平成20年10月8日 商工労働常任委員会質疑のまとめ

<地域産業の振興(コミュニティビジネス)について>

松崎       ● 地域産業を考えたときに、新たなビジネスを起こすということを、現実に暮らしている町の中で、一般の人がやれるというチャンスを作っていくことはたいへん重要なことだと思っており、我が会派としてもコミュニティビジネスということに関しては、これまでも本会議を含めて取り上げてきた。

 そこで、コミュニティビジネスの概念とかそういったことよりはむしろ、県でこれまでコミュニティビジネスの事業者をどのように応援をしてきたのかということをまず確認したい 。

答弁要旨               ○ コミュニティビジネスは地域活性化あるいは雇用の促進につながると考え、本県では平成16年度から、コミュニティビジネスの創出支援を行っている。

 具体的には、財団法人神奈川産業振興センター、神奈川県中小企業団体中央会、県の3者により「神奈川県コミュニティビジネス創出支援実行委員会」を組織している。

 この中で、人材育成としてコミュニティビジネスの普及・啓発のためのフォーラム、経営者・スタッフ養成のためのセミナー開催、さらに、経営支援としてコミュニティビジネスの事業者や創業者を対象とした専門家による経営アドバイス、モデル性の高い創業者を支援するため開業資金の一部助成、コミュニティビジネス事業者向けの融資制度、このようなものを行い、コミュニティビジネスが創出されやすい環境の整備に努めてきたところ 。

松崎       ● メニューはたくさんあるが、成果は上がっているのか、上がっているとお考えなのか。

答弁要旨               ○ コミュニティビジネスという言葉は、最近は巷で良く聞かれるようになったが、一般の方には普通のビジネスとはどう違うのか知られていない。

 しかしながら、神奈川県の場合、NPOやボランティア活動などの裾野が大変広いということで、資金面で悩みを抱えている方が多くいらっしゃる。

 上手く資金を回す形で、地域住民のニーズに応えるためにはどういったことをしたら良いかと皆さんが考えている中で我々としてはコミュニティビジネスを支援してきたので、そういったものを活用して育っているコミュニティビジネスもある。成果は徐々に上がっていると考えている 。

松崎       ● 具体的にお聞きしたいが、必ずしも数で測ってはいけないと思う。それぞれのプロセスがあり、それぞれの状況があるので、一概に何件のうち何件育ちました、それで上手くいっているかという指標の立て方には疑問を持っている。神奈川力構想では数値目標が多いが、こういったものに関しては数値だけでは測れない、内実内容を見ないと測れないと思う。そのことを表明した上でお聞きするが、現実、どれだけ相談があるのか、どれだけビジネスとして発展しているか、もしデータ的に捉えられているのであれば伺いたい。

答弁要旨               ○ データとしては、なかなか捉えにくく、難しいが、例えば先ほど説明した事業の中で、18年度、19年度にはコミュニティビジネス創業実現モデル事業というものを行っている。県の予算には限りがあるので、全てというわけにはいかないが、そのうち12事業者を選定し、助成等の支援を行っているが、そのような事業者は順調に育っている。

 例えば、一部事例を紹介すると、伊勢原市では養護学校卒業後の就労が厳しい障害者雇用の場としてパンの製造販売を始めた団体がるし、音楽や芸術を通じて子どもの健全育成を目指そうと川崎市で創業した団体もある。

 さらには、コミュニティビジネスを紹介する冊子を作って普及をしているところであり、一例を申し上げると、不登校やひきこもりの青少年の社会参加を家族、周囲の方々と目指している団体が横須賀にあり、働く意欲を持つ、ひきこもりの若者の自立支援を目指している。平成18年3月には、「かながわボランタリー活動推進基金21」の対象事業に選定され、現在県と協働事業を進めている。

 その中で、ひきこもり経験がある働きたい若者の起業支援・就労支援の場として、横須賀の商店街の中に書店を開業し、ひきこもり経験者の若者が、商店街の一員として書店経営を行っている。

 そういった事例を県民の皆様に広く紹介しながら普及に努めていきたい。数で実績を申し上げるのは難しいが、そういった具体的事例が出てきており、そういった形で進めていきたいと考えている 。

