平成28年 予算委員会質疑要旨(3月9日)
【ヘルスケア・ニューフロンティアの推進と未病を治す取組について】
松崎 3点について順次伺います。まず、ヘルスケア・ニューフロンティアの推進と未病を治す取組についてであります。
これまでの「異次元の自治体外交」ということで、様々な外国や州政府と4件、団体と1件の覚書=MOUを締結してきました。ライフイノベーション国際協働センター=GCCが結んだ7件も含めれば、一定の実績でありますが、MOU締結後、これまでに具体的に展開した例はどのようなものがあるか、28年度予算との関係で説明願いたい。
ライフイノベーション担当課長 MOU=覚書締結後の展開の例ですが、例えば、GCCの会員企業が、シンガポールで、現地での医療機器の承認に向けた治験を開始したり、別の企業が政府の助成金を獲得して現地で実用化研究に入る、といった成果につながっています。
また、本県がヘルスケア・ニューフロンティアの取組を進める中で、こうした海外との協力関係を個々の具体的な事業にも展開しています。平成28年度予算においても、例えば、「メディカルイノベーションスクール」の設置に向けた海外の大学との連携、「未病ハウスラボ」のシンガポールでの展開、臨床研究を支援する「かながわクリニカルリサーチ戦略研究センター」事業における米国スタンフォード大学との連携といった取組を計上しています。
松崎 具体的な展開が進めば進むほど相手との信頼関係がより深まっていき、大切にしていく姿勢が必要であります。
そこで、GCCはここで解散しますが、これまで果たしてきた役割と今後その機能はどこが引き継ぐのか、特にMOUを締結した相手方との関係をどう継承していくのか伺います。
ライフイノベーション担当課長 今後は県が中心となり、多くの企業や大学、研究機関が参加するコンソーシアム、いわゆる協議会を設置する予定です。このコンソーシアムでは、今まで十分でなかった国際共同研究や人材育成のほか、未病産業の国際展開といった新たな課題にも対応できるような推進体制を構築してまいります。
次に、GCCが海外の機関と締結した覚書7件は、県がこれをしっかりと引き継いでまいります。
既に個々の相手方との調整を開始しており、職員が現地を訪問するなどしており、具体的な継承手続き、あるいは今後のさらなる連携について、すでに協議を開始しています。
松崎 こらからの取り組みが大切であると思います。また、同じように感じた県民も多いと思います。 来年度は、健康経営を中小企業へと、健康管理最高責任者=CHO構想の普及拡大に向けた施策を展開するとのことであるが、多くの中小企業は厳しい経営環境の中で、日々生き残りをかけて、血の滲むような経営努力をされている。こうした中、県が「CHO構想」を中小企業に普及させようとする理由は何か伺います。
未病産業・ヘルスケアICT担当課長 中小企業は、企業数全体の中で圧倒的な割合を占め、地域経済の基盤を支える重要な役割を果たしています。そうした中小企業においては、人材の確保が大きな課題となっており、例えば、病気などで休職者や退職者が発生すると、新たに従業員を採用することが難しく、生産性が大幅に低下してしまいます。また、その結果、地域経済にも大きな影響が生じます。
このため、人材が事業の要となっている中小企業の皆様にこそ、企業経営の一部として、従業員やその家族の健康づくりを進め、生産性の向上等につなげていくCHO構想に、是非、取り組んでいただきたいと思っております。
そこで、本県ではCHO構想の中小企業への普及・拡大を目指し、来年度、県内各地で実践セミナーを開催するとともに、県内企業500社を対象にアドバイザーを派遣する事業などを展開したいと考えています。
松崎 健康経営は大企業中心に行われてきたと認識しているが、中小企業ではどうかと思います。
県は、「CHO構想」の推進に係る課題について、人材が要であるとか、生産性の向上に繋げいくことについては理解するが、そもそも大企業と中小企業の違いを分かった上で、この「CHO構想」の推進を行うこととしているのか。
