的に育成していくことが大変重要だと考えます。

 私は、こうした税務職員の人材育成が差し迫った課題だという認識のもと、令和元年度の本監査の際に質疑を行いまして、その際は、OJTを中心に、研修や事務所をまたいだ情報交換を行っていると伺ったところです。今、私のところには、複数のOBの方々や現役の職員の方々から「人材育成は本当に待ったなし」という声も届いておりまして、一方で、このコロナ禍におきましては、今までできていた取組ができなくなった場面もあると思います。

 また、本県では、平成30年12月のことでありますが、マンションへの不動産取得税の課税誤りが発覚をいたしまして、昨年までおよそ3年間に渡って、約18万件もの不動産登記の確認作業を行っていた。また、先月には南足柄市で同姓同名の方に、市税である固定資産税、また都市計画税を誤って徴収していたという報道もありまして、改めて税務職員の人材育成というのは大変重要であると認識を改めたところでもあります。

そこで、コロナ禍におけます税務職員の人材育成という観点から、何点か伺って参ります。

まず、税務職員の人材育成について、どういう考え方で行っているのか伺います。

(税制企画課長)

 財政運営の基盤となる県税について、適正・公平な賦課徴収を行っていくためには、税務職員が業務を行う上で必要となる専門的な知識や納税折衝などのスキルを習得することが重要であると考えております。

  そこで、毎年度、税務職員研修計画を定めまして、各種の研修を実施するとともに、各事務所でもOJTに取り組み、税務に必要な知識と経験を着実に培うこととしております。

 また、個人住民税対策の一環として、市町村の徴収体制の強化のために、市町村職員の人材育成にも取り組むこととしております。

(松崎委員)

 市町村における人材不足、これは県よりも大変だと思います。県税の基幹税目である個人県民税は、市町村が賦課徴収を行っていますから、市町村職員に対する取組が非常に重要だと考えますが、何か取り組んでいるのか伺います。

(税務指導課長)

  市町村における個人県民税の徴収担当者向けの人材育成としては、まず、県職員が講師となり各種の研修を行っています。

  具体には、初任者を対象とした「徴収基礎研修」、配属2年目以降の職員を対象としました「徴収実務研修」、新任の課長さんを対象としました「管理監督者研修」、不動産の公売を実施する職員向けに「不動産公売実務研修」を開催してございます。

  また、個人住民税対策としましては、県の税務職員を一定期間市町村に派遣して市町村職員の身分で直接滞納整理を行う「短期派遣制度」に取り組んでまいりましたが、令和4年度からは、限られた市町に派遣する「短期派遣制度」に代えまして、各団体の税務職員のスキルの向上とノウハウの継承を図るため、新たに、税務指導課と県税事務所の職員が、多数の市町村に対して、単独で行うことが困難な滞納事案について、支援や助言を行う「実地支援制度」に取り組んでまいります。

加えて、これまで、1年又は半年間、市町村の税務職員を県税事務所で受け入れる「市町村税務職員研修派遣制度」を実施していましたが、新たに、徴収事務を担当する県の職員と市町村職員との相互交流を行います。これによりまして、交流職員の徴収スキルの向上と市町村における徴収体制の強化を図ってまいります。

 このように、新たな実地支援や、県と市町村職員の相互交流の取組みを通じまして、市町村職員の人材育成はもとより、県の税務職員のスキルアップも図られ、県税事務所の活性化にもつながるものと考えております。

(松崎委員)

 これまでの「短期派遣制度」、お答えの中でありましたけれど、その中で分かってきた市町村の課題は何でしょうか。

(税務指導課長)

 平成19年度から取り組んでおります「短期派遣制度」を開始した当初でございますが、市町村によりましては、給与などの差押や捜索、差押えた自動車の公売などは実施しておりませんでしたが、これまでの「短期派遣制度」の地道な取組みにより、そうした団体にあっても給与の差押えですとか、公売など、一定レベルの滞納整理は実施されるようになりました。

 しかしながら、中規模団体、町村部では徴収業務を少人数で担当しているほか、課税業務と兼務で担当していることもあるため、所得があるにも拘わらず財産が見つからない案件、相続人が不明な案件、滞納者の唯一の財産が「がけ地」など、売却困難な不動産といった困難事案などの滞納整理を単独で実施することが困難であることが大きな課題として明らかになったところでございます。

(松崎委員)

 今お答えを聞いておりまして、市町村、特に中規模団体、町村部に課題が多いということもあるのかと思いますが、一方で横浜市などの政令市と取り組んでいることはあるのか伺います。

(税務指導課長)

  県では、ベテラン職員の退職によりまして、税務経験の浅い職員が増加しています。同様に、横浜市などの政令市においても、ベテラン職員の退職による人材不足と若手職員の育成に課題があると伺っております。

しかしながら、政令市は税収規模も大きいため、中規模団体や町村部に比べると、税務の職員数も一定程度確保できているところでございます。

このため、政令市とは、県税事務所と市で実施しております「徴収対策連絡協議会」において、県、市それぞれが「捜索講習」ですとか「自動車の差押え実習」、「優良事例」などの発表を行いまして、お互いに切磋琢磨しながらスキルアップに取り組んでいるところでございます。

