令和3年9月29日 総務政策常任委員会 立民 松崎委員   

(松崎委員)

 私からは、米軍基地問題について、何点か伺います。

 イギリスの空母打撃群の寄港につきまして報告があったところであります。本県には都市部の住宅密集地域に多数の米軍基地が置かれまして、県としては、基地の返還を初め基地負担の軽減を求めてきたと承知しております。そこにイギリス軍という別の軍隊が入ってくることによって、当初想定していなかった新たな問題が生じる可能性があると思われます。新たな問題に対して、どのようなアプローチをしていくべきなのか、そういう観点から何点かお尋ねしていきます。

 報告資料を見ますと、横須賀基地には米空母カール・ヴィンソンが入港し、またイージス艦の入れ替えも激しくなっているという印象を受けます。英空母打撃群の寄港と、こうした米軍の動きとの関連を示す情報はあるのでしょうか。

(基地対策課長)

 お答えいたします。カール・ヴィンソンにつきましては、国に情報提供を求めましたが、特段の理由は示されておりません。米海軍のSNSによりますと、寄港直前の8月中旬、米空母カール・ヴィンソンは、米海軍の大規模な演習に参加し、横須賀寄港時は、乗組員は下船を許され、基地内で休養したとのことでございます。

 また、イージス艦の配置等については、資料にお示ししたとおり、交替のための配備であるとのことでございます。英空母打撃群寄港との直接の関連を示す情報は得られていないということでございます。以上です。

(松崎委員)

直接の関連を示す情報は得られていないということでした。それでは、今回の英空母打撃群、あるいはアメリカ本土に配備されている空母が継続的にやってくることになれば、結果的に米軍基地の基地機能の強化につながり、基地の返還は遠のいてしまう可能性もあると思うんですが、見解を伺います。

(基地対策部長)

お答えいたします。英空母打撃群が今後も来日するかどうか、これは現時点で不明でございます。これまでの日英両国政府の声明や英国政府の政策の動向からは、英国の艦艇などが今後も日本の基地を使用する可能性というものは否定できません。

 仮に在日米軍基地を使用する場合には、地元負担ができるだけ少なくなるよう配慮していただくことが必要かと考えております。

また、基地返還への影響につきましては、現在使用されている在日米軍基地を英軍が使用し、例えば新たな施設建設などを行うものでない限り、直接の影響はないものと考えております。また、米本土から来港する別の空母につきましても、既存の施設を利用している限り、新たな大きな負担ということではないのかなと、このように考えておりますけれども、英軍等が来年以降も日本の基地を使用するのかどうか、またどのように使用するのか、さらに地元への影響について、引き続き情報収集に努めてまいります。以上です。

(松崎委員)

 負担というのはですね、現物、あるいは色々なものを、先々にわたって使うというような、物質的な負担というもの、あるいは施設の使用という面、というような負担もあれば、人的な往来とかですね、あるいは情報、あるいは、人々の心理的な負担というものもあるのであって、そういった意味では地元県、あるいは基地県神奈川としては、やはりそういったいくつかの角度からですね、負担というものを捉えておく必要があろうかと思うので、その点はちょっと指摘をしておきます。それと、引き続き情報収集に努めていくという話でしたが、それはぜひお願いをしたいと思います。

 このイギリス軍でありますが、今回は艦隊の寄港だったわけですが、これ以前に、イギリス軍が日本に来て、何らかの活動をするということはあったのでしょうか。

(基地対策課長)

お答えします。これまでもイギリスの陸軍部隊が自衛隊の演習場で訓練を行うということはございました。また、イギリスの艦艇が、国連決議に基づく、北朝鮮の瀬取り等監視のため、日本近海で活動することはあったと承知しております。以上です。

(松崎委員)

 今の答弁ですけど、具体的にどういう訓練があったのか、また、神奈川県内基地が使われることはあったのでしょうか。

(基地対策部長)

 お答えいたします。まず、イギリス陸軍部隊の訓練についてでございますけれども、平成30年以降、陸上自衛隊の、県外の演習場におきまして、自衛隊の部隊と共同の訓練を実施してきたと承知しております。当初の発表内容によりますと、内容といたしましては、歩兵部隊、自衛隊で言いますと普通科の部隊でございますけれども、一緒に偵察訓練等を実施したということでございます。

