令和4年3月18日 総務政策常任委員会 質疑要旨

(菅原委員)

私からも、特別自治市構想に対する神奈川県の見解について、お伺いをしてまいりたいと思います。

私も今朝新聞を読みながら、拝見させていただいたのですが、県に対して非常に厳しい内容のような新聞記事も読ませていただきました。その中で、今回、県の見解を示していただいたと思うのですが、研究会で示していただいた方向性とは一致しているのかなと私は認識させていただいております。

研究会の報告書では、特別自治市構想の実現を「本当に県民・市民のためになるのか」というところが、終わりの方に記載があったかと思います。その問題というのは、非常に、この問題の核となる部分であると私も認識しております。現在、指定都市の住民はどのような意識を持っているのか、把握されている範囲でお答えいただけますか。

(富岡広域連携課長)

横浜市は、昨年6月から7月にかけて、特別自治市に関するアンケートを実施しましたが、特別自治市の認知度に関しては、「制度の概要まで知っている」が12.4%、「名前だけは聞いたことがある」が47.5%、「全く知らない」が39.4%という結果だったと承知しています。

また、川崎市では、本年2月に「新たな地方分権改革の推進に関する方針」を改訂し、その中で「特別自治市制度創設に向けた取組の推進」という項目が掲げられています。

これに先立ち、この方針に関するパブリックコメントを実施していますが、「特別自治市が望ましい」といった肯定的な意見が5件、一方で、「二層制の自治構造を保持すべき」、「特別自治市は分断につながる」といった明確な反対意見が596件ありました。

加えて、「県のチェック機能が働かなくなるのではないか」、「警察の扱いはどうなるのか」、といった疑問も数多く寄せられたものと承知しています。

(菅原委員)

まだまだこれから議論をしていかなければならないのですが、また、見解の中では「見える化」という言葉が私もすごく刺さりまして、これからは「見える化」に向けて、スタートしていかなければいけないと思います。

そうした中、指定都市市長会は、指定都市制度自体が65年前に暫定的に導入された制度であり、「二重行政」や「税制上の不十分な措置」といった課題を挙げ、大都市に求められる役割に十分対応できる制度ではないと指摘しています。こうした主張に対し、どのように考えるかお伺いします。

(富岡広域連携課長)

まず、指定都市が挙げるいわゆる「二重行政」の問題については、その多くは法令に基づく役割分担になっていることに加え、本県は、指定都市から指摘を受けた案件については、これまでに、しっかり協議したうえで、積極的に権限移譲を実現してきた経緯がございます。

仮にいわゆる「二重行政」のような課題が具体的に生じていても、地方自治法上に定められた「指定都市都道府県調整会議」などの現行制度を活用し、解決することが十分に可能です。

また、大都市特例事務に関する「税制上の不十分な措置」については、地方税財源の不足は、地方税財政制度全般の課題であることから、国における抜本的な検討が必要であり、地方が連携して国に課題解決を求めるべき課題です。

このことに関しては、現在も九都県市首脳会議等も活用しながら、「地方の仕事量に見合った税財源の確保」を求めており、今後も地方全体で連携して対応してまいります。

(菅原委員)

地方自治体が国に働きかけるということ、これは私も賛同するところです。

では、指定都市は、「税制上の不十分な措置」を解消するために、特別自治市に移行し、市域内の県税全てを賦課徴収することを目指していらっしゃるとのことであります。その考え方自体が妥当であるのかどうか、見解を伺いたいと思います。

(富岡広域連携課長)

都道府県は、地方自治法上、「広域事務」、「市町村に関する連絡調整事務」、「補完事務」を処理することとされており、そのために都道府県税を賦課徴収しています。

一方で、特別自治市は、都道府県が処理する事務のうち、「包括する市町村に関する連絡調整事務」、「補完事務」を担わないとしていることから、広域自治体の道府県税の全てを賦課徴収するという考え方自体が合理性を有しないと考えます。

(菅原委員)

そうした中で、国の第30次地方制度調査会では、特別自治市構想の課題の1つとして「周辺自治体に対する都道府県の行政サービスの提供に影響する懸念」が指摘されているところです。

これに対して、例えば横浜市であれば、「市域の県税額構成比と人口構成比」が均衡していること、県内市町村の財政力指数を以て、県内他地域の利益が損なわれる状態にはないとおっしゃっております。

その一方で、県は行政サービスの提供、歳出の観点から、県内他地域への影響を分析されており、議論のベースがなかなかすれ違っているのかなと思うのですが、この点についてご説明いただけますか。

(富岡広域連携課長)

たしかに、各市町村域の県税額構成比と人口構成比はほぼ均衡していますけれども、税は個々の行政サービスの直接の対価として支払われるものではありません。

県は、県税や国庫支出金、地方交付税などを財源に、広域自治体として、災害対策、県単独土木事業、新興感染症対策など、域内における幅広い行政サービスを提供しておりますが、そういった行政サービスは、各市町村域における県税徴収額と直接の関係はなく提供していくものです。