(松崎委員)

 お答えにあった協議会におきまして、各種の講習ですとか、優良事例の発表とかを行っているとのことですが、県や政令市では、お互いに持っているノウハウをすべて、手元にあるものを明かすという形でもって最新の事案はきちっと共有しているのでしょうか。

(税務指導課長)

 委員ご指摘のとおり、政令市とは、定期的に各地区の協議会において、最新の事案について、情報共有を行っているところでございます。

(松崎委員)

お答えの中で、政令市との取組は分かりました。そうすると、人材育成の課題は中規模団体ですとか、町村部にあるということになるわけですが、なぜ今、これまで実績を積み上げてきた「短期派遣制度」からあえて「実地支援」に移行していくのか伺います。

(税務指導課長)

個人県民税は、平成18年度の三位一体の改革によりまして、国税である「所得税」から地方税である「住民税」への税源移譲に伴いまして、税収規模が拡大して、収入未済額も大幅に増加しました。

そこで、平成19年度から、県の徴収職員を一定期間継続して、住民税を徴収する市町村に派遣しまして、派遣先市町村の徴税吏員の身分で、高額・困難案件を中心に市町村職員と共同で滞納整理を実施しています。こうした取組の結果によりまして、ピーク時である平成21年度に279億円であった個人県民税の収入未済額が、令和2年度には77億円と大幅な圧縮が図られ、一定程度の底上げは図られたものと認識しています。

短期派遣制度は、1団体に2名1組で5か月程度派遣しますので、どうしても限られた団体しか支援できないというデメリットもございます。個人県民税の収入未済額も圧縮されたとはいえ、まだまだ、県税全体の収入未済額の半分を占めています。

こうしたことから、令和4年度からは、短期派遣に代えまして、各団体の税務職員の徴収スキルの向上とノウハウの継承を図るため、新たに、困難事案に支援等を行う「実地支援制度」に移行するものでございます。

(松崎委員)

市町村職員に対する取組というものは理解をいたしました。市町村における人材不足はもう大変だと思いますが、県もまた大変だと思います。そこで、次に、県の税務職員に対する取組について伺います。

まず、人材育成の一つとして実施している研修についてであります。新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって影響を受けたと思いますが、具体的にどういった影響や課題があって、また、課題を踏まえて、今後どう研修など実施していくのか伺います。

(税制企画課長)

  まず、コロナによる影響や課題でございますが、これまで税務職員に対する研修は、集合研修の形で実施しておりましたが、感染拡大時においては、密を避ける観点からリモートによる研修に変更する必要がございました。

その際に、個人事業税や法人事業税は、国税である所得税や法人税の仕組みを活用していることから、国税職員による研修も実施しておりますが、職員のみを利用対象としているSkypeを用いたため、こうした外部講師による講義ができなかったという課題がございました。

 また、「全庁コロナシフト」のもと、講師となる職員や受講生が、コロナ関係の業務に従事する必要があったことから、一部の研修については、中止としたものもあり、人材育成の面からは決して望ましいものではないと考えております。

 そこで、今後の対応でございますが、ビデオ会議システムである「ZOOM」を新たに導入し、外部講師による研修も実施できるようにいたします。

 また、録画映像の配信による研修も新たに採り入れまして、全庁コロナシフトのもとでも、受講機会を逸することのないようにいたします。

 こうした見直しを行うことにより、すべての研修を中止することなく、確実に実施して参りたいと考えております。

(松崎委員)

税務職員に対する研修についてご説明があったわけであります。滞納整理のような場面では、県民の方に寄り添いつつも、しっかり納税をお願いするという両面が求められると思います。

実際に納税者の方への対応を行う県税事務所の職員の方にとっては、実務に寄り添った形での人材育成も大変重要だと考えますが、具体的に取り組んでいるものがあればお聞きします。

(税務指導課長)

   これまで県では、様々な取組によりまして、税収確保を図っているところでございます。例えば、滞納法人がピカソの絵画を所有していることが調査により判明しまして、差押を執行した上で、公売を実施し、2,000万円の滞納額を解消しました。

また、財産調査中に未登記の相続不動産を発見しまして、公売を実施し、2,000万円を超える額で落札された事例ですとか、高額滞納法人の所有する小型のタンカー、これも公売し1,400万円。そのほか、地道な調査で所在不明者のベンツを発見し、公売を行い300万円の滞納額を回収した事例もございました。こうした困難事案が解決できたことも、それまでの税務経験や人材育成などで培われた知識によるものと認識してございます。

さらに、こうした税収確保の一方で、委員ご指摘のとおり、納税者対応を行う県税事務所の現場では、納税者も様々な事情を抱えておりますので、そうした納税者に的確に対応するスキル、例えば、コロナで生活が困窮している納税者には、徴収猶予などの制度を案内するとか、そういったことも必要となってきます。

  そこで、こうした専門的なスキルを向上させるため、「研修」と「所属でのOJT」の中間に位置するような人材育成方策として、税務指導課と県税事務所の職員が課税・徴収別の勉強会ですとか、事務連絡会を実施しております。