松崎       ● 最後に触れられた実例は、各課をまたいで、県青少年課と関わりがあるが、教育委員会などとの部局横断的な取組に力を入れていただきたいと思う。

 そういったことを含めて、やはり、コミュニティビジネスを盛んにするということが、地域の産業というまでに届いているかはともかく、地域の活性化、活力の一つの大きな核になるだろうと思っているので、やはり、課題は何なのかということを明確にさせた上で、そこに対しての取組を強化していくことが必要だと考える。

 そこでお聞きしたいのが、今日以降、将来に向けて、どういう課題を持ち、県として取り組みをしていくのか、伺いたい 。

答弁要旨               ○ コミュニティビジネスに従事されている方は、収入面では普通のビジネスと比較すると恵まれないケースが多いが、地域課題に応えていく中で生き生きと活動していると感じている。

 そうした中で、昨年度、専門家による経営アドバイスを行った事業者にどのような課題をお持ちかを尋ねており、具体的に申し上げると、「事業計画を具体化するために支援してほしい」、「安定的な経営を行うため収益改善を図りたい」、「経営管理など事業体制の整備を図りたい」、「広報による事業の認知を図りたい」などの声がある。

 コミュニティビジネス振興のためには、コミュニティビジネスが地域密着型の取組であることから、基本的には、地域全体でコミュニティビジネスの振興を盛り上げていくべきものと考えている。

 今後、県としては、市町村、商工会・商工会議所、行政とコミュニティビジネスをつなぐ組織との連携した取組を実施していく必要があると考えている。

 具体的には、市町村、商工会・商工会議所などコミュニティビジネスの支援機関向けの勉強会を開催するとともに、支援機関との連携により、コミュニティビジネス事業者間の情報交換会や交流会などネットワーク化を促進し、自分のところはこういった形で課題を乗り越えたなどの情報交換ができるよう、さらには市町村間の連携や協力体制づくりに取り組むよう考えている 。

松崎       ● ワークライフバランスを推進する、子育てを応援する、障害者の雇用をもっと促進する、このような県の施策や打ち立てている方向性があり、民主・かながわとしても、積極的にやっていただきたいと要望しているが、それを既存の大企業に対して、働く人の意識改革を打ち出していくだけではなく、具体的に、目に見える形で、そこで新たにオープンした一つの事業体がある、こういう考え方があり、こういうやり方がある、こういうふうにすれば、今までとは違う参加の方法があり、現実に生き生きと働いている人の顔がある。これを間近に、家族の方々だけではなく、地域の方々が働いているのを、通勤の合間にでもその目の当たりにする。

また、課題もそこで誰もがわかる、それを示す、それも高いところから示すのではなく、同じところにたって、課題はこうなのだ、こういった形で希望が持てるのではないかということを、県が前面に立つのではなく、働いている人たち前面に出て提案をする、コミュニティビジネスは非常に神奈川らしい、また実践ということを通して、説得をしていくという面でも、非常に魅力的だと思う。是非、主導して応援し、リードし補完をするという役割を果たしていただきたいと思う。

 しかし、課長から報告があった、実際に現場から上がってきた声としては、収益の改善、事業体制の構築、さらに広報をどうするか、いずれも、およそ事業を営んでいる方であれば、誰もが経営にまつわる部分で悩んでいる部分だと思う。決してコミュニティビジネスだから出ている悩みではなく、今の世の中を相手にしてビジネスとして立ち上げていくには、並大抵ではない部分があるというのは、ここにもあるし、中小企業者にもあるし、大企業にもある。今まで培ってきた商工労働部のノウハウがたくさんあるはずだが、培ったノウハウでもっとできる支援はないか。コミュニティビジネスの特性があるからできないねといった中に、中小企業の支援の枠内で既にたくさんの知恵があるかも知れない。お金の借り方一つ、人の集め方、ビジネスの売り込み方一つ、そういった面でコミュニティビジネス特定の支援の突き詰め方よりは、汎用性のあるノウハウ、それを探していただいて、もっと部署・部局を超えて、応援のあり方を考え、弾みをつけていただければ、10人のところが数を追うわけではないが、20人、30人となると思う。

 ぜひともそういった応援、就業環境、事業環境を、この厳しい時代に整えていっていただきたい 。