未病産業・ヘルスケアICT担当課長 中小企業は、大企業に比べ、CHO構想を実践するための社内体制や人材、リソースも十分でなく、さらに、CHO構想に取り組むノウハウも不足しているなどの課題があるため、なかなか普及が進んでいないと認識しております。 そこで、これらの課題を踏まえ、来年度は、CHO構想に取り組むための体制整備や進め方などのノウハウや、具体的な取組メリット、その評価の考え方などについて、直接、企業を個別に訪問してアドバイス・相談を行う事業を実施したいと考えております。
松崎 企業を個別に訪問し、普及拡大を図ることは理解するが、県内の中小企業の実情はどうかということである。平成21年からの3年間で、県内でも1万6千社減少している。承継者の不在、人手不足の問題、経営に当たっての困難に直面した様々な事情があると思う。その実情をつぶさに接してみると、まずはこのことに対応することが、経営者の使命だと考えます。そのようなところにCHO構想を取り入れてくれと言われても、よほどの決意や覚悟がないといけないと思う。
そこで、「従業員の健康づくり」がかえって企業の負担にもなりかねないと懸念していますが、中小企業を中心に個別訪問のうえ、アドバイスなどを行うとのことであるが、具体的に中小企業からみたメリットはあるのか。
未病産業・ヘルスケアICT担当課長 アドバイザーを派遣する事業では、自社の課題やニーズに合わせたCHO導入に係るノウハウや、評価方法について、無料でアドバイスや相談を受けることができますので、早期に、かつ効果的に、生産性の向上等に向けた従業員の健康づくりに取り組むことができるというメリットがあります。
また、県では、CHO構想に取り組む企業を、「従業員の健康に配慮する企業」として、就職・転職情報サイトへの特集記事の掲載や、就職・転職に係る合同説明会などの場での紹介など、積極的なPRも考えています。これにより、企業の知名度の向上やイメージアップが図られますので、人材の確保や定着につながるというメリットもあります。
県では、このような取組を推進し、CHO構想に取り組む企業200社の実現を目指してまいります。
松崎
具体的に200社を目指すと答弁がありました。私が身近にお付き合いしている経営者の方にお聞きしますと、CHOを任命するとしたら誰かとお聞きしたら、たいていの場合は「私」ですと答える。ということは、会社を挙げてということと同時に、それを独立してやっていただく人材がいないのが実情であることが推察される。そうした中で、200社という数だけではなくて、具体にどのような結果を目指すのかという、相当の覚悟や決意がこの場で答弁がないと、この事業のやる意味がないと思います。
そこで、ヘルスケア・ニューフロンティア推進局長からその決意を伺います。
ヘルスケア・ニューフロンティア推進局長 地域経済を支える中小企業を取り巻く環境が大変厳しいということは、ご指摘のとおり十分に理解して事業を進めていかなければならないと考えております。
こうした考え方を前提にしつつ、より多くの中小企業の方にCHO構想に取り組んでいただくことにより、健康な社員が増え、優秀な人材が確保しやすくなり、企業自体が活性化して、結果的として中小企業の業績向上に繋っていく。こういった循環が重要であると考えています。
そこで、さきほど答弁しましたが、来年度は、より多くの中小企業にCHO構想を導入していただくよう、新規に取り組んでいただく県内企業200社という具体の目標を立て、その実現に向け、しっかりと取組を進めてまいります。
松崎 本会議や委員会など様々な場面で、ヘルスケア・ニューフロンティアや未病を治すことについて聞いてきが、どちらかというと個人に着目した取組だと受け止めている。CHO構想に関しては、会社、企業、集団など、どちらかというと共助という受け止めをしている。
それゆえ、その推進というと一人一人は勿論であるが、やはり企業としての集団がそこに向かって取り組んでいく、一丸となって取り組んでいくことが機運の醸成を含め、大事なことであります。
それを一経営者だけに任せるだけでは、この事業は進まないと思う。そういった意味から、県がどういった姿勢で、アドバイスや訪問など一過性に聞こえるような取組だけではなくて、その1社に着目したのであれば、どこまでしっかりと伴走していくことが大切である。是非、決意を実践に結び付けていただきたい。