また、税務の専門的スキルを有しているベテラン職員、そういった職員を「統括」という呼称をつけておりますが、そうした職員が課税・徴収別に事務所に配置されていますので、そのようなベテラン職員が経験の浅い職員に対して「レクチャー」も実施してございます。

具体には、不動産取得税の家屋評価におきまして、経験の浅い者に対しまして、「建物の構造別の家屋評価の留意点」などについて、現地なども確認しまして、丁寧に説明する「統括職員のレクチャー」制度による取組みも実施しております。こうした取組によりまして、税務の専門的なスキルの更なる向上に努めているところでございます。

(松崎委員)

お伺いしているだけでも大変そうだというのは、概括的にも感じます。イメージも浮かんでまいりますが、具体的に少しお聞かせいただきたいのですが、今説明の中にもあったピカソの絵画の公売、それから地道な取組みとして車、ベンツということもおっしゃっていましたが、その差押えをして、公売をした案件について、どのような苦労とか工夫とかそういったものがあったのでしょうか。

(税務指導課長)

  ピカソの絵画の公売については、まず作品が本物かどうかという確認のために、芸術大学ですとか複数の画廊に足を運びました。また、差押後の絵画の保管につきましても、近代美術館にお願いをしたところでございます。

  また、ベンツの事案については、その車が正規ディーラーから購入したものではなく、並行輸入で取得した車であったため、年式やグレードの確認など、価格の算定に苦労したところでございます。

(松崎委員)

 近代美術館は国立ですか、県立ですか。

(税務指導課長)

 県立近代美術館でございます。

(松崎委員)

ここまで市町村の税務職員、また県の税務職員の方々に対する人材育成につきまして、確認を含め質疑応答をして参りました。

県税事務所に対しましては、研修のほか、実務に寄り添った形での勉強会なども実施し、市町村の税務職員に対しても来年度からは実地支援制度、新たに導入して、これを活用して人材育成を図っていくということでありまして、ただ、税のような専門性の高い分野というのは、一朝一夕に人がなかなか育つということではなく、経験を積んでいっていただかかないと育っていかないと思われるので、時間もかかります。

また時間をかければよいのでもなくて、人も当然プロフェッショナル、熟達の方がついていかないと、やはり育っていくのは大変だということになると思います。きわめて経験を積んだ方がいるというのが大前提だということですが、そうした方々のご退職ということがどんどん迫ってくるのが県の今の状況ではないかと思います。

そこで、財政部長に答えていただきたいのですが、税のこの分野について人材育成どう取り組んでいくのかご見解をお聞きします。

(財政部長)

 委員ご指摘のとおり、県の財政運営の基盤である県税収入の確保や、公平で適正な賦課徴収のためにも、これらを支える税務職員の人材育成は、非常に重要なことだと考えております。

 これまで答弁してきましたが、市町村職員に対しては、各種研修会を開催するほか、来年度から始まる「実地支援制度」に加えまして、「徴収事務を担当する県職員と市町村職員との相互交流」等によりまして、各団体の徴収スキルの向上とノウハウの継承を図って参りたいと考えてございます。

 こうした取組は、市町村職員の人材育成だけではなくて、県職員が教えることを通じまして県職員のスキルアップにも効果があると考えておりますので、新たな制度が軌道にしっかりと乗るよう取り組んで参りたいと考えてございます。

 人材育成といいましても、今日、明日に優秀な人材は育ちませんので、県職員に対しては、まずは、様々な方法やツールを駆使しまして、基本である各種研修をしっかり実施した上で、その知識を実務に活かすための勉強会等の取組みを実施して、結果として、滞納整理による収入未済額の圧縮や、税務調査による申告内容の更正といった実績を上げることで、税務の仕事の大切さややりがいを実感してもらえるような職員を一人でも多く育てて参りたいと考えております。

 コロナ禍ということもありまして、なかなか研修も思い通りにはいかず、人材育成の取組みが実施できない状況もございますが、今後も税務を支える全ての職員に対し取組を継続いたしまして、最大の効果をあげられるように、人材育成にしっかり取り組んで参りたいと考えてございます。

[要 望]

(松崎委員)

質問の冒頭でも申し上げたところですが、大事なことですので、もう一度申し上げます。

税務職員は、財政運営の基盤である県税収入を支える方々、人材でありまして、また直接の県民の皆様へのご対応もいただいているところであります。そうした人材である皆様をしっかりと確保することは当然のことですが、やはり持続的に育てていただくということが重要だと思います。数年後にはベテラン職員が退職を迎えていく、その一方で、専門知識を有する職員の人材育成は一朝一夕にはいかない。この現実がございます。

今、全国的に人材不足が深刻化しておりまして、3年後には500万人に達すると言われております。今日取り上げた問題も見方を変えれば、いわば税務職員の2025年問題でありまして、年を追うごとにベテランが去り深刻化していく、そういう状況にございます。とても重要な問題なので、コロナ禍であっても様々な工夫を凝らしながら、課題解決に取り組んでいただくことを強く要望いたします。