神奈川県議会平成18年6月定例会

厚生常任委員会質疑のまとめ

7 神奈川がん臨床研究・情報機構について

松崎       ● 神奈川がん臨床研究・情報機構は、参加する企業にどんなメリットがあるのか。

経営改善担当課長               ○ がんは、遺伝子の変異によって正常細胞が本来の機能を失い、無秩序な増殖を始めて、がん化するが、同じ臓器のがんでも極めて多様性がある、言い換えると個性があると言われている。がんの臨床研究では、研究対象となる多くのがん組織で研究し、研究の成果が、実際の診断・治療に役立つかを多数の症例で検証する必要がある。がん組織を持った患者さんがどのような療養経過をたどったか、長期にフォローされていることが、がんの研究にとって極めて大事な要素である。県立がんセンターは、多くのがん組織を収集できる環境が整っており、10年間で6,000例のがん組織を収集することとしている。一般のところでは、それは無理であり、診療情報を長期にフォローもできるので、この機構に参加することは、製薬会社にとってがんの研究開発を行う上で、メリットがあるもののようである。

松崎       ● 研究計画の受付は、どのような理由から9月としたのか。

経営改善担当課長               ○ 機構の設立に先立ち、がんセンターでは昨年10月から試験的に患者の方々の同意を得てがん組織を収集しており、5月25日の機構設立時には251の組織が収集できているが、機構で利用するために改めて患者の同意を得る手続きを進めている。機構設立後は、順調にがん組織の収集を進めており、9月頃には全体で400例程度収集出来るものと考えている。一方、機構に参加した団体が、研究計画を立案し、当該団体の倫理委員会を通して申請していただくことになるので、承認を得るのに3ヶ月程度はかかると思われ、9月から研究受付を行うこととした。

松崎       ● 難しい課題かもしれないが、この機構の中に治験の仕組みも組み入れたらどうか。

経営改善担当課長               ○ この機構には、県立がんセンターのほかに、付属病院を有する県内の4つの大学の医学部が参加しているし、一方で、日本を代表する製薬会社も参画している。今後、がんの臨床研究が創薬ということが出てくるような段階になれば、この機構での成果を治験に繋げていくということも必要になってくることも想定される。がんの治験を大学病院と共同で行うことができれば、患者の方々にメリットがあるので、今後、治験のあり方について、参加していただいた製薬会社や大学等とよく検討していきたい。

松崎       ● 治験を行うということを積極的に考えているか。

経営改善担当課長               ○ 機構を設立したばかりであり、また、県だけでできるわけではない。将来を見据えて治験のあり方を、大学や製薬会社の協力がなければできないので一緒に検討していきたい。

松崎       ● 得られた情報を、個人情報の不安を払拭して、汎用化していく取扱いは考えているのか。

経営改善担当課長               ○ 遺伝子研究では、厚労省、文科省、経産省の3省合同の倫理指針を定めている。機構では、究極の個人情報でもある遺伝子を扱うが、連結可能匿名化されており、研究者には年齢、性別、臓器の場所、そういう情報しか行かないので個人情報は守られている。