次に、「未病を治す」取組の機会を広く提供するために、県民の方々が身近な場で「食」「運動」「社会参加」に継続的に取り組むことができる未病センターを全県展開するために27年度も予算が計上されておりましたが、あまり件数が伸びておりません。一抹の危惧を覚えるところでありまして、必死で取り組んでもらいたいと思いますが、どうなのでしょうか。
健康企画担当課長 未病センターにつきましては、昨年6月に小田原市内に「未病センターカーブス小田原」がオープンいたしまして、現在、登録者が1,000人を超えたところでございます。そして、この4月には、厚木市、大和市、海老名市、座間市、綾瀬市、愛川町、清川村の県央地域の7市町村において、国の地方創生先行型の交付金を活用しまして、各市町村の保健センター等に未病センターがオープンする予定となっています。
さらに、時期を同じくしまして、市町村の既存施設を活用する形で、未病センターが開設される予定もございます。こうした動きによりまして、平成28年度当初の時点におきまして、未病センターは合計10ヶ所となる見込みでございます。以上です。
松崎 今10箇所になるということでしたが、それをもって十分に推進できているとふうに受け止める訳にはなかなかいかないなと思っております。ここから先どのように取組を進めていくのか、健康寿命・未病担当部長に伺います。
健康寿命・未病担当部長 28年度に向けましては、県西地域の2市8町においても、未病センターの設置を見据えて、健康測定機器の設置等について、国の補正予算で成立した地方創生加速化交付金を申請中です。さらに、現時点で具体的な名称は申し上げられませんが、医療機関や介護事業所などから、早期の認証をめざしたいとの具体的なお話もいただいております。 今後も、「未病を治す」取組の推進のため、県・市町村・団体・企業等の連携により、県民の皆さんの食・運動・社会参加の実践を支える環境づくりに向けて、関係各方面に、様々なチャンネルを通じて働きかけを進めまして、このような具体的な動きを、未病センターの着実な設置に繋げるとともに、さらに設置促進を図っていきたいと考えております。以上でございます。
松崎 一定の理解をさせていただきます。ただ、「未病」という言葉にあまりこだわり過ぎることなく、食・運動・社会参加、これを推進することで、健康づくりをしっかりやっていきましょうという、今、部長がおっしゃったわかりやすい表現で県民の皆様に浸透を徹底していただきたいなと個人的に思うので、会派としてそのことをまたお願いさせていただきたいと思います。
もう一つ、「健康団地」の取組も進めていこうということで、知事の方からもお話がある訳ですが、この「健康団地」において、県土整備局と連携して「未病を治す」取組を保健福祉局として行っていくということであります。保健福祉局長に伺いますが、この「健康団地」をどのような形で進めていくのか、どういう点が効果的だと考えるのか、お伺いをいたします。
保健福祉局長 県営住宅では、高齢化率が約4割ございまして、県全体の平均を大幅に上回っております。また、その伸びも大きくなっておりますので、特に高齢層の健康づくりや介護予防が課題となっております。今後、県全体でも、急速な高齢化が進んでまいりますので、県営住宅での取組を進めることは、県全体の高齢化対策、未病対策のモデルとなると考えています。
そこで、これまでも「健康団地」の取組の一環といたしまして、県土整備局と連携しながら、認知症対策であるコグニサイズ、地域の歯科医師会と協力した口腔ケア相談会など、「未病を治す」取組を行ってまいりました。さらに、28年度は「浦賀かもめ団地」、ここは高齢化率が53%になっていますけれども、この団地におきまして保健福祉大学の専門性も活かしながら、近年、介護に至る要因として指摘されています「高齢者の低栄養問題」改善にも取り組むことといたしまして、予算を提案させていただいております。
今後とも、県土整備局としっかりと連携をいたしまして、このような「健康団地」における「未病を治す」取組を進めまして、そこで得られたノウハウを、より多くの県営住宅、さらには全県に普及、展開することによりまして、健康寿命の延伸につなげていきたいと考えています。
松崎 この健康団地の取組は、県営住宅の空き住戸を活用して進めるということでございます。 では、その県営住宅、従前よりこれを所管している県土整備局としては、この未病を治す取組について、どのように受け止め、どのように取り組もうとしているのか、建築住宅部長の見解を伺います。