 また、イギリスの艦艇でございますけれども、自衛隊の発表によりますと、平成30年の4月に、英海軍のフリゲート艦、サザーランドという船が、自衛隊との共同訓練のために、横須賀に寄港してございます。なお、外務省のホームページを見ますと、このフリゲート艦サザーランドにつきましては、同じ年の5月に、北朝鮮船舶の瀬取り監視のための任務を、日本近海で実施したということでございます。また、英海軍の艦艇につきまして、瀬取りの状況、外務省のホームページに記載されているところを少し紹介させていただきますと、同年、平成30年の5月から6月にかけまして、揚陸艦のアルビオン、また、平成30年の12月から、翌年上旬、1月にかけまして、フリゲート艦アーガイル、さらに、平成31年の2月から3月にかけまして、フリゲート艦モントローズという船が、日本近海で、瀬取り監視のための活動をしているとの記載がございますが、これらの船舶につきましては、日本への寄港、あるいはどの港を使ったのかということについては不明でございます。以上です。

(松崎委員)

 答弁ありがとうございました。瀬取り監視について、行動を行っているということと、それから、横須賀に入港した後、そういった活動をした例もあったということでありますので、やはり英海軍の動向、あるいは陸軍の方は共同訓練ということで、陸海それぞれの部隊が、わが国ないしはその近海というところで、活動をしておるということは、どうも確かなようであります。

 そこでちょっとお聞きしますけど、瀬取り監視という言葉が先ほどから出ておりますが、国連安保理、安全保障理事会決議に基づくものであると承知しておりますけども、これはどういう決議なんでしょうか。確認のために伺います。

(基地対策部長)

 お答えいたします。国連安保理決議、北朝鮮に対する国連安保理決議、いくつか出ておりますけども、基本的には、北朝鮮が行っております核開発の停止、さらに弾道ミサイル開発につきまして、あらゆる行為を停止することを求めるものでございます。瀬取りの監視につきましては、平成29年の秋に、北朝鮮が6回目となる核実験を実施いたしました。これに対する安保理決議の中で、瀬取りの監視というものが規定されておりますけども、同じ決議の中では、そうした北朝鮮の核開発の停止等に加えまして、北朝鮮に対する経済制裁の強化というものが謳われております。具体的には、北朝鮮からの繊維製品の輸入の停止、北朝鮮労働者の派遣の受け入れの停止、さらに北朝鮮に対する輸出の規制ということで、原油や石油精製品については上限を決めまして、それを超えるものについて輸出を停止する、さらに石油精製品等について、海の上で北朝鮮の船舶にこっそり積み替える、これを瀬取りと言いますけれども、それを取り締まることを各国に求める内容が盛り込まれたものでございます。以上です。

(松崎委員)

 北朝鮮はですね、安保理決議があるにもかかわらず、わが国の暦で言うと平成29年の9月にはですね、6回目となる核実験を行っているということであります。そしてそのために、経済制裁ということで、この瀬取り監視が行われているという、この経緯は非常に重要であると私も認識しております。ところで、イギリスと日本との間で、地位協定というような、基地の使用に関する協定というもの、あるいは取り決めというものは何か存在しないのか、また、イギリス以外の国とはどうなっているのかお伺いいたします。

(基地対策課長)

イギリスと日本との間で、地位協定等の協定は結ばれているのかということですと、現在は、2国間の地位協定はございません。ただ、昨日、外務省において発表がありましたが、訓練などのため、相互に訪問する部隊の手続きを定める「日英円滑化協定」の締結に向けた交渉を、来月、10月7日から開始するとの発表がございましたので、今後、英国との協定は進むことになると思われます。

 英国以外の国との状況ですが、日本とオーストラリアとの間では、「日豪円滑化協定」の締結に向け、協議が既に行われていると承知しております。以上です。

(松崎委員)

 来月7日からですね、日英間において、円滑化協定の締結に向けた交渉が開始されるということで、今日の委員会における質問というのは、まさにそういう意味では、時間軸で言えば、それを受けた形になりますが、もっと大きな時間軸で言いますと、そもそも日本と英国の間の取り決めということを遡れば、多国間の協定ということで、朝鮮戦争の時の、国連軍が、引き続き我が国の基地を使用するということのために、昭和29年に、国連軍地位協定が締結されておるということでありまして、法律上、紐解けば、そこに必ず記述がございますけれども、そこを読めば明らかなように、国連軍としての活動目的以外の基地使用、これに関する、今日問題としているようなことについての二国間の地位協定は、逆にいうと、ないということになるわけでありまして、やはり、こうした「円滑化協定」、オーストラリアとかですね、そして今、まさにこれから、英国と始めるというこのタイミング、あるいは内容、非常に重要なものだと思います。