そのため、仮に特別自治市が創設され、特別自治市域内の地方税が一元的に特別自治市に賦課徴収されることとなった場合、他の県内市町村における県の行政サービスにどう影響することとなるのか、つまり、歳出面からの影響分析が重要となってまいります。

なお、各市町村の財政力指数は、当該市町村が当該市町村の事務を処理するにあたっての運営力の指標となるものであり、県の提供すべき行政サービスとは関係しないものです。

(菅原委員)

研究会の報告書では、税の性質についても記載がされていたかと思います。一方で、今回の県の見解では、10ページに、「道府県税収入は」というところで「個々の行政サービスの直接の対価として支払われるものではありません」とおっしゃっているわけですが、もうちょっとボリュームアップするというか、この辺をもうちょっと拡充していくことが望ましいのではないかと、是非ご検討いただければと思います。

そうした中で、例えば、「横浜特別自治市大綱」では、県内の市町村に対する県の行政サービスに影響を及ぼさないよう、支障があれば、特別自治市と県との間で個別に調整を行うという話をされています。こうした主張に対する県の考え方について伺いたいと思います。

(富岡広域連携課長)

今委員からお話いただきましたけれども、横浜市は、水源管理に関する経費や特別自治市移行後も必要となる施設など広く県民に対するサービスが提供される経費等について、原則として特別自治市が応分負担することとしています。

しかしながら、その負担に当たっては、「広く県民に対しサービスが提供される経費等」が具体的に何を指すのか、どういった考え方で負担することになるのか、更には県との間でどのような個別調整を行うことを考えているのか、具体的に明らかにされていません。

県民・市民の負担に直結する問題であることから、まずは市の考え方を明確化し、広く示していくことが必要であると考えます

(松崎委員)

昨日、3政令市長が、17時半から県の見解について話をされまして、緊急声明を出されました。その中で、「県の見解」について、特別自治市に関し「二重行政や行政サービスの見解が示されているが、こうした見解は、日々、多くの住民サービスの提供を担っている基礎自治体である三市の現場の実態・実感と大きくかけ離れたものであり、到底容認できるものではない」としておりまして、「三市長と前向きで率直な議論をしていただくよう、知事に対し、協議の場の開催を求めていく」という方針を示しております。

これにつきまして、県の見解をとりまとめた当局の責任者でもありますが、政策局長の見解を伺いたいと思います。

(高澤政策局長)

報道等で、今ご紹介いただきましたコメント等については、承知しております。現場の実態とかけ離れたというようなお話でございますが、私どもも、そして、県でお願いしました研究会につきましても、先ほど菅原委員からもありましたけれども、県民目線、市民目線で見て、これまで県としては検討してきた、そういう認識を持っております。

そういった中で、現場の実態とかけ離れているといった、その「現場」といったものがいまいち私としては、どこを指しているのかなというところでございますが、役所の中のお話なのか、それとも市民との関係の中でのお話なのか、そこについては、私どもも、事務担当として、どういう趣旨だったのかなというところについては、お聞きしていきたいと思いますし、これから、知事と3市長との間で、話し合いの場を持たせていただきますので、そういったところで、それぞれの認識が一致を見るように話をしていくものかなと考えております。

(松崎委員)

 今、私からも、そして局長からも触れた「現場の実態・実感と大きくかけ離れたものであり、到底容認できるものではない」とされた点ですが、ここについて何か思い当たることはありますか。

(高澤政策局長)

 私は、先ほど申し上げましたように、「現場」といったところがどこなのかということと、私ども自体も、県民目線、市民目線、そしてそれぞれの政令市の中での行政サービス、そういったところを踏まえて検討してきたつもりでございますので、そういったところについて、今の委員のご質問について、これではないかなというところについて、私の感覚の中では、今、私にはございません。

(松崎委員)

 私から重ねてお聞きしたいことは、この特別自治市という課題については、自治体の首長だけではなくて、住民に関わる重要な課題であると思いますので、早急に結論を求めるのではなくて、やはり問題の所在をトップの立場から幅広く議論する、これが求められると思います。また、国とも同じです。

 政令市が求めているのも、早急な決着ではないと思われまして、まず、議論すべきであろうと思います。

 ですから、首長同士が本音を交わして、意見をぶつけて、課題解決をすることが、やはり団体自治の観点からも大切なことだと考えます。

 県はそうしたトップ同士の腹を割った議論を、いつ行われるのか、局長にお伺いします。

(高澤政策局長)

 すでに、こちらから投げかけておりますので、今後調整をして、日程調整等も行って進めていくことになると思います。

 市長の御意向も、なるべく早くというように伺っておりますので、日程調整が進み次第、そして、ただ私としては、論点を明確にする必要があるのではないかと考えております。

 今回の先ほどの先行会派での答弁にありましたように、今回、3市長から求められたものは、県と指定都市の役割分担というお話でした。それから、「二重行政」とか財政問題とか、そういったものもあるかもしれませんけれども、どこを論点として、どういう議論をするのか、それを明確にしたうえで議論していくことが有益なのではないかと思います。