建築住宅部長 県では、県営住宅を、高齢者が健康で安心して住み続けられる「健康団地」への再生を進めておりまして、昨年3月には、「未病を治す」取組も反映させた、「神奈川県県営団地再生計画」を策定いたしました。この計画に基づきまして、横須賀市の「浦賀かもめ団地」や横浜市の「日野団地」におきまして、空き住戸を活用した高齢者の支え合い活動が、今年度から本格的に始まっております。このような中で、先ほどもございましたが「コグニサイズ」による健康づくりなど「未病を治す」取組も取り入れまして、保健福祉局と連携いたしまして、健康団地づくりを進めているところでございます。
さらには、これも先ほどございましたが、来年度からは、両局が連携して高齢者の低栄養対策事業、これをスタートさせることといたしております。
今後も、県土整備局といたしましても、保健福祉局との連携を更に深めまして、県営住宅における健康団地づくり、これをしっかり「未病を治す」取組も取り入れまして、全県的な展開に向けて、しっかりと取り組んでまいります。
松崎 まさに伺ったところは、部局を越えて協力して、県民の福祉、生活のために汗をかくということであり、知事が日頃言われているクロスファンクションのモデルになると思います。是非とも成果を出してもらいたいことを強く要望します。
さて、4月からの組織改正で、ヘルスケア・ニューフロンティア推進局を再編し、県庁全体の横断的な取組をまとめる推進本部機能をもつこととされました。ヘルスケアと未病を治す取組は、知事がもっとも力を入れている政策であると理解している。着実な成果を挙げるとともに、県民の皆さんにとってどういうメリットが生まれてくるのかわかりやすく体系的に伝えていくことが重要であると考えます。ヘルスケア・ニューフロンティアのネクストステージを進めていくに当たって県庁全体が一体となって取り組んでいただきたいと思いますが知事に伺います。
黒岩知事 本県では、県民の健康寿命の延伸を図るとともに、新たな産業の創出などによって神奈川から経済のエンジンを回す「ヘルスケア・ニューフロンティア」の取組を、これまで全力をあげて進めてきました。私がヘルスケア・ニューフロンティアを提唱してから、3年が過ぎようとしています。
現在では、ヘルスケア・ニューフロンティア推進局はもとより、子どもから高齢者までの様々なライフステージに応じた「未病を治す取組」や、県営住宅を高齢者が健康で安心して暮らせるように再生する「健康団地」など、県庁全体で取組を進めています。こうした中で、昨年採択した「未病サミット神奈川宣言」を踏まえ、新たなヘルスケア・社会システムの構築に向け、「ネクストステージ」へ推進していくためには、これまで以上に全庁をあげた施策展開が必要です。そのため、新年度には推進体制をさらに強化します。
新たに設置する「ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部」を中心に、県庁全体が一丸となり、スピード感を持って取り組んでいきます。そして、県民や企業の皆様に、一日も早く、具体的な成果をお届けできるよう、私自身が先頭に立って、取組を加速してまいります。
松崎 未病の取組をはじめ、ヘルスケア・ニューフロンティアの取組が、これまでの実績を土台にして、県の多くの組織で具体的な取組を進める段階になっていることは評価しています。今後は、この動きをさらに広げ、また、深めていくことで、少しでも早く県民の皆さんに分かりやすい成果として示していくことだと思う。さらなる努力を求めます。
また、知事はよく認知症の方の例を出され、未病やヘルスケア・ニューフロンティアの大切さを説かれてきました。例えば、認知症患者と鉄道事故防止、家族の賠償責任が大きな問題となっています。今後、認知症の方は2025年には全国で700万人を超えるとも言われています。本県でも首都圏への直通化や相互乗り入れなどの鉄道網整備が進み、道路でも圏央道や周辺の幹線道路の整備が進んでいくこととなります。鉄道で言えば「ホーム」や「踏切」、道路では「交差点」や「横断歩道」などの人にやさしい社会資本の整備は不可欠であると考えます。そのために汗をかき、創意工夫を重ねる姿勢を堅持することと相まって、未病対策は、より重みを持つと思いますので、その点もよろしくお願いします。