 そうすると、日本とオーストラリアとの間の方が、この円滑化協定については進んでいるということになりますが、一体どういう状況になっているか把握していますか。

(基地対策課長)

お答えします。日豪間の円滑化協定につきましては、昨年11月の日豪首脳会談において、大枠の合意がなされました。日豪円滑化協定は、一方の国の部隊が他方の国の領域を訪問する際の手続の明確化等を図るものでございます。円滑化協定の対象となる分野には、部隊の出入国、関税及び租税、刑事裁判権に関するものを含むとされております。協議の具体的な状況については、公表されておりません。以上でございます。

(松崎委員)

 具体的な状況、進捗状況、今どうなっているのかということも含めて、明らかになっていないということで、どこを探しても、報道はされていないようでありますが、わが国以外でこうした円滑化協定を外国と締結している例はありますでしょうか。

(基地対策部長)

 お答えします。円滑化協定という名称ではないんですけれども、ビジティング・フォーシズ・アグリーメント、訪問部隊地位協定と訳しますけれども、そうした名称で、アメリカとフィリピンの間で、協定がございます。これは、訓練等の目的で、フィリピンを訪問する米軍部隊の地位、入国手続等につきまして定めたもので、現在、日豪間、あるいは今後、日英間で始まる円滑化協定と同様の性格の協定であると、このように理解しております。以上です。

(松崎委員)

 1点確認ですけど、今、フィリピンのVFAの話が出たので、1点教えてもらいたいんですけど、日英間とか日豪間でやろうとしている円滑化協定というのは、向こうから日本にやってくる場合というのを我々、今、想定して話していますが、逆に、日本の自衛隊がそれぞれの国の本国領土で訓練等を行う場合についても、適用されるというものでしょうか。

(基地対策部長)

 お答えいたします。日英間の、今後交渉する円滑化協定につきましては、昨日の外務省の発表を見ましたところ、具体的な内容については何も記載されておりません。日豪間の円滑化協定と同様の趣旨であると、このように理解いたしますと、日豪間では、訪問部隊、これは、相互に訪問する部隊の地位等を定める協定ということでございまして、仮に、日本の自衛隊の部隊が、オーストラリアへ行った場合の内容、その時の地位等につきましても、協定の内容に含まれた上で、交渉がなされていると、こういうふうに理解しております。以上です。

(松崎委員)

 それからもう一つ、例として挙げられた、VFAですね、アメリカとフィリピンの間の訪問部隊の地位協定と、それから、この委員会でも縷々議論をしてきました日米地位協定の違いというものがあれば、それはどんなところでしょうか。

(基地対策部長)

 お答えいたします。米国とフィリピンの訪問部隊地位協定の内容、詳細の条文を、日米地位協定と見比べて精査をしたという訳ではございませんが、大きな違いで言いますと、米国とフィリピンの間の協定というのは、90年代の初頭に、米国が、クラーク、スービック、両基地から撤退したあとに、米軍の部隊が、フィリピンを訪れて、演習ですとかフィリピンの軍の訓練を行うために締結した、こうした性格のものでございます。そうしたものでございますので、米軍が基地を管理する、そうした規定はございません。また、基地を提供するとか、返還するとか、そうした規定、あるいは、米軍が基地を管理し、さらに従業員を雇用すると、そうした条文はないものと理解しております。協定の内容は、米軍の地位、入国手続き、刑事裁判手続き、あるいは事件が起こった場合の補償等の手続に限定され規定されていると、このように理解しております。以上です。

(松崎委員)

 もう1つ。日英間では、今日の答弁でもありましたけども、地位協定、円滑化協定がなく、これから交渉が始まるということですけども、仮に現時点で事件・事故が発生した場合、これを、地元議員としては、非常に、地元住民としては懸念するわけでありまして、この場合どういうふうに処理されうるのか、その場合の問題点は何か、今、どういう見解でしょうか。

(基地対策課長)

お答えいたします。仮定の話にはなりますけれども、例えば、事件・事故が生じた場合には、日英政府間の協議により解決が図られるものと思われます。その場合、日英間で、解決に向けた考え方が一致している場合には、比較的円滑に解決が図られますが、考え方が一致しない場合には、協議が長引く可能性があると思われます。

また、地元への情報提供など、日米間では、運用改善によりあらかじめ、基本的なルートが定められておりますけれども、日英間では、そのような合意がございません。そういったことも、ひとつひとつ決めていく必要があると考えらえます。以上です。