 ざっくばらんに特別自治市構想についてのお考えをお聞きする、それも重要だと思いますし、その中で、認識のギャップがあるというのであれば、そこについてどういった論点を設定して議論していくのかということについても、事務方でも少し詰めさせていただければと考えております。

(松崎委員)

 今、現在、特別自治市について、県と政令市が互いに反論し合って、あるいは批判している。これは県民の理解はなかなか得られるとは言い難いと思います。

 自治の在り方を決めるのは、行政ではなく住民であるというのは言うまでもないことです。知事と市長が率直に議論をする場というのは、構想の賛否に関わらず、住民にとって、あるべき自治の姿を考える機会となる、これも重要なことだと考えます。その点についてはどうお考えでしょうか。

(高澤政策局長)

 指定都市市長会等が表明されています特別自治市構想、そういったものに対して、私ども、研究会等で、いろいろな分析等もさせていただいて、そして、私どももそれを踏まえた形での見解を出させていただきました。

 ある部分については、委員のお話のように反論という部分もあろうかと思います。ただ、私ども、批判をしているつもりはありません。

 基本的に、この少子高齢化社会、それから様々な感染症対策の問題、あるいは自然災害、そして持続可能な社会をどうして作っていくのかというところの中で、以前もご答弁申し上げましたけれども、それぞれが将来に向かって、理想的な地方自治の在り方を検討していくということは非常に大切なことだと思っております。今回も、そういった問題提起のひとつだと受け止めております。

 ただ、今回の提起では、一層制、二層制といったところも含めた地方自治の根幹に関わる大きな問題ということですので、私どもはそういったところをきちんと整理して、論点を明らかにして、十分、県民・市民に影響が大きい話ですので、実務者レベルできちんとそこを整理して、そしてトップ同士でも、という提案もさせていただきましたが、今回トップ同士で、まず話し合いをしたいということで、知事もそれを受けておりますので、そういった中で、常に県民目線、住民目線を基本に置きながら、少なくとも、県民、市民不在での議論だと言われることのないような形で議論していきたいと考えております。

(松崎委員)

まさに、局長のおっしゃっているところ、神奈川県として大切にすべき基本的なところだと思うのですが、そこで、住民自治の観点から言えば、自らのことは自分たち自身で決める、つまり、最終決定権は住民の皆様にあります。

県としての考え方ですとか、政令市とのこうした議論、これは住民の皆様に広くお示しすることや、また、住民のご判断を仰ぐ、このことについてはどうお考えでしょうか。

(高澤政策局長)

おっしゃるとおり、最終的には住民の皆様が大切だと考えております。ただ、まず大前提は、この特別自治市構想については、まだ法制度化されていないというのが大前提だと思います。

例えば、都構想のように、すでに法制度化されていて、そうしますと、大阪でありましたように、府と市との間でどういう枠組みが大事なのかという議論もありますでしょうし、最終的には、住民の方々に、どういうふうにそのメリット・デメリットをお示しした中で判断していただくか、そういう議論になってくるかと思いますけれども、一義的には、まず法制度化されてからの話かなと、そういうところも一方ではあります。

常に、先ほど申し上げましたとおり、県民目線、市民目線での議論も必要ですし、最終的な判断というのは、当然、県民、市民という部分だろうとは思っておりますけれども、その前に、法制度化の議論というものがあるのではないかなと、この特別自治市に関しては、そのように考えております。

(松崎委員)

私は、やはり地方自治というのは団体自治もありますが、しかしもう一つの欠かすべからず構成要素として住民自治というのがあります。また、ここに暮らしておられる多くの県民の皆様、横浜市民、川崎市民、相模原市民の皆様の最終的には選択、最終決定というものが担保されてこそ、我々も働くことができると思いますので、そこのところを大切に、また起点として、また終点としてしっかりと置いておくことはやはり大切だと思っておりますので、私から要望を申し上げます。

県と政令市が、コロナ対策ですとか、地震・防災対策、また、経済対策に一丸となって取り組んで、いのちと暮らしを守る、これが多くの県民が望んでおられることであります。また、ウクライナに関しても、避難民支援、これにも一緒になって汗をかいて、健康で笑顔あふれる神奈川を、県市、各自治体総力を挙げて一緒になって実現してほしいというのが県民の願いでございます。

経済、仕事、子育て、介護、そうしたものの充実をはじめとして、県と市が手を携えなければ、幸せな暮らしをお届けできないことは言うまでもありません。自治体行政の先頭に立つリーダー同士が、心を開いて、本音をぶつけあって、ご意見をぶつけて、課題解決を見出すように、住民の皆様にご納得いただける進路を示すよう、私から要望して、質問を終わらせていただきます。

以上