(松崎委員)

 今の話を聞いていますと、交渉の中心は、やはり、刑事裁判手続になると思います。日英円滑化協定はどのような内容になると予測されるのか、また、問題が生じるとすれば、どのようなことが考えられるのか、お伺いします。

(基地対策部長)

 お答えいたします。まだ交渉が始まる前でございますので、どのような交渉になるのかということは予測の範囲を超えないわけでございますけども、先ほど委員からご指摘いただきました通り、日英間でこれから交渉しようとしている円滑化協定というのは、まずは、日米地位協定と違う点といたしまして、日本に来る部隊のことを規定するだけではなくて、予測といたしまして、日本から英国に行く自衛隊の身分を規定すると、そうしたことが、日豪円滑化協定の内容から、推測されるところでございます。そういたしますと、地域に密着した非常に細かい規定について交渉がなされるというよりは、共通のルール、これまで世界の中で通用してきたような共通のルールをベースに話合いが進んでいくのではないかと、このように予測しております。具体的に申し上げますと、刑事裁判手続きということでございますので、日本とアメリカの間には日米地位協定がございます。それから英国は、多国間の協定でございますけども、NATO軍地位協定というものがございます。この両者の、刑事裁判手続に関する規定は、基本的に同じ内容でございます。そういたしますと、刑事裁判手続の基本的なルールにつきましては、日英間で大きな考え方、認識の違いはないのではないかと、そのように予測をします。

 一方で、これは専門家の方も指摘しているところでございますが、日米間、日本とアメリカの間では、刑事裁判手続きの運用改善といたしまして、いろいろな取り決めがなされております。それは、欧州に比べても進んでいる、日本側に有利な内容になっているものがいくつかございます。そうした点につきましては、必ずしも日英間では認識が一致しないと。ゼロベースで交渉していく、場合によっては協定が締結された後に協議をしていかなくてはならない、そうしたことがあるのかなということで、今後の協定の交渉につきましては、そうした点に留意しつつ、情報収集に努めていきたいと考えております。以上です。

(松崎委員)

 そこはですね、長い間の、県議会を含めたいろんな議論の積み重ねがあって、日米間の取扱い、運用改善といったことが、縷々図られてきた経緯があるわけでありまして、そういった点につきましては、対英国という場面でも、わが国として、あるいは本県としても、しっかりと実現が図られるように、努めていく必要があろうかなということを、私は思っております。

 もう一つお聞きしたいんですが、日英間での防衛協力が先行してきた一方で、ようやく制度的な整理が行われるわけですけども、今後どのように取り組んでいくのか、見解を伺いたいと思います。

(基地対策部長)

 お答えいたします。これまでの日英両国政府の声明等からは、英国は引き続き、インド太平洋地域に継続的に関与していくと、こうした意向が示されております。また、今回の英空母打撃群の寄港以前から、英軍は、自衛隊との共同訓練等の目的で、日本に来ております。

 現在の国際情勢、またインド太平洋地域に継続的に関与していくという英国政府の政策を考えますと、こうした傾向は今後も続いていくものと予測しております。

在日米軍基地の使用にあたりましては、基地負担軽減をどのように図っていくのか、新たな課題が生じる可能性もございます。

 また、昨日、外務省において、日英の円滑化協定の締結に向けた協議が近く開始されるとの発表もございました。どのような協定が締結されるのか、基地問題への影響の可能性等について、情報収集に努めていきます。こうした点も含めまして、まずは関係自治体と課題の共有を図るとともに、自治体としてどのような対応が可能なのか、特に制度的な面につきましては、まずは県の中において、研究を深めていくとともに、明らかになった課題につきまして、対応すべく検討してまいります。以上です。

 (松崎委員)

  今の国際情勢を見ると、今後、イギリス軍に限らず、他の国の軍隊が日本周辺に派遣されて、自衛隊基地ですとか、在日米軍基地を使用する機会も多くなると懸念されます。これまでは、地位協定など制度的な整理が追い付いていない状況にありましたけれど、ようやく、日英円滑化協定の締結に向けた協議が始まります。そのことによりまして、将来、どのような問題が生じる可能性があるのか、検討を行い、県として、国に対して問題提起をしていただきたいと考えております。また、県が目指している基地の整理・縮小・返還に悪い影響が出ないよう、情報収集に努め、必要な働きかけを積極的に行っていただくよう要望して、質問を終わりにします。

 以上